世界の医療事情

トリニダード・トバゴ

平成28年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 トリニダード・トバゴ共和国(ポート・オブ・スペイン市) (国際電話国番号1-868)

2 公館の住所・電話番号

在トリニダード・トバゴ日本国大使館 (毎週土日休館)
住所:Embassy of Japan in Trinidad and Tobago, 5 Hayes Street, St. Clair, Port of Spain, Trinidad and Tobago, W.I.
電話:628-5991,FAX:622-0858
ホームページ:http://www.tt.emb-japan.go.jp/houjin-page.htm別ウィンドウで開く

(注)土日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので,ご覧ください。

3 医務官駐在公館ではありません

 在マイアミ日本国総領事館 医務官が担当

4 衛生・医療事情一般

 トリニダード・トバゴ共和国は,首都ポート・オブ・スペインの所在するトリニダード島とリゾート観光地トバゴ島の2島からなる人口約136万人(WHO 2015),面積約5,130平方キロメートル(千葉県よりやや大きい)ほどの国です。カリブ地域の南東部,ベネズエラに流れるオリノコ川河口の,オリノコ・デルタのすぐ北側に位置し,ハリケーン・ベルトからは外れるため,その他のカリブ海諸島とは異なり,ハリケーンの被害はほとんどありません。しかしながら,デング熱流行や2014年に初めて発生の報告のあったチクングニア熱,また2016年から始まったジカウイルス感染症(ジカ熱)を含めて,下痢,食中毒,肝炎などの途上国に多く見られる感染症は,地域によって罹患の危険性が高まるため,渡航者は出発の4~8週間前までに専門医(トラベル・クリニックなど)を受診し,健康カウンセリングや予防接種などに関する十分な検討と実施を済ませてから入国されることをお勧めします。水道の質は完全には保証されないため,ペットボトルの水を飲む,煮沸消毒を行うなどの注意も重要です。また,近年当国では,治安が悪化した状態が続いており,犯罪件数も増えています。2016年2月のカーニバルでは,日本人舞踊家が殺害される事件が起きています。自身の健康と共に常に身の安全に留意し,犯罪に巻き込まれないよう十分に注意して行動するよう心掛けてください。当地医師のレベルに関しては,個々の臨床診断の質はある程度確保されていると思われますが,交通事故での受傷をはじめ,大きな傷病,疾病の治療を熟練した医療チームが瞬時に行うといった先進国と同等の高度な医療技術や医療体制には至っていないと考えられます。よって,緊急時の際には米国などへの移送費を含め,高額になりうる医療費の補償を行ってくれる海外旅行傷害保険に事前加入されておくことを強くお勧めします。

5 かかり易い病気・怪我

(1)熱中症,脱水症など

 日中の平均気温は29℃と高いものの,夜間は23℃程度で,貿易風の影響で比較的過ごしやすい気候です。1~5月が乾期,6~12月が雨期です。日中は直射日光が強く,夏期は高温多湿となるので熱中症(日射病),日焼けに注意が必要です。

 皮膚の露出を少なくする,サングラスの使用,帽子をかぶる,日陰に入って時々休む,必要な水分・電解質を十分に取るなどの予防策をとることが重要となります。日常生活の範囲内でも熱中症は発生します。高齢者,基礎疾患のある方は特にご注意ください。

(2)旅行者下痢症,食中毒など

 旅行者下痢症の予防として,不衛生な状態で皮がむかれた果実や十分加熱調理されていない野菜などを摂取するのは避けましょう。低温殺菌されていない牛乳やそれを用いた乳製品,アイスクリームなどの摂取は控えましょう。また,酢漬けの魚も含め未調理や十分加熱調理されていない肉,魚の摂取も控えましょう。生水,氷などの摂取はさけて,濾過されて化学的殺菌処理の行われたものか,一度沸騰させた水,または,ペットボトルの水を飲みましょう。

