記者会見

岩屋外務大臣会見記録

(令和7年3月11日(火曜日)13時41分 於:本省会見室)

岩屋外務大臣会見の様子

冒頭発言

(1)東日本大震災から14年

【岩屋外務大臣】本日、東日本大震災の発生から14度目となる3月11日を迎えました。改めて、震災の犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、これまで世界中から頂いたご支援や励ましに、改めて感謝申し上げたいと思います。
 風評被害の払拭や、日本産食品に対する輸入規制の撤廃は、引き続き政府の重要課題です。特に、輸入規制が残る6か国・地域に対しましては、様々な機会を捉えて、粘り強く規制撤廃を働きかけてまいります。

(2)タイ・ミャンマー国境付近における特殊詐欺事案

【岩屋外務大臣】次に、タイ・ミャンマー国境付近における特殊詐欺事案について、再発防止に向けた政府全体の取組を紹介いたします。
 まず、外務省といたしましては、2月末に、外務本省及び海外の日本大使館・総領事館の相談窓口を広く周知したところです。また、全国の旅券事務所におきまして、警察庁とも連携し、お配りした広報資料、三種類の広報資料を窓口にて配付することといたしました。今後は、これら資料も活用いたしまして、未成年者に対する注意喚起や、国内の空港における広報も強化していきたいと考えております。
 外務省としては、本件を深刻に受け止めておりまして、引き続き関係省庁と緊密に連携しながら、邦人が、意図せずに犯罪の加害者や被害者になることがないよう、呼びかけてまいりたいと思います。

(3)「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議

【岩屋外務大臣】最後に、3月30日及び31日に、国連大学におきまして、「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議の第6回最終会合を開催いたします。今回の会合では、2026年NPT運用検討会議への提言のとりまとめに向けて、詰めの議論が行われる予定です。
 私自身(大臣)も、この国際賢人会議の会合に出席する予定です。
 会議自体は非公開となりますが、4月1日には、外部の有識者も交えての意見交換を行う公開イベントも開催いたしますので、多くの方々の参加をお待ちしております。

 冒頭、私(岩屋大臣)からは、以上です。

G7外相会合

【共同新聞 鮎川記者】岩屋大臣、明日からカナダを訪問されて、G7外相会合に出席されると思うんですが、それに関して伺います。ウクライナ情勢や米政権による関税の問題を巡って、G7各国の間に溝が生まれているという指摘もあります。先日の首脳会合では、成果文書の発出ができず、取りまとめができませんでした。そういった中で、外相会合出席されるにあたって、日本として、結束のために、どのように取り組まれていくおつもりか、日本にできる役割というものをどのように捉えておられるか、お聞かせください。

【岩屋外務大臣】G7各国に溝が生まれてはいけないわけですよね。そのために、今回集まって議論をするということになると思います。
 今回のG7外相会合では、御指摘のとおり、ウクライナ情勢、あるいは中東情勢を含む国際情勢が、めまぐるしく変化をしているというこの現状を受けて、しっかり議論を行うということになろうかと思います。このような中にあっても、我が国としては、国際社会の平和と安定、そして、自由で開かれた国際秩序の実現といった共通の目標に向かって、G7が結束をしなければならないと。価値や原則を共有するG7が結束してこそ、対応することができると。解決に向かわせることができるということを、しっかりと訴えたいというふうに考えております。
 当然、こういう考え方は、米国を含む、各国のカウンターパートにしっかり伝えていきたいと思っておりますし、特に、アジアからは、我が国が唯一の参加国ということになりますので、このG7での議論に、インド太平洋の視点をしっかり打ち込むということが、我が国に期待されている役割ではないかというふうに考えております。
 そういう考え方に基づいて、率直な意見交換を行い、G7の結束・連携を、確たるものにしていきたいというふうに考えております。

