記者会見

岩屋外務大臣会見記録

(令和6年12月27日(金曜日)13時58分 於:本省会見室)

(動画)岩屋外務大臣会見の様子

冒頭発言

本年の振り返り

【岩屋外務大臣】今年最後の記者会見となりますので、就任からの3か月を振り返りながら、来年に向けての抱負を、冒頭述べさせていただきたいと思います。
 ウクライナ侵略や中東情勢、東アジアの安全保障環境など、本年も引き続き、国際情勢は大変厳しい状況が続きました。
 国際情勢が、このように激しく揺れ動く重要な局面で、外務大臣を拝命することとなりました。まず、日米同盟の深化と抑止力・対処力の強化、「自由で開かれたインド太平洋」実現のための同盟国・同志国との連携の強化、そして、グローバル・サウスとのきめ細かい連携の3点を柱として、外交活動を進めてきたところでございます。この間、既に対面での会談は50回を超え、電話会談は35回、実施してまいりました。
 国際社会全体で「法の支配」への挑戦が課題となっている中で、先月のG7外相会合では、改めて、G7の結束の強化を確認をし、米国を始め、各国の外相との信頼関係を構築することができてきたと考えております。また、APECに引き続いて、ウクライナを訪問させていただきましたが、「日本はウクライナと共にある」という、変わらぬ姿勢を伝えてくることができました。
 そして、まさに今週、中国を訪問したところですが、近隣国である、中国、あるいは韓国との関係にも、しっかり取り組んでくることができたと思っております。
 世界の各地で、今なお戦禍が続き、国際社会の分断が深刻になる中で、我が国が戦後築いてきた信頼を土台に、来年も引き続き、「対話と協調の外交」を進めて、国際社会の平和と安定、繁栄に積極的に貢献してまいりたいと思います。
 霞クラブの皆さんにも、今年は大変お世話になりました。ありがとうございました。
 来年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。

日中関係(日中外相会談)

【朝日新聞 里見記者】最後に言及のあった日中外相会談、でなんですけれども、中国側の発表によりますと、岩屋大臣は会談において、歴史問題について、日本語訳すると、「村山談話」の明確な立場を堅持し続け、深い反省と心からの謝意、謝罪の意を表明するというふうに述べたというふうな、そういう発表になっております。事実関係として、このとおり述べられたのか、そうでないなら、歴史認識問題について、どのような表現で、先方に伝えられたのかというのを、まず、お尋ねできたらと思います。

【岩屋外務大臣】中国側の発表は正確ではない、ということを、まず、申し上げておきたいと思います。
 御指摘の点は、外相会談で、歴史認識に議論が及んだ際に、私(岩屋大臣)から、「石破内閣は、1995年の村山談話、そして、2015年の安倍談話を含む、これまでの内閣総理大臣談話を引き継いでいる」と、それから、「日中共同宣言で始まる、これまでの日中間の4文書、これを石破政権も引き継いでいる」ということを、説明したところでございます。
 事後の対外発表は、日中、それぞれが、行ったものでございます。すり合わせをしたわけではありません。
 御指摘の、中国側発表における、私(岩屋大臣)の発言とされている部分の趣旨、趣旨は、今、申し上げたとおりでございます。にもかかわらず、中国側が一方的な対外発表を行ったことに対しては、その日のうちに、中国側に対して、申入れを行ったところでございます。

日中関係(ブイの設置)

【Deutsch Welle 鄭仲嵐記者】ドイツの国営放送のドイツ・ヴェレの鄭仲嵐(てい・ちゅうらん)と申します。台湾出身です。よろしくお願いします。
 大臣は、先日の香港のテレビ取材で、「台湾有事」よりは、まず、「台湾無事」であること、重要だと述べましたが、それに関連し、中国が、沖縄県と与那国島の排他的経済水域内に設置したブイについてお伺いしたいと思います。中国政府に、ブイの撤去を求めた際に、中国側の反応は、どのようなものを示したでしょうか。中国側は、前向きの姿勢を表しているのか、あるいは、ブイの設置は、中国が台湾有事を視野に入れていることの証拠だと考えていますでしょうか。以上でお願いします。

