在外公館医務官情報

ブータン

2015年4月1日

1.国名

 ブータン王国(国際電話国番号975)

2.公館の住所・電話番号

3.医務官駐在公館

4.衛生・医療事情一般

(1)気候

 ブータンの気候は地域により異なり,インドとの国境地域を含む南部は亜熱帯気候に属し,首都ティンプーを含む国土の大部分はモンスーン気候,北部の山岳地帯にはツンドラ気候が広がっています。

(2)地誌

 国土の大部分が標高1,000メートル以上の山岳地帯であり,北部・西部の中華人民共和国との国境には,6,000~7,000メートル級の山々が連なっています。国内都市間の移動は陸路が中心で,国土を東西に延びる縦貫道を軸に南北には支線が広がっています。

(3)水質,食品衛生

 水道水を直接飲むことはできません。飲用には,シールされたミネラルウォーターを利用してください。レストランでの食事の際には,安レストランや露店での買い食いは避け,よく火の通ったメニューを選んでください。生野菜,カットフルーツは原則避けるのが無難です。

(4)医療制度と医療構造

(医療制度)ブータンでは,医療サービスは政府の5か年計画に基づいてすべて国により運営され,すべての国民に無料(一部,個室料金やJDWNR病院の特別専門医外来,私立診断センターは有料)で提供されています。ブータンの医療機関では,伝統医学科も内科や外科などの西洋医学による診療科と同様に確立していることが特徴の一つです。

(医療機関構造)ブータンでは,首都ティンプーのJDWNR病院が国内医療機関の頂点となって,すべての下位医療機関からの紹介患者を受け入れています。また,容易にJDWNR病院まで受診できない遠隔地からの遠隔医療相談(テレメディシン)も受けています。

 ブータンでは,国土を3地域(西部10県,中部4県,東部6県)に分け,それぞれの地域にレファラル(搬送先)病院が指定(西部:JDWNR病院,中部:Gaylephug病院,東部:Mongar病院)されています。

 これらの地域レファラル医療機関の下には,20ある各県にそれぞれ医師が数名ずつ配置された県病院(District Hospital)が原則的に少なくとも1つ(国内合計で約30施設)あり,また,医師と看護師,Health Assistantが配置されたグレード1基礎保健所(Basic Health Unit 1(BHU1))も加えて,地域医療の最前線を担っています。

 これら以外に,各県内それぞれ数か所にHealth Assistantのみが配置されているグレード2基礎保健所(Basic Health Unit(BHU)2)が合計で約200施設設置されており,簡単な診療や出産,小児の定期予防接種,各種保健指導などを含むプライマリケアを提供しています。さらに,BHUの下には,それぞれ複数のOutreach Clinic (ORC)と呼ばれる出張診療所も設けられています。

(5)病院受診時のアドバイス

 ブータン国内でCTスキャンやMRIを有する総合病院はJDWNR病院のみで,中部・東部のレファラル病院や県病院レベルでは,専門医が不在であったり,診断,検査,手術が満足にできないことも想定されますので注意してください。

 また,現時点でブータン国内に心臓カテーテル検査を実施している医療機関がないため,虚血性心疾患などの基礎疾患をお持ちの方は,ブータン渡航前に主治医と十分に相談をしてください。

5.かかり易い病気・怪我

(1)呼吸器感染症(感冒,インフルエンザなど)

 日本同様に通年的に呼吸器感染症はもっとも多く見られ,特に冬期には最低気温が氷点下となり,風邪や咽頭炎,インフルエンザなどが多くみられます。

(2)消化管感染症(旅行者下痢症)

 下痢症,赤痢,腸チフス,ジアルジア症などが報告されています。特に,気温が上昇し,降雨が増え湿度が上がる夏季には注意が必要です。

(3)高地障害

 ブータンの国土の多くは標高の高い山岳地帯となっています。首都ティンプー,空港のあるパロ,中部のトンサなどの都市の標高は約2,000~2,400メートル程度です。これらの都市に滞在する場合,運動したときの息切れや,人によっては高地による若干の影響(山酔い)が出る場合もありますが,一般的に重症の高地障害(肺水腫や脳浮腫)の心配は不要と考えられます。

