記者会見
岩屋外務大臣会見記録
(令和7年1月17日(金曜日)11時28分 於:本省会見室)
冒頭発言
岩屋大臣の韓国、フィリピン、パラオ訪問及び米国訪問
【岩屋外務大臣】まず、冒頭、御報告がございます。
13日から16日まで、インド太平洋地域の重要な同志国であります、韓国、フィリピン、そして、パラオを訪問してまいりました。我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、これらの国々との連携を確認できたことは、今年の戦略的な外遊の皮切りとして、大きな意義があったと考えております。
来週には、米側からの招待を受けまして、米国・ワシントンD.C.にて実施されるドナルド・トランプ大統領の就任式に出席するため、1月19日から23日まで、米国を訪問いたします。
米次期政権発足のタイミングでの訪米となりますので、まずは、米次期政権関係者との信頼関係をしっかりと構築する、その機会にしたいと考えております。
また、米国における議会承認等の状況を踏まえつつ、会談を検討している次期国務長官候補を含め、米次期政権の高官との間で率直に議論を行い、来る日米首脳会談が有意義なものとなるように、次期政権側との意思疎通をしっかりと行ってきたいと考えております。
会談が実現をいたしましたならば、今般の外遊の成果も踏まえまして、地域の置かれた状況、その中での日米同盟が果たすべき役割についても、しっかりと次期米政権側にインプットしたいと考えております。
私(岩屋大臣)からは、冒頭、以上です。
岩屋大臣の訪米(意義、FOIP)
【共同通信 阪口記者】冒頭、御発言ありました、大統領就任式の訪問について伺いたいと思います。日本の閣僚として、史上初めて就任式への出席となります。招待されて出席することになったことに対する御所感と、こういった史上初めてということの歴史的な意義について、どのようにお考えになっているのか。国務長官候補のルビオさんとの会談についても言及されましたけれども、トランプ政権発足直後に、日米豪印なんかも取り沙汰されてはおりますけれども、そういった会合が持てることに対しての意義と、日本政府としての狙い、併せてFOIPの実現に向けて、米国の関与の重要性をどのように考えてらっしゃるのかお尋ねします。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】確かに、今回、私(岩屋大臣)は、日本の外務大臣としては、初めて米国大統領就任式典に出席することとなります。歴史的な意味というのは、ちょっと大げさだと思うんですけれども、これはトランプ新政権が、我が国との関係を重視しているという姿勢の表れだと受け止めております。
この機会に、米国における議会承認の状況を踏まえつつ、先ほど申し上げたように、外相会談はじめ、各種会談を調整していきたいと考えておりますが、バイやマルチの外相会談が実現することになれば、それが米新政権の外交安保上のスタートになっていくことになろうかと思いますので、それは国際社会に向けて、クリアなメッセージなっていくのではないかと。また、そのようになるように、我々としても、努力していきたいと思っております。
また、日米は、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」の中核となるべき二国間関係でございますので、グローバル・パートナーとして、国際社会に対して、大きな責任を有していると思います。
日米両国が、これからも、共に手を携えて努力していくということが、両国にとってはもちろんですけれども、地域全体にとって、また、国際社会の平和と安定にも、大きく寄与すると、その認識を米新政権とも、しっかり共有していきたいと考えております。
岩屋大臣の訪米(米新政権との関係)
【日経新聞 馬場記者】今の話題に続いてなんですけれども、来週訪米をされて、ルビオ国務長官を始め、トランプ新政権の要人の方々との会談を調整されているとのことですが、日本の防衛費増額を含め、防衛力の強化であったりとか、対米投資国として世界一となった日本の米国への投資強化であったりとか、日米双方にとってWin-Winになる日本の貢献について、大臣として、新政権に、どう説明して、日米の更なる協力に、どうつなげていかれるか、お考えをお伺いします。
【岩屋外務大臣】先ほども申し上げたとおり、日米同盟は、引き続いて、我が国の外交・安全保障政策の基軸でありますし、地域や国際社会に大きな責任を有している枠組みであると思います。
したがって、米国が国際社会において、適切に、かつ前向きにリーダーシップを発揮できることは、国際社会にとっても有益なことだと思います。この点を、我が国としては、米国の友人として、米国に働きかけていきたいと考えておりますし、今、御指摘があった防衛力や対米投資の強化といった取組を通じた、我が国の貢献、また、我が国の努力についても、しっかり説明して理解を得ていきたいと考えております。
御案内のように、国家安全保障戦略に基づいて、2027年に、関連経費も含めて、GDPの2%を、防衛力強化に充てるという方針に向かって、着々と、今、進んでいるわけでございますし、先般、NHKの番組でしたか、御紹介したように、過去5年、対米投資は、日本が一番ということでございますので、こういったことについても、よく説明して、理解を得ていきたいと考えております。
そして、石破総理とトランプ次期大統領との間を始めとして、新政権との間でも、できるだけ早期に、ハイレベルの会談を実現し、率直に議論して、強固な信頼関係・協力関係を構築して、日米同盟を更なる高みに引き上げていきたいと考えております。
パラオでの台湾側との接触
【読売新聞 植村記者】パラオでの外遊についてお伺いします。パラオの大統領就任式には、台湾の外交部長、外務大臣も参加されてたと思いますが、現地で、こうした台湾のハイレベルとの接触が、大臣自身とあったかどうか伺います。もし、あったのであれば、どういう会話をなされたのかも併せて伺います。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】パラオでは、御指摘のように、ウィップス大統領の2期目の就任式に出席をさせていただきました。その際に、台湾の林佳龍(りん・かりゅう)外交部長が、私(岩屋大臣)の隣の席でございました。したがって、儀礼的な挨拶を交わしたということでございます。
