世界の医療事情

令和6年10月1日

1 国名・都市名(国際電話番号)

 ジャマイカ共和国(国際電話番号1-876)

2 公館の住所・電話番号

在ジャマイカ日本国大使館(毎週土曜日、日曜日休館)
住所:Embassy of Japan in Jamaica, NCB Towers, North Tower, 6th Floor 2 Oxford Road, Kingston 5, Jamaica, W.I.
電話:929-3338、3339
FAX:968-1373
ホームページ:在ジャマイカ日本国大使館別ウィンドウで開く

(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。

3 医務官駐在公館ではありません

 在マイアミ日本国総領事館医務官が担当

4 衛生・医療事情一般

 ジャマイカ(首都キングストン)はキューバを北に、ハイチを東に望み、カリブ海のほぼ中央に位置する、人口282万5千人(2023年世銀)、面積は10,990平方キロメートルで岐阜県とほぼ同じ大きさの島国です。熱帯性気候ですが、有名なブルーマウンテンをはじめとする山の多い国土のため、標高によって気温の差が大きくなります。平野部の平均気温は年間を通じて25から33℃と暑い日が続きますが、11月から2月の朝晩は比較的しのぎやすくなります。降水量は年間740mm程度で、5月から11月初めまでが雨期にあたりますが、年間を通して極端に降水量の少ない年もあり、数か月に及ぶ渇水状態が続き、断水となって衛生状態が悪くなることがあります。また停電が断続的に起こることもあり、冷蔵保存状態に問題が発生し、冷凍食品を始め食品衛生上の問題が生じることが多い環境です。

 旅行中の個人安全対策(十分な補償額の海外旅行傷害保険などへの加入、過度な不摂生や危険な行動を避けるなど)は非常に重要です。キングストンを中心として殺人、強盗等の凶悪事件が多発傾向にありますので、犯罪に巻き込まれやすい行動を慎むなど事件、事故に巻き込まれないよう十分注意してください。

 途上国に特有の感染症などの病気は、滞在される地域や時期によって発生状況が上下します。渡航される方は、出発の4から8週間前までに専門医(トラベル・クリニックなど)を受診し、予防接種に加え、渡航地域の感染症の発生状況などの情報を収集しておかれるようにお願いします。当地の医療環境は、一定の質は保たれていると思われますが、先進国と同じような医療技術と医療体制が整っている訳ではありません。交通事故や重篤な疾病の場合は、治療のため国外に緊急移送となる可能性もありますので、十分な補償額の海外旅行傷害保険等に加入しておくことを強くお勧めします。

5 かかり易い病気・怪我

(1)熱中症、脱水症

 年間を通して直射日光が強く5から11月の雨期には高温多湿となるので脱水、熱中症、日焼けに注意が必要です。帽子をかぶる、日陰に入って休む、必要な水分、電解質を十分に取るなどの予防策をとることが重要となります。日常生活範囲内でも熱中症は発生します。高齢者、基礎疾患のある方は特にご注意ください。

(2)旅行者下痢症・食中毒

 渡航中もしくは渡航後2週間以内に発症する下痢症のことを旅行者下痢症と呼びます。原因菌は細菌やウイルスなど色々ですが、カリブ諸国では料理の香辛料や水の硬度など非感染性の原因の事もあります。原因菌で最も多いとされているのは毒素原性大腸菌で、不衛生な調理環境が感染を誘発します。不衛生な状態で皮がむかれた果実や十分加熱調理されていない野菜などは避け、低温殺菌されていない牛乳やそれを用いた乳製品、アイスクリームなども避けた方が無難です。また、酢漬けの魚も含め未調理や十分加熱調理されていない肉、魚の摂取も控えるようお願いします。生水、氷などの摂取はさけて、濾過されて化学的殺菌処理の行われたものか、一度沸騰させた水、または、ペットボトルの水を飲用にご利用下さい。

 シガテラ毒によるシガテラ中毒は、熱帯及び亜熱帯の主としてサンゴ礁の周囲に生息する、シガテラ毒素に汚染された魚を摂取することによって起こる食中毒の総称で、世界中で毎年約2万人もの人が中毒を起こしています。カリブ諸国でも(特にバラクーダなどの大型魚)魚食後、カリブ海型シガトキシンという毒素による食中毒を起こすことが報告されています。腹痛、下痢などの食中毒症状に加え、ドライアイスセンセーションと呼ばれる口周囲や手足のしびれが発生することが特徴的です。

