世界の医療事情
ナイジェリア
1 国名・都市名(国際電話番号)
ナイジェリア連邦共和国(国際電話番号234)
2 公館の住所・電話番号
- 在ナイジェリア日本国大使館(毎週金曜日午後、土曜日、日曜日休館)
- 住所:No. 9, Bobo Street (off Gana Street), Maitama, Abuja, Nigeria
- 電話:+234-(0)90-6000-9019, +234-(0)90-6000-9099
- ホームページ:在ナイジェリア日本国大使館
(注)上記以外の休館日は毎年にホームページにて案内していますので、ご覧ください。
4 衛生・医療事情一般
最南部は熱帯モンスーン気候、中央部から北部はサバナ気候に分類されます。南部一帯は年間を通じて高温多湿です。北部地域のなかでも、標高の高い地域では比較的涼しく湿度もそれほど高くなりませんが、雨季にはほとんどの地域で湿度が高くなります。雨季には全国各地で大雨による洪水被害が出ることがあり、それに伴い水を介する感染症(コレラなど)が流行します。乾季となる10月末から3月(南部は12月から2月)にかけて、ハマターン(またははハルマッタン)と呼ばれる乾燥した風が吹き、街に砂塵を降らせ、眼・呼吸器系や心血管系に影響を与えます。
人口密集地域(特にラゴス)では排気ガス規制を受けない古い車や自動二輪車で道路が渋滞しており、廃棄物の野焼きとともに大気汚染の原因となっています。都市部でも多くは上下水設備が未整備であり、タンクの貯水を使用していることが多く、水道水の飲用は不適切でしょう。非加熱の水や食べ物を口にするのは避けるべきです。飲水用には、きちんとキャップされた市販のボトル入りの水を購入してください。ガス入りの水はガスが抜けていなければ未開封であることが確認できるため安全です。
一般的に手洗い等、衛生観念に乏しい上に、各種感染症の保菌者も多いので、外食時には、非加熱食・加熱後放置時間の長い食物・氷冷物等の飲食は避けるべきです。
医療水準は全体的に教育、臨床、設備レベルともに低く、アブジャ、ラゴスなどの都市部でも邦人の利用に耐えうる医療機関を探すのは困難です。医療機関受診時は現地通貨による前払いが原則であり、検査、治療に合わせて支払いする必要があります。緊急医療についても同様の扱いをされます。高価な医療機器が導入されている一方、その運用が適切ではなかったり、検査結果の評価が不適切であったりすることがあるなど、アンバランスな面が見られます。医療機関や医師によって、設備や医療のレベルや信頼性に大きな差があります。ナイジェリアでの治療が不可能な怪我や病気の場合には、欧州や南アフリカ共和国等への緊急移送が必要になります。移送費はかなり高額で、過去には移送費用として3000万円の請求を受けた事例もありますので、3000万円以上のプランの海外旅行保険への加入を強く推奨します。
日本における119番のような緊急通報システムはありません。自家用車やタクシーなどを使って医療機関を直接受診するか、医療機関に救急車を依頼するしかありません。
都市部で薬局を見つけることは容易です。薬局で入手可能な薬のほとんどは欧州、インド、中国からの輸入薬です。日本では医師処方箋が必須である医薬品でも、処方箋なしで買えることが多いですが、服用に関しては用法、用量、アレルギー、偽薬などに十分注意を払う必要があります。
ナイジェリアの周産期の妊婦及び胎児・新生児の死亡率、乳児死亡率は、世界の中でも極めて高いため、当地での妊娠・出産はお勧めできません。小児の帯同についても慎重に判断する必要があります。
5 かかり易い病気・怪我
(1)ハマターンによる呼吸器疾患
乾季と雨季の変わり目や「ハマターン」と呼ばれるサハラ砂漠からの砂塵の影響で鼻咽頭炎が多く見られます。最初は鼻水やくしゃみ、のどの痛みから始まり、次第に咳や黄色痰がでるようになり、気管支炎や肺炎といった下気道疾患に進展することがあります。細菌感染症を合併した場合には抗菌薬による治療が必要となる場合もあります。
