世界の医療事情
ブラジル(サンパウロ、クリチバ、ポルトアレグレ)
1 国名・都市名(国際電話国番号)
ブラジル連邦共和国(サンパウロ、クリチバ、ポルトアレグレ)(国際電話国番号55)
2 公館の住所・電話番号
- 在サンパウロ日本国総領事館(毎週土日休館)
- 住所:Consulado Geral do Japão, Avenida Paulista 854, 3-andar, CEP 01310-913, São Paulo
- 電話:(11)-3254-0100、Fax:(11)-3254-0110
- ホームページ:在サンパウロ日本国総領事館
- 在クリチバ日本国総領事館(毎週土日休館)
- 住所:Consulado Geral do Japão, Alameda Dr. Carlos de Carvalho, 431-4andar, 80410-180Curitiba Paraná
- 電話:(41)3322-4919、Fax:(41)3222-0499
- ホームページ:在クリチバ日本国総領事館
- 在ポルトアレグレ領事事務所(毎週土日休館)
- 住所:Escritório Consular do Japão, Av. João Obino, 467 Petrópolis, 90470-150, Porto Alegre, Rio Grande do Sul
- 電話:(51)3334-1299、Fax:(51)3334-1742
- ホームページ:在ポルトアレグレ領事事務所
(注)土日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。
3 医務官駐在公館
在サンパウロ総領事館医務官が担当
4 衛生・医療事情一般
在サンパウロ総領事館に配置された医務官の管轄範囲はサンパウロ、クリチバ、ポルトアレグレを含むブラジル南部、南東部、中西部と広いため、気候も熱帯雨林気候から亜熱帯気候まで幅広いです。1年は概ね乾季と雨季に分かれますが、その時期は地域により異なり、感染症の流行や医療水準も地域によって大きく違う点に留意する必要があります。
公立病院の医療費はブラジル人のみならず、外国人に対しても無料ですが、待ち時間が長く、設備や衛生面で満足な医療を受けるのは困難です。在留邦人は設備やサービスの整った私立病院を利用するのが一般的です。公立および私立の総合病院には、24時間対応の救急外来があります。眼科は独立した病院になっていることが多いです。
ブラジル国内には各種の民間医療保険会社があり、加入している保険次第で適用可能な病院や医師が異なります。一方、それらの保険に加入していない外国人はどこの私立病院や医師にもかかることができますが、医療費は高額となりますので渡航前に必ず海外旅行傷害保険に加入されることをお勧めします。診察、検査、薬局などそれぞれ個別に支払いが必要です。病院への支払いは現金、小切手、クレジットカードで行われますが、医師に直接支払う経費(診察料、手術料、麻酔費など)については、主に現金または小切手による支払いのみとなり、カードでの支払いはできない場合が多いです。ブラジル国内に銀行口座を有している方は電子送金などが利用できる場合もあります。
また、私立のクリニック(個人開業医)は予約制です。予約の際、日本語や英語にはほとんど対応していませんので、ポルトガル語通訳等が必要です。
当地は医薬分業であり、薬については市中の薬局で購入することになります。24時間営業の薬局もあります。なお、抗生物質や向精神薬、強力な鎮痛剤等は医師の処方箋がないと購入できません。
5 かかり易い病気・怪我
(1)デング熱
蚊の媒介で発症するウイルス感染症です。例年雨季の後半にサンパウロ市内を含む当地でも流行します。潜伏期間は3~14日で、突然の高熱、頭痛、眼の奥の痛み、関節痛が1週間ほど続きます。遅れて発疹も見られます。予防接種や治療薬はありませんので、蚊に刺されないことが大切です。一部で出血傾向を伴うなど重症化することがありますので、諸症状に改善が見られない場合や、血が止まりにくいなどの症状を有する時は病院受診が必要です。
(2)チクングニア熱
蚊の媒介で発症するウイルス感染症です。ブラジルでは2014年8月に国内初感染例が確認され、現在では国内に拡大しています。潜伏期間は3~7日で、発熱、関節痛等がみられます。予防接種や治療薬はありませんので、蚊に刺されないことが大切です。
(3)ジカウイルス感染症
蚊の媒介で発症するウイルス感染症です。また、感染者との性交渉によっても感染することが確認されています。2015年5月にブラジル国内での感染例が初めて確認されました。潜伏期間は2~12日で、軽度の発熱、発疹、結膜炎、疲労感、筋肉痛、関節痛等を起こしますが、通常は重症化せず死亡することは稀です。感染しても約8割が不顕性感染(症状が出ない)と言われています。予防接種や治療薬はありませんので、蚊に刺されないことが大切です。
