世界の医療事情

令和6年10月1日

1 国名・都市名(国際電話番号)

ラオス人民民主共和国(国際電話番号856)

2 公館の住所・電話番号

在ラオス日本国大使館(毎週土曜日、日曜日休館)
住所:Embassy of Japan, Sisangvone Road,Vientiane, Lao PDR
電話:(021)-414400, (021)-414401, (021)-414402, (021)-414403
ホームページ:在ラオス日本国大使館別ウィンドウで開く

(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページで案内しています。

4 衛生・医療事情一般

 ラオスは熱帯モンスーン気候に属し、雨期(5月から10月)と乾期(11月から4月)に分けられます。ラオスでは1年中蚊が媒介するデング熱が流行します。特に雨期に流行するため、蚊の対策がより重要となります。

 当地の医療水準は近隣諸国と比べても低く、多くの保健指標は東南アジア地域で最も悪い国となっています。当地の病院の多くは、英語での意思疎通は困難ですが、外国人が受診可能な医療施設もあります(「8. 病気になった場合」参照)。しかし、可能な治療は限られており、例えば心血管系疾患や脳血管疾患などの高度な治療や専門的治療が必要な状態では、国境を越えタイ東北部ノンカイまたはウドンタニ、さらにはバンコクの病院の受診が必要な場合があります。当地を訪れる際には、不測の事態に備えて国外緊急移送に対応する海外旅行傷害保険への加入を推奨します。クレジットカード付帯の海外旅行保険については、渡航前に使用可能条件や補償内容などを確認することをおすすめします。

  水道水の管理は未だ十分とは言えません。首都ビエンチャンを含むラオス国内全域において、飲用には市販のペットボトル水の利用を推奨します。

  一部のレストランを除き、当地の食品衛生管理は十分ではない場合があります。邦人が当地で罹患する大部分の疾患が、経口感染症です。日頃から飲食物に注意して生活してください。

5 かかり易い病気・怪我

(1)旅行者下痢症

 下痢は当地ではきわめて日常的な症状です。感染性胃腸炎・食中毒・腸チフス・赤痢アメーバ症・ジアルジア症など、下痢を引き起こす病原体は様々です。ほとんどの場合は軽症ですが、体重減少を伴う下痢、発熱を伴う下痢、血便を伴う下痢などの場合は重症化することもありますので、早めに医療機関受診を考慮してください。

(2)デング熱

 デングウイルスを保有している蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)に刺されることで感染します。これらの蚊は都市部にも生息し、主に昼間に吸血します。潜伏期間は4日から2週間程度です。典型的な症状としては、倦怠感、発熱、関節痛、頭痛、目の奥の痛みなどで、38度を超える熱が数日続き、その後発疹が出現します。重症度は様々で、微熱で済むケースもある一方、ショック症状から死に至ることもあります。例年雨期終盤の9月から10月に発生のピークがあります。2022年や2023年は、首都ビエンチャンを中心に大流行し、ラオス全体で年間3万人以上が罹患しました。風邪症状や下痢がないにもかかわらず、高熱や頭痛がある場合は、デング熱のような蚊媒介疾患を考慮する必要がありますので、早めに医療機関を受診して下さい。

(3)狂犬病

 ラオス国内全域で感染する危険性があります。狂犬病はウイルスに感染した犬や猫等に咬まれたり舐められたりすることで感染し、発症した場合はほぼ100%死亡するとされています。当地では街中に犬が徘徊しています。狂犬病の発生は首都ビエンチャンに多く、多数の未報告例もあると推定されていますので、ラオスを訪れる場合には渡航前に狂犬病ワクチンを接種することを強く勧めます。もし犬等に咬まれたら、たとえ渡航前にワクチンを接種していたとしても、直ちに傷口を流水で洗浄し、「8. 病気になった場合」などを参考に、速やかに医療機関を受診して、創傷の処置や発症予防目的のワクチン接種等について相談してください。

(4)ウイルス性肝炎

 ウイルス性肝炎には、経口感染するA型肝炎・E型肝炎と血液・体液を介して感染するB型肝炎・C型肝炎があります。ラオスは、隣国ベトナム同様にB型肝炎の有病率が高いとされています。また、国内南部の一部地域ではC型肝炎の有病率がきわめて高い地域が存在します。B型・C型肝炎は血液を介して感染するため、出血を伴うような医療行為(歯科治療を含む)を受ける場合、注意が必要です。当地に長期滞在を予定されている方は、A型肝炎ワクチンおよびB型肝炎ワクチンの接種を推奨します。

