世界の医療事情

令和6年10月1日

1 国名・都市名・国際電話番号

 キューバ共和国(国際電話番号53)

2 公館の住所・電話番号

在キューバ日本国大使館(毎週土曜日、日曜日休館)
住所:Embajada de Japón en Cuba, Centro de Negocios Miramar, Edificio No1, 5to. Piso, Ave. 3ra, Esq, a 80, Miramar, Playa, Habana, Cuba
電話:(7)-204-3355
ホームページ:在キューバ日本国大使館別ウィンドウで開く

(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。

4 衛生・医療事情

(1)はじめに

 キューバは共産党一党独裁の社会主義国家で、国民には食糧、生活物資の配給制度があり、医療、教育は基本的に無料で受けられます。

(2)衛生事情

 カリブ海最大の島国で、面積は日本の本州の半分ほど、人口は約1000万人です。亜熱帯性海洋気候で、年間平均気温は26度前後、湿度は80%と一年中かなり高く、6月から9月までは紫外線も強く、日中は日陰でも30度を越えます。季節は、雨季(5月から10月)と乾季(11月から4月)に分かれ、雨季の雷雨は短時間でも激しく、9月及び10月はハリケーンシーズンです。降水量に対応する排水設備が不十分で、水道管の老朽化も重なり、道路は容易に冠水します。上水の汚染が常態化しているため、住民に対して水道水は煮沸させて使用する様に指導が行われています。

(3)医療事情

 1959年の革命以降、予防医療に積極的に取り組み、母子保健や予防接種及び高齢者事業等による疾病予防を徹底し、乳児死亡率7.5、平均寿命77.7歳、医科大学13、病院149、ポリクリニック450等中南米諸国の中では医療先進国に位置づけられます。しかし我々が満足する医療サービスを受けられるとは限りません。キューバ国民の医療費は無料ですが、外国人は有料かつ受診可能な医療施設も限られています。ほとんどの医療従事者はスペイン語以外での意思疎通は困難で、日本語は不可です。歯科も受診可能ですが、治療に必要な材料の不足のため常時希望の治療は望めません。外貨獲得のために医療団の海外派遣を続けているため、国内は医師、特に専門医が不足しています。医薬品及び医療機材の不足や治療方法の限界などで、海外へ移送される場合もありますので、海外旅行傷害保険の加入は必須です。キューバ当局も外国人旅行者の海外旅行保険への加入を入国時の必須要件としています。その際、米国の経済制裁のため、米国の保険会社やクレジットカードの保険は、使用出来ない可能性が大きいので、旅行前に確認することが必要です。

5 かかり易い病気・怪我

(1)急性下痢症、食中毒、肝炎

 水道水の汚染や食品の衛生及び温度管理に問題があり、ジアルジア症は頻度の高い疾患です。赤痢や腸チフスもみられます。生水や生ものは避け、十分加熱された物を摂るように日々心掛け、手洗いの習慣も必要です。レストラン等で出される氷も安全とはいえません。

(2)虫刺され

 ハバナの都心部でも海岸に近いところでは、蚊以外にJejen虫(ブヨの一種)に刺されることが多く、強い皮膚反応と痒みを伴い、数週間症状が続きます。皮膚の露出を避けても、袖口から入り込んだりするので、徹底した虫除け対策が必要です。

(3)性感染症

 AIDS等の性病対策キャンペーンの成果か、AIDS患者数は減少傾向で、2022年のAIDS患者数は130人です。一方、梅毒は増加しており、届出感染症の中で一番多く2022年の患者数は7,428人です。

(4)ジカウイルス感染症

 キューバでは2016年3月に初めて報告され、2017年5月までの累計患者数は1,847例と報告されました。それ以降、具体的な患者数の発表はありませんが、持続的に流行していると考えられています。予防接種や特効薬はありませんので、蚊に刺されない努力が必要です。ハバナの医療機関でジカウイルス感染症と疑われた場合、外国人はIPK(Instituto de Medicina Tropical "Pedro Kourí"/ペドロ・コウリ熱帯医学研究所)に入院となります。

(5)デング熱

 予防接種、特効薬はありませんので、蚊に刺されない努力は必須です。2006年にハバナ市内でも死者や多数の入院患者が出ましたが、それ以降は地域ごとの殺虫剤の散布や防虫対策のアナウンスなど予防に力をいれています。2018年7月にデング出血熱の患者の報告があり、ハバナでも旧市街等の地域は不定期に消毒剤散布がなされていることがあり、流行していると考えられています。

