アジア

平成27年8月6日
8月5日(水曜日)午後5時40分(現地時間)から約45分間、マレーシア・クアラルンプールにおいて、第8回日・メコン外相会議が開催され、我が国から城内外務副大臣が出席し議長を務めたところ、概要以下のとおりです(メコン地域諸国から、ハオ・ナムホン・カンボジア副首相兼外務国際協力大臣、トンルン・シースリット・ラオス副首相兼外務大臣、ワナ・マウン・ルイン・ミャンマー外務大臣、タナサック・パティマプラゴーン・タイ副首相兼外務大臣、ファム・ビン・ミン・ベトナム副首相兼外務大臣が出席。)。
会議終了後、新東京戦略2015」の実現のための日メコン行動計画(日本語(PDF) / 英語(PDF))及び議長声明(日本語(PDF) / 英語(PDF))が発出されました。

1 冒頭

(1)城内副大臣から、先日のミャンマーの洪水被害へのお見舞いを表明するとともに、7月に東京で開催された第7回日・メコン首脳会議が、今後3年間の日メコン協力の方針「新東京戦略2015」を全会一致で採択するなど成功を収めたことに対するメコン各国の協力への謝意を表明し、浜松市で準備会合(日・メコンSOM)を主催し、新戦略の策定に携わった者として会議の成功を嬉しく思う旨述べました。

(2)また、同副大臣から、著しい経済成長を遂げつつあるメコン地域は、日本にとって経済的にも戦略的にも極めて重要なパートナーであり、メコン地域の「質の高い成長」の実現に向けて共に取り組むべく、新戦略の4本柱((ア)ハード面での取組、(イ)ソフト面での取組、(ウ)グリーン・メコンの実現、(エ)多様なプレーヤーとの連携)に沿って、今後3年間で7500億円規模のODA支援を含め、具体的な取組を進めていくことを改めて表明しました。

(3)さらに、同副大臣から、戦後70年間、平和国家としてアジアの平和と繁栄に全力を尽くしてきた日本は、「アジアと共に歩む平和国家」として、6月に東京で「アジアの平和構築と国民和解、民主化に関するハイレベル・セミナー」を初めて開催し、また、インド洋における漂流者問題に対する350万ドルの追加的支援を発表したことを紹介し、今後とも「積極的平和主義」の下、アジアの平和構築に一層積極的に取り組んでいくことを表明しました。

2 「新東京戦略2015」に基づく日メコン協力

(1)城内副大臣から、今後の日メコン協力の具体的な取組について、「新東京戦略2015」の4本柱に沿って、概要以下のとおり説明しました。
 

ア 第一の柱「ハード面での取組」

日本は、インフラ施設の建設のみならず、ノウハウの共有や技術移転を通じた人材育成や地元の雇用創出等現地の社会・経済への貢献も重視しており、メコン地域では港湾システムや空港運用の分野において実績を挙げていることを説明した上で、今後とも、各国の経済開発戦略に対応し、住民への裨益効果、ライフサイクルコスト、災害対策、周辺環境への影響も考慮に入れつつ、「質の高いインフラパートナーシップ」に基づき、アジア開発銀行(ADB)と連携し、今後5年間で約1100億ドルの「質の高いインフラ投資」を「質も量も」という姿勢でアジアにおいて推進していくことを改めて表明しました。


イ 第二の柱「ソフト面での取組」

力強い経済成長を続けるメコン地域は、日本の経済外交の最重点地域であると述べ、近年飛躍的に増加しているメコン地域への日本企業の進出をさらに後押しすべく、2月に城内副大臣がメコン地域における官民連携フォーラムを主催したことにも言及しつつ、今後とも、日本が、官民連携強化、日本企業の展開推進に積極的に取り組んでいくことを表明するとともに、民間の活力を一層活用すべく、メコン諸国に対して更なる投資環境の整備を要請しました。

