
玄葉外務大臣とパスカル・ラミーWTO事務局長との会談
平成24年3月16日
本16日(金曜日)午後7時から約1時間半,玄葉光一郎外務大臣は,外務省賓客として来日中のパスカル・ラミー世界貿易機関(WTO)事務局長(H.E. Mr. Pascal Lamy, Director General, WTO)と会談及び夕食会を行ったところ,概要は以下のとおりです。
- 世界貿易における日本の役割
(1)冒頭,玄葉大臣より,要旨次の通り述べました。
(ア)ドーハ・ラウンド交渉(DDA)が膠着する等,WTO体制は困難に直面しているが,その重要性は不変であり,我が国は引き続き,WTOにおいて主導的役割を果たしていく。
(イ)我が国が推進する経済連携は,新興国をシステムに関与させ,多角的な貿易自由化を補完するとともに,その発展の土台を提供するものである。
(2)これに対し,ラミー事務局長より,要旨次の通り述べました。
(ア)WTO体制における日本の役割に対し,高い評価と強い期待を表明する。
(イ)欧米及びアジアの幅広い相手国との間で経済連携を推進する日本は,今後,世界貿易のルール作りにおいて大きな役割を果たすことになる。大いに注目している。
- ドーハ・ラウンド交渉の推進
(1)玄葉大臣より,要旨次の通り述べました。
(ア)DDAのうち,更なる自由化やルール作りについては,有志国が先行する「新たなアプローチ」を強化すべき。
(イ)同時に,保護主義の抑止等,WTO体制の維持・強化には,引き続き全加盟国で粘り強く取り組むべき。
(ウ)WTOにおいて大きな発言権を持つに至った新興国が,それに見合った責任を負うよう,システムの改革も含めて検討すべき。
(2)これに対し,ラミー事務局長より,要旨次の通り述べました。
(ア)サービス貿易や情報技術協定(ITA),政府調達協定(GPA)への中国の加入といった,現在WTOにおいて進められている有志国先行の取組は有望であり,期待している。
(イ)新興国の責任の問題があることは,新興国側も認めているが,それをどう解決するかについて合意できず,DDA膠着の原因となっている。当面,解決は困難と思うが,粘り強く取り組んでいきたい。
- 風評被害
(1)玄葉大臣より,原発事故から1年が経過したが,いまだに,渡航制限,食品の輸入制限等の風評被害が収まっていない,我が国は,科学的根拠に基づき,安全性を十分に確保しており,WTOも,ルールに則った公正な取扱いの確保に役割を果たしてほしい旨述べました。
(2)これに対し,ラミー事務局長より,WTOはまさにそのような問題の解決を図る場であり,そのためのツールも揃っているので積極的に活用してほしい,また,もしお役に立てることがあれば,事務局長としても役割を果たしたい旨述べました。