(6)オロプーシェ熱

 2024年5月にキューバで初めて患者が確認され、8月末までに506名と発表されました。オロプーシェウイルスを媒介するイエカやヌカカに刺されることによって感染します。発熱、頭痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛等を伴う急性熱性疾患であり、多くの場合2から7日間で回復しますが、特効薬はありませんので、刺されないように予防することが重要です。

(7)熱中症・日光皮膚炎

 屋外には街路樹や高い建物等日陰になる場所が少なく熱中症になりやすいので、こまめな水分補給が必要です。1年中強い紫外線を浴びるため、日焼け止めクリームの使用やサングラスによる目の保護も必要です。

(8)呼吸器感染症

 キューバ国民が最もかかりやすい疾患です。アレルギー性など喘息様気管支炎が多いようです。空調システムの老朽化や冷房の温度調節不良で喉を痛めることがあります。交通量の多い幹線道路沿い等は、旧式の車や整備不良の車による排気ガスによる大気汚染もあります。

(9)シガテラ毒

 特定の魚や巻貝によって起こる食中毒です。消化器症状(吐き気、下痢、腹痛)や神経症状(めまい、頭痛、筋肉痛、麻痺、温度感覚異常)といった様々な症状を引き起こします。原因は、シガトキシンやマイトトキシンという毒素を含む藻を食した藻食魚が毒化し、食物連鎖により大型肉食魚が毒化、それを人間が口にすることで発症します。毒化した魚肉は加熱等いかなる方法でも無毒化することができません。特効薬はなく、重症の場合は症状が数か月から1年以上続くことがあります。特に大型魚であるオニカマスやフエダイやドクウツボ等の危険性が高いと言われていますので、避けるようにしてください。

(10)その他

 狂犬病は、最近では2016年に1例、2020年に3例報告されています。飼い犬でも噛みつくことがありますので、むやみに近づくことや、餌を与えるなどの無謀な行為は厳禁です。狂犬病ワクチンは常時在庫があるとは限りません。キューバはマラリアの汚染地域ではありません。
 交通渋滞はほとんどありませんが、修理・改造を重ねた1950年代の車は、突然停止したり、脱輪したりします。また交通表示が不完全で、高速道路でも所々に穴が開いているような道路事情のため、予期せぬ交通事故に遭遇することがあります。

6 健康上心がけること

  1. 生鮮食料品、特に夏期の野菜は種類が少なく変化に乏しいので、ビタミンや繊維質の摂取不足になりがちです。外食は、塩分、油、砂糖が多く入った調理方法が一般的です。健康維持のためには、常に栄養バランスを考え、調理にも工夫が必要です。
  2. 水道水は汚染されているので、飲用には不適です。必ず沸騰させて使用してください。水道水も国産のミネラルウオーターも硬度が高く、煮沸しても下痢になる方がいます。
  3. 高温多湿のため戸外では体力消耗が激しく、また冷房機器の温度調節が不安定で、室内では冷房が強過ぎることもあるので冷房病対策も必要です。
  4. ゴルフやテニスなど屋外スポーツを行う場合、直射日光に対する防御策(帽子、サングラス、長袖長ズボン、日焼け止めクリーム等)や脱水症予防が必要です。できるだけ涼しい早朝か、夕方にプレーするのが良いでしょう。

7 予防接種(ワクチン接種機関含む)

(1)赴任者に必要な予防接種

 入国時に必須の予防接種はありませんが、成人・小児ともA型肝炎、B型肝炎、破傷風、腸チフスに加え、できれば狂犬病の予防接種を推奨します。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

 すべて無料で施行され、ワクチンはキューバ製です。

ワクチン名 1回目 2回目 3回目 4回目・追加
BCG 出生時      
HB 出生時      
PENTAVALENTE 2か月 4か月 6か月  
AM-BC 3か月 5か月    
RPRS 12か月 6歳    
DPT 18か月      
Hib 18か月      
DT 6歳      
AT 10歳 13歳 16歳  
TT 14歳      
ポリオ(IPV) 4か月      
ポリオ(OPV) 生後1か月から3歳未満の
間に2回接種
9歳から12歳    

