報道発表

世界食糧計画(WFP)を通じた食糧援助について

平成18年3月17日
  1. わが国政府は、世界食糧計画(WFP)を通じ、地域の平和と安定に大きな影響を及ぼし得る国・地域や、不安定な移行期の中で食糧を必要としている国などについて、合計13億8,500万円の食糧援助を行うこととし、このための書簡の交換が、日本時間3月17日(金曜日)、ローマにおいて、わが方中村雄二駐イタリア国大使と先方ジェームス・モリスWFP事務局長(Mr. James Morris, Executive Director)との間で行われた。

    今回の食糧援助の対象内訳(カッコ内は供与額)。
    (1)バングラデシュ脆弱者  (5億円)
    (2)東ティモール脆弱者  (1億円)
    (3)ニカラグア被災民  (1億3,500万円)
    (4)アフガニスタン国内避難民等  (3億5,000万円)
    (5)フィリピン・ミンダナオ地域紛争被災者  (1億4,000万円)
    (6)パレスチナ自治区(難民以外の住民)  (1億6,000万円)

  2. バングラデシュは、わが国の約4割の国土に1.43億人の人口を抱え、その36%が1日1ドル以下の貧困状態にあり、食糧不足と深刻な栄養不足に直面している。5才未満の栄養不足による発育不良児の割合は52%と世界で最も高い。WFPは、113万人の食糧不足の軽減と栄養改善を目的として、食糧配給事業を実施している。わが国は、穏健なイスラム国であるバングラデシュが民主化以降も安定勢力として発展していることを重視しており、このような中で、WFPを通じた食糧不足、栄養状況の改善を目指した食糧配給事業を支援するものである。
  3. 東ティモールは、UNDP人間開発指標ではアジア諸国の中で最低水準にあり、5才未満の子供の45%は成育不良、出生時死亡率は100人中8~9人と高く、過去2年継続した干魃により、農村部で食糧不足が発生している。WFPは5歳以下の子供、妊産婦等の脆弱者15万人を対象者として、食糧配給事業を実施している。わが国は、アジアの安定に貢献する観点から東ティモールの独立後の国造りに積極的な支援を行っているが、食糧生産能力が脆弱な現状を踏まえ、人道的観点から、WFPの食糧支援事業を支援するものである。
  4. ニカラグアでは、2005年5月に発生した大雨の影響で、北部および北東部の作付けに甚大な被害が生じた。また、2004年の雨季が遅れたためトウモロコシの生産は前年比で14万トン低下し、特に中央部および北大西洋岸地域の貧困地域で食糧不足が発生しているところ、わが国として、ニカラグアの脆弱者(妊産婦、貧困層、小学生、5才未満の栄養不良児童)を対象としたWFPの食糧配給事業を支援するものである。
  5. アフガニスタンについては、2001年9月の米国同時多発テロ事件とその後の米軍主導の対アフガニスタンにおける武力行使により、タリバン政権が崩壊し、アフガニスタンの和平と復興への取り組みが開始されたが、同時に世界は同国がテロの拠点とならずに秩序ある安定的な国になることの重大さをあらためて認識した。アフガニスタンにおける栄養不足による出生時死亡率は100人中11.5人と世界最悪の水準であるが、こうした食糧不足を軽減するため、WFPは12万人の国内避難民、150万人の小学校児童や結核患者等の脆弱者に対する食糧配給事業を行っている。わが国としては、アフガニスタンの平和と安定は、世界全体の安全、そして、わが国自身の安全と繁栄に係わる問題であると認識し、今般、WFPの食糧支援活動を支援することとした。また、本食糧援助は、本年1月末の「アフガニスタンに関するロンドン国際会議」においてわが国が表明した4億5,000万ドル(このうち早期実施分1億5,000万ドル)の一環として行うものである。
  6. フィリピンのミンダナオ地域は、30年にわたる紛争により、貧困状況は更に悪化し、テロ分子の温床として投資先としてのフィリピンのイメージ低下を招くなど、フィリピン全体の経済発展の妨げともなっている。わが国はこうした状況を踏まえ、平成14年12月、「平和と安定のためのミンダナオ支援パッケージ」を発表し、ミンダナオ地域の開発と安定を優先課題として進めるフィリピン政府の政策を支持して来たところである。他方、2004年以降、ミンダナオ紛争をめぐり、反政府勢力と政府の和平予備交渉が進展し、2006年2月には「モロ民族解放戦線(MILF)」と政府との間でほぼ全ての懸案問題について協議を了し、近く本格的な和平交渉が開始される見通しとなった。こうした中、フィリピン政府の要請に基づき、WFPは本年6月よりミンダナオ地域で、帰還民、元兵士、紛争被災者等210万人に対する食糧配布事業を開始する計画である。ミンダナオ地域の平和を一貫して支援してきたわが国としては、WFPによる食糧配布事業を支援することにより、同地域の食糧不足の軽減と、地域の内政・経済の安定を支援するものである。
  7. パレスチナについての今般の支援は、わが国が昨年5月のアッバース大統領訪日に際して表明した、同大統領の和平努力を支援するための当面1億ドル程度の支援の一環として行うものである。本年1月25日(水曜日)の立法議会選挙の結果、急進派であるハマスが過半数を獲得して、第一党となり、わが国としては、新しくできる予定のパレスチナ自治政府が和平プロセスの進展に努力するかどうかを注視しているところであるが、パレスチナ人の生活状況の更なる悪化を防ぎ、和平志向の民意を強化する観点から、今回の人道支援を行うものである。WFPは、西岸およびガザ地区に居住する難民以外の脆弱者(孤児、老人、栄養不足の児童、病弱者等)を対象に小麦粉を配給するものである。
  8. 世界では、8億5,000万人が紛争や干魃等の自然災害によって食糧不足に陥っている。そのうちおよそ3億人が子供たちであり、飢えを原因として毎日、5歳未満の子供1万8,000人を含む2万5,000人が命を落としている。また、食糧問題は、各地域の政治的・経済的安定とも密接に関連しており、世界が一致して取り組むべき重要課題である。わが国は、今後とも国際社会と協調しつつ、積極的な貢献を行って行く方針である。
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