(3)蚊が媒介する感染症

 近年の地球温暖化の影響による異例なほどの高温多湿な気候を背景に、デング熱を始めとする蚊媒介疾患は、カリブ諸国、中南米で近年爆発的に増加しています。カリブ諸国、中南米では、2024年の5月までに、2022年と2023年に報告された件数の合計を上回るデング熱症例が報告されており今後も流行が周期的に続くと考えられています。

 ジャマイカにおける蚊媒介疾患は、デング熱、チクングニア熱、ジカ熱などがあり、なかでもデング熱は渡航者も罹患するリスクが高く注意が必要です。ジャマイカにおけるデング熱は、2019年に比較的大きな流行(7,555人)があり、その後しばらく流行はありませんでしたが、2023年に再び流行(7,800人)しています。デング熱は、ネッタイシマカ及びヒトスジシマカによって媒介される熱性ウイルス疾患で、ほとんどの人は重症化することなく治りますが、一部で出血傾向を伴うショック状態になる場合があります。発生には地域性、季節性の偏りがあり、ハリケーンや降雨量にも影響されますので、渡航される場合は事前に発生状況などの情報を入手していただくようお願いします。有効な治療薬はなく、発病時は対症療法のみです。発熱に対しては、アスピリンやイブプロフェンの利用は好ましくなく(出血を助長するため)、アセトアミノフェン(タイレノールやパナドール)を用います。有効な予防薬はないため、蚊に刺されないようにすることが最も大切です。

 チクングニア熱は、デング熱同様に蚊によって媒介される熱性疾患です。急な発熱と関節痛があり症状はデング熱と類似しています。2013年末よりカリブ海諸国で流行するようになりました。ジャマイカでも2014年7月に初めての患者が報告され、同年の感染者は疑い例を含めると1,500人を超える患者が出ましたが、それ以後、流行は起きていません。ジカウイルス感染症は、2016年にはカリブ海諸国でも流行するようになりました。ジャマイカでは2016年に6,974人の感染が報告されました。その後流行は起きていません。チクングニア熱、ジカ熱は、いずれも確定診断に至らず軽快する事もあり、正確な感染者の数字が出にくい疾患でもあります。ジャマイカ滞在中は、地域によっては同疾患に罹患するリスクがあることをご承知下さい。マラリアは2006から2007年382例の熱帯熱マラリアの小流行がありましたが、その際媒介蚊の制圧プロジェクト等が実施されたため、それ以後流行は起こっていません。現在、国内で確認されたマラリア症例は、すべて輸入例と考えられています。

 蚊媒介疾患の最大の予防は、蚊に刺されない工夫です。屋外に出るときは虫よけスプレーの使用やできる限り長袖、長ズボンを着用すること、蚊の活動が活発な日の出や夕暮れ時の外出を避けること、居住空間近辺の蚊の発生しそうな下水、水回りの清掃など、日常の生活で常に防蚊対策を講じることが重要となります。

(4)海洋生物による刺咬傷・海洋スポーツによる外傷

 棘皮動物(イソギンチャク)の幼生、クラゲによる刺傷(サーフィン、海上での遊技、シュノーケリング、海岸線での遊泳中など)は激しい痛みを伴った広範な皮膚炎を起こします。場合によってはショック状態になる可能性もあり十分注意が必要です。その他珊瑚、鮫、ウニなどによる受傷が報告されています。また決められた遊泳区域外、見張りのいない海岸での海水浴は水深や潮の流れが不明なため大変危険です。

(5)HIV感染/エイズ

 2023年の新規HIV感染者数は1,200人で、1997年のピークから漸減傾向にありますが、HIV感染者総数は約26,000人(全人口の0.9%)と推定されており、高い陽性率を示す国の一つになっています。日頃から節度のある行動をし、十分な安全対策を講じてください。