 シガテラ毒(シガトキシン,マイトトキシンなど)によるシガテラ中毒は,熱帯及び亜熱帯の主としてサンゴ礁の周囲に生息するシガテラ毒魚を摂取することによって起こる致死率の低い食中毒の総称で,世界中で毎年約2万人もの人が中毒を起こしています。トリニダード・トバゴでも魚食後,毒素による食中毒(特にバラクーダなど)が報告されています。中毒症状は多彩で,発病時間は比較的早く,食後1~8時間程度で現れ,時に2日以上のこともあります。1. 嘔吐,下痢や腹痛などの消化器系症状,2. 血圧降下や心拍数の低下などの循環器系症状,3. 温度感覚異常,筋肉痛・関節痛,しびれ・痒みなどの知覚異常等の神経系症状が見られます。最も特徴的な症状として,ドライアイスセンセーションと呼ばれる知覚の異常があり,冷たい感じをドライアイスに触れたときのように,あるいは電気ショックを受けたように感じ,暖かいものは冷たく感じる逆転を生ずることがあります。さらに重症になると,全般的な筋肉運動調節異常,麻痺,けいれんが現れ,希に昏睡に至ることがあります。軽症例では1週間程度で治まることもありますが,回復に時間を要し,数ヶ月~1年以上症状が継続することもあります。

 シガテラ毒を蓄積する魚は,数百種とも言われていますが,その毒素は,ハリケーンや開発などによりサンゴ礁が大規模に破壊されると発生する藻類によって作り出されると考えられており,シガテラ毒魚はこの藻類を食べることによって毒化するため,初めから全てのシガテラ毒魚が毒を持つのではなく,地域,個体,時期などにより毒性にばらつきが見られます。また一般的には,草食魚より肉食魚,小型の魚より大型の魚,幼魚より老成魚,筋肉より内蔵のほうが毒性が高いとされています。この毒素は加熱調理や冷凍などによって解毒されないので十分注意が必要です。

(3)スポーツ事故による外傷など

 棘皮動物(イソギンチャク)の幼生,指ぬき型クラゲによる刺傷(サーフィン,海上での遊技,シュノーケリング,海岸線での遊泳中など)は激しい痛みを伴った広範な皮膚炎を起こします。場合によってはショック状態になる可能性もあり十分注意が必要です。

 その他,珊瑚,鮫,ウニなどによる受傷が報告されています。また,決められた区域以外,見張りのいない海岸での海水浴は,水深や潮の流れが不明なため大変危険です。

(4)HIV感染/エイズなど(トリニダード・トバゴ保健省2012)

 2011年の新規HIV感染者数及びエイズ患者数は,それぞれ1,077人,33人と2003年をピークにして漸減傾向にありますが,HIVの人口に対する感染率は,全体で1.7%,15~49歳に限れば2.5%と日本と比較すると著しく高くなっています。日頃から節度のある行動をし,十分な安全対策を講じてください。

(5)蚊の媒介する感染症など

 黄熱は1979年以来,ヒトへの感染例は報告されていませんが,それ以降もトリニダード島南部,南東部の森林地域などにおいて,猿の感染・死亡報告がされています。首都のポート・オブ・スペインでは感染のリスクは少なく,予防接種に関しては,トリニダード島に長期滞在したり,地方までの行動が予想される方は接種が推奨されていますが,カリブ海クルーズ航海中の旅客で下船しない場合,首都ポート・オブ・スペインの都市エリアだけを訪れる場合や,航空機の乗り換えだけの場合には,一般的には接種は推奨されていません。一方,トバゴ島のみへの渡航者には,接種は推奨されません。なお,黄熱流行地からの入国時には,入国の10日以上前の接種が必要です。なお,トリニダード・トバゴはWHOの黄熱感染地域のリストに入っているため,当国を経由して他国に入国するに際,イエローカード(ワクチン接種証明書)の提示を求められる場合がありますので注意してください。

 デング熱を発症させるウイルスは,東南アジア,インド,中米,南太平洋の南北両回帰線の間にある国々を中心に分布しています。トリニダード・トバゴでは毎年のように患者の発生が報告されており,最近では,2014年と2015年にそれぞれ5,157人,1,687人の患者が報告されています。デング熱のほとんどは重症化することなく治りますが,一部で出血傾向を伴ったデング出血熱やショック状態になる場合があります。これまでのところ予防薬・予防接種はありません。発熱に対しては,アセトアミノフェン(タイレノールやパナド-ル)を用います。アスピリンは血小板の働きを妨げる作用があり,出血傾向を助長するので使用しないでください。感染予防策としては,蚊に刺されないようにすることが最も大切です。戸外に出るときは,虫よけスプレー(30%DEETが推奨されますが,2ヶ月以下の幼児には使用を避けてください。)の使用や,できる限り長袖,長ズボンを着用すること,蚊の活動が活発な日の出や夕暮れ時の外出を避けること,居住空間近辺の蚊の発生しそうな下水,水回りの清掃(余分な水たまりの除去)をすることをお勧めします。