 一方,都市と都市の間の移動は,3,000メートルを超える標高の高い峠を越えることが多く,また,高峰が連なる北西部のトレッキングツアーでは,4,000メートルに迫るコースが含まれることがあり,厳しい高低差を進むものもあります。

(4)皮膚感染症

 地方部を訪問する場合,季節によっては(特に6月~9月の雨季),ノミやダニ等に注意する必要があります。屋外での活動ではこれらに刺されないよう,長袖,長ズボンを着用するなどの対策を取りましょう。

 保健省の報告によれば,近年,疥癬の報告が増えています。安宿の寝具,トレッキングツアーのレンタルシュラフなどには注意を要します。

(5)眼科感染症

 結膜炎で病院を受診する人が年々増加しており注意が必要です。

(6)外傷(転落,犬咬傷,交通事故など)

 毎年約8,000件の転落事故,約5,000件の犬咬傷,約2,000件の交通事故患者が首都ティンプーの基幹病院を受診しています。観光地でも足場が悪い場所が少なくなく,特にトレッキングなどで山岳地帯を訪れる場合には,転落などの外傷に注意が必要です。

(7)蚊が媒介する感染症

 ブータンの南部インドとの国境地域(サルパン県,チラン県,シェムガン県,サムドゥプ・ジョンカル県など)では,標高が低く高温多湿のため,マラリア(熱帯熱マラリア43%,三日熱マラリア57%:WHOデータ)が発生していますので,蚊に刺されないように注意が必要です。また,日本脳炎,デング熱,チクングニャ熱も報告されています。

(8)狂犬病

 ブータン国内では市街地でも野犬を多く見かけ,人や動物の狂犬病症例がしばしば報告されており注意が必要です。野生動物との接触,接近は可能なかぎり避けるべきです。

6.健康上心がける事

 医療水準や地理的条件および国内の交通事情から,ブータン国内では高度な医療へのアクセスは容易でないと考え,日ごろから健康管理と衛生的な食生活を心掛けてください。

 特に基礎疾患をお持ちの方は,ブータン滞在中の基礎疾患の管理方法について,渡航前に主治医とよく相談してください。現地での医薬品の入手は困難であると考え,可能であれば必要な医薬品は持参する方が無難です。

 また,万一に備えて,渡航前に緊急移送を含む十分な補償内容の海外旅行保険に加入されることをお勧めします。

7.予防接種(ワクチン接種機関を含む)

現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)

(1)赴任者に必要な予防接種(成人,小児)

 ブータン入国の際に義務付けられている予防接種はありません。

 成人では,A型肝炎,B型肝炎,日本脳炎,破傷風,腸チフス,狂犬病に対して免疫を付けておくことをお勧めします。

 小児については,日本で行われている定期予防接種に加え,A型肝炎,B型肝炎,腸チフス(2歳以上),狂犬病の予防接種を受けられることをお勧めします。

 短期間のブータン旅行の場合,旅行の形態にもよりますが,少なくとも経口感染症であるA型肝炎と腸チフスの予防接種を受けられることをお勧めします。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

ブータンの小児定期予防接種一覧
  初回 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
BCG 出生時          
ポリオ(OPV)出生時 6週 10週 14週      
B型肝炎 出生時 6週 10週 14週    
DPT 6週 10週 14週 24か月    
Hib 6週 10週 14週      
Td 6歳 12歳        
MR 9か月 24か月        
HPV 12~18歳 1回目の2か月後 1回目の6か月後      
ビタミンA 6か月 12か月 18か月 24か月 30か月 36か月

出典:WHOデータを改変(2014年)

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 特にありませんが,上述の小児定期予防接種を受けていることが前提とされます。

8.病気になった場合(医療機関等)

