世界の医療事情

エルサルバドル

平成28年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 エルサルバドル共和国(サンサルバドル)(国際電話国番号503)

2 公館の住所・電話番号

在エルサルバドル日本国大使館 (毎週土日休館)
住所:89 Av. Norte y Calle El Mirador, Colonia Escalón, Nivel 6 Torre 1, World Trade Center, San Salvador
電話:2528-1111
ホームページ:http://www.sv.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

(注)土日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので,ご覧ください。

3 医務官駐在公館ではありません

 在ホンジュラス日本国大使館 医務官が担当

4 衛生・医療事情一般

 エルサルバドルは北半球低緯度地域に位置し,はっきりした雨季と乾季に分かれる熱帯気候です。気候は高度によって変化し,太平洋側の低地は一様に熱く,首都サンサルバドルを含む中央高原と山地は比較的過ごしやすい気候です。首都サンサルバドルでは年間平均気温が23.3℃,年間降水量は約1,800ミリメートルです。雨季は5月から10月までであり,年間降水量の94%はこの時期に記録されます。雨季は中央高原であっても湿度が高く,不快な日々が続くことも少なくありません。

 衛生事情は良好とはいえず,公衆衛生知識の浸透,啓蒙も十分ではなく,家庭,食料品販売店,レストラン等の食品及び衛生管理も不十分です。しかし,サンサルバドル市内にはゴミが散乱しているということはありません。

 水道水は雑菌および鉄錆の混入が危惧されるため,飲用には適しません。飲料水としては市販のミネラルウオーターを使用することをお勧めします。この際必ずキャップが未開封で漏れがないことを確認してください。

 2012~2014年の公式統計によれば,エルサルバドルの平均寿命は72歳,平均健康寿命は61歳,新生児死亡率6(対1,000出生),乳児死亡率14(対1,000出生),周産期死亡率110(対10万分娩)です。

 国公立病院は,慢性的な職員不足,医療機器の老朽化及び故障,医薬品払底等により,世界標準的医療を提供しているとは言い難く,私立病院がある程度の疾病,外傷に対応しておりますが,全幅の信頼をおけるまでには至らず,特に輸血を含めた観血的治療は避けるべきで,そのような症例は先進国に移送することをお勧めします。

 私立病院の救急部は24時間予約不要で受診可能ですが,受付時に医療費支払い保証を求められ,確認が取れないと医療行為を受けられないケースもありますので,受診の際には多めの現金,クレジットカード等支払い保証となるものを必ず持参してください。

 医療費自体は日本と同程度ですが,窓口支払い額は実費払いとなります。要するに日本でいうところの医療保険適応外の実費払い程度の支払い額となること,疾病によっては先進国へ移送しての治療が望ましいことをふまえ,高額補償の海外旅行傷害保険等に加入されることを強くお勧めします。

5 かかり易い病気・怪我

(1)感染性胃腸炎

 下痢を主症状とし,嘔気,嘔吐,発熱,腹痛等の症状を呈する感染性疾患で,エルサルバドル国内で最も患者数の多い疾患であり,年間届け出患者数だけで20万人近くに達します。その原因微生物は細菌,ウイルス,原虫を含む寄生虫と多岐にわたりますが,食品衛生に関する知識,食料品を販売する販売員の清潔概念,食料品店の商品管理・衛生管理などの問題も多く,家庭での調理には細心の注意が必要です。時に出血性胃腸炎の病態を呈し重篤化する症例もあります。

 外食の際には,十分に加熱された食品を食すること,飲料水はミネラルウオーターを飲み,氷は避けるなどの一般的注意を怠らないようにしてください。家庭での調理の際にも葉物野菜を中心に十分に洗浄し,虫体や虫卵の付着がないか確認を怠らないようにしてください。調理前,調理済みにかかわらず食品を保存する場合の温度管理にも注意が必要です。

(2)急性呼吸器感染症

 いわゆる「風邪,上気道炎」に代表される疾患ですが,高原地帯では気温の日内変動が大きく,朝方の気温の低下が激しいことなどで急性気管支炎を呈する患者が乾季に多発する傾向にあります。同時期には小児の喘息様気管支炎も多くみられます。成人では急性症状軽快後の遷延性咳嗽も多く認めます。

 原因微生物は特定されていませんが,臨床的にはマクロライド系抗生物質が奏効することが多い印象です。手洗い,うがい等の標準予防策励行が基本となります。

(3)デング熱(デング出血熱を含む)

 蚊が媒介する各種感染性疾患の中で最も患者数の多い疾患です。原因微生物はデングウイルスで,これを媒介する蚊は,ネッタイシマカ,ヒトスジシマカ等です。蚊に刺されて2~7日の潜伏期後,高熱で発症し,二峰性発熱,筋肉痛,関節痛,皮疹等の症状を呈し,およそ発症後1週間程度で回復に向かい通常は後遺症なく回復しますが,一部の患者で皮膚粘膜からの出血,肝腫脹,血圧低下等を伴う重篤なデング出血熱となります。