何千人か集まっておられましたけれども、複数の参加者が集まる行事の場で、他の同席者と挨拶を交わすのは極めて自然なことでありますし、特に、台湾の外交部長さんは、隣の席でございましたので、挨拶を交わしたということでございます。
今後の日本外交
【北海道新聞 藤本記者】今後の外交姿勢についてお伺いします。冒頭の御発言にもあったのですけれども、大臣は、昨日まで韓国、フィリピンなど歴訪されたり、そういう精力的な外交を進めておられまして、20日には、米国大統領の就任式に出席されるということで、米国は新政権になる中で、今年は石破政権の外交力が、より問われる局面になるかと思っているんですが、まず、対米関係含めて、世界情勢を含めた状況見ながら、外務大臣として、どのような視点目標を持って、今後の外交を展開していきたいとお考えでしょうか。
【岩屋外務大臣】ロシアによるウクライナ侵略、まだ続いております。また、中東情勢、ガザでは一定の合意がなったということを歓迎したいと思っておりますが、それに加えて、東アジアの安全保障環境の悪化など、国際情勢は、まだまだ厳しい状況が続いております。こういった歴史的なパワーバランスの変化によりまして、グローバル・サウスの存在感が増してきております。
つまり、国際社会は、多様化していると考えております。その中に、来週、トランプ新政権が誕生するということでございますので、今年は、世界情勢における様々な変化が予想されております。
国際社会が、今のような分断や対立を乗り越えて、協調と融和に向かっていくことができるかと。それから、「法の支配」に基づく自由で開かれた国際秩序、これを守り抜いていくことができるかと。それが、問われている重要な局面を迎えていると認識しております。
こういう状況の中で、戦後一貫して、平和国家として信頼を築いてきた日本外交の果たすべき役割は、大変大きいと考えておりまして、こういう国際社会が抱える複雑な課題の一つ一つについて、どうすれば解決に至るか。それを第一に考えながら、来週の訪米を含め、様々な外交機会を通じて、日本外交が世界をリードするというくらいの気概を持って、「対話と協調の外交」を積極的に推進していきたいと考えております。
ガザ情勢(停戦合意)
【朝日新聞 里見記者】一つ前の質問とも少し関連をするんですけれども、ちょっと具体的に中東情勢について、お話を伺いたいと思います。先般、イスラエルとハマスが段階的な停戦と人質の解放について、合意をしました。その後も犠牲者がまだ出ているという状況ですけれども、まず、これについての現状についての受け止めをお聞かせいただきたいと思います。これに加えて、今後、段階的にということなので、停戦と復興までには、まだ時間がしばらくかかる見通しですけれども、その停戦の履行と、今後の復興について、日本としてどのように関わっていけるのか、支援していくのかというのを、その辺を併せてお願いいたします。
【岩屋外務大臣】今般の停戦合意に対しては、昨日、私(岩屋大臣)から談話を発出しております。そこでも申し述べておりますように、現地時間1月15日、ガザ情勢をめぐって、人質の解放と停戦に関する合意が、当事者間で成立したことを、我が国として歓迎いたします。この合意は、軍事活動の停止、人質の解放、人道支援活動の増加などを定めておりまして、これは、我が国が求め続けてきた人道状況の改善と、事態の沈静化に向けた、重要な一歩であると考えております。
米国、エジプト、カタールを始めとする、合意形成に尽力した全ての関係者の努力を評価するとともに、当事者に対して、耐え難い苦しみに終止符を打つべく、この合意の、誠実かつ着実な履行を求めていきたいと思っております。また、今回の合意が、イスラエル・パレスチナ情勢の長期的な安定化に繋がることを強く望んでおります。
したがって、我が国としては、引き続き、関係国・国際機関と緊密に意思疎通を行って、ガザの人道状況の改善、復興、及び統治に関する国際的な努力に、積極的に関与していきたいと思います。そして、二国家解決及び長期的な地域の平和と安定の確立に向けて、引き続き外交努力を重ねていきたいと思っております。
トランプ次期大統領の発言
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】トランプ次期米大統領について質問です。トランプ次期大統領は、「多くのカナダ人は、米国の51番目の州になることを望んでいる。また、グリーンランドの所有は、米国の国家安全保障のために絶対的に必要であり、そのために武力的・経済的威圧を使わないとは言えない」とまで発言しています。つまり、トランプ次期大統領は、力による現状変更の意思表明を行っているわけですが、米国を始めとする西側諸国、また日本政府及び外務省は、これまでロシアによるウクライナ侵攻を、力による現状変更、国際法違反であるとして、一貫して非難してきました。そうであれば、この度のトランプ次期大統領の一連の発言についても、ロシアの場合と同様に、断固として抗議すべきであると考えますが、岩屋大臣の御見解をご教示ください。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】トランプ次期大統領による、御指摘の様々な発言については、報道を通じて承知しておりますけれども、その発言の逐一にコメントすることは差し控えたいと思います。
その上で、一般論として申し上げれば、主権及び領土の一体性を尊重する、国連憲章の原則を尊重する、そして、法の支配に基づく自由で開かれた、国際秩序の維持・強化に努力をするということは、我が国の基本的なスタンス・姿勢でございますので、そのことを踏まえた上で、次期米国政権とも、協力していきたいと考えております。