世界の医療事情
ケニア
1 国名・都市名(国際電話番号)
ケニア共和国(国際電話番号254)
2 公館の住所・電話番号
- 在ケニア日本国大使館(毎週土曜日、日曜日休館)
- 住所:Mara Road, Upper Hill, Nairobi, Kenya (P. O. Box 60202-00200)
- 電話:020-2898-000
- ホームページ:在ケニア日本国大使館
(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。
4 衛生・医療事情一般
ケニアはアフリカ大陸の赤道直下に位置し、面積は日本の1.5倍、人口は約半分の5,403万人(2022年:世銀)で東アフリカにおいて最も大きな経済規模を有する国です。首都ナイロビは標高1,700mの高地にあるため、一年を通して気温は10度から28度と涼しく、湿度も低くて過ごしやすい気候です。4から6月が大雨期、7から9月が小乾期、10から11月が小雨期、12から3月が大乾期となります。しかしながら、近年雨季乾季の区別が不明確となっています。6から8月は冬で最も寒く、風邪症状を呈する方が多くみられます。ナイロビの外国人居住区域では上・下水道が整備されていますが、周辺に拡がるスラム街の衛生状況は劣悪であり、足の踏み入れは厳に慎むべきです。ナイロビの私立病院の医療レベルはアフリカにおいては高レベルと言えますが、日本や欧米先進国のような洗練された対応は期待できません。24時間オープンの救急外来を有していますが、3から4時間待たされる事も多く、診察・検査は前払い制ですので、受診時には現金の用意が必要です。邦貨にして、診察料が3,000円前後、一般血液検査やCT撮影は10,000円前後が相場となっています。公立病院は廉価に受診できますが、設備も技量も不十分と言わざるを得ず、邦人が安心して治療を受けられる環境ではありません。
ケニア第二の都市モンバサはインド洋に面しており、年中高温多湿であることから、デング熱が季節を問わず流行しています。またケニア第三の都市であるキスムはビクトリア湖に面しており、マラリアが多発しています。このようにケニアでは地方によって気候、医療環境も大きく異なるため注意が必要です。
5 かかり易い病気・怪我
(1)交通事故
ナイロビ市内はインフラ整備が不十分であることから交通渋滞が激しく、街は自動車であふれています。また運転マナーも非常に悪いため、不慣れな旅行者や在留邦人が交通事故に巻き込まれるケースが多く、注意が必要です。特にマタトゥと呼ばれる小型乗り合いバスは運転が荒く、当て逃げ等の被害も多く報告されていることから、近付かないようにしましょう。
(2)感染性胃腸炎
ケニアに来たばかりの時期は多くの方が下痢に悩まされます。ナイロビの水道水は水質不良や不純物混入のため、飲用に適さないので市販のミネラルウォーターや性能の良い浄水器で濾過した水道水を飲用するよう心がけて下さい。また地方ではトイレや下水道が完備されておらず、コレラが蔓延しています。食事前や外出後は手洗いを励行し、生水はもちろんのこと生野菜など加熱調理されていないものにも十分注意して下さい。また、道端で販売されているカットフルーツなども避けるようにしてください。
(3)呼吸器疾患
ナイロビ市内は細かい粉塵や排気ガスにより大気汚染が進んでいます。また朝夕は冷え込むことから風邪も引きやすく、インフルエンザも通年性に発生しています。風邪薬に加えて、気管支喘息などの持病をお持ちの方は自分にあった薬を持参した方が良いでしょう。
(4)注意すべき風土病
ア マラリア
ナイロビにはマラリアを媒介するハマダラカは生息していませんが、ケニアで生活をする約70%の方がマラリアの危険にさらされています。特に西部のビクトリア湖周辺ではマラリアが蔓延しており、流行地域に長期滞在する場合はマラリア予防薬の服用を検討してください。予防薬は処方箋無しでナイロビ市内の薬局で購入できます。服薬される際は、用法・用量をしっかりご確認されてください。
イ デング熱
デングウイルスによって引き起こされる熱性疾患です。1週間程度で改善する予後の良い疾患ですが、まれに重症化することがあります。特にモンバサ地域で流行しています。ケニアではワクチンが流通しておらず、特効薬もないため蚊に刺されないようにすることが重要です。
ウ コレラ
コレラ菌によって引き起こされる下痢症であり、汚染された水・食物から経口感染します。ケニア全土で蔓延しており、特に下水道が完備されていない地方で多く報告されています。
エ 狂犬病
狂犬病ウイルスに感染している哺乳動物(犬や猫など)やコウモリに咬まれたり、引っ掻かれたりすることで感染します。発症してしまうと治療法がなく、ほぼ100%死亡します。そのため、咬傷後すぐに予防接種を受けること(暴露後接種)が重要です。また、野外での活動が多くなる方や小児では予防接種(暴露前接種)もお奨めします。
オ 黄熱
ケニアはWHOより黄熱汚染国に指定されています。とは言え、流行は限定的であり、黄熱ワクチンはケニア入国の際に必ずしも接種が必要なワクチンではありません。しかしながら、他国を経由する場合や出入国審査官の裁量で「イエローカード(黄熱予防接種証明書)」の提示を求められることがあります。健康に問題のない方は無用なトラブルを避けるためにも黄熱ワクチンの接種をお奨めします。厚生労働省検疫所のサイト「黄熱に注意しましょう!」もご参照ください。
