寄稿・インタビュー
タイムズ・オブ・インディア紙への茂木外務大臣寄稿
「相互補完的な関係としての日印の新たなゴールデン・チャプター」
1月15日から17日にかけてインドを訪問します。私にとっては、2019年にデリーで開催された日印で初となる外務・防衛大臣間の「2+2」会合に外務大臣として参加して以来、約6年ぶりの訪問となります。再び活気あるインドを直接体感できることを大変楽しみにしています。
インドは今や世界一の人口を擁し、高い経済成長率を背景に、グローバル・パワーとして存在感を一層高めています。豊富な理工系人材やスタートアップ企業によるイノベーションを通じ、世界経済を牽引しています。国際協力銀行(JBIC)による日本企業への調査でも、インドは4年連続で有望事業展開先の第1位となっています。
地域を取り巻く安全保障環境が一段と厳しさを増し、国際情勢が激動する中、アジアの主要な民主主義国として、日本とインドは、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向け、より大きな役割を果たすことが期待されています。法の支配に基づき、この地域、そして世界を平和で安定した、誰にとっても開かれた繁栄の場とすることは、日印両国が共有する重要な使命です。
日本におけるインドへの関心と期待が高まる中、昨年8月にモディ首相の訪日が実現しました。その成果として、今後10年の日印協力の指針となる「日印共同ビジョン」を発表しました。経済安全保障を含む安全保障、経済・投資・イノべーション、人的交流の3分野において、両国がそれぞれの強みを生かし合う相互補完的な関係を構築することを確認し、首脳レベルの成果文書5件に加え、政府間や民間企業等の覚書180件が発表されました。モディ首相が共同記者会見で述べたとおり、まさに「新たなゴールデン・チャプター」の幕開けです。これらの取組は、日印両国の紐帯をより強固なものとし、将来世代が直面する課題の解決につながる経済的・社会的価値を共創するものです。
こうした相互補完的な協力を通じ、日本は、より発展した、より繁栄した、より力強いインドを支持します。日本は、インドが掲げる「ヴィクシット・バーラト」の実現に貢献する最大のパートナーです。このための協力は、既に具体的な形で動き始めています。
例えば、日印間の防衛装備・技術協力の一環として、艦艇搭載用の通信アンテナ「ユニコーン」の移転に向けた協議が進んでいるほか、日本企業の進出は半導体や電池の分野でも活発化しており、重要物資のサプライチェーン強靱化に貢献しています。
また、インドで製造し、アフリカに輸出することに力を入れ始めている日本企業もある中、日本政府は、インドとも協働し、アフリカの域内統合や産業発展への貢献等を目指す「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」を打ち出しました。さらに、日印の旗艦事業として、ムンバイ・アーメダバード間の全線に、日本で開発が進められているE10系新幹線を2030年代初頭に導入する計画も進行しています。このほか、宇宙分野での協力の一環として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とインド宇宙研究機関(ISRO)が、月の南極域における水資源の調査を目的としたLUPEX(月極域探査機:Lunar Polar Exploration)計画を進めています。本計画では、日本がロケットと月面探査車(ローバ)の開発を担い、インドが月面着陸機を担当しています。こうした協力が一層拡大するよう、日印のトップ大学による共同研究を促進するためのLOTUSプログラムも始めました。
草の根レベルでの相互補完的な協力も広がっています。JETプログラムは主に海外の若者を日本へ招き、外国語教育や国際交流に携わることで、地域レベルの国際化を推進する事業です。今年度はインドから14名が訪日し、「草の根外交官」として活躍しています。また、日本の若者も、日本語パートナーズ・プログラムを通じて、インドの中学校や高校で日本語教師のアシスタントとして活躍し、日本語学習ニーズに応えています。
また、文化やスポーツを通じた交流も日印関係の将来を支える重要な取組です。インドの国民的スポーツであるクリケットについて、私自身、日本におけるクリケットの普及・振興を後押しするため、2022年に超党派による「クリケット議員連盟」を立ち上げ、会長として、競技環境の整備や次世代育成、国際交流の促進などに取り組んでいます。こうした取組を通じ、スポーツを媒介とした人的交流が広がり、両国国民の間の相互理解と信頼が一層深まることを期待しています。
私たちが今後も成長の果実を享受していくためには、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持することが不可欠です。今年は、日本がFOIPを提唱してから10年の節目の年に当たります。この間、インドを含む多くの国々から賛同を得て、その実現に向け協働を重ねてきました。引き続き、日本とインドが共に強く、豊かになるための取組を積み重ねていきたいと思います。私自身も、これまで構築してきた様々な枠組みを生かしながら、FOIPの実現に向け、「力強く、視野の広い外交」を展開していきます。
来年・2027年は、日本とインドが国交を樹立して75年となる節目の年です。日印両国は古くから歴史的・文化的な絆で結ばれていますが、この記念すべき年に向けて、国民同士のつながりをさらに深め、日印の友好・協力関係を強化していきます。ぜひ皆さんと共に日印関係の新章を切り開いていきたいと思います。