 チクングニア熱は,デング熱同様に蚊によって媒介される熱性疾患です。2013年末より,カリブ海諸国で流行するようになりました。トリニダード・トバゴでも2014年7月に初めての患者が報告され,同年に291人が罹患しました。2015年は感染者数は少なかったのですが,2016年には増加傾向があり,同年9月までに疑い例を含めて590人が罹患しています。

 2015年にブラジルで流行が始まったジカウイルス感染症(ジカ熱)は,中米・カリブ海諸国に拡がっています。トリニダード・トバゴでも国内感染が確認され,2016年9月までに412人が罹患しています。

 マラリアについては国内感染例はありませんが,毎年のように輸入感染例が報告されています。

 他に小バエや,蚊によって感染するデング熱に似た,髄膜炎症状も呈することのあるOropouche Feverも報告されています。

 その他,細菌性髄膜炎,サルモネラ症,赤痢,インフルエンザ,急性出血性結膜炎などが報告されています。

6 健康上心がける事

(1)屋外で活動する際には,十分な水分や電解質を摂取し,直射日光に対する防護策(帽子,長袖,日焼け止めクリーム,サングラスなどを使用する)をとりましょう。
地方や森林,その他の自然環境地域を訪問する際には,虫に刺されないように長袖・長ズボンを着用し,虫除けスプレー・クリーム等を使用するなどしましょう。

(2)野生の小動物に遭遇した場合は狂犬病,また鳥の死骸の場合は鳥インフルエンザなどの感染の恐れがありますので,決して触らないようにしましょう。

(3)渡航者は,事前に専門医(トラベル・クリニックなど)を受診するなどして,予防に関する十分な知識と対策(予防接種を含む)を備え,無理のない余裕のある旅行を行い,健康と安全に十分留意しましょう。必ず海外旅行傷害保険などに加入して高額医療費が発生する事態に備えてください。さらに基礎疾患のある方は,事前にかかりつけの医師,専門医などを受診し,処方箋や病気の状態,経過などを英訳した診断書などを書いてもらい,何かあった場合に備えて,旅行中,携帯しておくことをお勧めします。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

(1)赴任者に必要な予防接種

破傷風

 10年ごとの追加免疫を行って入国することが推奨されます。

A型肝炎

 1歳以上の全ての渡航者に対し最低2週間前までの接種が推奨されます。また,6-12ヶ月後の追加接種は長期の免疫獲得を促します。

B型肝炎

 全ての渡航者へ推奨されます。

腸チフス

 地方或いは流行地域への渡航や,6ヶ月以上の長期滞在者など危険性の高いグループに推奨されます。

黄熱

 年齢9ヶ月以上のトリニダード島への渡航者に推奨されています。妊婦,免疫不全者,卵アレルギーのある人は接種の適応外です。接種前に十分医師に相談する必要があります。カリブ海クルーズ航海中の旅客のうち,下船しない場合や,首都ポート・オブ・スペインの都市エリアだけを訪れる場合や,空港での乗り換えだけの場合は,一般的には接種は推奨されていません。またトバゴ島のみへの渡航者には推奨されていません。黄熱病流行地からの入国時には1歳以上の全ての渡航者に対し入国の10日以上前の接種が必須です。

(2)小児定期予防接種スケジュール(2015年)

小児定期予防接種スケジュール(2015年)
接種時期 予防接種の種類等
2ヶ月 DTwP/Hib/HepB(ジフテリア・破傷風・百日咳・インフルエンザ桿菌b型・B型肝炎の5種混合:1回目)
OPV(経口ポリオ:1回目)
PCV(肺炎球菌:1回目)
4ヶ月 DTwP/Hib/HepB (2回目),OPV(2回目),PCV(2回目)
6ヶ月 DTwP/Hib/HepB (3回目),OPV(3回目),PCV(3回目)
1歳 MMR(麻疹・流行性耳下腺炎・風疹:1回目)
YF(黄熱ワクチン)
18ヶ月 DTwP(ジフテリア・破傷風・百日咳:1回目)
OPV(4回目)
4歳 MMR(2回目)
4.5歳 DTwP(2回目),OPV(5回目)
10歳 Td(破傷風・ジフテリア:1回目)
11歳 HPV(パピローマウイルス:3回接種)

