世界の医療事情
チュニジア
1 国名・都市名(国際電話国番号)
チュニジア共和国(国際電話番号216)
2 公館の住所・電話番号
- 在チュニジア日本国大使館(毎週土曜日、日曜日休館)
- 住所:Ambassade du Japon, 9 Rue Apollo XI, Cité Mahrajène 1082 Tunis, Tunisie
- 電話:71-791-251、71-792-363、71-793-417
- ホームページ:在チュニジア日本国大使館
(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。
4 衛生・医療事情一般
(1)気候・地誌
地中海に面した北アフリカの中央付近に位置し、南北に延びる国土(16万3千km2、日本の約5分の2)に約1,200万人が住んでいます。北部や東部は地中海に面し、北西部はアトラス山脈から続く山地であり、そこから流れるメジェルダ川が北東部に豊かな平野を作っています。南部はサハラ砂漠に連なっています。夏期(6から8月)は沿岸部のチュニスでも40度を超し、内陸部ではさらに高温となります。冬期(12から2月)は雨が降り、比較的温暖ですが、防寒対策は必要です。沿岸部は地中海性気候、中部はステップ気候、南部は砂漠気候になっています。
(2)衛生事情
水道水は硬質、塩素殺菌が強く、老朽化した建物ではにごりのある水が散見されるため、飲水には、市販のミネラルウオーターや浄水器の使用が推奨されます。特に夏は食中毒も起きやすいため、外食時には衛生状態のよいレストランをご利用ください。
(3)医療事情
医療先進国である日本と比較すると、医療者数や医療機器が少なく、特に首都以外は、医療施設が少なく、内陸部は医療過疎地です。国立病院(オピタル)は医療者や医薬品の不足、設備の老朽化などを認める事が多いです。
私立の医療施設には入院設備をもつクリニックとよばれる私立病院と、開業医の診療所であるキャビネがあります。開業医診療所を受診し、検査が必要な場合は、医師の処方箋(ordonnance)を持ち、画像検査施設(radiologie)や、血液検査施設(laboratoire)にて実施します。私立の医療施設は、概して設備、医療者が充実しているため、可能な限り私立の病院、医院のご利用をお勧めします。
急な病気、けがによる受診に備え、海外旅行保険に加入することをお勧めします。特に重篤な状況で、国外の医療先進国への緊急移送を希望する場合、費用が大変高額となるため、治療費、緊急移送サービスを十分にカバーすることが望ましいです。
市販の解熱鎮痛薬や消毒薬などは薬局にて購入可能ですが、医薬品の流通が不安定であることや、日本の医薬品と同等のものがないこともあるため、旅行中に必要な薬は持参し、長期滞在される方は、重要な薬の処方や治療が受けられるかを事前に検討してください。処方医薬品を持参する場合は、英語で記載された医師からの診断書(薬品名も含む)を、薬と一緒に携帯することをお勧めします。
5 かかりやすい病気・怪我
チュニジアには、マラリア、デング熱、黄熱はありませんが、滞在中は以下の点にご注意ください。
(1)交通事故
交通事故死亡率は日本の4倍と推定され、特に夜間の交通事故が多いとの報道です。交通ルールを守らない車も多く、歩行者、運転者とも、十分な注意が必要です。
(2)熱中症
夏期は高温で乾燥します。脱水に注意し、こまめに水分及び電解質の摂取を心がけましょう。太陽光線も強いため、ぼうし、サングラス、日焼け止めなども必要です。
(3)狂犬病
当地では野犬が多く、狂犬病による死亡者も毎年5名近くおり、最近は増加傾向にあるため、問題となっています。
狂犬病は、狂犬病ウイルスによる感染症で、一旦発症するとほぼ100%死亡します。ウイルスに感染したイヌやネコ、コウモリなどのほ乳類の唾液中のウイルスが、傷、または目、口などの粘膜から体内に侵入し、感染します。
動物に噛まれる、ひっかかれた、傷口、目、口をなめられた等の場合は、早急に石けんと水で15分程度、傷と周囲をよく洗い、消毒薬があれば使用してください。傷の程度により、狂犬病ワクチン(仏語:Vaccination Antirabique)などの対応(暴露後予防接種)が必要となりますので、チュニスのパスツール研究所(8項参照)や近くの医療機関を受診してください。ワクチンが必要と判断された場合の費用は無料です。
- 狂犬病ワクチン、渡航者用ワクチン外来専門:Institut Pasteur de Tunis(チュニス・パスツール研究所)
(4)旅行者下痢症
原因となる細菌やウイルスに汚染された食品・水を摂取したことにより熱や下痢、嘔吐などの症状が生じます。高熱、腹痛、血便、嘔吐により水分が十分に摂取できない場合は医療機関の受診が必要な目安です。火の通ったものをすぐに食べる、生ものなどは衛生状態のよいレストランをご利用ください。
(5)ウエストナイル熱、皮膚リーシュマニア症、サソリ刺症
蚊によって媒介されるウエストナイル熱が9月から12月にかけて報告されています。チュニジアの海岸線地域は古くから流行地域として知られ、3から4年の周期で流行します。無症状のことも多いですが、感染者の1%が髄膜炎などにより重症化し、その致死率は3から15%です。内陸部・南部には、サシチョウバエ(小さなブユのような虫)に刺されることにより寄生虫が感染し、皮膚に潰瘍や腫瘤などをつくる、皮膚リーシュマニア症が発生しています。砂漠地域には、毒をもつサソリが生息しています。虫よけスプレーや肌を露出しない衣服で予防してください。
6 健康上心がけること
長時間のフライト、日本との時差(8時間)、夏季の高温などによる疲労を考慮し、渡航中、無理のない予定を立ててください。古い石畳や舗装が不十分な道も多いので、歩きやすい靴を履き、捻挫や転倒にご注意ください。2月から5月にかけて、花粉(スギ、ヒノキ、ミモザなど)が飛散しアレルギー症状がでることもあります。
7 予防接種(ワクチン接種機関含む)
(1)渡航前に検討する予防接種
入国するにあたり、接種が義務づけられたワクチンはありません。
渡航前に、A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、破傷風、滞在期間や生活環境により狂犬病を接種することをお勧めします。
(2)現地の小児定期予防接種一覧(保健省2023年3月版)
