(参考)
1.本件の概要と経緯
(1)EUは、技術進歩によるIT製品の多機能化・高機能化を契機に、「情報技術製品の貿易に関する閣僚宣言」(ITA:Information Technology Agreement)においてWTO協定(1994年ガット)に規定する関税を課さないこととした製品について、ITA対象外の製品であるとして高関税を課している。本件で問題となっている品目は、デジタル複合機、パソコン用液晶モニター、録画機能付セットトップボックス。
(2)我が国は、米国及び台湾と共に、EUによる上記のような取扱いはWTO協定に反するものとして、5月28日にEUに対し協議要請を行い、6月26日、7月16日、同17日、EUとの間で協議を行ってきたが、協議要請から60日以内に協議によって紛争を解決することができなかったことから、EUとの間で同様の問題を有する米国、台湾とともにパネル設置要請を行うに至ったもの。8月29日の紛争解決機関(DSB)定例会合において、日米台のパネル設置要請が議題として扱われたが、ECが反対したためパネルが設置されなかった。
(注)パネル設置要請後1回目のDSB会合においては、全会一致で承認しない限りパネルは設置されないが(紛争解決了解(DSU)第2条4)、2回目のDSB会合においては、全会一致で却下しない限り、パネルが設置される(DSU第6条1)。
2.ITA(Information Technology Agreement)
1996年12月、WTOシンガポール閣僚会議にて作成。参加国は、情報技術関連機器、同部品等の関税を撤廃することを約束。現在、参加国はEU加盟国27カ国を含む71カ国。ここでの約束はWTO参加各国の譲許表に反映されている。
3.個別品目における問題
(1)デジタル複合機
EUは、一定以上のコピー機能を有したデジタル複合機をコピー機(ITA対象外)であるとして、課税。
(2)パソコン用液晶モニター
EUは、DVI端子を有したパソコン用液晶モニターをビデオモニター(ITA対象外)に分類し、課税。
※DVI端子:パソコンのデジタル信号を受信するための端子。EU市場で販売されるパソコン用液晶モニターの9割以上に標準装備。ごく一部のDVDプレーヤーと直接接続が可能。
(3)セットトップボックス
EUは、録画機能付セットトップボックスをビデオ機器(ITA対象外)であるとして、課税。
※セットトップボックス:ケーブルテレビの放送信号や電話回線等をテレビに接続し、テレビで視聴可能な信号に変換する装置。