 デング熱に対する特異的治療薬は存在しないため,対症療法にて治療します。またワクチンも存在しないため,皮膚の露出を避ける,虫よけスプレーの使用,蚊帳,蚊取り線香,防虫剤の使用,網戸の使用等の防蚊対策が基本です。

 エルサルバドルでの届け出患者数は,流行状況により変動が大きく,年間3,000~2万人となっています。2012年は1月から7月までの7か月で,4,107名です。

(4)マラリア

 蚊が媒介する感染性疾患です。原因微生物は寄生虫に属するマラリア原虫で,それを媒介するのは夜間活動性のハマダラカです。蚊に刺されて7~21日の潜伏期後,突然の高熱で発症します。4種類のマラリア亜系それぞれで発熱周期が異なることも特徴です。その他の症状は悪寒,戦慄,頭痛,全身倦怠感等です。エルサルバドルのマラリアは,ほとんどが三日熱マラリアで,ごく稀に熱帯熱マラリアが発生しています,2012年8月現在薬剤耐性は報告されておらず,熱帯熱マラリアを含めて治療薬は,クロロキンが第一選択薬になっています。根治療法はプリマキンとなっています。

 年間届け出患者数は,100名弱となっており,首都サンサルバドルでは患者の発生をみていません。ワクチンは存在しませんので,(3)同様の防蚊対策が基本になります。

(5)各種外傷(交通事故,銃創等)

 運転マナーが悪く,運転者・歩行者どちらにおいても注意が必要です。日本人が巻き込まれる事故も実際に発生しております。

 2016年現在,世界ワースト1の殺人事件発生率となっており,その際の凶器はほとんどが銃です。従ってエルサルバドル国内では銃器による傷害が多いです。

 外傷症例では,緊急輸血が必要になることもありますので,エルサルバドルでは是非とも避けなければならない疾患ともいえます。安全第一の運転,ドアにロックをかける,窓を開けて走らない,夜間の外出は車であっても避ける,徒歩での外出は避ける,過度な装飾品は身につけない,携帯電話は見えない場所に所持する等に注意してください。

(6)リーシュマニア症

 サシチョウバエが媒介する感染性疾患です。原因微生物は,リーシュマニアという原虫です。サシチョウバエの吸血後,1週間~数ヵ月して原因不明の発熱と全身倦怠感で発症します。主病変部位により,内蔵型,皮膚型,皮膚粘膜型に分類されます。治療は,アンチモン製剤,アムソビーム,インパビド等を使用しますが,無効例や副作用による治療不能例もあります。ワクチンは存在しませんので,防蚊対策に準じた予防策が基本です。

(7)シャーガス病(アメリカトリパノソーマ)

 吸血性昆虫のサシガメが媒介する感染性疾患です。病原体はトリパノソーマ・クルジという原虫ですが輸血により感染することもあります。

 トリパノソーマ・クルジはサシガメの糞便中に排泄され,それが皮膚・粘膜の傷口より体内に侵入することにより感染します。トリパノソーマ・クルジの侵入後数時間後に局所に腫瘤が形成され,その後1~3週間後の潜伏期を経て眼瞼周囲の腫れ,発熱,リンパ節腫脹で発症します。慢性期に移行すると,肝臓,心臓,食道等に様々な症状が出現し,死にいたることが多い疾患です。治療には,ニフルチモックスを使用しますが,無効例も少なくありません。ワクチンは存在せず,防虫対策が基本になります。

(8)チクングンニア熱

 2014年,国内発生が確認されました。デング熱と同様,ネッタイシマカやヒトスジシマカなどの蚊の媒介によって感染します。

 2日から2週間の潜伏期の後,40℃の高熱,斑状丘疹,関節痛が出現します。その他,頭痛や結膜炎などを伴うこともあるようです。

 感染予防は蚊の接触を避けることです。ネッタイシマカやヒトスジシマカはデング熱と同じく昼行性であり,また通常は屋外で吸血することから,昆虫忌避剤塗布,肌を露出しない服装の着用などにより予防が可能です。

(9)ジカウイルス感染症

 2015年末より,国内発生を認めています。デング熱やチクングンニア熱と同様,ネッタイシマカやヒトスジシマカにより媒介されます。

 臨床症状は,デング熱やチクングンニア熱に比べ軽症例が多いようで,38℃以下の発熱でおさまることがことが多いようです。ただし,ギランバレー症候群を発症するリスクが他のウイルス感染症に比べ高いと言われています。さらに,蚊を媒介して感染する以外に,性行為での感染も認められており,妊娠中に本症に罹患しますと,小頭症等の胎児奇形が報告されています。よって,当国滞在後は2ヶ月間(発症した場合は半年ほど)の避妊を推奨いたします。

6 健康上心がける事

(1)急性呼吸器感染症,感染性胃腸炎が疫学的に高頻度の疾患となっているので,手洗い・うがいを中心とした標準予防策の徹底を心がけて下さい。使用人(メイド等)を雇う場合には,食品衛生,公衆衛生に関する教育が大切です。

(2)蚊を代表とする各種昆虫が媒介する感染性疾患に対して,長袖・長ズボンの着用にて肌の露出避ける,虫よけスプレーの使用,蚊帳の使用,蚊取り線香の使用,防虫剤の使用,網戸の設置等の防蚊対策を徹底してください。