6 健康上心がけること

  1. 屋外で活動する際には、脱水症や熱中症にならないように十分な水分・電解質の補給し、直射日光に対する防護(帽子、長袖、サングラス・日焼け止めクリームを使用するなど)に気をつけてください。木陰や涼しい場所で休養することも大切です。地方、森林その他の自然環境地域を訪問する際には、虫に刺されないように防御対策(長袖長ズボンを着用し虫除けスプレー・クリームを使用するなど)を講じて下さい。
  2. 野生の小動物に遭遇した場合、狂犬病や特に鳥の死骸の場合は鳥インフルエンザなどの感染の恐れがありますので、決して触らないようにしてください。
  3. 当地への旅行を予定されている方は、事前にトラベルクリニック等を受診し、予防接種に加え、デング熱などの最新の感染状況を入手して下さい。海外旅行傷害保険などに加入して高額医療費が発生する事態に備えて置かれることを推奨します。基礎疾患のある方は、事前にかかりつけの医師、専門医などを受診し処方箋や病気の状態、経過などを英訳した診断書などを書いてもらい、何かあった場合に備えて旅行中携帯してください。

7 予防接種(ワクチン接種機関含む)

(1)赴任者に必要な予防接種

 入国に際して要件とされる予防接種はありません。赴任者には以下の予防接種が推奨されます。

 A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、破傷風(追加接種)

 ジャマイカにおける黄熱の症例報告はありませんが、黄熱流行地域からジャマイカへの入国者、あるいは黄熱流行地域の空港にトランジットで滞在しただけでも、それが12時間以上であれば、黄熱の予防接種が義務付けられています(1歳以下の乳児には接種の必要はありません)。

(2)現地の小児定期予防接種一覧(2024年)

  初回 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
BCG(結核ワクチン) 出生時          
B型肝炎 出生時          
ポリオ(OPV、IPV) 6週 3か月 6か月 18か月 4から6歳  
5種混合(ジフテリア・破傷風・百日咳・インフルエンザ菌b型・B型肝炎) 6週 3か月 6か月      
3種混合(ジフテリア・破傷風・百日咳) 6週 3か月 6か月 18か月 4から6歳  
2種混合(ジフテリア・破傷風) 6週 3か月 6か月 18か月 4から6歳 11から12歳
MMR(麻疹・おたふく風邪・風疹) 12か月 18か月        
HPV(ヒトパピローマウイルス)、女児のみ 9から14歳          

 ポリオの予防接種は5回行います。生後6週時と6か月時の接種は注射型の不活化ワクチン(IPV)、その他3回の接種は経口型の生ワクチン(OPV)になります。

 黄熱ワクチンは、生後12か月を過ぎて以降黄熱流行地域へ行く場合に接種が必要です。

 国公立病院では外国人であっても予防接種は無料です。

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 ジャマイカ教育省によると、麻疹・おたふく風邪・風疹・ジフテリア・百日咳・ポリオ・結核・破傷風・インフルエンザ桿菌b型・B型肝炎に対する予防接種が行われていることの証明書ないしImmunization Cardの提出が必要です。ただし変更される場合がありますので、ホームページなどで最新の情報を確認するようにして下さい。

8 病気になった場合(医療機関等)

(首都)キングストン

(1)University Hospital of the West Indies(西インド諸島大学病院)
所在地:Mona, Kingston 7
電話:927-1621から9
ホームページ:University Hospital of the West Indies(英語)別ウィンドウで開く
大学付属総合病院。比較的医療設備が整っています。公立総合病院ですがPrivateセクター(Tony Thwaites Wing)が併設されおり、外国人の受診環境が整っています。24時間救急外来受付。
(2)Andrews Memorial Hospital(私立)
所在地:27 Hope Road, Kingston 10
電話:926-7401から3または618-1810
ホームページ:Andrews Memorial Hospital(英語)別ウィンドウで開く
中規模総合病院。キングストンの中心部にあります。365日24時間救急外来受付。病棟、病室の照度はやや低いですが清潔感はあります。近年カテーテルインターベンションを実施できる設備が整うなど、循環器系に強い施設です。
(3)Medical Associates Hospital(私立)
所在地:18 Tangerine Place, Kingston 10
電話:926-1400から4
24時間救急外来受付。受診費用は上記の病院と比べ、全般的に安価です。
フェィスブック:Medical Associates Hospital(英語)別ウィンドウで開く

 ジャマイカの病院においては、緊急で受診した場合や、入院治療を行う条件として、多額の現金による前払い保証金の支払いが一般的(例:胃腸炎による4日間の入院、入院保証金日本円で約50万円)です。海外旅行保険に加入していても一度は立て替える必要があり、場合によってはクレジットカードの支払限度額以上の保証金が入院時に必要となるケースも想定されますので、渡航前に支払限度額の変更をご検討下さい。

10 一口メモ(もしもの時の医療英語)

 「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照願います。

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