寄稿・インタビュー
茂木外務大臣によるフィリピン・スター紙、フィリピン・デイリー・インクワイアラー紙、マニラ・ブレティン紙(フィリピン)への寄稿(令和8年1月14日)
「信頼に基づき織りなされた70年-日本・フィリピン関係の更なる深化に向けて」
本年は、フィリピンと日本の国交正常化70周年です。この記念すべき年の初めに、日本の外務大臣としてフィリピンを訪問することができ、大変うれしく思っております。本年がフィリピンの皆様にとって良い一年となることを願うとともに、日本が友人として常にそばにいることを改めてお伝えしたいと思います。
70周年のテーマは「未来を共に織りなす-平和、繁栄、可能性」です。未来志向で共に織りなしてきた両国の信頼と友情を称えるだけでなく、両国の、そして地域の平和と繁栄のため、特別な絆で結ばれたフィリピンとの関係をより強固にし、そして具体的な協力を更に進めていく決意です。こうした考えから、私の本年最初の外国出張先の一つとして、フィリピンを訪問しています。
地域の安全保障環境が厳しさと複雑さを増し、国際秩序全体が揺らぐ中、インド太平洋の要衝である東南アジアの地政学的重要性はますます高まっています。このような情勢において、海でつながる隣人であり、価値や原則を共有する戦略的パートナーである日本とフィリピンとの協力が不可欠となっています。
安全保障分野では、昨年、日・フィリピン部隊間協力円滑化協定(RAA)が発効し、早速、共同訓練及びセブ州沖地震における支援物資の輸送など、両国の具体的な協力活動においてこの協定が生かされ、円滑な協力が実現しています。今後においても、部隊間の物品・役務の相互提供に関する法的枠組みの整備や、政府安全保障能力強化支援(OSA)を通じた日本製防衛機材・インフラ支援の供与などを通じて、フィリピンとの相互運用性の向上やフィリピンの能力構築支援に取り組んでいきます。また、両国にとって共通の同盟国である米国も含めた日米比間の協力も強化していく考えです。
経済分野でも、フィリピンの経済・インフラ強靱化が地域の平和と安定に資するとの考えの下、日本はODAを通じ、防災、海洋航路の確保、交通・通信インフラの整備、農業支援などに貢献しています。例えば、日本はマニラでの治水対策のために、マニラ首都圏を貫流するパッシグ・マリキナ川の河川改修事業を進めています。経済安全保障の観点も踏まえ、重要鉱物を含むサプライチェーンの強靱化や情報通信、AIといった分野において、両国の連携を更に強化したいと思います。
また、フィリピンは本年、ASEAN議長国を務めます。日本は、国際社会及び地域の諸課題の解決に向けたフィリピンのリーダーシップに対する支援を惜しみません。日本の掲げる「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」は提唱から10年を迎えます。FOIPはASEANが掲げる「インド太平洋に関するASEAN・アウトルック(AOIP)」と、法の支配などの本質的な原則を共有しています。引き続き、こうした原則を大切にしつつ、「信頼のパートナー」として、日本とASEANが共に強く、豊かになるための協力を進めていきます。例えば、AI等の新たな分野における協力に加え、アジアの脱炭素化と、経済成長、エネルギー安全保障を同時に実現するため、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じた協力も進めていきます。
最後に、最も重要なこととして、以上申し上げたような日本とフィリピンの協力関係の発展の基礎には、人と人との交流があります。フィリピンは日本人にとって身近な旅行先の一つとなっており、昨年は11月までの日本からフィリピンへの訪問者が40万人を超えました。また、昨年開催された大阪・関西万博では、フィリピンパビリオンが人気を博し、フィリピンの文化や職人技が来場者を魅了しました。本年は、国交正常化70周年を記念した様々なイベントが予定されています。これらをきっかけに、更に相互理解が深まり、両国の友好関係が進展することを期待しています。
日本の外務大臣として、今次訪問を通じ、幅広い分野において日・フィリピン関係を一層深化させ、両国の絆がより強固なものとなるよう、全力を尽くす決意です。