(5)外傷・交通事故など

 近年、交通量の増加に伴い事故件数が激増しています。死亡事故も増加し邦人が巻き込まれる事故も増えています。無免許、無保険に加え飲酒運転が問題になっており、特に夜間は事故に巻き込まれないように注意して下さい。また、交通事故で受傷し、当地の外国人向け医療機関を受診することになった場合には、無保険などの理由で相手方が治療費を負担できず、自身で高額な医療費を負担せざるを得なくなる場合があります。このため、海外旅行傷害保険への加入を改めて推奨します。

(6)結核

 ラオスはWHOが指定する結核高蔓延国の一つです。微熱や長く続く咳がある場合は、医療機関の受診を推奨します。

(7)寄生虫症

 ラオスでは、複数の寄生虫症に感染する可能性があります。水田や河川で足などの皮膚から浸入するメコン住血吸虫症、調理不十分な淡水魚を食べることにより感染するタイ肝吸虫症、淡水産カニの生食により感染する肺吸虫症、豚肉の生食により感染する有鉤条虫症などがあり、いずれも初期は症状が軽微で自覚症状が乏しく感染に気づかない事例もあります。当地では、生の淡水産カニを使用したパパイヤサラダや「ソンムー」と呼ばれる発酵豚肉生ソーセージのように、郷土料理として提供される場合もありますので、食材と加熱状況には常に注意する必要があります。

(8)マラリア

 マラリア原虫に感染している蚊(ハマダラカ)に刺されることで感染する疾患です。主に夜間に吸血します。悪寒戦慄を伴う熱発作、貧血、脾腫、倦怠感などの症状があります。WHOの推計によると、ラオス国内では1997年には462000人がマラリアに罹患していましたが、2022年には2305人まで減少しました。現在では、ビエンチャンで生活する分にはマラリア罹患の心配はほとんどありませんが、山間部や南部メコン河流域地帯においては依然として発生頻度が高いため、同地域に長期滞在される場合は、マラリア予防薬の服薬も検討してください。ラオスでは重症化しやすい熱帯熱マラリアが多いと言われており、迅速かつ適切な治療が必要です。

(9)レプトスピラ症

 病原性レプトスピラは汚染された水や土壌に接触することにより感染します。症状は発熱、頭痛、筋肉痛、眼球結膜の充血などがあり、風邪症状のみの軽症型と黄疸、出血、腎不全を来す重症型があります。予防としてむやみに水の中(水田、特に洪水の後など)には入らないことが重要です。

6 健康上心がけること

(1)経口的に摂取するものに気を配る

 当地で発生する大部分の疾患が、経口的に感染する感染症です。生食は控え、飲用水には飲用のペットボトル水(濾過水)をご利用ください。外食時は衛生管理の行き届いた飲食店を選んでください。

(2)蚊に刺されないように注意する

 特にデング熱が流行する雨期の外出時には、長袖・長ズボンなどで皮膚の露出を抑えるとともに、十分な成分濃度の忌避剤(DEET含有のスプレー、ローション)を使用してください。独立家屋や集合住宅の低層階では、網戸や窓ネット、蚊取線香など屋内の防蚊対策も必要です。蚊は、植木鉢や空き缶、古タイヤなど小さな水溜まりでも繁殖します。繁殖場所を作らないように工夫してください。敷地内で定期的に殺虫剤を噴霧するのも有用です。

(3)行動に留意する

 市内では犬が多く徘徊しており、近づかないようにして下さい。河川や湖や田畑に入らないでください。

7 予防接種(ワクチン接種機関含む)

(1)赴任者に必要な予防接種

 入国時に求められる予防接種はありませんが、当地では様々な感染症に罹患する可能性がありますので、以下の予防接種の実施が望まれます。

  • ア 成人:破傷風、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、麻しん(麻しんワクチンを今まで一度も受けたことがなく麻疹に未罹患の人)、日本脳炎、腸チフス
  • イ 小児:日本の定期接種(BCG、DPT、ポリオ、麻しん、風しん、日本脳炎)の他、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ菌b型(Hib)、狂犬病、腸チフス、長期滞在予定者は他に、流行性耳下腺炎(ムンプス)、水痘、肺炎球菌

