世界の医療事情

令和6年10月1日

1 国名・都市名・国際電話番号

 バルバドス(国際電話番号1-246)

2 公館の住所・電話番号

在バルバドス日本国大使館 (毎週土曜日、日曜日休館)
住所:Embassy of Japan in Barbados, Building 2, Ground Floor, Chelston Park, Collymore Rock, St. Michael, Barbados
電話:538-5700
FAX:538-5701
ホームページ:在バルバドス日本国大使館別ウィンドウで開く

(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。

3 医務官駐在公館ではありません

 在マイアミ日本国総領事館医務官が担当

4 衛生・医療事情一般

 バルバドスはカリブ海に浮かぶ島々の中では最も東に位置し、面積は430平方キロメートルで種子島とほぼ同じです。人口は約28.2万人、比較的平坦な地形で最も高い所でも海抜340メートルです。気候は高温多湿な熱帯モンスーンで、概ね6月から11月までの雨季、12月から5月までの乾季に分かれています。雨季には時にハリケーンや熱帯暴風雨で高潮や洪水に見舞われることもありますが、通常、ハリケーンの通過コースからは外れることが多いです。平均気温は雨季で25℃から31℃、乾季では23℃から30℃程度で、気温の変化は少なく年間を通して北東の貿易風が吹くので、比較的穏やかな暑さとなっています。

 バルバドスは、カリブ島諸国のなかでは、個人あたりの所得が高い国に分類され、医療水準も、カリブ諸国の中では高い方とされています。600床の収容能力を有する公立総合病院、エリザベス病院(Queen Elizabeth Hospital)では、全診療科目の医療が提供されており、24時間体制の救急外来(ER)が設置されています。公立病院では国民に対する医療が無償で提供されているため、同病院は常に患者で混み合っており、緊急外来であっても長時間待たされることがあります。そのため私立病院や開業医の方が素早い対応を期待できることもあります。重症の傷病の場合には入院、あるいは場合によっては医療先進国への緊急搬送が必要となります。その際に医療費は高額になり、場合により高額な緊急搬送費用が必要となることがありますので、補償額の大きな海外旅行傷害保険に加入しておくことが大切です。

5 かかり易い病気・怪我

(1)熱中症、脱水症

 熱帯モンスーン気候に属し、乾期は比較的過ごしやすいのですが、年間を通して直射日光が強く日焼けに注意が必要で、また雨期には高温多湿となるので熱中症(日射病)に特に注意が必要です。帽子をかぶる、日陰で休息する、こまめに水分や塩分を摂取するなどの予防策をとることが重要となります。特に、小児、高齢者、基礎疾患のある方はご注意ください。

(2)旅行者下痢症、食中毒

 旅行者下痢症の予防策として、皮のむかれた果物(カットフルーツやフルーツジュースなど)、あるいは十分加熱調理されていない食品を摂取するのは避けてください。また、低温殺菌されていない牛乳やそれを用いた乳製品、アイスクリームなどの摂取は控えてください。さらに、酢漬けの魚も含め、未調理や十分加熱調理されていない肉や魚の摂取も慎重にお願いします。飲料水については、生水、氷(水道水を使ったものが多いため)などの摂取はさけて、濾過されて化学的殺菌処理の行われたものか、一度沸騰させた水、または、ペットボトルの水を飲用にご利用下さい。

(3)海棲生物による外傷など

 棘皮動物(イソギンチャク)の幼生、クラゲによる刺傷(サーフィン、海上での遊技、シュノーケリング、海岸線での遊泳中など)は激しい痛みを伴った広範な皮膚炎を起こすことがあります。珊瑚、ウニなどによる外傷も報告されています。また、決められた区域以外の海岸での海水浴は水深や潮の流れが不明なため大変危険です。