一方、妊娠中にジカウイルスに感染すると、胎児に小頭症等の先天性障害を来すことがあります。妊婦および妊娠の可能性がある場合には、流行地への渡航を控えるよう勧告が出されています。また、蚊による媒介の他に性行為による感染経路があり、流行地からの帰国後も特別な注意が必要です。
(4)感染性胃腸炎
ウイルス、細菌、原虫などに汚染された食べ物や水・氷から感染し、下痢、腹痛、嘔吐、発熱などの症状を呈します。主に脱水に対する対症療法を行いますが、症状が強い時は医療機関受診が必要です。
(5)寄生虫症
多種の寄生虫感染症があります。医師によっては、消化器症状の患者にすぐに駆虫薬を処方することありますが、きちんと診断を受けた上で治療を受けることを勧めます。生野菜などは注意が必要です。
(6)有毒性生物
蛇、サソリ、蜘蛛、毛虫などの有毒性生物による咬、刺傷事例は多く、死者も出ています。郊外でのリクレーションや野外活動では、長袖、長ズボンを着用し、藪などには近づかない方が良いでしょう。刺咬傷を受けた場合は、直ちに医療機関を受診してください。
(7)マラリア
ブラジル北部7州(アマゾニア地域)と周辺のマラニョン及びマットグロッソ州の9州が流行地域です。マラリア原虫に感染した蚊(ハマダラカ:夜行性)に刺されて感染します。潜伏期間は三日熱マラリアの場合、おおよそ12日~17日(またはそれ以上)、熱帯熱マラリア(重症化するタイプ)の場合、おおよそ7日~14日です。潜伏期間を経て、高熱、頭痛等で発症します。予防は夜間蚊に刺されないことです。流行地域で蚊に刺され高熱が出た場合は、速やかに医療機関(医療費は無料)を受診してください。なお、基本的には抗マラリア予防薬の内服は不要です。
(8)黄熱
ゴイアス州やブラジリア連邦区から北部のアマゾン地域を中心に発生していましたが、2017年以降感染が急増し、リオデジャネイロ州やサンパウロ州にも感染が広がりました。流行地域の森林地帯の猿の集団の中で黄熱ウイルスが保持されており、同森林地帯に入ったヒトは蚊を介し、黄熱ウイルスに感染します。潜伏期間(3~6日)の後に高熱で発症し20%は重症化し肝不全を伴い死に至ります。感染した際の高い致死率を考慮すると感染予防のためワクチンの接種を強く推奨します。日本国内での黄熱ワクチン接種は予約制ですので十分な余裕を持って関係機関に相談する必要があります。
(9)急性肝炎
食べ物や水・氷から感染するA型肝炎(潜伏期間1~2か月)と血液や体液から感染するB型肝炎(潜伏期間1~6か月)などがあり、発熱、全身倦怠感、食欲不振などの症状と黄疸が表れます。A・B型肝炎ともに予防接種がありますので接種後の渡伯をお勧めします。
(10)狂犬病
狂犬病ウイルスに感染している哺乳動物(犬、猫、猿やコウモリなど)に咬まれて発症します。潜伏期間は一般的には1~3か月ですが、1週間未満から1年以上と幅があります。発熱、頭痛、倦怠感などの感冒様症状で発症し、咬まれた部位の痛みや知覚異常も伴います。その後、中枢神経症状や筋肉の痙攣を来たし、死亡します。有効な治療薬はありません。咬傷後すぐに予防接種を受けること(暴露後接種)が重要ですので、狂犬病が疑われる動物に咬まれた時は、すぐに傷を流水と石鹸で洗い感染症専門の医療機関を受診してください。
(11)マンソン住血吸虫症
巻き貝が生息する淡水に入った際に、皮膚から感染します。ブラジルでの慢性肝臓病の原因の一つになっています。
(12)HIV/AIDS
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した血液や精液などから感染します。輸血など血液製剤による感染は減少し、性交渉での感染が増えています。不特定多数の性交渉を避け、コンドーム使用などで予防してください。
6 健康上心がける事
(1)都市部の水道水でさえ安全ではありません。飲水を前提とした浄水は行われておらず、管理された浄水器の水またはミネラルウオーターを使用するようにしてください。種々の経口感染症の予防のためには、火の通ったものを食べてください。また、手洗いとうがいを励行してください。
(2)暑さや乾燥のため熱中症や脱水症を起こしやすいですので、こまめに塩分や糖分を含む水分補給してください。日中は紫外線が強いので、サングラスや日焼け止めクリームの使用をお勧めします。
(3)昆虫や動物を介して感染する熱帯感染症が多いため、昆虫に刺されないように防虫対策(長袖、長ズボン、虫除け剤の使用)、野菜や果物をよく洗って食べる、ネズミなどが居そうな場所には近づかないなどの注意が必要です。
(4)有害動物による被害は全国で発生しており、蛇(特に北部と中西部)、蜘蛛(特に南部)、サソリ(特に北東部や南東部及び連邦区)などによる刺咬傷にご注意ください。また、サンパウロ、パラナ、サンタカタリナ、リオグランデドスールの各州の海岸では、夏にクラゲやカツオノエボシなどに刺される事例が頻発しています。