6 健康上心がけること
(1)昆虫に刺されないようにする
蚊はマラリア・デング熱・黄熱など多くの熱帯病を媒介します。またサシチョウバエ(皮膚リーシュマニア症)やツェツェバエ(アフリカ睡眠病)などケニアには様々な虫が生息しています。森林・灌木地帯では昆虫に刺されないよう肌の露出に注意し、必要に応じて蚊帳や昆虫忌避剤を使用しましょう。
(2)メンタルヘルス
ナイロビは高地(1700m)に位置し、気圧が低いため疲労しやすく、階段の昇降時にも息切れすることがあります。また夜間に熟睡できず、体調不良を訴える方も少なくありません。生活環境では日本のような「几帳面さ・計画性・気配り」が得られずにイライラすることもしばしばあります。そのような場合には次のように対処しましょう。
- 一人で悩まず誰かに打ち明ける。
- 問題は一度に一つずつ解決していく。
- 適宜、余暇をとる。
- ときには諦める。受け入れたくないものは、無理に受け入れなくて構わない。
- 無理をせず、自分の体調と相談して行動する。
7 予防接種(ワクチン接種機関含む)
(1)赴任者に必要な予防接種(成人、小児)
ケニア入国に際して義務づけられた予防接種はありません。しかしケニアはWHOの黄熱汚染国に指定されており、経由地によっては「イエローカード(黄熱予防接種証明書)」の提示を出入国審査時に求められることがあります。特にイエローカードを持っていないとケニアから他国へ移動する事が困難になりますので、黄熱ワクチンの接種をお奨めします。その他滞在が長くなる方は、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、腸チフス、髄膜炎菌(4価)ワクチンも接種しておいた方がよいでしょう。
(2)ケニアにおける小児の定期予防接種
1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |
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BCG | 出生時 | |||
ポリオ(注1) | 出生時(OPV) | 6週(OPV) | 10週(OPV) | 14週(OPV+IPV) |
DPT-HepB-Hib(注2) | 6週 | 10週 | 14週 | |
麻疹 | 9か月 | 18か月 | ||
風疹(ふうしん) | 9か月 | 18か月 | ||
肺炎球菌 | 6週 | 10週 | 14週 | |
ロタウイルス | 6週 | 10週 | 14週 | |
黄熱 | 9か月 | |||
HPV | 10歳 | 初回から6か月後 |
- (注1)経口生ワクチン(OPV)、非経口不活化ワクチン(IPV)
- (注2)ジフテリア+百日咳+破傷風+B型肝炎+インフルエンザ菌b型
(3)小児がケニアの学校に入学する際に必要な予防接種・接種証明
入学前には予防接種歴の提出を要求される事が多いですが、何を必須とするかは学校によって違いがあります。一定した規則は無いようです。
8 病気になった場合(医療機関等)
(首都)ナイロビ
- (1)ナイロビ病院、The Nairobi Hospital
- 所在地:Argwings Kodhek Rd, Nairobi
- 電話:020-2845-000(代表)
- ホームページ:ナイロビ病院(英語)
- 概要:官庁街近くにある大規模私立総合病院。24時間対応の救急外来、CT、MRIも備えている。英語対応。クレジットカード使用可。
- (2)アガ・カーン大学病院、The Aga Khan University Hospital
- 所在地:3rd Parkland Ave, Nairobi
- 電話:020-366-2000
- ホームページ:アガ・カーン病院(英語)
- 概要:ナイロビ北部にあるパキスタン系中規模私立総合病院。24時間対応の救急外来、CT、MRIも備えている。英語対応。クレジットカード使用可。
- (3)フォレストジャパンメディカルセンター、Forest Japan Medical Centre
- 所在地:2nd Floor, Fortis Suites, Hospital Road, Upper Hill, Nairobi
- 電話:079-274-5820
- ホームページ:フォレストジャパンメディカルセンター(英語)
- 概要:医療検査専門クリニック。CT、内視鏡も備えている。必要に応じて病院を紹介してくれる。クレジットカード使用可。
モンバサ
- (1)モンバサ病院、Mombasa Hospital
- 所在地:Off Mama Ngina Drive, next to Treasury Square.
- 電話:041-231-2190、041-222-8710
- ホームページ:モンバサ病院(英語)
- 概要:モンバサエリア最大の私立総合病院。24時間対応の救急外来あり、CT、MRIも備えている。英語対応。クレジットカード使用可。
9 その他の詳細情報入手先
10 一口メモ
医療機関では一般的に英語が通じます。「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照ください。