(2)現地の小児定期予防接種一覧

  初回 2回目 3回目 4回目
BCG 出生時      
ポリオ(経口生ワクチン) 6週 10週 14週  
DPT 6週 10週 14週  
MMR 任意接種      
麻疹(はしか) 9から11か月 12から23か月    
ムンプス(おたふく風邪) 実施されていない      
風疹(ふうしん) 9から11か月 12から23か月    
B型肝炎 出生時 6週 10週 14週
インフルエンザB 6週 10週 14週  

DPT:ジフテリア・百日咳・破傷風、MMR:麻疹・流行性耳下腺炎・風疹

 邦人は各自、自主的に医療機関を受診して接種を受けることになります。

(注)DPTは地元医療機関ではDPT-B型肝炎-Hibの5種混合ワクチンを使用しています。(外国人がよく利用するクリニックではDPT-不活化ポリオ-Hibの5種またはDPT-不活化ポリオ-Hib-B型肝炎の6種混合ワクチンを使用しています)

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明書

現時点では、現地校・日本語補習校入学に関しては、予防接種記録・証明書は特段必要とされません。インターナショナルスクール入学に際しては、予防接種歴を求められることもありますが、接種証明書の提出は現時点では必須ではありません。一方でラオス政府は麻疹などの各種ワクチンの摂取率向上に力を入れており、今後は接種記録や証明書を求められるようになる可能性があります。このため、学校に確認することをおすすめします。

8 病気になった場合(医療機関等)

(首都)ビエンチャン

(注)複数の公的病院、軍病院などがありますが、英語での意思疎通が難しく、邦人が期待する水準の医療を受けるのは困難な場合が多いです。このため、外国人向けの私立の医療施設を受診することが一般的です。以下の医療施設に関しては、原則英語での診療が可能です。

(1)Kasemrad International Hospital Vientiane(カセムラード病院)
所在地:450 years Road, Donnokkhoum Village, Sisattanak District
ParksonITECCモールを出てケンフェンムアン通りを南への約2km進み、交差点を右折して、450年道路を約300メートル進むと左側にあります。
電話:(021)-833333 #1661(短縮ダイヤル、24時間対応)
ホームページ:Kasemrad International Hospital Vientiane(英語)別ウィンドウで開く
診療時間:月曜日から日曜日 8時から18時 土曜日、日曜日、祝日も平日と同時間帯で外来診療施行
(注)診療時間は診療科により異なるので事前に問い合わせてください
(注)救急外来は24時間対応
概要:全科対応で歯科もあります。CT装置、MRI装置、透析装置などがあります。医療スタッフはタイ人が中心で、英語やタイ語での診療が可能です。また、下記ジャパニーズメディカルデスクを介して診療を受ける場合は、有料で日本語通訳サービスの利用が可能です。24時間の救急対応を行っており、有料で救急車の手配も可能です。110床の病棟があります。また、狂犬病用ワクチンや免疫グロブリン製剤を保有しており、犬咬傷の際にはまず受診を検討する病院です。支払いは、米ドル、タイバーツ、ラオスキープ現金やクレジットカード、BCELの電子決済サービスONE PAYも使用可能です。ただしクレジットカードでの支払いには手数料がかかります。
Japanese Medical Desk (JMD:ジャパニーズメディカルデスク):
同院には、日本語での診療アシスタンス、医療通訳などを行う日本人向けの有料サービス会社が窓口を設けています。ラインアプリを介しての問い合わせも可能です。詳細は、以下のWeb pageを参照下さい。
ホームページ:JMDラオス別ウィンドウで開く
電話:(020)-5402-4002(JMD専用ライン)
(2)Alliance International Medical Centre(アライアンスメディカルセンター)
所在地:Souphanouvong Road, Ban Wattayyaithong, Sikhottabong Districtワッタイ空港近くのホンダコンプレックス(ホンダ車販売サービス)敷地内
電話:(021)-513095
ホームページ:Alliance International Medical Centre(英語)別ウィンドウで開く
診療時間:月曜日から金曜日8時から20時 土曜日、日曜日8時から17時
(注)診療時間は診療科により異なるので事前に問い合わせてください
(注)救急外来は24時間対応
概要:総合診療科、内科、外科、小児科、産婦人科、皮膚科の医師が勤務しています。レントゲンはありますが、CTやMRIはありません。英語での対応が可能です。また、下記ジャパニーズメディカルデスクを介して診療を受ける場合は、有料で日本語通訳サービスの利用が可能な場合です。病棟は7床で、短期間の入院が可能です。数日以上の入院や精査が必要な場合にはワッタナー病院などタイの病院へ紹介となる場合があります。支払いは、現金やクレジットカード(手数料がかかります)や電子決済サービスONE PAYも使用可能です。
Japanese Medical Desk (JMD:ジャパニーズメディカルデスク):
日本語での診療アシスタンス、医療通訳などを行う日本人向けの有料サービス会社が窓口を設けています。
ホームページ:JMDラオス別ウィンドウで開く
電話:(020)-5402-4002(JMD専用ライン)
(3)French Medical Center(通称フレンチクリニック)
所在地:Kouvieng Road, Simuang(クービエン通り)
Parksonショッピングモール沿いグリーンパーク・ブティックホテル斜め向かいの平屋建物。入り口はクービエン通りより脇道に入ったところにあります。駐車場はありません。
電話・FAX:(021)-214150(医科予約)、(020)-9513-6202(歯科予約)
緊急電話:(020)-5655-4794(時間外)
メールアドレス:cmaflao@gmail.com(予約、英語・仏語可能)
ホームページ:Centre Médical Français(フランス語)別ウィンドウで開く
概要:昔からラオス在住の外国人によく利用されているクリニックで、入院施設はありません。複数の外国籍医師・歯科医が在籍しています。歯科は、基本的に事前に予約が必要です。対応疾患は、内科・小児科・歯科で、プライマリーケア、軽症の患者さんが対象です。
レントゲンはありません。各種予防接種も可能ですが、在庫に変動があるので事前に電話などで確認されることをお勧めします。2024年10月現在、日本人医師が勤務していますので、同医師の勤務時間帯は日本語での診療が可能です(それ以外は、英語または仏語での診療)。支払いは、米ドルかラオスキープの現金、または電子決済サービスONE PAYも利用可能です。
診療時間:
月曜日、火曜日、木曜日、金曜日8時30分から12時 13時30分から19時
水曜日、土曜日8時30分から12時 13時30分から17時
日曜日9時から12時
(注)日本人医師診療時間
月曜日、木曜日、金曜日、土曜日13時30分から17時
日曜日9時から12時