(5)タパジョス川(アマゾン川支流)のイタイツーバより上流には、金採掘時に精錬用に使われた水銀に汚染された地域があります。2000年頃、水銀中毒患者の発生がありました。
(6)道路の未整備や乱暴な運転により、交通事故が多発しています。
7 予防接種
(1)成人には、黄熱・A型肝炎・B型肝炎・破傷風の予防接種をお勧めします。小児には、本邦で受けられる定期接種と任意接種のワクチンに加えて、黄熱・A型肝炎の接種をお勧めします。なお、黄熱ワクチンは汚染地域に旅行する10日前までに接種する必要があります(生涯有効)。
- 黄熱予防接種について(5(8)黄熱の項も参照)
- 当地では、私立ワクチン接種機関(有料)及び各地の保健所(無料)で黄熱ワクチンの接種が可能です。なお、国際予防接種証明書(イエローカード)を所持していない場合、ブラジルから近隣諸国へ渡航できない場合があります。渡航先の検疫状況については、厚生労働省検疫所のホームページなどもご参照ください。
(2)現地の小児定期予防接種一覧
私立と公立の医療機関で接種可能なワクチンの種類やメーカーに違いがあります。公立の保健所では、外国人も無料で接種できます。
初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | |
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BCG | 出生時 | ||||
B型肝炎 | 出生時 | 2か月 | 4か月 | 6か月 | |
DTP(5価ワクチンとして接種) | 2か月 | 4か月 | 6か月 | 15か月 | 4才 |
Hib(5価ワクチンとして接種) | 2か月 | 4か月 | 6か月 | ||
ポリオ(不活化) | 2か月 | 4か月 | 6か月 | ||
ポリオ(経口) | 15か月 | 4才 | |||
ロタウイルス | 2か月 | 4か月 | |||
髄膜炎菌性髄膜炎(C型) | 3か月 | 5か月 | 12か月 | ||
肺炎球菌(10価) | 2か月 | 4か月 | 12か月 | ||
黄熱 | 9か月 | 4才 | |||
MMR(麻疹・おたふく風邪・風疹) | 12か月 | 15か月 MMRVとして2回目 | |||
麻疹 | MMRとして実施 | ||||
おたふく風邪 | 同上 | ||||
風疹 | 同上 | ||||
A型肝炎 | 15か月 | ||||
水痘(MMR+Vとして接種) | 15か月 MMRVとして1回目 | 4才 | |||
HPV(ヒトパピローマウイルス) | 女子は9~14才の間(男子は11~14才の間)に2回 |
(注:5価ワクチンはDTP+B型肝炎+Hib)
(3)現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明
予防接種記録の提出を求める学校が多いため、母子手帳やイエローカードなどは必ず持参してください。学校により提出様式が異なりますので、詳細に関しては各学校へ直接お問い合わせください。
8 病気になった場合(医療機関等)
ブラジル都市部の私立病院では、言葉の問題を除けば一般的に安心して医療を受けることができます。サンパウロやクリチバ、ポルトアレグレではほとんどの医師は英語を話します。1回あたりの診察料は病院及び医師により値段が異なります。加えて検査をした場合や処置が行われた場合には別途料金がかかります。予約外での受診は日中でもすべて救急外来に行きます。救急外来の受付は24時間対応です。受付で順番の札をとり、看護師による簡単な問診を受けて診察を待ちます。重症度別に待ち時間が変わるトリアージシステムが徹底されています。眼科と歯科は総合病院内にはないので、専門病院を受診する必要があります。
サンパウロ
- (1)Hospital Japonês Santa Cruz
- 所在地:Rua Santa Cruz, 398, Vila Mariana, Sao Paulo
- 電話:(11)-5080-2000
- 概要:日系の私立病院で、小児科・産科以外は対応できます。日本語を話す医師・スタッフがたくさんいます。救急外来は24時間対応です。
- (2)CENTRO MEDICO LIBERDADE HOSPITAL NIPO-BRASILEIRO ENKYO(援協リベルダージ医療センター)
- 所在地:Rua Fagundes, 121, Liberdade, Sao Paulo
- 電話:(11)-3274-6500(診察予約)、(11)-3274-6501(歯科予約)
- 概要:日系の病院で、ほとんどのスタッフが日本語を話せます。
- (3)Hospital Nipo-Brasileiro(日伯友好病院)
- 所在地:Rua Pistoia 100, Parque Novo Mundo, Sao Paulo
- 電話:(11)-2633-2200
- 概要:日本語を話すスタッフがたくさんいます。救急外来は24時間対応です。
- (4)Hospital Israelita Albert Einstein