(注)HB(B型肝炎)、PENTAVALENTE(ジフテリア+破傷風+百日咳+B型肝炎+Hib)、AM-BC(髄膜炎菌2価(B、C))、RPRS(麻疹+風疹+流行性耳下腺炎)、DPT(ジフテリア+破傷風+百日咳)、Hib(インフルエンザ菌b型)、DT(ジフテリア+破傷風)、AT(腸チフス)、TT(破傷風トキソイド)

 ポリオに関しては、現在OPVからIPVに移行中のため、ワクチンの供給状況により接種回数や時期が随時変更となります。

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 当地のインターナショナルスクールに入学・入園する際には、健康診断書を提出する必要があります。血液型も必要です。予防接種に関しては、日本での接種記録をスペイン語訳して持参することをお勧めします。
 外国人が黄熱ワクチンを接種できる医療機関は決まっており、ハバナではClinica Internacional Siboneyです。

(4)妊婦健診、乳児健診

 妊娠が判明してから最低12回の妊婦健診が行われます。糖尿病や心疾患を有する妊婦には特別検診もあります。35歳以上の妊婦には全員羊水検査を実施することが義務づけられています。

 乳児は生後12か月まで1か月おきに健診を受けられます。予防接種記録紙に各月の発育状態が記載されています。受診機関は、出産病院から最寄りのポリクリニックあるいは地元のファミリードクターです。費用は無料です。

8 病気になった場合(医療機関等)

 外国人が受診できる医療機関は、基本的にSMC(Comercializadora de Servicios Médicos Cubanos)の管轄下の医療施設のみです。緊急時の救急外来受診はこの限りではありませんが、その際も状態が安定した段階で、SMC管轄下の医療機関に転院となります。外国人が多く宿泊する大きなホテルには基本的にSMC管轄下の診療所が併設されています。診療所が併設されていないホテルもしくはカサ・パルティクラル(民宿)に宿泊している場合は、最寄りのホテルの診療所、SMC管轄下の診療所かSMC管轄下の国際医療部が併設されている病院を受診することになります。外国人専用の医療施設であれば、英語通訳を手配してくれます。しかしSMC管轄の国際医療部が併設されている医療機関では、受付で英語が通じないことがあり、速やかに国際医療部への受診ができないこともあります。日本語が通じる医療機関はありません。受診にはパスポートが必要です。

 医療費はSMCが外国人用の医療費用を設定しています。SMC管轄下の医療機関への支払いは、クレジットカード払いとなり現金では支払えません。(2024年10月時点)。その際、米国発行・決済のクレジットカードは使用できませんので注意が必要です。入院に際しては、保証金を要求されることがあります。Asisturというキューバ独自の外国人用医療保険に加入している場合は、キューバにおける医療費の支払いは不要となります。

