記者会見
岩屋外務大臣会見記録
(令和6年11月19日(火曜日)14時36分 於:本省会見室)
冒頭発言
APEC閣僚会合出席、ウクライナ訪問
【岩屋外務大臣】まず、冒頭、私(岩屋大臣)から、御報告をさせていただきます。
11月12日から18日まで、私(岩屋大臣)は、就任後、初めての外遊といたしまして、ペルーとウクライナを訪問いたしました。移動距離は、約4万1千キロとなりまして、地球を一周した勘定になりますが、「一泊七日」の強行軍となりましたけれども、当初予定をしておりました会談を全て行うことができまして、手応えを感じる外遊だったと思っております。
まず、ペルーでのAPEC閣僚会議でございますが、自由で公正な貿易・投資環境の推進、食料安全保障の強化、女性の経済的地位の向上の推進、これらを強調し、アジア太平洋地域の持続可能な成長と繁栄に貢献していく決意を新たにしたところでございます。
同時に、米国・韓国・ペルーの外相との会談を行いました。また、6か国の外相との懇談を行いまして、個人的な関係を構築するとともに、二国間関係の強化や地球規模課題への対応に際する連携を確認したところでございます。
その後、大西洋を横断いたしまして、ウクライナを訪問いたしました。ウクライナ問題は、現下の国際情勢を考えたときに、最重要課題の一つであります。したがって、できるだけ早く現場を訪れたいと、就任以来考えてまいりました。今般の訪問を通じまして、ブチャでは、ロシアによる侵略の傷跡を目の当たりにいたしましたし、また、訪問中、ゼレンスキー大統領や、シビハ外相を始めとするウクライナの要人との会談を行いました。会談では、北朝鮮兵士のウクライナに対する戦闘への参加の動きも念頭に、今後の協力強化の在り方を含め、中身の濃い議論を行うことができたと思っております。
私どもが、ウクライナを発った直後に、ロシアによるウクライナ全土のエネルギー関連施設等への攻撃が行われました。ここ3か月で最大規模のものであったと認識をしております。今なお続く、侵略の厳しさを実感しているところです。
力による一方的な現状変更は、世界のどこであっても許されてはなりません。一日も早く、ウクライナに公正で永続的な平和が戻ってくるように、我が国も、国際社会並びにウクライナと緊密に連携して取り組んでまいりたい。その決意を新たにしているところです。
冒頭、私(岩屋大臣)からは、以上です。
ウクライナ情勢(露朝への制裁)
【共同通信 阪口記者】冒頭、言及ありましたけれども、ウクライナに訪問されたと思いますけれども、ウクライナ情勢をめぐっては、北朝鮮とロシアの軍事協力が進んでおりまして、状況が複雑化している状況です。露朝の両国に、更なる制裁の必要性をどのようにお感じになっているのかお尋ねします。
【岩屋外務大臣】今後の対応について、この段階で予断を持ってお答えすることは控えたいと思いますが、そもそも、ロシアによるウクライナの侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であります。
また、今般、北朝鮮によるロシアへの兵士の派遣、また、ウクライナに対する戦闘への参加、ロシアによる北朝鮮からの弾道ミサイルを含む武器・弾薬の調達、及びその使用といった、最近の露朝の軍事協力の進展の動きを強く非難したいと思います。
こうした動きは、ウクライナ情勢の更なる悪化を招くだけではなくて、我が国を取り巻く地域の安全保障に与える影響も極めて大きいと。そういう意味で、深刻に憂慮すべきものであると思っております。
我が国としては、関連する安保理決議の完全な履行や、ウクライナにおける一日も早い公正で永続的な平和の回復のために、国際社会と緊密に取り組んでいきますが、お尋ねの新たな制裁等については、まさにその国際社会と緊密に連携して考えていきたいと思っております。
ウクライナ情勢(露領内への長射程攻撃容認)