(4)蚊が媒介する感染症

 近年の地球温暖化の影響による異例なほどの高温多湿な気候を背景に、デング熱を始めとする蚊媒介疾患は、カリブ諸国、中南米で近年爆発的に増加しています。デング熱に関しては、2024年の5月までに、カリブ諸国、中南米で2022年と2023年に報告された件数の合計を上回る症例が報告されています。バルバドスにおける蚊媒介疾患は、デング熱とチクングニア熱があげられます。バルバドスでは、マラリア罹患のリスクはほとんどありません。

 バルバドスでは、首都ブリッジタウンを中心に2023年10月からデング熱のアウトブレークが発生し、半年で約1,200名が罹患、4名が死亡しています。2024年においても、9月時点、ブラジルで大流行(感染例400万件、2千人が死亡)している状況を考えると昨年同様10月頃より再ブレークするものと考えられます。デング熱は、ネッタイシマカ及びヒトスジシマカ(蚊)によって媒介される熱性ウイルス疾患で、ほとんどの人は重症化することなく治りますが、一部で出血傾向を伴うショック状態になる場合があります。有効な治療薬はなく、発病時は対症療法のみです。発熱に対しては、アセトアミノフェン(タイレノールやパナドール)を用います。有効な予防薬はないため、蚊に刺されないようにすることが最も大切です。戸外に出るときは、虫よけスプレーを使用し、できる限り長袖、長ズボンを着用してください。また、蚊の活動が活発な日の出や夕暮れ時の外出を避ける、さらに居住空間近辺の蚊の発生しそうな下水・水回りの清掃(余分な水たまりの排除)をすることなども重要です。

6 健康上心がけること

  1. 屋外で活動する際には、脱水症や熱中症にならないように十分な水分・塩分を補給し、直射日光に対する防護(帽子、長袖、サングラス・日焼け止めクリームを使用するなど)に気をつけてください。木陰や涼しい場所で適宜休養することも大切です。
  2. 地方、森林その他の自然環境地域を訪問する際には、虫(蚊やダニなど)に刺されないような対策(長袖長ズボンを着用し、虫除けスプレー・クリームを使用するなど)を講じて下さい。
  3. 野生の小動物に遭遇した場合は狂犬病、また鳥の死骸の場合は鳥インフルエンザなどに感染する恐れがありますので、安易に触ることのないようお願いします。
  4. 旅行者の方は、事前に専門医(渡航外来或いはトラベルクリニック)を受診するなどして、現地で流行している疾患に関する知識を得て、無理のない余裕のある旅行を計画してください。また海外旅行傷害保険などに加入して、高額医療費や緊急移送費用が発生する事態に備えておくことも重要です。さらに基礎疾患のある方は、事前にかかりつけの医師に相談し、処方箋や病気の状態、経過などを英訳した診断書などを書いてもらい、何かあった場合に備えて旅行中携帯するようにお願いします。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

 日本からの旅行者は、入国に際し予防接種の要件はありません。但し、黄熱感染地域を経由して入国する場合(1歳以上)には、黄熱予防接種証明(通称イエローカード)の提示が求められます。居住目的で渡航される方々の子女は、現地の学校に入学する際には予防接種証明書が必要です。予防接種要件は、概ね(2)のとおりです。

(1)赴任者に必要な予防接種

 法的に義務づけられる予防接種はありません。推奨される予防接種としては、A型肝炎、破傷風、B型肝炎、破傷風、腸チフス、狂犬病となります。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