参照:
http://apps.who.int/immunization_monitoring/globalsummary/countries別ウィンドウで開く

 トリニダード・トバゴでは,ポリオの予防接種を5回行います。また,水痘ワクチンはなく,黄熱ワクチンの接種があります。Hibは米国などに比し1回少ない。施設の衛生状態や医療従事者の技量,副反応の際の救急集中治療施設の不足などから,可能な限り先進国(米国など)或いは,本邦で接種するよう前もって十分な計画を立てて実行することが勧められます。なお,9~12歳児にはジフテリア・破傷風トキソイドワクチンの追加接種が必要です。その他,インフルエンザワクチンはリスクの高い小児には施行されます。

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 予防接種を受けた際に発行される Immunization CardVaccination Card, Health Passport ともいわれている)が現地学校入学の際に要求されます。

(4)乳児検診

 妊娠中から,地域の保健センター(国民への公共サービス)などにおいて,検診が無料で行われています。ただし,自主的に登録する必要があります。また,当国人との婚姻関係がない場合(外国人の扱いを受ける場合)はこのサービスは受けられません。その他には,小児科などで乳幼児定期予防接種を受ける際に同時に検診が行われ,必要があれば専門医に紹介されます。なお,上記のように公立病院の小児科を受診する資格を有する場合は,ワクチン接種等の医療費はすべて無料です。但し,病院の基本的衛生環境は本邦に比し著しく劣り,他の外来入院患者からの感染,医療スタッフからの医原性(院内)感染のリスクは高いと考えられます。あくまでも自己責任の原則のもと,十分注意して医療機関を選択してください。

 ワクチン接種は,各地域の保健センターや本稿8.の医療機関(小児科など)で可能です。

8 病気になった場合(医療機関等)

(1)St. Clair Medical Centre(私立)
日本国大使館に隣接する私立総合病院で,いくつかの施設に分かれています。近くのMRI Centreで精密検査も行えます。24時間対応の救急外来(ER)あり。心筋梗塞や脳梗塞にも対応可。血液透析可。外国人がかかりやすい市内の私立病院のひとつ。
所在地:18 Elizabeth Street, St. Clair, Port of Spain
電話:628-1451/2
ホームページ:http://medcorpltd.com/web2/別ウィンドウで開く
(2)West Shore Medical Private Hospital
ポート・オブ・スペインからやや離れた郊外に位置する私立総合病院(歯科なし)。外国人の受診も多い。24時間対応の救急外来(ER)あり。心筋梗塞や脳梗塞にも対応可。血液透析可。
所在地:239 Western Main Road, Cocorite
電話:622-9878/9670
ホームページ:http://westshoreprivatehospital.com/home.html別ウィンドウで開く
(3)Port-of-Spain General Hospital(国立)
トリニダード島内最大の医療施設です。
所在地:169 Charlotte Street, Port of Spain
電話:623-2951
(4)Tobago Regional Hospital(国立)
所在地:Fort King George, Scarborough
電話:631-2551

 当地医療機関受診の際は,概ね現金による医療費の前払いが必要です。高額の医療費を請求されることがありますので,それに見合った医療保険の事前加入を強くお勧めします。また当地の医療レベルは均一でなく,外来検査で針の使い回しを見かけたといった報告や,誤診によって市街地より隔絶した隔離病棟に送り込まれたなどといった,医療面でのトラブルも報告されています。救急車による搬送が必要になった際,公共の救急車要請の電話番号は「990」ですが,サービスは十分と言いがたいのが現状です。私立病院では,概ね民間救急搬送会社を使っています(病院側で手配可)。

9 その他の詳細情報入手先

(1)トリニダード・トバゴ保健省:http://www.health.gov.tt/別ウィンドウで開く

(2)カリブ公衆衛生庁(CARPHA):http://carpha.org/別ウィンドウで開く

(3)米国疾病予防管理センター(CDC):http://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/trinidad-and-tobago.aspx別ウィンドウで開く

(4)世界保健機関(WHO):http://www.who.int/countries/tto/en/別ウィンドウで開く

(5)英国旅行医学ネットワーク・センター(NaTHNaC):http://travelhealthpro.org.uk/country/225/trinidad-and-tobago別ウィンドウで開く

(6)海外で健康に過ごすために(RORTH)厚生労働省検疫所 中米・カリブ海地域:http://www.forth.go.jp/destinations/region/cac.html別ウィンドウで開く

(7)在トリニダード・トバゴ日本国大使館 ホームページ:http://www.tt.emb-japan.go.jp/houjin-page.htm別ウィンドウで開く

 ホームページには最新の医療情報が更新されていますのでご確認ください。

10 現地語・一口メモ

 「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照願います。

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