(2)マラリア(Malaria)
WHOによれば、罹患者数及び死亡者数ともに、ナイジェリアが最も多い国とされています。ナイジェリアでは人口の100%がマラリア感染地域で生活しているとされ、アブジャやラゴスなどの都市部でも例外ではありません。ハマダラカ(蚊)を介して感染し、治療が遅れると死に至ることがあります。特に妊婦、乳幼児、小児は進行が速く重症度も高くなりやすいので注意が必要です。感染ハマダラカに刺された後、潜伏期間(7から28日ぐらい)を経て、初期には主として急な高熱、頭痛などの症状が出現します。放置すると貧血や脳症や腎障害といった臓器症状を起こし重症化します。38度以上の高熱が出たら常にマラリアを疑い、発症から24時間以内に治療を開始することが重要です。
対策はハマダラ蚊が主に夜間に活動しますので、夜間(夕方から明け方)の外出はなるべく避けてください。避けられない場合には肌の露出の少ない服装をした上でDEET20から50%含有の虫除け(repellent)を使用してください。昼間のうちに室内に侵入し物陰に隠れている習性もありますので、昼間であっても窓を開け放つのは危険です。外部から蚊が侵入しやすい場合は、夜間就寝中などには虫除けをしみ込ませた蚊帳(Insecticide treated net)の使用をお勧めします。
滞在地域や滞在期間によっては予防薬を内服することもありますので、入国前にトラベルクリニックなどで相談することをお勧めします。病院へのアクセスの悪い地域(24時間以内に信頼できる医療施設に行くことが出来ない)に滞在中に発症が疑われた場合に自己の判断で治療を開始することがあります。しかし、緊急避難的な対策なのでそのような地域に入る際には事前にトラベルクリニックなどでよく相談してください。まず、すみやかに医療機関のある場所に向かう努力をしてください。
前述のとおり潜伏期間が長いので、旅行を終えて日本に戻ってから発症することもあります。日本に帰国した後、38度を超える発熱や頭痛などの症状があれば、できるだけ早くマラリア検査可能な医療機関を受診してください。
日本ではマラリア治療薬を常備している医療機関は限られていますので、以下のホームページを参考にして早期に受診してください。
(3)経口感染症
ア 食中毒
ナイジェリアでは細菌、寄生虫、ウイルスなど様々な原因で急性の下痢を発症します。水様下痢が頻回に見られ発熱を伴う場合は、抗菌薬などの治療が必要になりますので医療機関を受診ください。
イ アメーバ赤痢(amebic dysentery)、ジアルジア症(Giardiasis)
アメーバ赤痢は腸管に感染する原虫によって発症します。絞られるような腹痛と粘血便(いちごゼリー状)が特徴と言われますが、実際には粘血便を伴わないこともあります。慢性に経過した場合、症状はもっと軽微で気づきにくくなります。肝膿瘍など重篤な病状の原因になる可能性もあります。
ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)も原虫の一種で、小腸で繁殖し腸壁に張り付き腸の栄養吸収を妨害します。上腹部痛と血液を伴わない激しい下痢を起こしますが、その後だんだん症状は軽快します。やはり生水などからの経口感染が多く、川などでの水遊びでも感染します。
ウ 腸チフス(typhoid fever)
チフス菌によって汚染された食事などを介して経口感染で起きます。高熱が特徴ですが、日常的な診療では診断がなかなか難しく気づかれずにいる場合がかなりあり、必ずしも下痢にはならず、むしろ便秘が多いとされます。放っておくと腸からの出血や穿孔(穴が開く)、腎不全やショックで重篤な状態になることがあります。自然治癒や不完全治療によって胆嚢へ菌が残り、継続的に便に排菌する感染源となってしまうこともあります。たとえ高級ホテルのレストランの料理人であっても無症状で保菌していることもあり得るため、加熱が不十分である食事には注意が必要です。予防にはワクチンが効果的です。トラベルクリニックでの接種が必要となります。
