世界の医療事情

令和6年10月1日

1 国名・都市名(国際電話番号)

 ベリーズ(国際電話番号501)

2 公館の住所・電話番号

在ベリーズ日本国大使館(毎週土曜日、日曜日休館)
住所:Embassy of Japan, Toucan Plaza, 7299 George Price Boulevard, Belmopan, Cayo District, Belize
電話:822-1202
ホームページ:在ベリーズ日本国大使館別ウィンドウで開く

(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにウェブサイトにて案内していますので、ご覧ください。

3 医務官駐在公館ではありません

 在マイアミ日本国総領事館医務官が担当

4 衛生・医療事情一般

 中央アメリカ北東部、ユカタン半島南東部に位置するベリーズは、グアテマラとメキシコと陸路国境を有する四国ほどの面積の小国で人口は約40万人です。熱帯気候の国であり、年間を通じて高温多湿な環境です。雨期にあたる6から11月は、毎日のように雷を伴う強い夕立が降ります。9月から10月にかけては、ハリケーンの季節でもあり、メキシコ湾で発達した後に襲来することが多いです。12から2月にかけては涼しい気候が続き、夕方以降は特に気温が下降し、夜間は14℃前後まで下がることもあります。2から5月は乾期で、4から5月は最高気温が40℃を超えることもあります。

 国内に医学部はなく、隣国グアテマラやメキシコ出身の医師が医療を提供しています。全般的に医療水準は低く、特に公的医療機関の受診は勧められません。首都のベルモパンは、内陸にある人口2万6千人の小都市で、医療施設やホテルなどの宿泊施設はいずれも脆弱です。旧首都で現在は経済都市として発展しているベリーズシティには、外国人や裕福層を対象とした私立病院があり、徐々に施設や陣容も充実しつつありますが、専門医は少なく、中等症以上の症状の場合、ベリーズ国内では満足できる治療を受けることが難しいのが現状です。渡航に際しては、国外搬送の可能性を念頭に置き、高額補償の海外旅行傷害保険等に加入することを強くお勧めします。

5 かかり易い病気・怪我

(1)熱中症、脱水症

 当地は年間を通じて高温多湿であるため、熱中症や脱水症に注意し、こまめな水分補給を心がけてください。特に、小児、高齢者、基礎疾患のある方はご注意ください。

(2)旅行者下痢症、食中毒など

 渡航中もしくは渡航後2週間以内に発症する下痢症のことを旅行者下痢症と呼びます。原因菌は細菌やウイルスなど色々ですが、カリブ諸国では料理の香辛料や水の硬度など非感染性の原因の事もあります。原因菌で最も多いとされているのは毒素原性大腸菌で、不衛生な調理環境が感染を誘発します。不衛生な状態で皮がむかれた果実や十分加熱調理されていない野菜などは避け、低温殺菌されていない牛乳やそれを用いた乳製品、アイスクリームなども避けてください。また、酢漬けの魚も含め未調理や十分加熱調理されていない肉、魚の摂取も控えるようお願いします。生水、氷などの摂取はさけて、濾過されて化学的殺菌処理の行われたものか、一度沸騰させた水、またはペットボトルの水を飲用にご利用下さい。

(3)蚊媒介疾患(デング熱等)

 近年の地球温暖化の影響による異例なほどの高温多湿な気候を背景に、デング熱を始めとする蚊媒介疾患は、カリブ諸国、中南米で近年爆発的に増加しています。デング熱に関しては、2024年の5月までに、カリブ諸国、中南米で2022年と2023年に報告された件数の合計を上回る症例が報告されています。ベリーズでは、蚊媒介疾患として、デング熱、チクングニア熱、ジカ熱などがあり、なかでもデング熱は渡航者も罹患する可能性がある疾患です。一方、マラリアや黄熱は、ほとんど発生しておらず、マラリア予防薬の服薬の必要性はありません。

 当地は、デング熱の流行地域であり、年間を通じて多くの患者が発生しています。2023年は、3,054名の患者が発生、2024年は7月時点で800名の症例が確認されており、今後増加が見込まれています。デング熱は、デングウイルスに感染したネッタイシマカ、ヒトスジシマカに吸血されることで感染します。潜伏期の後、高熱で発症し、筋肉痛、関節痛、皮疹などの症状を呈し、およそ発症後1週間程度で回復に向かいます。通常は後遺症なく回復しますが、一部の患者では、皮膚粘膜からの出血、肝腫脹、血圧低下などを伴う、重篤なデング出血熱となります。特異的治療薬は存在しないため、対症療法のみとなります。感染を避けるには、皮膚の露出を避ける、虫よけスプレー、蚊帳、蚊取り線香、網戸の使用など、防蚊対策が基本となります。