【岩屋外務大臣】まず、基本的に、台湾有事・無事という話とブイの話は、また違う話だと思います。
 台湾については、私(岩屋大臣)の方から、台湾は「無事」であることが大事だと。そして、この台湾の問題については、平和的に解決されることが大事だということをお伝えをしたところでございます。
 その上で、ブイの話でありますが、王毅(おう・き)外交部長との会談におきまして、私(岩屋大臣)の方から、与那国島南方の我が国排他的経済水域内において、新たに確認されたブイを含め、我が国EEZに設置されているブイの、即時撤去を求めました。
 政府としては、中国側に、しかるべき説明を求めるとともに、現場海域での情報収集を始め、様々な角度から、今、調査分析を行っているところでございます。海上保安庁において、気象観測機器とみられるものを確認していると承知しておりますけれども、中国側の意図について、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。
 今回、新たにブイが発見された、確認されたことは、極めて遺憾に思っております。
 中国側の反応については、外交上のやり取りであるために、詳細は控えたいと思いますが、引き続き、我が国EEZ内に設置されているブイの即時撤去を、あらゆるレベルで、中国側に対して求めてまいります。

総理の年始外遊

【毎日新聞 金記者】総理の年明けの外遊について伺います。総理は、昨日の講演で、年明けにマレーシアとインドネシアへの訪問を表明されました。その中で、マレーシアは、来年のASEAN議長国、インドネシアは、域内で、最大の人口の国で、両国ともムスリム国家だと言及されています。先ほど、冒頭でも、大臣、国際情勢に対する、現下の国際情勢に対する認識について言及されましたけれども、そのような国際情勢下において、2025年の日本の外交の幕開けとして、総理が、これらの国を訪問される意義について、どのようにお考えでしょうか。

【岩屋外務大臣】非常に意義深い御訪問になってくれるのではないかと、期待しております。
 今、御指摘がありましたように、石破内閣総理大臣は、来年1月9日から12日まで、マレーシア及びインドネシアを訪問する予定でございます。
 マレーシアとインドネシアは、共に我が国の包括的・戦略的パートナーです。その上で、マレーシアはインド太平洋地域の結節点に位置しております。また、2025年のASEAN議長国を務めることになっておりまして、インドネシアは、ASEAN最大の人口、そして、経済規模を有するグローバル・サウスの雄といいますか、有力国でもございます。
 我が国としては、この東南アジア諸国、ここは海上交通の要衝であると同時に、世界の成長センターでもございます。したがって、この諸国との連携を重視しておりまして、法の支配に基づく、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、引き続き、しっかりと連携していきたいと思っておりますので、今次の総理による、両国の御訪問が決定されたところでございます。
 実りある御訪問になることを祈っておりますし、外務省として、最大限のバックアップをさせていただきたいと思います。

ポール・ワトソン元シー・シェパード代表の発言

【NHK 清水記者】反捕鯨団体シー・シェパードの元代表、ポール・ワトソン容疑者について伺います。デンマーク司法省は、日本への引き渡しを認めない判断を示し、釈放しました。ワトソン容疑者は、その後も日本への批判を展開していますが、大臣の受け止めと、今後の政府の対応をお聞きします。

【岩屋外務大臣】まず、ポール・ワトソン容疑者の身柄を、「日本に引き渡さない」というデンマーク政府の決定につきましては、引き渡し要請が受け入れられなかったこと。それから、日本の刑事司法制度を理由として、日本側の責任に帰する形で判断を行ったこと。これが極めて遺憾だと思っております。
 この旨を、直ちにデンマーク側に申し入れを行ったところでございます。
 また、フランスに入国したポール・ワトソン容疑者が、事実関係に反する主張を行っていること。これについても、極めて遺憾に思っております。
 例えば、日本政府が、200万ユーロの洋上風力発電プロジェクトの中止を盾に、デンマーク政府を脅したなどという主張は、全くの事実無根でございます。
 日本政府としては、デンマーク政府に対し、法と証拠に基づいて対応し、日本に同容疑者を引き渡すよう、累次要請してきただけでございます。
 また、2014年の国際司法裁判所(ICJ)の判断を引いて、日本の捕鯨を違法捕鯨であると主張している点についても、これは事実に反します。
 2014年の、ICJの南極における捕鯨訴訟判決は、我が国が、当時南極海で実施していた調査捕鯨について判示したものでありまして、我が国の捕鯨全般を、違法としたものではありません。
 その後、我が国が再開した商業捕鯨は、操業区域を、我が国の領海及び排他的経済水域に限定し、国際法に従うとともに、鯨類の資源に悪影響を与えない範囲内で、つまり資源管理をしっかりと行う形で、実施しております。
 いずれにいたしましても、ワトソン容疑者につきましては、捕鯨の是非をめぐる議論とは一切関係なく、海上における傷害罪、器物損壊罪の共犯者であるという、この海上の法執行の観点から、身柄の拘束と引き渡しを求めているところでございます。
 今後も、同容疑者が所在する国を始め、関係国に対して働きかけを継続していきたいと考えております。