ワクチンの種類 (le vaccin de) |
出生時 | 2か月 | 3か月 | 4か月 | 6か月 | 11か月 | 12か月 | 18か月 | 6歳 | 7歳 | 12歳 | 18歳 |
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BCG (le BCG) |
BCG | |||||||||||
ジフテリア (la diphtérie ) |
Pentavalent-1 | Pentavalent-2 | Pentavalent-3 | DTC4 | dT | dT | dT | |||||
破傷風 (le tétanos) |
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百日咳 (la coqueluche) |
||||||||||||
インフルエンザ菌b型(Hib) | ||||||||||||
B型肝炎 (l’hépatite B) |
HBV | |||||||||||
肺炎球菌 (le pneumococcique) |
PCV1 | PCV2 | PCV3 | |||||||||
不活化ポリオ (la polio injectable) |
VPI | VPI | VPI | |||||||||
経口生ポリオ (la polio oral) |
VPO | VPO | VPO | VPO | ||||||||
麻疹 (la rougeole) |
RR-1 | RR-2 | ||||||||||
風疹 (la rubéole ) |
||||||||||||
A型肝炎(l'hépatite A) | VHA | VHA |
(注)水痘(みずぼうそう)ワクチンは、当国では入手できません。
(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明
入学に際しワクチン接種証明の提出を求められます。接種履歴の分かる記録をご持参ください。
8 病気になった場合(医療機関等)
前述のとおり、受診にあたっては、可能であれば私立医療機関を受診することをお勧めします。
平日に診療を受ける場合は、それぞれの専門科の開業医診療所(キャビネ)へ、事前に予約を取ってから受診します。緊急に受診が必要な場合は、私立病院(クリニック)の24時間開いている救急外来(Urgence)を受診します。
救急車には公共サービスによるものと、民間会社によるものがあります。公共の救急車はダイアル「190」のSAMUまたは、ダイアル「198」のprotection civileを呼びます。交通事故の場合は、公共の救急車のみが対応します。受診を希望する病院へ連絡すると、民間救急車を手配してもらえることも多いです。
受診の際は身分証明書の提示を求められることがあります。英語が通じる医療者もいますが、多くは公用語のアラビア語またはフランス語が必要となります。私立病院の多くはクレジットカード払いが可能で、開業医診療所は現金支払いとなることが多いです。
(首都)チュニス
民間の救急車(Allo Ambulance):71-959-000、71-959-200、24-781-000
24時間受診が可能な救急外来(Urgence)があり、外国人の受け入れに慣れている。
私立の総合病院(順不同)
- (1)les cliniques El Manar
- 所在地:Rue Habib Echatti, 2090, El manar-1, Tunis
- 電話:71-885-000
- ホームページ:les cliniques El Manar(フランス語)
- (2)Clinique AMEN Mutuelleville
- 所在地:20, rue Aziza Othmana, Mutuelleville, 1082, Tunis
- 電話:70-016-340
- ホームページ:Clinique AMEN Mutuelleville(フランス語)
- (3)Clinique AMEN La Marsa
- 所在地:15, Avenue de la République, 2078, la Marsa, Tunis
- 電話:71-749-000
- ホームページ:Clinique AMEN La Marsa(フランス語)
- (4)Clinique Soukra
- 所在地:Rue Cheikh Mohamed Enneifer, 2036, La Soukra,Tunis
- 電話:36-406-300
- ホームページ:Clinique Soukra(フランス語)
- (5)Clinique Hannibal
- 所在地:Cité les pins, Les Berges Du Luc II, Tunis
- 電話:36-031-300
- ホームページ:Clinique Hannibal(フランス語)
- (6)Polyclinique Les Berges du Lac/ Clinique Cardiovasculaire et General du LAC
- 所在地:Rue du lac de constance, les Berges du lac, Tunis
- 電話:71-960-000
- ホームページ:Polyclinique Les Berges du Lac/ Clinique Cardiovasculaire et General du LAC(フランス語)
- (7)Carthagène Centre Hospitalier International
- 所在地:Centre Urbain Nord, 1082, Tunis
- 電話:(代表) 31-336-336、31-336-355、(Whatsapp)58-520-023
- ホームページ:Carthagène Centre Hospitalier International(フランス語)
- (8)Polyclinique Les Jasmins
- 所在地:Lot E 18 Centre Urbain Nord, 1003, Tunis
- 電話:36-089-000
- ホームページ:Polyclinique Les Jasmins(フランス語)
歯科
- (1)Dr. Elyes KHROUF D.D.S.
