報道発表
エジプト・アラブ共和国に対する円借款1件及び無償資金協力2件に関する書簡の署名・交換
12月17日、東京において、藤井比早之外務副大臣と、ラニア・アルマシャート・エジプト・アラブ共和国計画・経済開発・国際協力大臣(H.E. Dr. Rania Al-Mashat, Minister of Planning, Economic Development, and International Cooperation of the Arab Republic of Egypt)との間で、民間セクター開発及び経済多角化支援のための350億円を限度とする円借款、農機貸出センターデジタル化関連機材を供与するための5億円を限度とする無償資金協力、並びに国立文化センターにおいて機材(ホール用座席等)を整備するための1.8億円を限度とする文化無償資金協力に関する書簡の署名・交換が行われました。
1 民間セクター開発及び経済多角化支援のための開発政策借款(供与限度額:350億円)
(1)対象案件の概要
エジプトは、昨今のスーダン内戦、ガザ情勢の悪化等の不安定な地域情勢の影響を大きく受けています。本案件は、こうした国際情勢により厳しい経済・財政状況にあるエジプトのニーズを踏まえ、同国政府へ財政支援を行うと共に、同国の民間セクター投資促進、及び経済多角化・グリーン経済移行の取組を促進するものであり、同国及び地域安定への寄与が期待されます。
また、本案件は昨年12月の日・エジプト首脳ワーキング・ディナーで、岸田文雄内閣総理大臣(当時)が、エルシーシ大統領に表明した財政支援を具体化するものです。さらに、本案件はアフリカ開発銀行(AfDB)との協調融資案件であり、第8回アフリカ開発会議(TICAD8)において表明した「アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ」第5フェーズ(EPSA5)に貢献します。
(2)供与条件
金利:年2.0%(優先条件(固定・基準)「EPSAソブリン向け融資」に該当)
償還期間:30年(10年の据置期間を含む。)
調達条件:アンタイド
2 経済社会開発計画(農機貸出センターデジタル化関連機材供与)(供与限度額:5.0億円)
エジプトは、小麦の国内消費量の約6割を輸入に依存する世界有数の小麦輸入国であり、近年の不安定な国際情勢による小麦価格の高騰や、隣国スーダンからの避難民等の流入の影響等から、国内の食料安全保障のニーズを満たすことが喫緊の課題となっています。本案件は、エジプト政府に対し、農機貸出センターのデジタル化に寄与するための農機具の整備、及びシステム構築関連機材を供与することにより、農業機材活用の効率化、及び食料安全保障の強化を図り、もって社会の安定化を通じた同国の経済社会開発に寄与するものです。
食料安全保障の改善や持続的な農業は、2022年(令和4年)8月に採択されたTICAD8チュニス宣言や、昨年4月の日・エジプト首脳会談でもかかる協力実施が言及されており、本件の実施により、同国を始めとする、グローバル・サウスにおける強靱で持続可能な農業・食料システムの構築促進が期待されます。
3 国立文化センターにおける機材整備計画(供与限度額:1.8億円)
国立文化センターは、1988年(昭和63年)に我が国の無償資金協力により整備され、エジプトにおける、教育・文化活動の拠点となる重要な施設として多くの市民に親しまれてきました。同センターは、エジプトと日本の二国間関係の象徴として重要な役割を果たしてきましたが、建設から35年以上が経過し、国際的レベルの公演を実施してきた大ホールの設備・機材の老朽化が進んでおり、これら設備・機材の再整備が喫緊の課題となっています。本案件は、同施設のホールの座席や床材カーペット等を更新・再整備することにより、幅広い芸術鑑賞の機会の増加、同施設で実施される文化・教育活動の質的向上、及び利用者の満足度の向上を図り、もってエジプトの文化・芸術を通じた同国の人材育成、及び中東・北アフリカ地域における文化振興に寄与するものです。
エジプト・アラブ共和国は、面積約100万平方キロメートル(日本の約2.6倍)、人口約1億1,100万人(2022年、世界銀行)、人口1人当たり国民総所得(GNI)は約3,900米ドル(2023年、世界銀行)。