世界の医療事情

ジンバブエ

平成30年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 ジンバブエ共和国(国際電話国番号263)

2 公館の住所・電話番号

在ジンバブエ日本国大使館(毎週土日休館)
住所:4th Floor Social Security Centre, Corner Julius Nyerere Way/ Sam Nujoma Street
電話:+263 242 250025/6/7
ホームページ:https://www.zw.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

(注)土日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので,ご覧ください。

4 衛生・医療事情一般

(1)気候,衛生状態

 ジンバブエはアフリカ南部の内陸国で,国土の約2分の1以上が標高1,100~1,500メートルの高地に位置します。首都ハラレは標高1,500メートルの高地にあり,年間を通じてしのぎやすい気候となっています。季節は大きく5月~10月までの乾季と11月~4月までの雨季に分かれます。6~8月は1日の寒暖の差が激しく,日中は暖かいですが朝晩の気温は10度以下にまで下がります。逆に最も暑い時期は雨季入り前の10月で,日中の最高気温は30度以上に達します。

 当国の衛生状態は地域によっても大きく異なってきますが,2000年以降の政治や経済の混乱から非常に悪化しています。ハラレ市においてもインフラの老朽化や整備の遅れがあり,上下水道や電気などの供給が十分でなく,井戸水を利用し自家発電を必要とする地域が多くみられます。また,ハラレ市の人口密集地区では,汚物漏出やゴミの集積等による生活用水の汚染を原因として,コレラや腸チフス等の経口感染症が繰り返し集団発生しています。

(2)医療事情

 医療制度に関しては,公的医療機関を利用する場合は,地域の診療所から順に郡病院・州病院,そして首都ハラレにある国立総合病院を頂点とするリファラル制度を取っています。総じて公的医療機関は政府の財政難等のために必ずしも衛生的ではなく,医薬品や衛生材料も払底しており,現地住民の受診で混雑していて,邦人の利用には適していません。他方,都市部には富裕層や外国人を中心に利用されている中規模の私立病院や個人クリニックがあり,邦人の利用実績もあります。ただし私立病院では,外来受診時,諸検査時,入院時などにその都度,保証金や前払いを求められますので,受診に際しては十分な額の現金(米ドル)を持参してください。

 医療水準については,2000年頃まではアフリカの中でも施設・スタッフ共に比較的整った国でありましたが,2008年から2009年のハイパーインフレ以降は医療関係者の頭脳流出が続き,更に逼迫する経済情勢もあいまって,保健・医療水準は大幅に低下しています。専門治療が受けられるのはハラレ市,ブラワヨ市の都市部に限られおり,地方の医療水準はことさら厳しい状況です。医療へのアクセスと質を国際比較したHealthcare Access and Quality(HAQ)indexでは,ジンバブエは第174位(195か国中)と報告されています(2016年調査)。医療処置に関しては,全身麻酔を要するような手術や複雑な処置を当国で受けることには大きなリスクを伴います。例えば,急性心筋梗塞に対してカテーテル治療が行える専門施設は国内にありません。このため,簡単な応急処置を除いて,当国での医療機関の利用は最低限に留めて,南アフリカや欧州などの医療先進国で治療を受けた方が賢明といえます。

 このような当国の医療事情を考慮すると,当国に滞在される方は,医学的な緊急事態に備えて,高額な国外への緊急移送費をカバーできる海外旅行傷害保険に入られておくことを推奨します。

5 かかり易い病気・怪我

(1)経口感染症

 病原微生物に汚染された食べ物や水から経口的に感染します。当国で罹りやすい経口感染症として,コレラ,腸チフス,細菌性赤痢,A型肝炎等があります。

 コレラは2008年に首都ハラレで発生したものが,半年で全土に広がり2009年にかけて10万人が感染し,4,000人以上の死者を出す未曾有の大流行となりました。その後も,コレラは散発的に集団発生しており,特にハラレ市の衛生状態の悪い人口密集地区が発生源となりやすく,2018年9月にも同地区からコレラの感染が拡大し,政府が災害事態宣言を発令して対応にあたる事態となりました。

 同じく,腸チフスも,水の不安定供給や排泄物による生活用水の汚染等を原因として,国内各地で数千人規模の集団発生がたびたび報告されています。

 このように当国においては,経口感染症のリスクは常時存在するものとして,飲食の衛生にはくれぐれも注意してください(6.健康上心がけること(1)を参照)。

(2)マラリア

 当国は熱帯熱マラリアの発生地域です。首都ハラレを含めて標高が1,300メートルを超える地域でのマラリア感染のリスクは少ないと言われていますが,これより標高の低い地域では感染のリスクが高くなります。ビクトリアフォールズやカリバ湖周辺などのザンベジ川流域の観光地では,年間を通じてマラリアの発生が報告されています。ここ数年,マラリア発生が増えるのは1月~6月で,4月~5月頃に患者数が最多となる傾向があります(年間累積患者数は約40万人,死亡数は500人以上です)。