エ コレラ(cholera)
コレラは、コレラ菌の経口感染によって起こる急性胃腸炎です。症状はコレラ毒素による激しい下痢と嘔吐、それに伴う脱水です。下痢は米のとぎ汁様と言われます。潜伏期間は数時間から5日、通常は1から3日です。激しい脱水のために水分と電解質の補給が必要となり、中等症以上では点滴治療が必要になります。ナイジェリアでは慢性的に感染者がいますが、雨季には飲水へのコレラ菌の混入が増えます。不衛生な未加熱食品や生ものを避けてください。予防接種の効果が認められてきていますが、トラベルクリニックでの接種が必要です。
オ ポリオ(急性灰白髄炎)(poliomyelitis)
ポリオウイルスによるいわゆる小児麻痺ですが、成人にも感染します。感染者の糞便や咽頭分泌物から経口感染します。1から2週間の潜伏期のあと、かぜのような胃腸症状が出て、嘔吐とともに発熱し、3から5日間の高熱のあと麻痺(特に足)が出ます。多くは感染しても無症状で終わる不顕性感染ですが、いったん脊髄麻痺が出れば、麻痺症状が永続的に残る可能性が高く注意が必要です。
2020年8月にWHOよりナイジェリアにおけるポリオウイルス野生株の根絶宣言が出されました。一方、ワクチン由来株による感染が認められています。特に北部の州では感染者が多く、撲滅に向け国際機関と協力して予防接種が行われていますので接種をお勧めします。
(4)ウイルス性肝炎(viral hepatitis)
A型肝炎は、経口感染です。潜伏期15から50日で発症します。38℃前後の発熱、食欲不振、全身倦怠感、尿濃染、黄疸などが症状で、3から4週間で回復します。0.5%程度が重症化・劇症化します。
成人のB型肝炎は、血液感染のみならず性行為による感染があります。B型肝炎ウイルスにより潜伏期1から6か月で発症します。A型肝炎と同様の症状を起こします。2から3%が重症化・劇症化します。
C型肝炎は、C型肝炎ウイルスにより、輸血や不衛生な医療施設での手術などの外科的処置で感染することがよく知られています。潜伏期1から3か月で発症します。症状は軽症ですが、感染のうち70%が持続感染になり慢性肝疾患に進行します。
A型とB型肝炎は、予防接種があります。長期滞在を予定されている方には接種は必須です。
(5)HIV/AIDS
ウイルス感染により慢性進行性の免疫不全症を起こす病気です。血液や体液を介して感染します。無防備な性交渉が主な感染ルートとされています。
(6)結核(tuberculosis)
未診断や未治療の結核患者が多いと推定されています。咳をしているなど感染が疑われる人の近くに行かないでください。結核に感染しても必ずしも咳などの呼吸器症状があるとは限らず、また、肺のみに病巣を作るわけではありません。日本に帰国後に咳や痰以外のだるさや体重減少などあれば、ナイジェリア滞在について医師に告げて結核検査を依頼してください。
(7)髄膜炎菌性髄膜炎(meningococcal meningitis)
髄膜炎菌による髄膜炎を髄膜炎菌性髄膜炎と言います。高熱、出血斑、関節痛などから始まり、痙攣や意識障害といった神経症状に至ります。髄液や血液から髄膜炎菌を検出することにより診断します。流行性に起きるため流行性髄膜炎と呼ばれることもあります。
当国の北部から西側国境地域は、髄膜炎ベルトと呼ばれる世界でも罹患率の高い地域に属しています。その地域には、症状のない保菌者が多数いる可能性があります。くしゃみなどの飛沫を吸い込むことやキス・ペットボトルの回し飲みなどの濃厚接触でも感染する可能性があります。発症すれば隔離入院集中治療が必要となりますので、疑わしいときには大きな病院を受診してください。感染予防のためにはワクチンの接種が必要です。トラベルクリニックなどで接種する必要があります。
(8)麻しん(measles)