接種時期 予防接種の種類等
2か月 DTwP/Hib/HepB(ジフテリア・破傷風・百日咳・インフルエンザ桿菌b型・B型肝炎の5種混合ワクチン:1回目)
OPV(経口ポリオワクチン:1回目)
PCV(肺炎球菌ワクチン:1回目)
4か月 DTwP/Hib/HepB(2回目)、OPV(2回目)、PCV(2回目)
6か月 DTwP/Hib/HepB(3回目)、OPV(3回目)PCV(3回目)
1歳 MMR(麻疹・流行性耳下腺炎・風疹ワクチン:1回目)
VAR(水痘ワクチン:1回目)
1歳までに BCG(結核ワクチン)必要とされる子供のみ
18か月 DTwP(ジフテリア・破傷風・百日咳:第2弾1回目)、MMR(2回目)、IPV(不活化注射ポリをワクチン:第2弾1回目)
4歳半 DTwP(第2弾2回目)、IPV(第2弾2回目)
10から11歳 DTwP(第2弾3回目)、IPV(第2弾3回目)、HPV(パピローマウイルスワクチン:2回接種)
(参照) (注)ポリオワクチンは、経口ワクチンと注射ワクチンを併用

8 病気になった場合(医療機関等)

(首都)ブリッジタウン

(1)The Queen Elizabeth Hospital(クイーン・エリザベス病院)
住所:Martinade’s Road, Bridgetown
電話:436-6450
ホームページ:The Queen Elizabeth Hospital(英語)別ウィンドウで開く
概要:600床の収容能力を有するバルバドスで最大規模の公立総合病院。24時間体制の救急外来(ER)あり、西インド諸島大学(UWI)医学部の付属教育病院でもあります。心臓カテーテル検査(PCI等)や人工透析可。集中治療室(ICU)、小児集中治療室(PICU)及び新生児集中治療室(NICU)等も完備され、基幹病院として機能しています。
(2)Sandy Crest Medical Center
住所:Sunset Crest, St. James
電話:419-4911
ホームページ:Sandy Crest Medical Center(英語)別ウィンドウで開く
概要:救急部を有する24時間体制の私立クリニック。1から2人の救急医が常駐。重篤な患者においては、当センターにて様態の安定を図った後に、提携先の私立病院であるBayview Hospitalあるいはクイーン・エリザベス病院へ搬送となります。救急搬送には民間緊急コールセンターの救急車を利用する必要がありますが、Sandy Crestに救急車を依頼することも可能です。
民間救急コールセンター
  1. Island Care Ambulance電話番号:435-9425
  2. Medic Response電話番号:228-8633
(3)Bayview Hospital
住所:St. Paul’s Avenue, Bayville, St. Michael
電話:436-5446
ホームページ:Bayview Hospital(英語)別ウィンドウで開く
概要:入院設備を有する私立病院。常駐の医師はなく、国内の各クリニックより患者とともに医師が当院におもむいて治療する方式です。病床23床、分娩室2室。新生児集中治療が必要な場合はクイーン・エリザベス病院へ搬送となります。
(4)Coverley Medical Center
住所:Coverley Square, The Villages at Coverley, Christ Church
電話:627-1000
ホームページ:Coverley Medical Center(英語)別ウィンドウで開く
概要:4つのクリニックから構成されるCOVERLY MEDICAL CENTRE (CMC)グループの1つ。緊急医療センター(紹介状なしで受診可能)を有する私立クリック。1から2人の一般内科医(GP)もしくは救急医が常駐しています。診察時間は、9時から19時。
(5)Urgent Care Barbados
住所:Urgent Care At The Estates, Boarded Hall, St. George
電話:538-3838
ホームページ:Urgent Care Barbados(英語)別ウィンドウで開く
概要:24時間体制の私立病院。隣には薬局もあり、処方薬をそのまま貰えます。集中治療が必要な場合はクイーン・エリザベス病院へ搬送となります。

(注)カリブ諸島国の病院においては、緊急で受診した場合や、入院治療を行う条件として、多額の現金による保証金を要求する病院が増えています(胃腸炎による4日間の入院、入院保証金日本円で約50万円)。海外旅行保険に加入していても一度は立て替える必要があり、場合によってはクレジットカードの支払限度額以上の保証金が入院時に必要となるケースも想定されますので、渡航前に限度額の設定変更などご検討下さい。

10 一口メモ(もしもの時の医療英語)

 世界の医療事情の冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照ください。

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