世界の医療事情

令和6年10月1日

1 国名・都市名(国際電話番号)

 パラグアイ共和国(エンカルナシオン)(国際電話番号595)

2 公館の住所・電話番号

在エンカルナシオン領事事務所(毎週土曜日、日曜日休館)
La Oficina del Cónsul del Japón en Encarnación
ホームページ:エンカルナシオン事務所別ウィンドウで開く
住所:Calle Tomás Romero Pereira No.631 esq. Lomas Valentinas, Encarnación, Paraguay
電話:(071)-202-287、(071)-202-288

(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。

3 医務官駐在公館ではありません。

 在パラグアイ日本国大使館医務官が担当

4 衛生・医療事情一般

 パラナ河沿いにあるイタプア県の県都エンカルナシオンは、夏は蒸し暑くなりますが、首都アスンシオンよりは若干気温が低く、過ごしやすい環境です。一方で、インフラ整備は未だ不十分な所もあり、大雨が降ると道路が泥水や汚水で溢れ、しばしば停電も起こります。都市中心部の上下水道は完備されていますが、飲用には水道水を煮沸するかミネラルウォーターの購入をお勧めします。また、一般的なレストランで調理された食品は、ほぼ問題ありませんが、路上や屋台で売られている食品には不衛生な物もあるので注意してください。

 医療施設のほとんどが都市部に集中しており、辺縁地域では、診療を受けるために車で数時間移動しなければならないところも少なくありません。公立医療機関は、設備が老朽化していたり、予約が容易に取れなかったりする場合が多く、かつ、医薬品不足のため、時には自ら医薬品を調達する必要が生じるなど、日本における医療イメージとは異なることもあります。このような理由から、在留邦人や旅行者は、比較的医療設備の整った私立病院を利用する機会が多くなります。現地の私立病院を受診する際には、診察や検査のたびに現金を前払いするか、支払い能力があることを示す保険加入証またはクレジットカードなどを提示しないと診療が始まらないこともあります。また、医師の多くは、複数の医療機関(公立や私立の病院、個人診療所など)を掛け持ちで診療していることが多いため、事前に診察場所と時間を確認し、予約しておく必要があるので注意してください。特殊な病気や重症化した場合は、設備が整った近隣諸国への移送が必要となる場合があり、緊急移送費用は非常に高額になるため、相当額の補償がある海外旅行傷害保険に加入しておくことをお勧めします。日本語が堪能な日系パラグアイ人医師が在籍している医療機関が複数あります。中には、日本への留学経験がある医師も存在し、かなり日本に近いイメージで受診できることもあります。

 重症かつ緊急時の公共救急車SEME(141)は無料ですが、到着まで1時間以上を要することもあります。民間搬送会社(SASA:0992-8236-56、SIS:071-206-291または、0985-400-530)は有料ですが、公共救急車と比べるとスムーズな搬送が期待できるのでご検討ください。しかし、それでも到着まで30分以上かかることがあり、タクシーや配車サービスを利用し、自力で救急外来を受診する方が速いことも多いです。

5 かかり易い病気・怪我

 種々の感染症がしばしば流行し、駆逐が困難な風土病もあります。

(1)旅行者下痢症

 感染性下痢症が珍しくなく、細菌性赤痢やA型肝炎などの発生もしばしば報じられています。生水は飲まない、衛生的に調理され、かつ適切な保管状態の食品のみ摂取する等の注意をしてください。渡航前には、A型肝炎ワクチンの予防接種をお勧めします。

(2)蚊媒介感染症

 一年を通して感染リスクがあり、特に夏季に国内全地域で流行します。予防には「防蚊対策」がとても重要です。急な高熱など蚊媒介感染症の発症が疑われた際は、必ず医療機関を受診してください。また、近年は患者数が著しい増加傾向にあり、渡航前には最新情報の入手に努めてください。