日中関係

【毎日新聞 金記者】日中関係について伺います。中国の王毅(おう・き)外交部長が、先週7日の記者会見で、日中関係について改善と発展に積極的な勢いが表れていると評価する一方で、歴史問題や、台湾問題については、日本政府を牽制するような発言をいたしました。大臣としてのですね、受け止めてと今後の対中外交、どのように展開されるお考えか改めて、教えてください。

【岩屋外務大臣】日中関係は、首脳間でまず確認をしたように、戦略的な互恵関係を包括的に進めていくと、そして、建設的で安定的な関係を築いていくということで、今様々な対話が行われております。したがって、王毅部長が言われる改善と発展に積極的な勢いが現れている。これを大事にしていくということが何より必要だと考えております。
 その上で申し上げますと、我が国の台湾に関する基本的立場は、1972年(昭和47年)の日中共同声明にあるとおりでございまして、一切変わっておりません。
 また、石破内閣は、これまでの内閣総理大臣談話を含めて、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおりまして、これは、今後もしっかり引き継いでまいります。
 日中両国間には、今なお様々な課題がありますが、一方で大きな可能性もあるわけでございまして、両国は、この地域、あるいは国際社会の平和と繁栄に責任を有している国でございますから、連携できるところはしっかりと連携して、地域や国際社会に貢献をしていくということが大切だと思っております。
 この大きな方向性のもとで、これからも首脳レベルを含む、あらゆるレベルで幅広い分野において、意思疎通をしっかりと図って、先ほども申し上げたように、課題と懸案を減らすと、協力と連携を増やす、という関係をしっかり構築していくべきだと考えております。

「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議

【中国新聞 宮野記者】冒頭発言にありました「核兵器のない世界」に向けた国際賢人委員会議の最終会合に関連して、まず、お伺いします。今回の最終会合の議論に、大臣のどのようなご期待があるかという点と、また、その先にある提言、どのような意義があるとお考えであるかお伺いします。併せて、1日に、外部も交えて意見交換があるということだったのですが、これは被爆者や市民団体の代表が加わるような場となるのか、どのような意見交換の場となるのか、お伺いできればと思います。

【岩屋外務大臣】来年のNPTの運用検討会議、非常に大事な会議になると思います。過去2回、残念ながら成果を生むことができなかったということでもございますので、来年の運用検討会議に向けて、賢人会議からの提言をしっかり、我々受け止めさせていただいて、この会議に臨む準備していきたいと思っております。
 したがって、今般の賢人委員会議の提言を、その意味では、心待ちにしているところでございまして、大いに参考にさせていただいて、それを我が国の主張にしっかりと反映をさせていきたいと思っております。
 どういう有識者を交えた会合内容になるのかというのは、まだちょっとすいません、手元に資料がなくて、はっきりと説明できませんが、お許しをいただきたいと思います。できるだけ幅広い方にご参加いただくような会になればいいなと、していければいいな、と思っております。

日米外相会談(米国の関税措置等)

【共同通信 鮎川記者】引き続き、大臣の外遊について伺います。武藤経産大臣が米国を訪問して、トランプ政権が計画している「追加関税の対象から日本を除くように」という申し入れをしましたけれども、除外とならなかったという記者会見を本日されました。岩屋大臣は、ミュンヘンでも、米国のルビオ国務長官と立ち話でしたけれど除外するようにという申し入れをなさいました。今回、G7外相会合の場で、米国との個別の会談というのも想定されうると思うんですけれども、実現した場合に、再びそういった日本の立場を申し入れるのかどうか、また、その他にどういったことを議論したいお考えか、日米安保の重要性といったものも議題に上りうるのか、この辺りをお聞かせいただけますか。