日米拡大抑止に関するガイドライン

【日経新聞 馬場記者】日米拡大抑止ガイドラインについてお伺いいたします。本日、日米両政府で策定したとの発表がありましたけれども、このタイミングで策定する意義と、今後、このガイドラインにのっとって、どのように抑止力・対処力を日米で高めていくか、大臣の考えをお伺いします。

【岩屋外務大臣】日米両政府は、日米拡大抑止協議を通じて、これまで蓄積されてきた議論に基づいて、拡大抑止に関するガイドラインを作成しました。
 この文書は、拡大抑止に関連する既存の日米同盟における協議や、コミュニケーションに係る手続を強化して、抑止を最大化するための戦略的メッセージングを取り扱うとともに、我が国の防衛力によって増進される米国の拡大抑止のための取組を強化する。それを目的といたしております。
 今回作成された文書は、現下の厳しい安全保障上の喫緊の課題に現実的に対応していく観点から、米国の拡大抑止の信頼性を、これまで以上に強化するとの石破総理の指示を踏まえたものでございまして、取組を進める上で、重要な意義があると考えております。
 今後とも、今回の文書の作成も踏まえまして、日米拡大抑止協議や、2024年の7月に実施した、拡大抑止に関する日米閣僚会合を含む、様々なハイレベルでの協議を通じまして、拡大抑止を含む同盟の抑止力・対処力の強化に向けた取組を進めていきたいと考えております。

中国人訪日査証緩和措置

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】先の訪中について、岩屋大臣は、25日、訪問先の北京で、中国人向けのビザ発給について、富裕層向けの10年間有効な観光マルチ・ビザの新設など、いくつかの緩和措置を発表されました。改めて、なぜ富裕層限定なのか、また、保有資産額・年収など、富裕層の定義基準などについて教えてください。よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】25日、第2回の日中ハイレベル人的・文化交流対話の機会に、今、御指摘のあった団体観光査証の要件の緩和、それから、10年間有効の観光数次査証の新設を始めとする、中国人観光客に対する査証緩和措置を実施することを発表いたしました。
 日中関係の基礎は、言うまでもなく、国民間の交流にございます。そうした観点から、中国人の訪日査証につきましては、これまでも、関連の措置を進めてまいりましたが、この度の査証緩和措置によって、両国間の交流が一層促進される、円滑化される。そして、結果として、相互理解が、更に進むということを期待しております。
 その上で、この度発表した緩和措置は、団体観光客に対する滞在可能日数の延長、15日から30日へということ、それから、高齢層に対する申請書類の簡素化などを含むものでございまして、今までは、在職証明、どこでお仕事をしていますか、という証明を求めていたりしていたのですが、65歳以上の高齢層になりますと、それは不要になるという考え方です。したがって、一定層に限った優遇措置ではございません。
 そして、今回新設する10年間有効の観光数次査証につきましては、なにも10年間にわたって無制限に日本滞在が可能になるということではございませんで、1回の入国につき認められる滞在期間は、最長で90日でございます。また、滞在期間中は、あくまでも観光ですから、報酬を伴う活動を行うことは認められないというものでございます。
 今回の査証緩和措置は、先刻申し上げましたように、一定層に限った優遇措置ではありません。我が国の査証については、治安上の影響などの観点から、中国に限らず、一定の経済要件を設けておるところでございますので、そこは御理解をいただきたいと思います。