◎首都(ティンプー)

(1)Jigme Dorji Wangchuck National Referral (JDWNR) Hospital

所在地:Post Box:128,Thimpu,Bhutan
Memorial Chorten からGongphel Lam の道沿い。)

電話:322496~7,322420,322620,324234,321811,325152,325245

FAX:325384

概要:1972年に設立され第3代国王の名を冠するブータン最大の国立病院です。350床を有し,西部地域のレファラル病院であるとともに,ブータン全土の搬送先病院としての位置づけも果たしています。
内科,外科,小児科,新生児科,産婦人科,歯科,麻酔科,整形外科,眼科,精神科,耳鼻科,皮膚科,救急科,放射線科,病理検査,リハビリ科,薬局などがあります。(JDWNR病院には伝統医学科がなく,市内には別に伝統治療院があります。)
検査としては,レントゲン,CTスキャン,MRI,上部消化管内視鏡(胃カメラ),下部消化管内視鏡(大腸カメラ),超音波検査(心臓,腹部),などが行なわれ
ています。

 シニア医師受診や健康診断を希望する場合,JDWNR病院内に「特別専門医外来」(Special Consultation Service:旧病院の地上階に受診受付)が設けられています。月曜日から金曜日の午後4時から7時までで,前予約(予約電話番号:77357700,77357701,17613354)が必要です。

 「京都大学ブータン友好プログラム」の一環として2013年より開始された京都大学病院からの医師派遣と医療技術支援により,2014年8月現在,京都大学病院から日本人医師2名と看護師2名が約3か月交代で派遣されており,医師の専門に応じて診療を行っています。

診療時間 月曜日~金曜日 9時-15時 土曜 9時-13時(時間外救急対応あり)

http://www.jdwnrh.gov.bt/別ウィンドウで開く

〇パロ(県病院)

(1)Paro Hospital

所在地:パロ市街地の西,空港から車で約15分の山の中腹に位置します。

電話:+975-8-271228,+975-8-272631

FAX:+975-8-271467

概要:ブータンの玄関口であるパロ県に1997年に設立された,病床数40床の地域基幹病院です。空港からは,車で約15分程度の距離に位置しています。
所属医師は5名(産婦人科医師1名,総合診療医1名,若手医師(General Duty Medical Officer:GDMO)3名,)で,これ以外に伝統医療医師が3名います。
看護師は約20名。
診療科は内科,産婦人科,伝統医療科。外科手術は行なわれておらず,帝王切開が必要な場合には,車で1時間程度の首都ティンプーのJDWNR病院に移送されます。医師は全員が病院敷地内に住んでいるので,夜間は必要に応じて看護師が呼び出す体制をとっています。
検査は,一般レントゲン,超音波検査(一般,産科のみ),血液検査等が可能。
個室(キャビン)は3床あり,個室料金(Nu250/日)が必要です。

診療時間:月曜日~金曜日(9時~15時)土曜日(9時から13時)

〇モンガル(東部地域レファラル病院)

(1)Mongar Regiona Referral Hospital

所在地:モンガルの市街地の北のはずれに位置します。

電話:+975-4-641131/641112

FAX:+975-4-641172

概要:1975年に設立され,2008年に新病院移転された117床を有する東部地域のレファラル病院。診療科は内科,整形外科,小児科,産婦人科,放射線科,麻酔科で,医師数は12名,看護師数75名。産婦人科手術,整形外科手術などが行われています。
血液検査,レントゲン検査,超音波検査(腹部,心臓,産婦人科),心電図検査が可能ですが,CTスキャン,MRI,内視鏡,消化管造影検査などはできません。
東部地域の中核病院ですが,すべての診療科や検査設備があるわけではなく,必要があれば西部のJDWNR病院に紹介されることになります。

9.その他の詳細情報入手先

10.一口メモ

医療機関やホテル,レストランでは,多くの場合,英語が通じます。

(参考資料)Annual Health Bulletin-2014, ブータン保健省

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