【岩屋外務大臣】まず、その件に関しては、今ご指摘があったとおり、先般、ミュンヘン安保会議のときに、私(岩屋大臣)からルビオ国務長官と意見交換を行いまして、我が国は対象となるべきではないと申し入れをいたしました。今般、武藤大臣が訪米されて、米国のカウンターパートと会談していただいたわけですが、もちろんそこでは、我が国が対象になるべきではないと申入れていただいたわけですけれども、残念ながら、この段階では、日本を関税措置から除外するとの確認までが得られたわけではないと、協議を続けていこうということになったと承知しております。
 我が国としては、措置の対象からの除外の働きかけを含めて、引き続き、必要な対応を粘り強く行っていく考えでございまして、今度のG7の外相会合の機会を捉えて、できれば、日米のバイの会談をやりたいと思っておりますし、そういう場も通じて、しっかりと私(岩屋大臣)からもメッセージを伝えたいと思っております。そうなりました場合は、当然、経済、関税の問題のみならず、今後の日米同盟の在り方、あるいは、様々な国際場裡、国際的な課題に対する、日米としての取組などについても、意見交換をさせていただきたいと思っております。

タイ・ミャンマー国境付近における特殊詐欺事案

【NHK 米津記者】冒頭でご紹介のあった特殊詐欺に関する啓発について伺いたいと思います。未成年者に対する注意喚起や空港における広報を強化している、未成年者に届けるにはどうしたらいいかというのは、かなり難しいところだったと思うんですけれども、これは具体的にどのようなことを想定されているのか。未成年者が集まるというか、学校ですとか、何かそういう特定の場所を想定していらっしゃるのかどうかということと、あと、今回未成年者であったり、若い20代30代という若い世代の人たちが、被害者、加害者になってしまう、ということについて、どのように問題意識を持っていらっしゃるか、どのように働きかけていきたいか、というところを、もう一度お聞かせいただければと思います。

【岩屋外務大臣】先ほどは、外務省の取組についてご報告したのですが、これは、政府全体といいますか、関係省庁が、こぞってそれぞれ対策を打っていくということになろうと思いますので、警察は警察で、あるいは文科省は文科省で、いろいろお考えいただいていると思いますので、それらの対策が、総合的に、少しでも効果を発揮してくれればいいなと思っております。
 未成年の若い皆さんが、ついついそういう甘い言葉に誘われて犯罪者になったり被害者になったりするというのは、もう極めて残念なことだと思っておりますので、そういうことがないように、少しでもそういう事案が減っていくように、これから外務省としても、今まで以上に、そういう注意喚起をしっかりと行っていかなければいけないと思っております。

核兵器禁止条約

【中国新聞 宮野記者】7日に閉幕した核兵器禁止条約の締約国会議についてお伺いします。
 今回、日本政府は、オブザーバー参加を見送ったわけですが、過去2回参加していたNATO加盟国のドイツ、ノルウェー、ベルギーも、参加を見合わせております。一方で、米国の「核の傘」のもとにあるオーストラリアは参加しています。
 このような各国の動向をどのように分析されているか、またこういった状況を生んだ国際情勢をどのように見ていらっしゃるか、お伺いできればと思います。

【岩屋外務大臣】今お話しいただいたように、今回の会合には、米国の同盟国としては、オーストラリアがオブザーバー参加したのみで、NATO諸国は、いずれも参加しなかったと承知しております。
 これについては、各国それぞれの安全保障政策に基づく判断でしょうから、他国の対応について、我が国としてコメントすることは適当ではないと考えております。
 今の国際情勢は、残念ながら非常に厳しいと、核を巡る状況も非常に厳しいという状況にありますので、我が国としては、こうした中において、先般も申し上げましたように、核兵器国、非核兵器国が、広く参加している、普遍的な枠組みであるNPT体制、この体制の下で、現実的でかつ実践的な取組を推進していきたいと考えております。
 もちろん核禁条約に集った国々、また参加された皆さんも、最終的な目標は、核のない世界の実現ということでしょうから、その思いに変わりはないわけでございますが、我が国の現実的、また実践的な取組としては、ぜひ来年の、さっきも話に出ました、NPTの運用検討会議、これを実りあるものにして、少しでも核軍縮が進み、核の軍備管理が進み、また、核がこれ以上拡散しないように、という体制を作っていくために、しっかりと汗をかいていきたいと思っております。

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