また、産業人材をはじめとする人材育成や、日本語学習支援や双方向の芸術文化交流を促進する「文化のWAプロジェクト」等の文化・人的交流分野においても取組を推進していくことを表明しました。


ウ 第三の柱「グリーン・メコンの実現」

メコン地域における「質の高い成長」の実現に向け、防災、環境・気候変動、エネルギー、水資源管理等への対応を通じた、地域の強靱性を高める取組が必要であり、第3回国連防災世界会議で採択された「仙台宣言」及び「仙台防災枠組」に基づき、持続可能な開発を阻害する災害リスクの予防・削減に取り組んでいくことを表明しました。

また、「世界津波の日」の制定や高効率石炭火力発電推進の重要性に関する国際社会への発信や、鯨類を含む水産資源の持続可能な利用に関する協力を推進していくことも表明しました。


エ 第四の柱「多様なプレーヤーとの連携」

多様なプレーヤーがメコン地域に強い関心を示す中で、プレーヤー間の連携強化による効率的な支援の重要性を指摘し、メコン地域をはじめとするアジアにおける膨大なインフラ整備をはじめとする開発需要に応えるため、ADBやOECDを始めとする国際機関や民間の資金、知見も積極的に活用していくこと、メコン各国との南南協力・三角協力も一層推進していくことを表明しました。


(2)各国外相からは、概要以下のとおり発言がありました。

ア 7月の日メコン首脳会議の成功を嬉しく思う。また、首脳会談の直後に、日本が、「新東京戦略2015」に基づき「行動計画」を作成し、日メコン協力を着実に実施していることを高く評価。これまでで最大規模の今後3年間で7500億円の日本のODAのプレッジは、メコン地域の「質の高い成長」のみならず、地域の格差是正、社会経済の発展や本年のASEAN共同体設立に資するものである。

イ 特に、メコン地域におけるインフラ整備は重要であり、「質の高いインフラパートナーシップ」に基づき、今後ともインフラ分野における日本の支援を期待。

ウ 日本企業によるメコン地域への投資は、地域の経済成長に大きく貢献しており、日本企業の更なる進出と投資に期待。メコン地域諸国としても、中小企業を含む日本企業からの投資を促進するため、投資・ビジネス環境の整備に努めていきたい。また、人材育成等を通じたソフト連結性の強化は地域の競争性の強化にも資するものであり、引き続きの協力をお願いしたい。

エ また、グリーン・メコンとメコン地域の持続可能な発展の実現に向けて、第3回国連防災世界会議の開催を始め、防災、環境・気候変動、エネルギー、水資源管理等の分野においても、日本が積極的に取り組んでいることを高く評価しており、メコン地域諸国としても共に協力していきたい。また、ミャンマーへのお悔やみに対しては、日本政府からの支援を含め感謝する。

オ さらに、多くのドナーが開発のパートナーとしてメコン地域に関心を寄せているが、効率的な支援の実施のためにも、多様なステークホルダーとの間の連携が重要である。
 

3 地域・国際情勢

(1)国会で審議中の「平和安全法制」については、城内副大臣から、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の実践であることを説明しました。また、海洋については、城内副大臣から、南シナ海及び東シナ海における一方的な現状変更につき深刻な懸念を表明し、地域の平和と安定のため、ASEANの一体としての取組、国際法の遵守、「海における法の支配」の重要性を説明しました。

(2)これに対し、参加国の中からは「積極的平和主義」への支持が表明されたほか、南シナ海情勢に関する懸念を共有する旨の発言がありました。

(3)その他、北朝鮮問題や、国連改革についても議論が行われました。

4 今後の予定

(1)出席者は、メコン地域における「質の高い成長」を実現すべく、「新東京戦略2015」をフォローアップし、その具体化のため「行動計画」を着実に実行に移していくことで一致しました。

(2)さらに、出席者は、来年のASEAN議長国を務めるラオスの成功を祈念するとともに、日本とラオスの共同議長の下、次回の日・メコン外相会議をラオスにて開催することで一致しました。

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