(3)標高の高い地域でも,紫外線量は多いので,日焼けに対する注意として日焼け止めの使用,帽子の着用,サングラスの着用,肌の露出を避けるなどに注意してください。

(4)標高の高い地域では,気温がそれ程高くないので,脱水症に対する注意がおろそかになることがあります。紫外線量は多いので,想像以上に,体力を消耗し,水分を喪失します。特に屋外にて各種スポーツを行っている際には,水分補給を忘れないようにしてください。また疲労の蓄積も想像以上ですので,こまめに休息をとるように心がけてください。

(5)劣悪な治安状況の中で,外傷を回避するためにも,犯罪被害者にならないように,細心の注意を払ってください。また外傷原因として交通事故も多いので,運転時,歩行時にかかわらず,十分に注意してください。また外出の頻度が減り,屋内に閉じこもりがちになってしまいます。これが運動不足やストレスの原因になりますので,機会を見つけて体を動かすように心がけてください。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1)赴任者に必要な予防接種

  • 成人:赴任に際し法的に要求される予防接種はありません。接種をお勧めする予防接種としては,優先度の高い順に,A型肝炎,破傷風,B型肝炎,狂犬病,腸チフスです。
  • 小児:赴任に際し法的に要求される予防接種はありません。接種をお勧めする予防接種としては,優先度の高い順に,BCG, ポリオ,破傷風,ジフテリア,百日咳,麻疹,風疹,流行性耳下腺炎,インフルエンザ桿菌(Hib),ロタウイルス等です。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

現地の小児定期予防接種一覧
予防接種名 初回 2回目 3回目 4回目とそれ以降
BCG 出生時      
ポリオ(OPV)(注1) 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 15~18ヶ月,4歳
DPT(注2) 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 15~18ヶ月,5歳
インフルエンザ菌b型 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月  
B型肝炎 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月  
ロタウイルス 2ヶ月 4ヶ月    
MMR(注3) 12ヶ月 4歳    

(注1)2012年8月現在ポリオワクチンは経口ワクチンを使用

(注2)DPT:3種混合ワクチン(ジフテリア,破傷風,百日咳)

(注3)MMR:麻疹,流行性耳下腺炎,風疹

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 統一された規則は存在しません。同一校であっても要求されたり,必要なかったりとその都度対応が異なりますので,その度ごとに学校側に確認することが必要です。

8 病気になった場合(医療機関等)

サンサルバドル

(1)Hospital de La Mujer(オスピタル デ ラ ムヘール)
所在地:81 Av. Sur y Cl. Juan Jose Cañas, Col. Escalón, San Salvador
電話:2555-1200
概要:病院名の通り産科婦人科から開院した病院ですが,現在はほぼ全診療科を開設している総合病院です。各種診断機器の設置状況も比較的良好です。救急部は24時間対応で患者を受け入れています。一般診療は完全予約制で,病院としての公示診療時間というものはありません。日本語での受診は不可で,一部の医師は英語での診療が可能ですが,受付を含むコメディカルはスペイン語のみです。医療費の支払いは,診察前に支払い保証の確認があり,現金,クレジットカードでの支払いが可能です。サンサルバドル在住の邦人の利用頻度が最も多い病院で邦人の入院治療実績もあります。一般的な内科疾患における治療は問題ないと思われ,特に心臓血管系に関しては専門の循環器センターを併設しております。
(2)Hospital de Diagnostico Escalón(ホスピタル デ ディアグノスティコ エスカロン)
所在地:Paseo General Escalón y 99 Av. Norte, Villavicencio Plaza, Colonia Escalón, San Salvador
電話:2506-2000
概要:サンサルバドルの在留邦人の利用が多い総合病院です。各種診断機器の設置状況も良好です。救急部は24時間対応で患者を受け入れています。一般診療は完全予約制で,公示診療時間というものはありません。一部の医師は英語での診療が可能ですが,受付を含むコメディカルはスペイン語のみです。医療費の支払いは,診察前に支払い保証の確認があり,現金,クレジットカードでの支払いが可能です。一般的な内科的疾患における治療は問題ないと思われます。

9 その他の詳細情報入手先

(1)在エルサルバドル日本国大使館 ホームページ:
http://www.sv.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

10 現地語・一口メモ

 下記以外に「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療スペイン語)もご参照願います。

医学用語スペイン語訳

  • 医師: médico(メディコ)
  • 飲み薬: medecina(メディシーナ)
  • 注射: inyección(インジェクシオン)
  • 頭痛: cefalalgia(セファラルヒア)
  • 腹痛: dolor de vientre(ドロール デ ビエントレ)
  • 下痢: diarrea(ディアレア)
  • 発熱: fiebre(フィエブレ)
  • 嘔気: náusea(ナウセア)
  • 傷: herida(エリダ)
  • ワクチン: vacuna(バクナ)
  • デング熱: dengue(デンゲ)
  • 具合が悪い。: Me siento mal.(メ シエント マル)
  • 病院へ連れて行ってほしい。: Lleveme al hospital, por favor.(ジェベメ アル オスピタル ポルファボール)

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