ルアンパバーン

(1)Luang Prabang Provincial Hospital
所在地:Thongchaleun village, Lugang Prabang
電話・Fax:(071)-254027
ホームページ:Luang Prabang Provincial Hospital(ラオ語)別ウィンドウで開く
診療時間:月曜日から金曜日8時から16時(注)救急外来は24時間対応
概要:ラオス北部の中核的病院です。タイのバンコク病院と提携しており必要時には保険加入状況などを確認の上、バンコク病院への搬送が行われます。
(2)Phakan Arocavet Clinic
所在地:Phoumork Village, Lugang Prabang City, Luang Prabang Province
電話:(020)-5982-2895、(030)-2896395、(071)-214289
ホームページ:Phakan Arocavet Clinic(ラオ語)別ウィンドウで開く
診療時間:月曜日から日曜日8時から18時
概要:成人と小児の内科や、傷の洗浄などの簡単な外科的処置に対応しています。入院はできません。医師により英語・中国語・タイ語での対応が可能な場合があるのでお問い合わせください。

10 一口メモ(もしもの時の医療ラオス語)

  • 医師:タンモー
  • 飲み薬:ヤーキン
  • 注射:サックヤー
  • 頭痛:チェップ フア
  • 胸痛:チェップ ナー ウック
  • 腹痛:チェップ トーン
  • 下痢:トーク トーン
  • 発熱:ペン カイ
  • 吐気:プアット ハー(ク)
  • 傷:バーッ(ト)
  • マラリア:カイ ニュン
  • 寄生虫:メ トーン
  • 具合が悪い:ボーサバーイ
  • デング熱:カイ ルアッ(ト) オー(ク)
  • 病院へ連れて行って欲しい:ヤーク ハイ パー パイ ホンモー
  • 診察予約をおねがいします:チョーン カーン クワッ(ト) ロー(ク)ハイデー
  • 下痢がひどいです:ミー トーク トーン ナッ(ク)
  • 風邪をひいたみたいです:クーシ ペン ワッ(ト)
  • 息切れがします:ミー ハーイ チャイ フゥー(ト)
  • 食欲がありません:ボー ミー クワーム ヤーク アーハーン
  • 痛み止めをください:コー ヤー ケー プワッ(ト) ハイデー

 ( )は、小さく発音する音

 「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモを参照ください。

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