麻しんウイルスによる急性ウイルス性発疹症です。ナイジェリアでは毎年のように多数の患者が発生しています。感染力が非常に強く、空気感染もするので、手洗い、マスクのみで予防はできません。麻しんの予防接種が最も有効な予防法のため、。自身の麻しんの予防接種歴を確認し、不足分の予防接種を行ってください。
(9)破傷風(tetanus)
世界中の土の中などの環境に存在する破傷風菌が原因の感染症です。土などで汚れた傷から感染するため、長期滞在者又は野外活動予定者は予防接種を勧めます。最終の接種から10年以上経過した方は予防接種の効果が消失している可能性が高いので、追加接種が必要です。
(10)頻度は低いが重症化の危険性が高い疾患
ア 狂犬病(rabies)
狂犬病ウイルスを持った犬がいますので、野犬には近寄らないように注意してください。狂犬病は犬以外にも猫やコウモリなどの哺乳類にも感染します。狂犬病は発症すると致死率はほぼ100%です。万が一噛まれた場合は、ただちに清潔な流水と石鹸で傷口を洗浄してください。そして、発病予防のためにワクチン(曝露後接種)を接種します。地方に長期滞在予定の方や野生動物との接触が予想される方は、事前の予防接種(暴露前接種)を推奨します。。但し、暴露前接種を行った場合も暴露後予防は必要になりますので、速やかに対応可能な医療機関を受診してください。
イ 黄熱(yellow fever)
ナイジェリアはWHOによる黄熱汚染国にリストアップされています。実際に当地では黄熱の流行が発生しており、致死率が高く特別な治療法が無い疾患のためWHOは黄熱ワクチンの予防接種を推奨しています。また、経由地を含む黄熱汚染国からの入国に際して、生後9か月以上の全ての渡航者は黄熱予防接種証明書(いわゆるイエローカード)が要求されています。WHOは発行後10年経過したイエローカードでも手続きなく生涯有効とする勧告を出しましたが、ナイジェリア政府もWHOの勧告を遵守しており、有効期限が過ぎた証明書も有効との取扱いです。ただし、10年以上経過したイエローカードについて入国の際、有効期限切れとの理由で罰金を要求されるような場合は、職員個人の利益のために行っている可能性がありますので、そのようなケースに遭遇した場合は、職員名や支払い書等の証拠書類と併せて大使館までご連絡ください。大使館は、WHOナイジェリア事務所とも協力して、ナイジェリア保健省にしかるべく対応を要求していきます。なお、ナイジェリアからの渡航者(旅行者を含む)にイエローカードの提示を求める国(例:ガーナ)もありますのでご注意ください。
ウ ラッサ熱(Lassa fever)
ウイルス性出血熱の一疾患として感染症法上の一類感染症に分類されます。西アフリカ一帯に生息する野ねずみであるマストミスが自然宿主です。ラッサウイルスを保有するマストミスの糞や尿に汚染された環境や物品への直接接触、汚染された食品の摂取等で感染の危険が生じます。、食料を室内に放置しないなどの防鼠対策をして下さい。潜伏期は1から3週間で、発熱や全身倦怠感を初発症状とし、続いて頭痛、咳、咽頭痛、関節痛がでてきます。大半が軽症ですが重症化すると出血によりしばしば死に至ります。
エ ペスト(plague)
ネズミなどからノミを媒介して感染するペスト菌(Yersinia pestis)に起因する全身性の侵襲性感染症です。高熱や皮膚に出血をともなう発疹がみられたり、肺への感染が起こると発熱、咳、痰など肺炎の症状が出現したりします。
オ 蛇毒(venom of fanged snake bite or viper)
多くの毒蛇の存在が報告されています。藪や草むらに不用意に入り込まないことが重要です。咬まれた場合には、速やかに地元の医療機関を受診してください。致死性の毒蛇の場合には、医療機関を受診する余裕もないままに死亡に至ることもあります。
(11)農村部などに長期滞在した場合に注意すべき寄生虫疾患
ア 蠅蛆症(ようそしょう)(myasis)