- 所在地:Rue du Lac Tchad, Immeuble Kanzet, Bloc B Bis Appt.B1, Les Berges du Lac 1053, Tunis
- 電話:(受付)20 55 44 44、(緊急時)98 52 55 91
- 概要:日本の歯科大学に留学し、英語、簡単な日本語の対応が可能。
一般歯科診療、インプラント専門医。月曜日から金曜日8時から17時。要予約。
狂犬病ワクチン、渡航者用ワクチン外来専門
- (1)Institut Pasteur de Tunis(チュニス・パスツール研究所)
- 所在地:13 place Pasteur, Belvédère, Tunis
- 電話:(代表)71-783-022または71-843-755、(渡航者ワクチン接種)71-844-780
- ホームページ:Institut Pasteur de Tunis
- 傷ができ狂犬病予防接種が必要な場合(暴露後接種)は、予約不要。ベルベデール公園前の入口を入り、建物の右を周り、service de vaccination antirabiqueを受診。
パスツール研究所以外で狂犬病ワクチン治療(暴露後接種)を実施しているのは、地域の指定された国立医療機関や保健所です。最寄りの医療施設や保健所などで実施施設をご確認ください。
渡航者用ワクチン外来(Vaccinations Internationales)では、暴露前(予防的)の狂犬病予防接種や黄熱病ワクチンなどの渡航者に必要なワクチン、渡航前相談が可能。サイト内でオンライン予約も可能。
検査専門機関
- (1)Laboratoire de Biologie Médicale Dr.Farah Messai Mahjoub
- 所在地:Hannibal Médical Center,1er étage Cabinet 1.06 Cite Les Pins, Les Berges du Lac II, Tunis
- 電話:71-267-322、50-551-792
- (2)Laboratoire Gargouri
- 所在地:Residence Farah Lake, Lac II, Tunis
- 電話:71-267-099、24-770-477
ハマメット(チュニスに近いリゾート地)
- (1)Polyclinique Hammamet(私立)
- 所在地:Avenue des Nations Unies, Hammamet
- 電話:72-266-000
- ホームページ:Polyclinique Hammamet(英語)
スース(チュニジア第3の都市)
- (1)Clinique Les Oliviers(私立)
- 所在地:Boulevard du 14 Janvier, Sousse
- 電話:73-242-711、73-242-709
- ホームページ:Clinique Les Oliviers(フランス語)
スファックス(チュニジア第2の都市)
- (1)Polyclinique ELALYA(私立)
- 所在地:Route el Aïn km 2, Sfax
- 電話:74-462-000
- ホームページ:Polyclinique ELALYA(英語)
ジェルバ島(チュニジアのリゾート島)
- (1)Hôpital Régional Sadok M’kaddem(国立病院)
- 所在地:Ave.Habib Bourgiba Houmet Hssouk 4180, Djerba, Mednine
- 電話:75-106-000、75-650-103、75-650-018
- ホームページ:Hôpital Régional Sadok M’kaddem(英語)
- 狂犬病ワクチン(暴露後接種)が接種可能(救急外来)
9 その他の詳細情報入手先
- チュニジア保健省ホームページ(フランス語)
- 在チュニジア日本国大使館領事部E-mail:eoj.consul@en.mofa.go.jp
10 一口メモ
英語を話す医療者もいますが、基本的には公用語のアラビア語(チュニジア方言)またはフランス語です。「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ「もしもの時のアラビア語、フランス語、医療英語」を参照願います。