報道発表
2016年(平成28年)海外邦人援護統計の公表
1 本11日,外務省は,2016年(平成28年)海外邦人援護統計を外務省ホームページ及び海外安全ホームページに公表しました。この海外邦人援護統計は,2016年1月1日から12月31日までの間,我が国在外公館及び公益財団法人日本台湾交流協会が,海外において事故・災害,犯罪加害及び犯罪被害等で,何らかのトラブルに遭遇した邦人に対し行った援護事案の件数及び人数を暦年ベースでとりまとめたものです。
2 援護統計の特徴
(1)2016年の援護統計は,総援護件数が,1万8,566件(対前年比3.07%増)で過去10年において最も多く,総援護人数は,2万437人(対前年比0.25%増)となり,過去10年において2番目に多い人数でした。
(注)統計を開始した1986年以降の最多人数は,インド洋大津波が発生した平成16年(2004年)の2万1,871名。(2)過去10年間における事案別の傾向を見ると,『犯罪被害』のうち,「強盗」・「窃盗」・「詐欺」といった事案の件数は,大きく減少しています(2007年と比較して2016年は1,204件減)。他方,「所在調査」については,件数が大幅に増加しており,援護内容の傾向に変化が見られます(積算方法が変更された2008年と比較して2016年は5,295件増)。
(3)今次統計における「死亡者数」は504人(前年比5.44%減),「負傷者数」は320人(前年比2.44%減)であり,どちらも過去10年間で最も少なくなっています。特に「負傷者数」については,10年前と比較すると約半数(2007年は610人)となっており,大幅に減少しています。
3 主な事案
(1) 2016年におけるテロや政変等に係る邦人援護事案としては,3月にベルギー・ブリュッセルにおいて,邦人2人が負傷した連続爆破テロ事件や,7月にバングラデシュのダッカで,邦人8人が死傷したレストラン襲撃テロ事件がありました。過去10年間のテロによる邦人死傷者数をみると,2012年までは0~4人の間で推移してきましたが,その後は2013年(11人),2014年(0人),2015年(10人),2016年(10人)と推移しています。
また,邦人に死傷者は出ていませんが,2016年7月に,南スーダンで治安情勢が急激に悪化したことにより邦人が退避した事案や,トルコにおけるクーデター未遂事件により渡航者が空港に取り残された事案等が発生しています。
外務省では,こうした世界各国の治安情勢に対して,迅速かつきめ細かい情報収集を行っており,邦人の安全確保のため,海外安全ホームページや「たびレジ」を活用して邦人に対して危険情報の周知を行っているほか,全国各地で海外安全セミナーを開催したり,ゴルゴ13を起用した海外安全対策マニュアルを制作・配布することを通じて,海外安全対策支援に鋭意取り組んでいます。
(2)また,近年,邦人留学生が重大な事件・事故に巻き込まれる事案が頻発しています。2016年について言えば,12月にフランスで留学中の大学生が行方不明となった事案や,9月と11月にカナダ及びコロンビアでそれぞれ学生が殺害された事案,11月に米国で交通事故により学生が死亡した事故などがその例です。
外務省では,留学生の安全対策強化のための取組として,文部科学省と共同での「大学における海外留学に関する危機管理ガイドライン」の策定や,本件注意喚起に係る講演の開催,海外安全ホームページ等による広報・情報発信に関する活動などを行っています。
4 援護件数の多い在外公館
(1)在外公館別の援護件数を見ると,前年に引き続き在タイ日本国大使館が全在外公館の中で最も多く,次いで在フィリピン日本国大使館,在ロサンゼルス日本国総領事館,在上海日本国総領事館,在ニューヨーク日本国総領事館の順となっています。
(2)北米地域に所在する在外公館においては,昨年と同様に「所在調査」が多数を占めており,また,欧州地域に所在する在外公館では,「窃盗被害」が突出して多く発生しています。他方,アジア地域に所在する在外公館については,在タイ日本国大使館や在フィリピン日本国大使館といった東南アジアに所在する在外公館においては,主に「傷病」や「困窮」,「窃盗」などを中心に援護案件が発生しているのに対し,中国に所在する在外公館は「公的な手続きに係る相談」,韓国に所在する公館は「遺失・拾得物」が主な内容となっているなど,在外公館が所在する国によって援護内容の傾向に違いがあります。