アジア

平成26年11月28日

1.概要

(1) 11月26日から27日まで,ネパールの首都カトマンズにおいて,第18回南アジア地域協力連合(SAARC)首脳会議(議長国:ネパール)が開催された。同首脳会議には,SAARCに加盟する8カ国(インド,スリランカ,パキスタン,バングラデシュ,ネパール,ブータン,モルディブ,アフガニスタン)の首脳・外相に加え,日本を含むオブザーバー9カ国・地域が参加した(出席者は2.参照。我が国からは小川駐ネパール大使兼SAARC常駐代表が出席)。

(2) 開会セッション(11月26日午前)では,SAARC各国首脳,SAARC事務局長及びオブザーバー国・地域(日本,豪州,中国,イラン,韓国,ミャンマー,米国,EU)がステートメントを行った。

(3) 27日午後の閉会セッションにおいて,SAARC加盟国首脳により,電力に関するSAARCエネルギー協力協定に署名がなされた後,今次首脳会議のテーマである「平和と繁栄のための統合の深化(Deeper Integration for Peace and Prosperity)」のための「カトマンズ宣言(PDF)」が採択された。同宣言では,協力の強化によって,南アジアにおける平和,安定及び繁栄のための地域統合を深化させる強い決意が表明され,南アジア自由貿易圏(SAFTA)及びSAARCサービス貿易協定(SATIS)の効果的な実施,SAARC開発基金(SDF)の強化,今後3ヶ月以内の自動車に関する協定及び鉄道に関する協定案の確定に向けた関係閣僚会合の開催等,合計27項目の協力方針が含まれている(宣言概要は3.参照)。

(4) 次回第19回SAARC首脳会議をパキスタンで開催することが決定され,シャリフ・パキスタン首相から,2016年にイスラマバードにて開催することが発表された。

2.出席者

(1)加盟国代表
  • アフガニスタン: アシュラフ・ガーニ大統領
  • バングラデシュ: シェイク・ハシナ首相
  • ブータン: ツェリン・トブゲー首相
  • インド: ナレンドラ・モディ首相
  • モルディブ: アブドッラ・ヤーミン・アブドゥル・ガユーム大統領
  • ネパール: スシル・コイララ首相(議長)
  • パキスタン: ナワズ・シャリフ首相
  • スリランカ: マヒンダ・ラージャパクサ大統領
(2)オブザーバー国・地域代表
  • 日本: 小川駐ネパール大使兼SAARC常駐代表
  • 米国: ニシャ・ビスウォル南アジア担当次官補
  • 中国: 劉振民外交部副部長
  • 韓国: キュンソー・リー外務次官
  • 豪州: ブレット・メイソン外務政務次官
  • EU: レンジェ・テリンク駐ネパールEU大使
  • イラン: アバス・アーホンディ道路・都市開発大臣
  • ミャンマー: ティン・ウー・ルイン外務副大臣
  • モーリシャス: ジョイカー・ナヤック在インド高等弁務官事務所代理高等弁務官
(3)その他
  • ネパール制憲議会議員,政党党首,大臣,次官,国軍,警察幹部,外交団など多数出席。

3.カトマンズ宣言(概要)

(1) 貿易,投資,融資,エネルギー,安全保障,インフラ,連結性や文化等の協力強化により,南アジアにおける平和,安定及び繁栄のための地域統合を深化させることを表明。

(2) 南アジア自由貿易圏(SAFTA)及びSAARCサービス貿易協定(SATIS)を効果的に実施することに合意。

(3) SAARC開発基金(SDF)の社会ウィンドウを強化し,地域的・準地域的なプロジェクトを効果的に実施するため,早期に経済ウィンドウ及びインフラウィンドウの運用を開始することに合意。

(4) 今後3ヶ月以内に,自動車に関する協定及び鉄道に関する協定案の確定に向けた関係閣僚会合を開催。

(5) 商品,サービス,資本,技術及び人々の国境を越えた円滑な行き来を確保するため,道路・鉄道・水道・エネルギー網・通信・航空網の建設や改良を通じて,継続して継ぎ目のない地域連結性を実質的に強化していくことを表明。

(6) 水力・天然ガス・太陽光・風力及びバイオ燃料を含む発電・送電・電力貿易の分野において,地域的・準地域的なプロジェクトを特定し,域内における電力需要の増加に応える観点から高い優先度でそれらプロジェクトを実施するための「電力に関するSAARCエネルギー協力協定」の署名を歓迎。

(7) 南アジアの貧困からの解放を改めて表明(閣僚級・次官級の貧困削減に関する機構に対し,SAARC行動計画の進捗状況の確認・再検討,ポスト2015開発目標を考慮した同計画の効果的な実施を指示)。

(8) 首脳会議を隔年,閣僚理事会(外相会合)を年1回,常任理事会(次官級)を最低年1回,プログラム委員会(局長級)を最低年2回実施することに合意。

(9) プログラム委員会に対し,加盟国が指定する重点分野におけるプロジェクトベースの協力について,オブザーバーを関与させることを指示。

4.岸田外務大臣のステートメント(概要)

(小川駐ネパール大使兼SAARC常駐代表が代読。)

(1)SAARCの重要性と日本の取組
エネルギーや人的交流,民主化・平和構築といった分野でSAARC各国との協力を推し進め,SAARCの域内統合と連結性の強化に貢献していく。

(2)エネルギー
電力の安定的供給はSAARC諸国の共通課題。我が国は,2006年以来過去7回に亘り「日SAARCエネルギー・シンポジウム」を開催して域内の電力問題につき議論し,来年3月に予定する第8回シンポジウムでは,これまでの議論を総括する予定。我が国は,エネルギー分野,特に電力分野におけるSAARC諸国間の連結性を強化するためのありうべき協力の方策につき調査を行い,個別具体的なプロジェクトに繋げていく。

(3)青少年交流
我が国は,JENESYS2.0等のスキームを通じて2007年から現在までに約2500名の青少年を日本に招へいし,この12月にも64名が訪日する予定。

(4)民主化・平和構築
SAARC地域の発展と繁栄の最も重要な基礎が各国における民主主義の確立と平和な社会の実現。我が国は,「積極的平和主義」の取組の一環として,SAARC諸国における平和構築,国民和解,民主化・ガバナンス強化のための協力を継続していく。

(5)防災協力
来年3月,第3回国連防災世界会議を仙台市で開催。日本とSAARC諸国は共に数多くの自然災害を経験し乗り越えてきた。SAARC各国からの最も高いレベルの参加を得て会議を成功させたい。

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