 マラリアは,主に夜間に活動するハマダラカの吸血によって感染します。蚊に刺されないようにすることがマラリア予防策の基本であり,マラリア流行地へ出かけるときには,防蚊対策(明るい色の長袖・長ズボン,靴下の着用,昆虫忌避剤の使用,蚊帳の使用,夜間の不要な外出を控える等)を必ず行ってください。訪問地と滞在期間ならびに活動形態によっては,マラリア予防薬の内服が勧められますので,渡航前に医師と相談されてください。

 熱帯熱マラリアの潜伏期は7日~30日です。マラリア流行地に入ってから7日目以降にマラリアを疑う症状(高熱,頭痛,悪寒,関節痛,下痢等)が出た場合には,速やかに医療機関を受診してマラリア検査を受けてください。熱帯熱マラリアは,治療が遅れると命にかかわるため早期の受診が重要です。なお,当国の熱帯熱マラリアはクロロキン耐性が進んでいます。治療薬としては,アルテメテル/ルメファントリン配合錠(Coartem®もしくはRiamet®)が有効です。

(3)住血吸虫症

 淡水に生息する巻き貝を中間宿主とするビルハルツ住血吸虫の幼虫が皮膚から浸入することで感染します。国内各地で感染が報告されており,池,湖,流れの遅い川等の淡水に入ったり,泳いだりしないでください。

(4)HIV/AIDS

 当国のHIV罹患率(15-49歳)は13.5 %と高率であり,HIV感染者数は約130万人と推定され,依然として大きな社会問題となっています。HIVの主な感染経路は,①性的接触,②母子感染,③血液を介して,です。通常の日常生活で感染することはありませんが,無防備な性交渉は感染リスクが高いことを意識して行動してください。また,怪我人を手当てする等,他人の血液や体液との接触には注意が必要です。なお,当国でも輸血製剤に対する感染症スクリーニング検査は行われていますが,過去には輸血によるHIV感染が報告されており,当国での輸血は可能な限り避けるようにしてください。

(5)結核

 結核の推定患者数は3万人以上で,そのうち半数以上がHIV感染症を伴っています。当国ではHIV感染症とともに結核も蔓延していますので,使用人の採用などにあたっては注意が必要です。

(6)狂犬病

 当国でも狂犬病による死亡が報告されています。犬のみでなく,他のほ乳類も狂犬病ウイルスを保有している可能性があるため,動物には不用意に近づかないでください。もし,動物に咬まれるなどしたときは,直ちに傷口を洗浄して消毒し,医療機関を受診してください。事前(曝露前)の狂犬病ワクチン接種をうけていても,動物による咬傷等を受傷した場合には,曝露後のワクチン接種が必要となります。

(7)蝿蛆(ようそ)症

 当国には洗濯物に卵を産み付け,孵化した幼虫が皮膚に寄生するプチフライ(ニクバエ)が生息しています。このため,洗濯物は屋内に干すか乾燥機を用いて,屋外に干した場合は,十分にアイロンをかける必要があります。

(8)交通事情と路上強盗

 実際の交通事情が歩行者優先ではなく車優先となっているため,信号機があったとしても自分の目で安全を確認してから道路を横断してください。特に“コンビ”と呼ばれる乗り合いタクシーは交通ルールを守らず危険走行をするため要注意です。一般に車両の走行スピードが速く,整備不良車両も多く,信号機故障もあり,道路事情も悪いため,車の運転には常に注意が必要です。また,交差点等で信号待ちの車の窓を割って金品を奪う,スマッシュ・アンド・グラブという犯罪が発生していますので,助手席等の車外から目のつくところに貴重品を置かないようにしてください。

(9)その他

 近年,当国内のゲームサファリにおいても,トリパノソーマ感染症(アフリカ睡眠病)の危険性が報告されていますので,参加者はツェツェバエに刺されないための防虫対策が必要です。

6 健康上心がける事

(1)経口感染症に対する注意

 飲み水については,ボトル入りの水を購入するか,水道水や井戸水は煮沸したものを飲み,生水を飲まないように注意してください。ハラレ市の上水道は設備の老朽化・水質処理薬の不足から水質悪化が進んでおり,そのままの飲用には適しません。