(首都)ハバナ

(1)Clinica Central CIRA GARCIA(シーラ・ガルシア)
所在地:Calle 20 No. 4101 esq. 41 Playa. La Habana, Cuba.
電話:(7)-204-2811から14、(7)-204-4300
概要:外国人専用病院。外交団が最も多く利用する医療機関で、24時間救急部もあります。心臓カテーテルが必要な循環器疾患、熱傷、出産以外は診療可能です。救急意外や特定の診療科を希望する場合は、電話予約が望ましい。英語通訳依頼可能。日本語は不可。
(2)Centro de Estomatología de la Clínica Central "Cira García"
所在地:Calle 34 No.4509, esq. Ave.47. Reparto Kohly, Playa. La Habana
電話:(7)-206-7646から49
概要:外国人専用歯科専門医院。要予約。時間外や救急はClinica Central Cira Garciaで対応してくれます。
(3)CIMEQ(Centro de Investigaciones Medico Quirurgicas)(シメック)
所在地:Calle 216 esq.13 Siboney, Playa Ciudad de La Habana, Cuba.
電話:(7)-858-1000、国際医療部:(7)-858-1128
概要:キューバ政府や軍関係者が主に利用している内務省の総合病院で、24時間体制です。外国人の受診も可能ですが、受け入れは積極的ではありません。循環器科・脳神経科専門医が常時勤務しているので、心臓発作や脳血管障害の場合には、迅速な診療が可能です。
(4)Clinica Internacional Siboney
所在地:Calle 17 entre 200 y 202, Siboney, Playa, La Habana
電話:(7)-271-1123、(7)-271-3497
概要:外国人専用診療所。黄熱ワクチンを含む各種ワクチンの接種が可能ですが、事前に在庫の問い合わせ及び予約が必要です。予防接種以外にも内科、皮膚科、小児科、婦人科、歯科等の診療を行っています。救急は24時間対応しています。
(5)Centro Internacional de Salud "La Pradera"
所在地:Calle 15 e/222 A y 234, Siboney, Playa, La Habana
電話:(7)-273-7467
概要:外国人専用病院。救急は受け付けていません。旅行中の慢性腎不全患者に対する血液透析サービスを行っています。要予約。
(6)Centro Nacional de Cirugíade Mínimo Acceso
所在地:Calle Párraga #215 entre San Mariano y Vista Alegre. La Vibora, 10 de Octubre, La Habana
電話:(7)-649-5332
概要:内視鏡、腹腔鏡専門病院です。24時間救急(吐血、下血)対応をしています。
(7)Centro Nacional de Retinosis Pigmentaria "Camilo Cienfuegos"
所在地:Calle L No. 151 e/. Línea y 13. Vedado. La Habana
電話:(7)-833-3886
概要:外国人専用眼科専門病院。24時間救急対応しています。
(8)Cosultorio Estomatológico. Hotel Meliá Habana
所在地:Ave. 3ra. e/ 76 y 80 Playa, La Habana
Hotel Meliá Habanaの1階、一般診療所の隣にあります
電話:ホテル代表(7)-206-9400、歯科内線5218
概要:一般歯科のみ診療可能です。8時30分から15時。
(9)Hospital Pediátrico Docente "Juan Manuel Márquez"
所在地:Avenida 31 e/. 76 y 100, Matianao
電話:(7)-260-2860、(7)-260-9651
概要:小児科専門病院。Clinica Central Cira Garciaと提携しているため紹介されることが多いです。小児の脳神経外科、神経内科、熱傷、多発外傷センターを併設しています。
(10)Hospital Clínico Quirúrgico Hermanos Ameijeiras
所在地:Calle San Lázaro No.701 e/Belascoain y Márquez González, Centro Habana
電話:(7)-876-1000
概要:小児科と産科以外全科が揃っているキューバ最大の病院です。国際医療部時間外診察は19階の国際医療部病棟で受診可能です。
(11)Instituto Cubano de Oftalmología "Ramón Pando Ferrer"
所在地:Calle 76 #3104 e/ 31 y 41, Marianao. La Habana
電話:(7)-265-4800
概要:眼科専門病院。24時間救急可。外国人の場合、国際医療部受付で前払いが必要です。
(12)Instituto de Cardiología y Cirugía Cardiovascular
所在地:Calle 17 No.702 entre A y Paseo, Vedado, La Habana
電話:(7)-830-7250、(7)-838-2661、(7)-838-6003
概要:循環器専門病院(18歳以上)で、緊急カテーテル手術を含む24時間救急対応をしています。

バラデロ

(1)Varadero Clínica Internacional(バラデロインターナショナルクリニック)
所在地:Calle 61 y 1ra Ave, Varadero, Matanzas, Cuba.
電話:代表(45)-66-7710、(45)-66-7711、(45)-66-7712
概要:外国人専用診療所。バラデロの繁華街にあり、24時間体制です。薬局も併設されています。手術や入院が必要な場合は、マタンサス市にあるHospital Clínico Quirúrgico Comandante Faustino Pérezまで移送されます。
(2)Centro de Odontología y Hemodiálisis
所在地:Calle 61 y 1ra Ave, Varadero, Matanzas, Cuba.
電話:(45)-66-7710、(45)-66-7711、(45)-66-7704
概要:外国人専用診療所。予約透析に対応可能です。

ピナ-ル・デル・リオ

(1)Hospital General Docente "Abel Santamaría Cuadrado"
所在地:Carretera Central km 3 1/2, Hermanos Cruz, Pinar del Rio
電話:(48)-76-2006、(48)-76-8938
概要:ピナール・デル・リオ県で外国人が罹患、受傷したらこの病院に搬送されます。循環器疾患以外は対応可能です。

シエンフエゴス

(1)International Clinic Sucursal Cienfuegos
所在地:Ave 10 No.3705, entre 37 y 39, Punta Gorda, Cienfuegos
電話:(43)-55-1623、(43)-55-1622
概要:外国人専用診療所。24時間診療を行っています。

10 一口メモ

 「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時のスペイン語)を参照願います。

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