ア デング熱

 ネッタイシマカまたはヒトスジシマカによって媒介される、デングウイルスが原因です。2から14日(多くは3から7日)の潜伏期間後、突然の高熱(38から40℃)が5から7日続き、激しい頭痛、眼窩痛、関節痛、筋肉痛などを伴うことが多いです。発症から3から4日後に薄いピンク色の発疹が出現することも特徴です。多くの場合、これらの症状は1週間程度で回復しますが、一部は出血傾向を示し、デング出血熱として重症化してゆきます。適切な治療が行われないと死に至る場合もありますので、感染が疑われた時には、自己判断のみで解熱剤を内服するなどの行動は避け、必ず医療機関を受診してください。

イ チクングニア熱

 ネッタイシマカまたはヒトスジシマカによって媒介される、チクングニアウイルスが原因です。3から12日(多くは3から7日)の潜伏期間後、高熱とともに多発関節痛が出現し、発疹もみられます。症状はデング熱と似通っており、関節痛は長期間遷延することもあります。

ウ ジカウイルス感染症

 ネッタイシマカまたはヒトスジシマカによって媒介される、ジカウイルスが原因です。症状が全く無い症例も多く、輸血や性交渉でも感染する危険があります。2から12日(多くは2から7日)の潜伏期間後、初発症状から発疹や結膜炎症状などが出現し、発熱は微熱程度のことが多いとされます。頭痛や吐き気、下痢などを呈することもあります。感染後しばらくしてギラン・バレー症候群(手足が麻痺する病気)を併発したり、妊婦が感染すると、胎児が小頭症という奇形を有する危険もあります。ジカウイルスは、精液中に長期に渉って生存する可能性があるので、流行地域への滞在中および滞在後には、一定期間の避妊が勧められています。

エ 黄熱病

 ネッタイシマカなどによって媒介される黄熱ウイルスが原因です。3から6日の潜伏期間後、突然の高熱と悪寒、頭痛、筋肉痛、吐き気などが出現します。重症化してくると、黄疸や出血、タンパク尿などを呈する致死率の高い感染症です。通常、黄熱ウイルスは森林の中に生息する野生脊椎動物(主にサル)の集団の中に存続しています。感染経路には、ヒトが密林地帯に入り込んでウイルスを持つ蚊に刺されることで感染する「森林型」と、感染したヒトから蚊を介して人口集中域で拡がる「都市型」があります。2008年の流行は、サン・ペドロ県の労働者が密林地帯で感染した「森林型」から始まり、その後「都市型」へ移行したと考えられています。予防接種が有効です。

(3)シャーガス病

 原虫(クルーズトリパノソーマ)が原因です。サシガメという2cm大の昆虫に刺されたり、その排泄物を口にしたりすることにより感染します。急性期は無症状か皮膚の変色や浮腫等ですが、急性心筋炎などを合併すると、死亡することもあります。更に、感染した25%は、数年後に慢性期症状(心疾患、消化器疾患、神経疾患等)を発症します。サシガメは石や漆喰の壁の割れ目に潜み、夜間に吸血活動をするので、地方の民家や古いホテルなどに宿泊する場合は要注意です。感染すると、駆虫治療が必要となります。

(4)狂犬病

 原因となる狂犬病ウイルスは、犬だけではなくコウモリを含む全ての哺乳類に感染します。潜伏期間は1から3か月、長い場合は1から2年後に発症した例もあります。効果的な治療法は無く、発症するとほぼ100%死に至ります。パラグアイでは2005年以降にヒトが発症した報告はありませんが、牛や犬の発症は確認されているため、注意が必要です。野良犬や野良猫、アライグマ、コウモリ、キツネ、サルなどの野生動物へ、むやみに近付いて噛まれないよう注意してください。ワクチン接種方法には、暴露前免疫(咬まれる前のワクチン接種)と暴露後免疫(咬まれた後のワクチン接種)の2種類があります。渡航前には、暴露前免疫をお勧めしますが、接種を完了していても、深い咬傷を受けた場合には、暴露後免疫も必要となります。もしも哺乳類に噛まれた時は、いずれにせよ、直ちに水と石けんでよく洗浄し、速やかに最寄り医療機関にて医師の判断を仰いでください。

(5)リーシュマニア

 サシチョウバエによって媒介されるリーシュマニア原虫が原因です。人獣共通感染症の1つで、蚊の1/3程の大きさのサシチョウバエに吸血されることによって感染します。パラグアイでは皮膚リーシュマニア症が多く、感染後、数か月から数年して顔や手足などの皮膚にクレーター状の潰瘍を生じます。地方の原生林付近や乾燥地帯で多く発生します。

