東南アジア非核兵器地帯条約の背景と意義 ─ASEANによる広域安全保障の追求─
山地秀樹
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)における経済通貨統合 ─欧州連合をモデルに─
岡田昭男
多数国間環境条約の履行の統合について ─オゾン層保護と気候温暖化対策の調和をめぐって─
猪又忠徳
国際司法裁判所における仮保全措置の目的の展開 ─最近の判例の検討を中心として─
酒井啓亘
石川勝利
八田善明
多数国間環境条約の履行の統合について
─オゾン層保護と気候温暖化対策の調和をめぐって─(PDF)
猪又忠徳
これまで、特に、1992 年のリオデジャネイロでの地球サミットを契機とする地球規模の環境意識の高まりを反映して、実効的な環境保全を目指す多くの多数国間環境条約が成立した。しかしながら、個々の条約下の精緻な環境レジームは、ともすれば、蛸壺化し、条約の専門的自己完結的な遵守を宗とし、総合的な環境目的とガヴァナンスの達成にあたっては互いに孤立する傾向がある。
本論文は、多数国間環境条約形成の嚆矢であり、モデルともなったモントリオール議定書の下で、オゾン層破壊物質の廃棄及び代替物質の導入を推進する直接的規制制度が、いかにして、気候温暖化防止を含む幅広い環境面への責任ある配慮をもって運用されているかを検証し、オゾン層保護と気候温暖化対策の統合的履行、ひいては、世界環境条約法の可能性を探るものである。
国際司法裁判所における仮保全措置の目的の展開
─最近の判例の検討を中心として─(PDF)
酒井啓亘
国際司法裁判所(ICJ)による仮保全措置は、その規程上、最終判決の実効性を担保する必要性から当該判決に至るまでの「当事者の権利保全」を目的として指示される。ところが最近の判例では、その他に「紛争の悪化防止」や「人権及び人道上の考慮」を主たる目的とした仮保全措置の指示が多くなってきた。そうした紛争の多くが武力衝突などを伴う高度に政治的な性格を有していることから、ICJ が安保理との制度上の関係で自らの役割の「部分性」を自覚することで、紛争解決プロセスにおける仮保全措置の新たな位置づけを行うとともに、特に冷戦後、安保理で議論されている平和、人権、人道性といった「国際社会の価値」へのコミットメントの手段として仮保全措置が用いられており、その規範化を支援する戦略がこうした仮保全措置の目的拡大の背景にある。最近の仮保全機能の展開は、このような制度面と規範面の双方における安保理とICJ の相互連関の結果である。
石川勝利
湾岸諸国をはじめとする多くのアラブ諸国について、「部族」という要素が内政を見る上での主要なキーワードの一つとなっている。オマーンにおいても、生活全般に未だ根強く部族社会の伝統的意識や慣習が残っている。そのような習慣は、核家族化が進む今日にあっても、比較的根強く今日まで続いている。オマーンでは、部族的要素に配慮した政策として、諸部族への閣僚・官僚ポストの配分、部族対策費予算、議会における議席の配分などが見られる。部族対策としてとられているこのような施策は、現状の政治制度の中で、一定の民意を行政に反映させるためのシステムとして機能している。しかしながら、現在のような制度が今後も長きに亘って存続していくためには、強力なリーダーシップ、部族間の勢力均衡と少数派の扱い、世代間のギャップといった難しい課題がある。
八田善明
「暗号」は、つい最近まで政治・外交・軍事上のごく限られた用途における限られた利用者のためのものとして認識されてきた。しかし、インターネットの出現と、IT革命により暗号を取り巻く用途、利用者の範囲、流通量の全てにおいて劇的な変化がもたらされた。この変化は、従来国家が管理対象として位置づけてきた暗号から、電気や電話の様に現代における必需品としての暗号へと変貌を遂げていることを意味し、外交や軍事目的の観点から輸出管理の対象としている時代から、プライヴァシー保護を含め、個人、組織、国家のそれぞれの情報やインフラの防衛の道具として位置づける時代になってきていることを意味する。これからの暗号の位置づけと、国家による関わり方等について考察してみる。
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