傷口の蠅蛆病では、放置された傷口や軟膏に蠅が産卵し、成長して傷口から入り込み組織に影響を与えます。皮下の蠅蛆病は、地面や湿った衣類やタオルなどに幼虫が寄生して、皮膚から浸入した後、1週間ぐらいで成虫が赤く腫れた皮膚から出てくるものです。戸外に干された洗濯物はハエの卵で汚染されている可能性があります。アイロンをかけることで予防が可能です。
イ 住血吸虫症(Schistosomiasis, Bilharzia)
寄生虫疾患です。川遊びや水浴びなどによって、知らぬ間に皮膚から侵入して感染します。ナイジェリアは、腸管住血吸虫と尿路住血吸虫での2種類の住血吸虫の高侵淫地域です。肝臓や尿路系の異常を指摘されたときには、この寄生虫感染も考慮する必要がありますので担当医にナイジェリア滞在歴を申告してください。
ウ 河川盲目症(River blindness / Onchocerciasis)
ブヨに刺されることによって感染するフィラリア症の一つです。このブヨは河川と周辺地域が主な発生地です。ブヨに刺された後には、かゆみを伴う皮膚炎、皮下結節などを起こします。視力の低下から失明に至ることがあるためこのような病名がついていますが、眼症状が出現するのは、皮膚症状から数か月から数年経ってからとなります。ワクチンや予防薬はありませんので、ブヨの発生地域を避ける、肌を露出しない、昆虫忌避剤を塗るなどの防蚊対策と同様の対策で防ぐしかありません。
エ アフリカ眠り病(sleeping sickness)
アフリカトリパノソーマ病とも呼ばれます。ツェツェバエに刺されることにより寄生原虫のトリパノソーマが体内に入り発症します。傾眠、錯乱、昼夜逆転の後、昏睡状態になります。治療しなければ死に至ります。農村地帯に行く場合には、ツェツェバエに刺されないようにすることが一番の予防法です。
オ エムポックス(Monkeypox)
エムポックスはサルや齧歯類(ネズミ・リス類)の咬傷・接触によって感染するウイルス性疾患です。感染したヒトからヒトへの接触感染も起こします。ナイジェリア南部州ではネズミを食用にする習慣があり、必然的に接触・感染の危険が多くなるものと思われます。
潜伏期間は7から21日、発熱・発疹・倦怠感・頭痛・筋肉痛・リンパ節腫脹などであり、発疹は水疱から膿疱となり、痂皮で覆われてきます。
(12)交通事故
交通道徳が非常に悪く、車の整備も十分でないことなどから、事故が頻発しています。輸血や外傷手術など含めた救急医療が非常に遅れていますので、シートベルト着用含めて十分な注意が必要です。
6 健康上心がけること
- 生もの、生水は避けてください。切り売りされた果物も各種感染症保菌者の手指から汚染されている可能性があります。火を通した食物でも時間の経過とともに温度が下がると再び病原体が繁殖します。調理して時間の経った食物には生ものと同様、注意が必要です。電気事情の悪い当国では、氷冷物も病原体の繁殖した状態で氷冷されている可能性がありますので避けたほうが無難です。
- 洗濯物はなるべく戸外に干さないようにしましょう。
- 地面に横になることも寄生虫などの感染のもとになります。これには鉤虫や糞線虫などのやっかいな寄生虫も含まれます。またサハラ砂漠以南の熱帯・サバンナ地域の地面には吸血性のハエの幼虫がいます。土に触れた後には必ずその部を洗いましょう。
- 湖沼や河川での水遊びは住血吸虫症の感染原因になりえます。こうした水域では手足を浸す程度でも危険です。
- 手洗いやうがいを心がけてください。
- 屋外でスポーツをする場合は水分補給を心がけ、熱中症に注意しましょう。また、紫外線が強いので日焼け止めや帽子が必要です。
- 草むら(ゴルフ場でも)にはコブラ等の毒蛇がいますので入らないようにしてください。
- 防蚊対策を十分に行ってください。日本の虫除けスプレーはDEETの含有量が少ないため、頻回に塗布する必要があります。DEETが20から50%含有の製品を購入してください。網戸のないところや屋外で寝る際には、蚊帳を使用してください。