(6)その他

 サソリや蜘蛛、蛇などの有毒小動物にも注意が必要です。パラグアイのサソリは刺されても死に至ることは滅多にありませんが、激痛が1から2日持続します。

6 健康上心がけること

(1)食中毒

 下水道設備が不十分な地域は、感染性下痢症や寄生虫症に容易に感染しやすい環境と言えます。日頃から手洗いを励行し、非衛生な水や食品は避け、十分調理した食品を摂取しましょう。また、出来るだけ上下水道が確保された宿泊施設を利用してください。

(2)防蚊対策

 蚊媒介感染症はヒトからヒトへ直接感染することはありませんが、患者から蚊を介し感染する危険性があります。日頃から長袖シャツと長ズボンの着用を心がけ、肌の露出を避けるとともに、露出部分には虫除け剤(DEET、イカリジン、ピカリジンなどの有効成分を含むもの)を、数時間おきに塗布するなど、蚊に刺されない対策が大切です。蚊の駆除も重要で、日頃からボウフラの温床となる水たまり(タイヤ、バケツ、植物プランター、花瓶、ゴミ箱など)を作らないよう努めてください。また、蚊の成虫は、室内の暗く涼しい場所やクローゼットの中、ベッドの下、カーテンの後ろ、浴室などに潜んでいることが多いので、ホテルに宿泊する時などは、注意深く観察し、駆除を心がけてください。

(3)熱中症

 夏は非常に暑く湿度も高いので、定期的な水分補充をしないと容易に脱水状態となります。こまめに水分を摂り、日中は炎天下を避け、なるべく屋内で涼しく過ごしましょう。

7 予防接種(ワクチン接種機関含む)

(1)赴任者に必要な予防接種

 日本からの入国時に必須の予防接種はありませんが、ブラジル、ボリビア、ペルー、コロンビア、フランス領ギアナ、アフリカ諸国(カメルーン、チャド、コンゴ、コンゴ民主共和国、ギニア、ニジェール、ナイジェリア、南スーダン)(令和6年8月時点)からパラグアイに入国する1歳から59歳の者には、黄熱病予防接種証明書(イエローカード)の提示が求められます(接種日から10日以上経過していることが必要)。健康上の理由で予防接種を受けることができない方は、医師の診断書等の書面を提示する必要があり、この場合、当局より入国後6日間の健康観察に服することを求められます。また、これらの国の空港をトランジットで利用するだけの旅行者(乗り継ぎ時に国際空港制限区域内のみを利用する者)はこの限りではありませんが、ごく短時間であっても入国した場合には、搭乗や出入国手続きに支障が生じる可能性があります。当地では国際線の遅延や欠航はしばしば発生しており、旅程になくともこれらの国へ入国せざるを得ない事態も想定されます。このような理由から、渡航に際し、予め黄熱病予防接種を受けておくこともご検討ください。これらの規制内容は、今後も変更される可能性が十分あります。渡航前には、必ずご自身で最新情報の収集に努めてください。長期間の滞在を予定される場合は、破傷風、狂犬病、A型肝炎、B型肝炎、黄熱病の予防接種をお勧めします。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

現地の小児定期予防接種一覧
  初回 2回目 3回目 4回目 5回目
BCG 生直後        
B型肝炎(HB) 生直後        
6種混合(DTP+HB+Hib+不活化ポリオ) 2か月 4か月 6か月 18か月  
3種混合(DTP) 4歳        
3種混合(Tdap) 9から10歳        
肺炎球菌 2か月 4か月 12か月    
ロタウイルス 2か月 4か月      
不活化ポリオ(IPV) 4歳        
MMR 12か月 18か月      
黄熱 12か月        
水痘 15か月        
A型肝炎 15か月        
季節性インフルエンザ 6か月から35か月まで毎年
ヒトパピローマ(HPV) 思春期男女1回