- 所在地:Av. Albert Einstein, 627/701, Morumbi, Sao Paulo
- 電話:(11)-2151-1233
- 概要:サンパウロで最高水準の医療を提供する私立総合病院です。英語・フランス語・スペイン語の通訳がいます。医師は全員英語を話します。医療費は高額です。
- (5)Hospital Sírio-Libanês
- 所在地:Rua Dona Adma Jafet, 115 - Bela Vista, São Paulo
- 電話:(11)-3394-0200
- 概要:設備の整った最高水準の私立総合病院です。医師は全員英語を話します。
クリチバ
- (1)Hospital Sugisawa
- 所在地:Av. lguacu, 1236, Rebolças, Curitiba
- 電話:(41)-3259-6500、救急外来:(41)-3259-6604
- 概要:日系人経営の私立総合病院で、日本語で相談が出来ます。小児科はありません。
- (2)Hospital Nossa Senhora das Gracas
- 所在地:Rua Alcides Munhoz, 433, Merces, Curitiba
- 電話:(41)-3240-6521、3240-6060
- 概要:日本語は通じません。
ポルトアレグレ
- (1)Hospital Moinhos de Vento
- 所在地:Rua Ramiro Barceios, 910, Bairro Moinhos de Vento, Porto Alegre(救急外来)
Rua Tiradentes, 333, Bairro Moinhos de Vento, Porto Alegre(内視鏡)
Shopping Iguatemi - Av. João Wallig, portão 03 - 3º andar(予約外来のみ) - 電話:(51)-3314-3434、(51)-3537-8000、 Unidade Iguatemi:(51)-3314-3300
- 概要:私立総合病院で、日本語を話す医師もいます。
空港クリニック(すべて24時間対応し、救急車も配備されています。)
- サンパウロ
- グアルーリョス国際空港(電話:(11)-2445-2361)
- コンゴーニャス空港(電話:(11)-5090-9010)
- ヴィラコッポス空港(電話:(19)-3795-7902)
- クリチバ(電話:(41)-3381-1180)
- ポルトアレグレ(電話:(51)-3358-2000(空港代表))
9 その他の詳細情報入手先
(1)在ブラジル日本国大使館 ホームページ:在ブラジル日本国大使館
(2)ブラジル保健省 ホームページ:ブラジル保健省
10 一口メモ(もしもの時の医療ポルトガル語)
主要言語版については、「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(ポルトガル語)を参照願います。
11 新型コロナウイルス関連情報
ブラジルの新型コロナウイルス第1波は、2020年2月のカーニバル後しばらくして始まりました。その後、夥しい新規感染者数及び死者数を記録することとなり、世界の注目を集めました。数々のワクチンが大方の予想より早く実際に使用可能となりました。サンパウロ州立ブタンタン研究所では、中国シノバック社の不活化ワクチンを「コロナバッキ」として現地製造しています。他方、フィオクルス財団は、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンを現地製造しています。ファイザー製とヤンセンファーマ製のワクチンも接種可能となり、接種率は順調に増加しました。サンパウロ州人口のワクチン接種率は、ブラジル国内で最も高く、既に新型コロナ感染症に罹患した人口も多いことから、集団免疫が形成されつつあると考えられます。これが、第3波のピーク時の新規感染者数が、第2波のピーク時と比較してほとんど変わらなかった理由ではないかとされています(ブラジル国全体では2倍以上増加しました)。オミクロンBA.4/BA.5が主流の第4波は2022年7月上旬にピークアウトしました。2022年9月9日にはサンパウロ州内の公共交通機関内でのマスク着用義務が撤廃されました。ただし、新型コロナワクチンを接種していることを主要大学入学の条件にする動きも見られますので、新型コロナウイルス感染症罹患後症状を防ぐためにも、わが国政府が推奨するワクチン接種を受けておくことをお勧めします。
現地では、アルコールジェルやマスクに加えて、迅速抗原検査キット(抗原定性検査)も薬局で購入可能です。検査機関では抗原定性検査およびPCR検査を行っています。抗原定量検査は行っていません。感染が確定した場合、症状により医師の判断で入院または自宅療養となります。各地の私立総合病院では高度な医療を受けることが可能です。