報道発表
G20外相会合(概要)



3月2日、インド・ニューデリーにてG20外相会合が開催され、山田賢司外務副大臣が出席したところ、会合概要は以下のとおりです(議長総括及び成果文書(英語)(PDF)及び概要(PDF)
)。
なお、同会合では、セッション1として「多国間主義の強化及び改革の必要性、食料・エネルギー安全保障、開発協力」が、セッション2として「テロ対策(新たな脅威)、グローバルな技能マッピング及び人材プール、人道支援及び災害救援」が、テーマとして取り上げられ、議論されました。
1 セッション1:「多国間主義の強化及び改革の必要性、食料・エネルギー安全保障、開発協力」
本セッションでは、ロシアによるウクライナ侵略を始めとする現下の国際情勢を踏まえた多国間主義の強化及び改革の必要性、食料とエネルギーの価格高騰への対処や安定供給の確保に向けた国際的な連携の重要性、グローバルな課題やSDGs達成に向けた開発協力の重要性、これら諸課題におけるG20の役割等について、議論が行われました。
本セッションでは、日本を始めとする多くの国がロシアによるウクライナ侵略を強く非難し、ロシアの侵略行為が国際秩序及び多国間主義の基盤を揺るがしていることを指摘したほか、世界の食料やエネルギーをめぐる状況の悪化はロシアの侵略行為によって引き起こされている旨を指摘しました。
(1)冒頭
山田副大臣から、2月に発生した大規模地震により、トルコ及びシリアにおいて犠牲となった方々に心からの哀悼の意を表しました。また、山田副大臣から、日本はG7議長国として、国際社会が直面する様々な課題の解決に向けてリーダーシップを発揮していく所存であるとし、G20とも連携していきたい旨述べました。
(2)多国間主義の強化及び改革の必要性
山田副大臣から、前世紀に二度の世界大戦を経験した国際社会は、このような惨禍を繰り返すことのないよう、法の支配に基づく国際秩序を築き上げてきた、また、多国間主義の強化を進め、その取組の一つとしてG20も立ち上げられた旨述べました。その上で、ロシアによるウクライナ侵略は、そうした国際秩序や多国間主義の基盤を揺るがしており、ウクライナの市民や重要インフラに対する攻撃も断じて容認できず、日本は最も強い言葉でこうした暴挙を非難する、また、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてや、その使用はあってはならない旨述べました。さらに、多国間主義を強化していくためには、国連憲章の理念と原則に立ち戻り、国連の機能を強化する必要があり、特に安保理改革はその重要な一環である旨述べました。
(3)食料・エネルギー安全保障
山田副大臣から、ロシアによるウクライナ侵略は、世界の食料やエネルギーをめぐる状況を悪化させている旨指摘しました。
食料について、山田副大臣は、全ての人々の廉価で安全な栄養のある食料へのアクセスと、世界の食料システムの脆弱性克服は急務であり、G20と連携して対処したい旨述べました。また、日本としても、アジアや中東、アフリカ諸国に対する緊急食料支援を含め、グローバルな食料安全保障への支援として、近々、5000万ドルの貢献を決定する予定である旨述べました。さらに、更なる危機に備えるため、中立・公正な統計情報や調査データは重要であり、このため、G20で生み出された農業市場情報システム(AMIS)の強化を支援していきたいと述べました。このほか、黒海穀物イニシアティブの延長と拡充についての支持を表明しました。
エネルギーについて、山田副大臣は、エネルギー安全保障を確保しつつ脱炭素化を進めるには、各国・地域にとって最適化された様々なクリーンエネルギー移行の道筋があることを認識しなければならない旨指摘しました。また、クリーンエネルギー機器に不可欠な重要鉱物資源の強靭なサプライチェーンの構築が必要であり、これらについてもG20の場で議論を深めていきたい旨述べました。
(4)開発協力
山田副大臣から、現下の危機の中で、多くの開発途上国の財政状況が悪化し、そのインフラ需要を満たすことができていないことを指摘しました。その上で、かかる状況に対応しつつ、開発協力が真に途上国の持続的な発展に寄与するためには、国際ルール・スタンダードに沿った形で開発金融の透明性や公正性を確保することが重要であり、開発金融のあるべき姿について、G20の場でも議論を深めていきたい旨述べました。