- 交通事故などによる外傷を負わないように自身の安全に十分気をつけてください。
- 持病をお持ちの方は、万が一のために英語での診療状況説明書をかかりつけの医師に書いてもらい携帯してください。
- 短期旅行でも、万が一のために海外旅行傷害保険への加入を勧めます。特に、緊急医療搬送に対しては3,000万円以上かけておくべきです。カード付帯旅行保険のみでは不十分です。
- 医薬品を薬局で購入する際には、あらかじめ病院を受診し、医師の診察を受けて処方箋を発行してもらうことをお勧めします。また、出来るだけ信頼の置ける薬局で適正な価格で購入してください。有効期限とNAFDAC(ナイジェリア食品薬品管理規制局)の印字も確かめてください。
7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)
(1)赴任者に必要な予防接種(成人、小児)
WHOが定める黄熱汚染国からナイジェリアへの入国の際には、生後9か月以上のすべての渡航者は黄熱予防接種証明書(いわゆるイエローカード)の提示が求められます。また、ナイジェリアはWHOの黄熱汚染国リストに載っていますので、ナイジェリアからの渡航者(旅行者を含む)にイエローカードの提示を求める国もありますのでご注意ください。また上述の通り、WHOはナイジェリアへの渡航者に黄熱ワクチンの予防接種を推奨しています。黄熱予防接種の他にA型肝炎、B型肝炎、Tdap(成人用ジフテリア・百日咳・破傷風混合)、狂犬病、腸チフス、髄膜炎菌(4価ACWY)、コレラ、ポリオの予防接種が必要です。麻疹の予防接種回数が2回未満の方や回数が不確実な方は、麻疹の予防接種を受けることをお勧めします。
小児期にポリオワクチンの接種を受けていても、抗体が出来ていないことがあります。特に1975年(昭和50年)から1977年(昭和52年)に日本で産まれた方は抗体獲得率が低いとされていますので、接種を強く勧めます。
(2)現地の小児定期予防接種一覧
ワクチンの種類 | 対象疾患 | 初回 | 2回 | 3回 |
---|---|---|---|---|
BCG | 結核 | 出生時 | ||
5種混合(DPT、B型肝炎、Hib) | ジフテリア、百日咳、破傷風、B型肝炎、インフルエンザ菌b型(Hib)感染症 | 6週 | 10週 | 14週 |
経口ポリオ | 小児麻痺、急性灰白髄炎 | 出生時 | 6週 | 10週 4回目:14週 |
不活化ポリオ | 小児麻痺、急性灰白髄炎 | 6週 | 14週 | |
肺炎球菌 | 肺炎球菌感染症 | 6週 | 10週 | 14週 |
麻しん | 麻しん | 9か月 | 15か月 | |
黄熱 | 黄熱 | 9か月 | ||
B型肝炎 | B型肝炎 | 出生時 | ||
ロタウイルス | ロタウイルス胃腸炎 | 6週 | 10週 | |
髄膜炎 | 髄膜炎菌感染症 | 9か月 | ||
HPV | ヒトパピローマウイルス感染症 | 9から13歳 | 初回から6か月以降 |
(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明
特別の予防接種を要しません。しかしインターナショナル・スクールによっては予防接種証明書が求められることがありますので準備が必要です。
8 病気になった場合(医療機関等)
日本における119番のような救急医療システムはありません。緊急の場合は、自家用車やタクシーを利用するか、医療機関に直接救急車を要請してください。
英語での受診が可能です。また、可能であれば前もって電話予約を入れてください。急病や外傷であっても基本的には前払いしない限り、検査や診察を受けることができません。患者登録時に身分証明書の提示を求められることも多く、パスポートを忘れずに持参してください。衛生的に問題がある医療機関が多く、内視鏡検査や外科治療などについては、可能であれば国外の信用のおける医療機関での治療を勧めます。医師はいくつかの病院をかけもちで働いていることが多く、曜日によっては専門医が不在のことがあります。