(注)DTP:ジフテリア+破傷風+百日咳
Hib:インフルエンザ菌b型
MMR:ムンプス+麻疹+風疹

(3)小児が現地校に入学・入園する際に、必要な予防接種・接種証明

 現地公立校およびアスンシオン日本人学校に関しては、必要な書類はありません。民間教育機関やインタースクールに関しては、予防接種歴を書類に記載する場合があり、個別にご確認ください。

8 病気になった場合(医療機関等)

エンカルナシオン

(1)Sanatorio la Trinidad
Facebook:Sanatorio La Trinidad(スペイン語)別ウィンドウで開く
所在地:Av. Caballero 248 entre Artigas y Juan L. Mallorquín, Encarnación
電話:(071)-203-222
概要:22017年に開院した私立総合病院。病床数42床(ICUは6床)。内科、外科、小児科、産婦人科、整形外科、形成外科、耳鼻咽喉科などほぼ全診療科が揃い、集中治療室、手術室、新生児室の他、CTなどの医療設備も整っています。また、2025年には別館が開設され、さらに専門分野が拡充される予定です。緊急は24時間対応可。診療はスペイン語が主ですが、日系人内科医(Dr. Mitsui)が常勤しており、月曜日から金曜日(8時から12時、16時から18時30分)は日本語での受診が可能です。
(2)Clínica Tajy(タジュ診療所)
ホームページ:Clínica Tajy(スペイン語)別ウィンドウで開く
所在地:Gral. Artigas 1722, Encarnación
電話:(071)-203-000
概要:市中心街にある私立総合病院。病床数24床(病室数20)。内科、外科、小児科、産婦人科、泌尿器科、耳鼻咽喉科等があり、集中治療室、手術室の他、CTなどの医療機器も備えています。救急は24時間対応可。診療はスペイン語が主です。
(3)KUMAGAI-Especialidades Odontológicas
所在地:General. Artigas, 1610 c/ 25 de Mayo, Encarnación
電話:(071)-203-771、(0985)-713-456
概要:う歯治療の他に、矯正治療や義歯など幅広く対応しています。日系人歯科医による日本語での受診が可能です。診療時間は事前にご確認ください。要電話予約。
(4)Laboratorio Biosur
所在地:Juan Mallorquín 1629 c/ 25 de mayo, Encarnación
電話:(071)-201-413
概要:エンカルナシオン市内にある小児科のクリニック。営業時間は月から金曜日の6時30分から19時、土曜日の6時30分から13時で、日系小児科医(Dra. Nakamura)による日本語の受診が可能です。

ピラポ

(1)Sanatorio Pirapó(ピラポ診療所)
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所在地:Avda. Japón e/ Villarrica y Concepción, Pirapó, Itapúa
電話:(0768)-245-536、(0985)-119-970
概要:エンカルナシオンから80km離れたピラポ日本人移住地にて、ピラポ日本人会が運営する小規模な私立診療所です。病床数10床(病室7)。内科と外科、小児科、産婦人科の他に、眼科、歯科などは定期巡回される医師によって診察が行われています。診療時間、予約等は事前にご確認ください。日本語が可能な日系人医療スタッフが在籍しています。支払いは現金のみです。

オエナウ

(1)Sanatorio Adventista de Hohenau
ホームページ:http://sah.org.py/web/別ウィンドウで開く
所在地:Ruta VI Km. 38.5, Hohenau, Itapúa
電話:(0775)-232-235
概要:オエナウ・ドイツ人移住地内にある総合病院。病床数24床。内科、外科、小児科、産婦人科、脳外科、眼科、耳鼻科など。検査室、手術室の他、CTなどの機器を備えています。緊急時は24時間対応で、診療はスペイン語が主です。

ラパス

(1)Unidad de Salud de la Familia La Paz(USF La Paz)
所在地:Calle Inmigrantes del Japón, La Paz, Itapúa
電話:(0763)-20-005
概要:日本人移住地ラパスにあり、旧ラパス日本人会運営診療所から、2017年に国立USFに移行した小規模診療所です。内科、産婦人科、歯科があり、外来診療のみです。緊急時は24時間対応で、診療はスペイン語が主ですが、水曜日から金曜日の7時から15時には、日系産婦人科医(Dr. Goto)による日本語での受診も可能です。

10 一口メモ(もしもの時のスペイン語)

 「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(スペイン語)を参照願います。

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