2 セッション2:「テロ対策(新たな脅威)、グローバルな技能マッピング及び人材プール、人道支援及び災害救援」
本セッションでは、新興技術がもたらす影響を踏まえたテロ対策、グローバルな人材育成、人道支援及び災害救援に関する国際的な連携の重要性、及びG20の役割等について、議論が行われました。
(1)テロ対策(新たな脅威)
山田副大臣から、日本は、G20を始めとする国際社会と共に、テロ・暴力的過激主義、国際組織犯罪対策を通じて、法の支配に基づく国際秩序の堅持に貢献していく旨を述べました。また、近年、オンラインでの過激化思想の拡散や新興技術の悪用への懸念が増大しているとしつつ、途上国の法執行機関等への能力構築支援や、これらの国が多様性を尊重できる寛容な社会を構築することへの支援を通じ、過激主義思想の拡散防止等に取り組んでいくことが重要である旨述べました。さらに、国際的な違法薬物取引でもIT化・スマート化が広がり、摘発がさらに困難となっており、国際的な協力は従来にも増して重要であるとしつつ、このような中、薬物対策について議論をすることは有益であり、そのような取組を歓迎したい旨述べました。その上で、日本は人材育成等を通じて各国の腐敗対策を支援するとともに、G20腐敗対策作業部会等を通じて、腐敗対策の国際的取組にも積極的に貢献していくとの考えを表明しました。
(2)グローバルな技能マッピング及び人材プール
山田副大臣から、SDGs達成のためには、途上国においてデジタル分野等のスキルを身に着け、技術革新の中でも活躍できる人材を育成することが重要である旨述べました。その上で、日本は、例えばASEANやアフリカ各国に対してデジタル分野を含む幅広い分野での人材育成を実施していることを紹介しつつ、引き続き途上国における能力構築を通じて途上国の持続可能な発展に貢献していく旨述べました。
(3)人道支援・災害救援
山田副大臣から、日本は、多くの災害を経験してきた経験を活かし、途上国の自然災害に対する脆弱性克服のための支援を積極的に実施していることを紹介しつつ、現在、自然災害が激甚化している中で、インドがG20議長国として、防災分野を重視していることを歓迎する旨述べました。また、今般トルコ南東部において発生した大規模地震に対して、日本は国際緊急援助隊をトルコに迅速に派遣し、加えて、トルコ・シリア両国向けに、テント、毛布等の緊急援助物資の供与を行ったほか、国際機関などを通じて、先週正式決定した合計約2,700万米ドルの緊急人道支援を順次実施していくことを紹介した上で、被災地の方々が、この困難を乗り越えるのに必要な支援を今後も迅速に提供したい旨述べました。さらに、日本が議長国を務める本年のG7においても、人道支援及び防災を開発課題の一つとして扱うこととしている、G7とG20との間で連携し、脆弱国への人道支援の必要性と防災の重要性を世界に力強く発信していきたい旨述べました。
(4)アフリカ連合(AU)との関係
山田副大臣から、近年の国際社会におけるアフリカ諸国の役割の増大を踏まえ、日本はアフリカとの関係を更に強化していく考えである旨述べつつ、こうした観点から、昨年12月に岸田総理が表明したとおり、日本はAUのG20加盟を支持している、G20でもAUとよく連携していきたい旨述べました。
- (1)G20
日本、インド(議長国)、ブラジル、インドネシア、アルゼンチン、豪州、カナダ、中国、フランス、ドイツ、イタリア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、英国、米国、EU - (2)招待国
スペイン、オランダ、シンガポール、バングラデシュ、コモロ(アフリカ連合(AU)議長国)、エジプト、モーリシャス、ナイジェリア、オマーン、アラブ首長国連邦 - (3)国際機関
国連、世界銀行、アジア開発銀行(ADB)、災害に強靱なインフラのためのコアリション(CDRI)、金融安定理事会(FSB)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、太陽に関する国際的な同盟(ISA)、経済協力開発機構(OECD)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)