 外食する際には,屋台など不衛生な店は避け,信頼できるレストランを利用するなどの注意が必要です。当国では停電の頻発によりコールドチェーン(冷蔵運搬,冷蔵保管)は必ずしも維持されておりません。食材を買い求める際に鮮度や生産元を確かめる必要があります。自宅での調理の際にも,十分熱を通し,調理直後に食べるなど食品衛生の基本を守ってください。手洗いの励行等,基本的な衛生観念を意識することが経口感染症の予防には大切です。

(2)有害生物に対する注意

 当国の住宅は一般に網戸がなく窓にネットも張られていないため,ハエや蚊が入り込み易いです。可能であれば防虫対策品を日本から持参されることをお勧めします。外出時の防虫対策としては,服装は皮膚露出を少なくし,露出部ならびに服の上にも昆虫忌避剤(DEET等)を塗布すると効果的です。特に,マラリア流行地に行く際には,必ず防蚊対策(明るい色の長袖・長ズボン,靴下の着用,昆虫忌避剤の使用,蚊帳の使用,夜間の不要な外出を控える等)を行ってください。

 その他には,住血吸虫症予防のため,川や湖などの淡水には入らないでください。また,当国には毒蛇が生息していますので,庭やゴルフ場の茂み等では注意が必要です。

(3)気候への対策

 ハラレ市は標高が高いため,年間を通じて日差しの有無で気温が大きく変わります。湿度が低く汗がすぐ蒸発するため,水分補給を怠ると脱水状態になりやすいので注意してください。また,常に日差しが強いため,冬季でも屋外に出る場合は,帽子・サングラスや日焼け止めクリームを使うなどして,紫外線対策を行ってください。また,乾季の6月~8月は朝晩の気温が低く,最低気温は10℃以下となりますので,暖かい衣類等の寒さ対策も必要です。乾期は湿度が低くなり,時には20%程度と極端に下がりますので,保湿クリームの使用や寝室の加湿などの対策をお勧めします。

(4)その他

 当国の医療事情を考慮すると,長期滞在される方は,事前に日本で健康状態(歯科を含めて)のチェックを受け,できるだけ必要な治療を済ませておくことをお勧めします。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1)赴任者,長期滞在者に必要な予防接種

 日本から当国に入国する際,検疫上必要な予防接種はありません。

 成人(小児期の定期接種をすべて受けている場合)は,A型肝炎,B型肝炎,破傷風,狂犬病,腸チフス(日本では未認可)の予防接種を推奨します。

 小児は,日本国内での定期予防接種および推奨されている任意接種を可能な限り受けてください。それに加えて,成人と同様に,A型肝炎,B型肝炎(定期接種で受けていない場合),狂犬病,腸チフスの予防接種を推奨します。

 その他に,衛生状態の悪い地域で活動される成人には,経口コレラワクチン(日本では未認可)の接種が検討されます。

 なお,当国でもワクチン接種が行える医療機関はありますが,停電によりワクチンの温度管理が難しい状況にあり,かつ在庫状況も不安定です。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

 当国の小児定期予防接種は,必須とされるワクチンの種類や,接種回数,時期が日本と異なっています。

表1 ジンバブエの小児定期予防接種一覧
ワクチン 初回 2回目 3回目 4回目
(追加接種)
BCG 出生時      
ポリオ(OPV) 6週 10週 14週 18ヶ月
5種混合ワクチン
(DPT+B型肝炎+インフルエンザ菌b型)
6週 10週 14週  
DPT       18ヶ月
麻疹(はしか) 9ヶ月      
肺炎球菌 6週 10週 14週  
ロタウイルス 6週 10週    

DPT:(3種混合)ジフテリア,百日咳,破傷風
OPV:経口ポリオワクチン

(3)現地校に入学・入園する際に必要な予防接種

 ハラレ市にあるインターナショナルスクールでは,入学手続の際に,予防接種証明(英文)が必要です。必要な予防接種の詳細につきましては各校に直接お問い合わせください。

8 病気になった場合(医療機関等)

(1)救急搬送会社

 公的な救急搬送システムがないため,緊急時や自力受診が困難な場合には,民間の救急搬送会社を利用する必要があります(長距離搬送については保険会社からの支払いの保証が求められます)。

(a)ACE社
救急車搬送と長距離の医療航空機搬送を行っています。ハラレ市,ビクトリアフォールズに支所があります。
電話: \0782 999 901(HOTLINE)
(b)MARS社
ハラレ市,ビクトリアフォールズを含めて国内に10カ所の支所があります。
電話:(0242)771221,0712 600 002(HOTLINE