6 健康上心がけること

  1. 屋外で活動する際には、十分な水分や塩分を摂取し、直射日光に対する防護策(帽子、長袖、日焼け止めクリーム、サングラスなどを使用する)を講じてください。地方や森林、その他の自然環境地域を訪問する際には、虫に刺されないように長袖・長ズボンを着用し、虫除けスプレー・クリーム等の対策をとってください。
  2. 野生の小動物に遭遇した場合は狂犬病、また鳥の死骸の場合は鳥インフルエンザなどの感染の恐れがありますので、安易に触ることのないようお願いします。
  3. 渡航者は、事前に専門医(トラベル・クリニックなど)を受診するなどして、渡航先で流行している感染症などを把握するとともに、必要な予防接種を行い、無理のない余裕のある旅行計画を立てて下さい。海外旅行傷害保険等に加入して高額医療費が発生する事態に備えておくことも重要です。基礎疾患のある方は、事前にかかりつけの医師、専門医などを受診し、処方箋や病気の状態、経過などを英訳した診断書などを書いてもらい、旅行中、携帯しておくことをお勧めします。

7 予防接種(ワクチン接種機関含む)

(1)赴任者に必要な予防接種

 日本からの旅行者は、入国に際して予防接種の要件はありません。黄熱に感染する危険のある国から入国する1歳以上の渡航者は、イエローカードが要求されます。黄熱に感染する危険のある国の空港を経由して入国する場合も、同様に要求されます。赴任に際して推奨される予防接種は、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、腸チフス、狂犬病となります。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

予防接種名 初回 2回目 3回目 4回目とそれ以降
BCG 出生時      
B型肝炎 出生時      
5種混合ワクチン(注1) 2か月 4か月 6か月  
3種混合ワクチン(注2) 18か月 4歳 12歳  
ポリオワクチン(注3) 2か月 4か月 6か月 18か月、4歳
MMR 12か月 18か月    
HPV(注4) 9歳      
  1. (注1)5種混合ワクチン:3種混合(ジフテリア、破傷風、百日咳)、B型肝炎、インフルエンザ菌b型
  2. (注2)3種混合ワクチン:ジフテリア、破傷風、百日咳。3回目はジフテリア、破傷風のみ
  3. (注3)初回は不活化ワクチン、2回目から5回目は生ワクチンを使用する
  4. (注4)HPV:子宮頸がんワクチン

8 病気になった場合(医療機関等)

(首都)ベルモパン

(1)ST. LUKE HOSPITAL
所在地:Mountain View Blud, Belmopan City, Cayo Belize
電話:822-2379
ホームページ:ST. LUKE HOSPITAL(英語)別ウィンドウで開く
概要:ベルモパン市内の私立病院で総合内科と婦人科が中心のクリニック、入院室6室、長期の入院治療や専門的治療が必要な場合は、ベリーズシティの病院に紹介してもらえます。
救急車あり。

ベリーズシティ

(1)Belize Medical Associate
所在地:5791 St Thomas St, Belize City
電話:223-0302、223-0303、223-0304
ホームページ:Belize Medical Associate(英語)別ウィンドウで開く
概要:私立の総合病院です。一般のICUの他、循環器集中治療室(CCU)も準備されています。
一般外来は予約が必要ですが、救急外来は24時間365日受診可能です。
(2)Karl Heusner Memorial Hospital
所在地:Princess Margaret Drive, Belize City
電話:223-1548
ホームページ:Karl Heusner Memorial Hospital(facebook)(英語)別ウィンドウで開く
概要:公立の総合病院です。救急外来は24時間365日受診可能です。

 ベリーズ病院においては、緊急で受診した場合や、入院治療を行う条件として、多額の現金による保証金を要求する病院が増えています(例:胃腸炎による4日間の入院、入院保証金日本円で約50万円)。海外旅行保険に加入していても一度は立て替える必要があり、場合によってはクレジットカードの支払限度額以上の保証金が入院時に必要となるケースも想定されますので、渡航前に支払限度額の上限変更などもご検討下さい。

10 一口メモ

 「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語、もしもの時のスペイン語)もご覧下さい。

  • 医師:médico(メディコ)
  • 飲み薬:medecina(メディシーナ)
  • 注射:inyección(インジェクシオン)
  • 頭痛:dolor de cabeza(ドロール デ カベサ)
  • 腹痛:dolor de vientre(ドロール デ ビエントレ)
  • 下痢:diarrea(ディアレア)
  • 発熱:fiebre(フィエブレ)
  • 嘔気:náusea(ナウセア)
  • 傷:herida(エリーダ)
  • ワクチン:vacuna(バクーナ)
  • デング熱:dengue(デンゲ)
  • 具合が悪い。:Me siento mal.(メ シエント マル)
  • 病院へ連れて行ってほしい。:Lleveme al hospital, por favor.(ジェベメ アル オスピタル ポルファボール)
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