中国における邦人被害事案

【NHK 清水記者】中国の蘇州と深圳で起きた日本人学校に関係する事件について伺います。それぞれの事件の刑事司法手続きについて、把握している最新の状況をお聞きします。また、それぞれの事件の動機や背景について、報告を受けているかや、今後の政府の対応方針についてもお願いします。

【岩屋外務大臣】中国・蘇州における、邦人母子刺傷事件の容疑者、及び深圳における日本人学校児童を殺害事件の容疑者が今般、それぞれ起訴されたことを確認しております。
 これまで中国側からは、事件の詳細については、司法プロセスの中で、適切な形で説明する機会がある、という説明を受けてきておりまして、引き続き、緊密に、中国側と意思疎通してまいりたいと思います。

米国次期政権(日米関係の展望)

【共同通信 鮎川記者】トランプ米政権が、間もなく発足するので、来年の展望として、どういった日米関係にしていきたいかという点をお伺いしたいのと、先ほど貼り出しがあった、質問もあった拡大抑止ガイドライン、出ましたけれど、日米の拡大抑止を含む、日米同盟に関して、新しい米政権との間で、日本として、どういった期待を持っているか、この点もお伺いできますでしょうか。

【岩屋外務大臣】冒頭も、この3か月を振り返って、来年の抱負について申し上げましたが、引き続き、我が国外交・安全保障の基軸は、日米同盟ということでございますので、トランプ次期政権との間でも、緊密な意思疎通を行って、日米同盟対処力・抑止力を高めると同時に、あらゆる分野において、同盟をより高みに導いていきたいと考えております。
 したがって、総理とトランプ次期大統領の間はもとよりでございますが、私(岩屋大臣)も、できるだけ早く、カウンターパートと直接お目にかかって、信頼関係を構築して、意思疎通を、緊密に図ってまいりたいと思っております。
 これだけ、世界情勢が激動し、混とんとしている中でございますから、米国の新政権には、是非リーダーシップを発揮して、事態の、一刻も早い沈静化・安定化に向けて、力を発揮してほしいと思っておりますし、我が国としても、そのような形で、米国側に働きかけしていきたいと。世界のための日米同盟ということでなければいけないと考えておりますので、米国との間では、そういう関係をしっかり構築していきたいと考えております。

日中関係(戦後80年)

【朝日新聞 里見記者】冒頭の質問に、ちょっと戻って恐縮ではあるんですけれども、日本としては、戦後の70周年で安倍談話を出しています。ただ、今回中国側の発表でもあったとおり、中国は村山談話を重視しているという、そういった姿勢が、今回現れたというところが一つあるかなと思うんですけれども、来年。

【岩屋外務大臣】誰に現れたと、あなたがおっしゃった。

【朝日新聞 里見記者】中国側の発表において。

【岩屋外務大臣】中国側の発表では、そうかもしれませんが、私(岩屋大臣)は、全ての談話に触れておりますので、そこは誤解がないように。

【朝日新聞 里見記者】すみません。要は、日本は、しっかり最新のものは、しっかり出しておいて、全ての談話を含めて、今の政権が継続・継承しているという立場であると。一方で、中国側は、その中でも特筆して村山談話を今回取り上げていることは、あちらがそれを重視しているということの表れかというふうに思います。先ほど、それを説明したのですけれども。来年80周年を迎える上で、こういった日中に、重視するポイントの差異みたいなのが、今回現れたところで、どう歴史認識問題に向き合っていくお考えかというのをお尋ねできたらと思います。

【岩屋外務大臣】中国側の意図が、どこにあったのかについては、予断を持って申し上げることは控えたいと思います。
 すり合わせての発表ではございませんので、アクセントを置きたいところを強調をされたのかなと思いますが。
 重ねて申し上げますが、私(岩屋大臣)は、日中間の四つの文書、それから、村山談話、小泉談話、安倍談話、基本的な考え方は共通しておりますが、これは石破政権においても、しっかり引き継がれているということを説明したところでございます。
 それから、戦後80年ということになりますが、ある意味、大きな節目の年でもありますけれども、この時にどうするか、あるいは、総理がどうされるかということについては、これから検討されていくということだと思います。

【岩屋外務大臣】ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

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