報道発表

インドに対する円借款(6件)に関する書簡の署名・交換

令和7年3月27日

 3月27日(現地時間同日)、インドの首都ニューデリーにおいて、小野啓一駐インド日本国特命全権大使とマニーシャ・シンハ・インド財務省経済局次官補(Ms. Manisha Sinha, Additional Secretary, Department of Economic Affairs, Ministry of Finance, Government of India)との間で、円借款6件(総額1,917億3,600万円を限度とする)に関する書簡の署名・交換が行われました。

  1. 対象案件の概要
    1. 「タミル・ナド州投資促進プログラム(フェーズ3)」(供与限度額361億1,400万円)
       インド南東部タミル・ナド州は、豊富な労働力と一貫した外資誘致政策により製造業が集積しているほか、輸出入に適した大型の港湾を複数有しており、日系企業が多く進出しています。しかしながら民間投資の促進等に関する政策や制度が必ずしも十分ではなく、引き続きその整備が課題となっています。
       この協力は、同州において、民間投資促進や産業振興に関連する政策・制度の改善を促すとともに、産業のグリーン化や企業活動に資するインフラ、人材育成への支援等により同州の投資環境の整備を図るもので、海外直接投資(FDI)の増加につながることが期待されます。
    2. 「効果的な森林管理のための能力強化計画」(供与限度額82億8,000万円)
       インドでは人口増や急激な都市化の結果、森林が劣化・減少していることで、生物多様性が脅威に晒されているほか、二酸化炭素の吸収量の減少、土砂災害等に対する強靱性や水質浄化機能の低下等が懸念されています。
       この協力は、インド全域において、森林保全や生物多様性保全に関する研究・事業開発(パイロット・プロジェクト)に加え、研修体制の整備を行うことで、インドの森林行政官の政策実施能力の強化を図るものであり、インドの持続可能な開発につながることが期待されます。
    3. 「チェンナイ海水淡水化施設建設計画(第二期)」(供与限度額525億5,600万円)
       インド南部タミル・ナド州チェンナイ都市圏では、人口が増加し経済が発展する中で上水道の整備が追いついておらず、水の需要量が供給量を大幅に上回っています。同都市圏周辺には日本企業を含め海外企業も数多く進出しており、深刻な水不足は投資環境にも大きな影響を与えています。
       この協力は、同都市圏において、海水の淡水化施設及び送水・配水施設の建設・改善を行うことにより、安全かつ安定的な上水道サービスの向上を図るものであり、地域住民の生活環境の改善及び投資環境改善につながることが期待されます。
    4. 「デリー高速輸送システム建設計画(フェーズ4 追加路線)(第一期)」(供与限度額797億2,600万円)
       近年の急速な都市化により、特に、デリー、ムンバイ等の大都市では大規模な交通渋滞が発生しており、経済損失のほか、大気汚染・騒音等の自動車公害が深刻化しています。
       この協力は、デリー首都圏において、大量高速輸送システム(地下鉄)を建設することにより、増加する輸送需要への対応を図るものであり、交通混雑の緩和と自動車公害減少を通じた地域経済の発展及び都市環境の改善、ひいては気候変動の緩和につながることが期待されます。
    5. 「アッサム州における養殖推進及び生計向上計画」(供与限度額35億8,000万円)
       インド北東部の最大州であるアッサム州は水資源に恵まれ、淡水(河川や湖沼等)で水産物を捕獲する内水面水産業(養殖を含む)が盛んですが、特に、養殖のための技術やインフラが不十分なため、結果として、水産物を州外や国外から輸入しています。
       この協力は、同州において、養殖業の促進、水産サプライチェーン構築支援、州水産局の能力強化等を実施することにより、養殖業の生産量増加及び水産関係者の生計向上を図るものであり、もって同州の社会経済発展につながることが期待されます。
    6. 「パンジャブ州生物多様性及び自然資源保全計画」(供与限度額114億8,000万円)
       インド北部に位置するパンジャブ州では、近年の人口増や都市化の結果、森林減少が進み、樹木被覆率(ある区域において、樹木で覆われた土地がその区域全体に占める面積の割合を示したもの )が減少しています。その結果、生物多様性が脅威に晒されているほか、二酸化炭素の吸収量の減少、土砂災害等に対する強靱性や水質浄化機能の低下等が懸念されています。
       この協力は、同州において、植林等を通じた樹木被覆率の向上、生物多様性保全、湿地管理、森林局の組織基盤の強化等を実施することにより、生態系サービスの改善や気候変動対策(適応策・緩和策)の推進を図るものであり、同州の持続可能な社会経済発展につながることが期待されます。
  2. 供与条件
    1. 上記1(1)
      1. 金利:年2.45%
      2. 償還期間:30年(10年の据置期間を含む。)
      3. 調達条件:アンタイド
    2. 上記1(2)
      1. 金利:2.25%(コンサルティングサービス部分は年0.55%)
      2. 償還期間:30年(10年の据置期間を含む。)
      3. 調達条件:アンタイド
    3. 上記1(3)
      1. 金利:2.45%(コンサルティングサービス部分は年0.55%)
      2. 償還期間:30年(10年の据置期間を含む。)
      3. 調達条件:アンタイド
    4. 上記1(4)
      1. 金利:変動金利(TORF+90bp)(コンサルティングサービス部分は年0.55%)
      2. 償還期間:30年(10年の据置期間を含む。)
      3. 調達条件:アンタイド
    5. 上記1(5)
      1. 金利:1.70%(コンサルティングサービス部分は年0.55%)
      2. 償還期間:15年(5年の据置期間を含む。)
      3. 調達条件:アンタイド
    6. 上記1(6)
      1. 金利:2.25%(コンサルティングサービス部分は年0.55%)
      2. 償還期間:30年(10年の据置期間を含む。)
      3. 調達条件:アンタイド

(参考1)円借款

 開発途上国に対して必要な資金を緩やかな条件(低い金利や長い返済期間)で貸し付ける協力。開発途上国にとっては、日本への返済を前提とした資金であり、効果的な活用や自立的発展に繋がることが期待されます。

(参考2)インド基礎データ

 インドは、面積約329万平方キロメートル(日本の約8.7倍)、人口14億2,863万人(2023年、世界銀行)、人口1人当たりの国民総所得(GNI)2,540米ドル(2023年、世界銀行)。


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