(2)医療機関

 当国の公的医療機関は邦人が利用するには厳しい状況にあるため,邦人の利用実績がある私立病院・個人クリニックを中心に紹介します。(なお,電話番号は通信会社の事情により頻回に変更があるためご注意ください。)

ハラレ市

(a)Avenues Clinic(私立総合病院)
所在地:Corners Baines and Mazoe Street, Harare
電話:(0242)251180(24時間),(0242)251190(一般)
ホームページ:http://www.avenuesclinic.co.zw/別ウィンドウで開く
概要:病床数176床,集中治療室と手術設備のある私立総合病院です。24時間体制の救急外来があり,救急初期対応が受けられます。初期対応後に専門医の診察が必要となった場合には,オンコールの専門医が呼ばれる体制となっています。検査は,血液検査,超音波検査,CT検査,MRI検査(予約のみ)が可能です。内科,外科,小児科,産婦人科,整形外科,脳外科,心臓外科,耳鼻咽喉科,眼科,泌尿器科,麻酔科,腫瘍科,歯科・口腔外科の専門医が登録されています(専門医は病院に常駐しておらず,自分の診療枠・手術枠がある日に病院に来て診療を行う方式です)。
(b)Trauma Centre Borrowdale(私立有床診療所)
所在地: 1 Borrowdale Lane,Borrowdale,Harare
電話:0776 133 599, 0773 174 123(24時間),(0242)886921(一般)
ホームページ:http://traumazim.com/別ウィンドウで開く
概要:24時間対応の救急外来を主とした診療所です。救急初期対応が受けられます(各科の専門医は常駐していません)。検査は血液検査,超音波検査,CT検査が可能です。集中治療室を含めた入院設備があります。救急外来の他に,成人のワクチン接種も可能です。
(c)Dr. Shagufta Nasir (個人クリニック・総合診療医)
住所:Third Floor, Medical Chambers, 60 Baines Avenue, Harare
電話::(0242)705733,0712 402 214
概要:小児,成人の一般外来診療。診察時間は平日9時30分~16時(木・土曜日は半日)。事前予約が必要。
(d)Dr. Greg Powell (個人クリニック・小児科医)
住所:53 Baines Avenue, Harare
電話:(0242)700947
概要:小児の一般外来診療。小児の公的定期予防接種が可能。診察時間は9時~13時(月・火・木・金曜日),14時30分~17時(水曜日)。事前予約が必要。
(e)Dr. Farayi S. Moyana (個人クリニック・歯科医)
住所:First Floor, Medical Chambers, 60 Baines Avenue, Harare
電話:(0242)792309
概要:歯科の一般外来診療。診察時間は平日8時~17時(土曜日は半日)。事前予約が必要。

ビクトリアフォールズ

 ビクトリアフォールズの医療機関は,プライマリーケアの対応までで専門治療は行えません。緊急で専門治療を要する場合は,国外(南アフリカ)の医療機関への緊急移送が必要となります。

(a)The Health Bridge Private Hospital(私立有床診療所)
所在地:95 West Drive, Victoria Falls
電話:(0213)2846634
概要:総合診療医が勤務している有床診療所です。24時間対応(オンコール体制)の救急外来があります。検査は血液検査,単純X線,超音波検査が可能です。成人のワクチン接種も行っています。支払いは,国際クレジットカード(VISA,Master)が使用可。
(b)Chinotimba Medical Centre(私立有床診療所)
所在地:5020 Chinotimba Township, Victoria Falls
電話:(0213)2843144
概要:総合診療医が勤務している有床診療所です。24時間対応の救急外来があります。検査は血液検査,単純X線,超音波検査が可能です。成人のワクチン接種も行っています。支払いは,国際クレジットカード(VISA,Master)が使用可。

9 その他の詳細情報入手先

(1)在ジンバブエ日本国大使館:https://www.zw.emb-japan.go.jp/別ウィンドウで開く

(2)厚生労働省検疫所:https://www.forth.go.jp/別ウィンドウで開く

(3)米国疾病予防管理センター(CDC)Travelers' Health:https://wwwnc.cdc.gov/travel/別ウィンドウで開く

(4)世界保健機構(WHO)ジンバブエ事務所:https://afro.who.int/countries/zimbabwe/別ウィンドウで開く

(5)ジンバブエ保健・育児省:http://www.mohcc.gov.zw/別ウィンドウで開く

10 現地語・一口メモ

 当地の医療機関では英語による予約,診察,説明が受けられます。「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照ください。

 本稿は2018年10月時点の状況ですが,気候変動や当国の社会情勢の混乱によって医療衛生事情が短期間で大きく変化する可能性があります。常に最新の情報に基づいて行動してください。


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