以下では、主として邦人利用歴があり、医務官が実際に視察した医療機関を記載します。日本語を解するドクターは皆無です。記載の電話番号等は最新のものであることを確認していますが、断線や頻繁な番号変更のため通じないことがよくありますので注意が必要です。
ラゴス
(注)ラゴス国際空港には旅行客を対象とする空港クリニックはありません。
- (1)Reddington Hospital(レディントンホスピタル)
- 住所:12Idowe Matins Street, Victoria Island, Lagos
- 電話:(01)271-5340-4
- ホームページ:Reddington Hospital(レディントンホスピタル)(英語)
- 概要:ラゴス州内に複数の系列病院があり、グループ内であらゆる疾患に対応可能。24時間救急のある総合病院
- (2)Evercare Hospital Lekki(エバーケアホスピタルレッキ)
- 住所:1, Admiralty Way, Lekki Phase 1, Lagos
- 電話:081-3985-0710
- ホームページ:Evercare Hospital Lekki(エバーケアホスピタルレッキ)(英語)
- 概要:私立病院で国内最大。2021年開業。24時間救急のある総合病院。
- (3)Euracare(ユウラケア)
- 住所:293 Younis Bashorun Street cnr Jide Oki Street, Victoria Island, Lagos
- 電話:+234 700 3872 2273
- ホームページ:Euracare(エウラケア)(英語)
- 概要:清潔感のある日系資本の病院で、欧米の外国人医師が複数在籍している。特に心筋梗塞といった心血管疾患の治療は信頼性が高い。
アブジャ
(注)アブジャ国際空港には空港クリニックはありません。
- (1)Nizamiye Hospital(ニザミエホスピタル)
- 住所:Plot 113 Sector S. Cadastral Zone Life Camp, Abuja
- 電話:081-6666-6023、080-5633-9444
- ホームページ:Nizamiye Hospital(ニザミエホスピタル)(英語)
- 概要:アブジャ市内で各国外交団から最も信頼を得ている総合病院。24時間救急患者対応が可能。
- (2)Abuja Clinics(アブジャクリニック)
- 住所:22 Amazon Street, Maitama, Abuja
- 電話:0803-665-0436、0818-810-6319
- ホームページ:Abuja Clinics(アブジャクリニック)(英語)
- 概要:アブジャ市内の中心地区にあり利用がしやすい総合病院。24時間救急患者対応が可能。
- (3)SMILE Dental Practice, Abia House店 & Cappador Mall店(スマイルデンタルクリニック)
- 住所:Ground Floor, ABIA House, Central Area, Abuja
- 電話:070-6362-0709、080-7364-3895
- 住所:Cappador Mall, 85 Aguiyi Ironsi street, Beside Regent School and Opposite Ansarudeen Mosque, Maitama
- 電話:070-3978-4006、080-5590-2889
- 概要:手指衛生や医療機器の滅菌消毒といった標準的な感染対策がなされている歯科クリニック。
9 その他の詳細情報入手先
10 現地語・一口メモ
当地では英語が通じます。「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照ください。