【NHK 米津記者】ウクライナの関係でお伺いします。米国のバイデン大統領が、ウクライナに対して、ロシア領内への攻撃に、米国が供与した射程の長いミサイルを使うことを許可したと報道されています。近日中に攻撃が行われる見通しとも伝えられていて、ロシア側、反発する事態になっていますが、大臣御自身、ウクライナを訪問した実績も踏まえて、ご見解をお聞かせください。お願いします。
【岩屋外務大臣】御指摘の報道については承知をしております。その一つ一つについて、お答えすることは差し控えたいと思いますが、政府としては、このウクライナにおける新たな戦況、そして、情勢への影響を含めて、関連の動向を、引き続き、注視してまいりたいと思っております。
今般、ウクライナを訪問した際に、最近の戦況について、ウクライナ側との間で、意見交換を行いました。その中身は、詳細は控えさせていただきたいと思いますが、両国の安全保障環境について、これから更に、情報共有及び連携を強化していこうということで、一致を見たところでございます。
来週、G7の外相会合といった国際場裡での議論の機会もございますので、その場でも、この最新の状況を踏まえた議論をしっかり行って、国際社会と緊密に連携をしていきたいと思っております。
トランプ次期政権との関係
【日経新聞 馬場記者】トランプ次期政権についてお伺いいたします。石破総理は、今回の南米訪問に合わせたトランプ次期大統領との面会について、面会することはないと表明をされました。各国がトランプ次期政権との人脈作りを急がれている中で、日本はどのように進めるべきか、お考えをお伺いします。また、トランプ氏が、次期国務長官に指名されているマルコ・ルビオ氏と、大臣御自身が、過去に接点や面会の機会をお持ちであるかも、併せてお伺いします。
【岩屋外務大臣】石破総理は、トランプ次期大統領と電話会談をして、できるだけ早い時期にお会いしましょうということは、一致を見ているところでございますが、トランプ陣営からは、最近になりまして、各国の首脳とトランプ次期大統領との会談については、あまりに多くの会談要請が集中していると。それから法律上の制約もあるということで、現時点では、トランプ次期大統領との会談を、いずれの国とも行わないと、説明していると承知しております。
その上で、外務省としては、これまでも、外務本省及び在外公館の双方におきまして、共和党の有力者とも着実に関係構築を進めてきております。それらを基礎にして、引き続き、次期大統領であるトランプ陣営との意思疎通を続けていきたいと思っております。
それから他にもありましたか、ごめんなさい。
【日経新聞 馬場記者】次期国務長官に指名されているルビオ氏との。
【岩屋外務大臣】私(岩屋大臣)自身は、マルコ・ルビオ氏とは、まだお目にかかったことはございません。これも、できるだけ早い機会にお目にかかりたいと考えております。
また、先般の、ペルーでの、APEC閣僚会合の機会に行った日米外相会談においても、ブリンケン米国務長官からは、次期国務長官にしっかり仕事を引き継いでいくとのお話がございました。
私(岩屋大臣)も、できるだけ早く、次期政権のカウンターパートであるマルコ・ルビオ氏とお目にかかる機会を作って、強固な信頼関係・協力関係を構築していきたいと考えております。
国連女子差別撤廃委員会の対日審査
【読売新聞 植村記者】男系男子による皇位継承を定めた皇室典範をめぐる国連の女子差別撤廃委員会の勧告について伺います。男女平等を保障する内容に改めるよう求めた勧告の記述について、日本政府は、委員会に対して、削除を要請していましたが、その後、委員会側からは、削除に応じるなどの反応が返ってきたかどうか教えてください。また、削除に応じていない場合、その対応に対して、日本政府として、どのように考えているか。そして、今後、政府として、この問題について、どのように取り組んでいくかを伺います。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】お尋ねの皇位継承に関してですけれども、我が国としては、10月17日の委員会審査において、質問が提起されたことから、「我が国の皇位継承の在り方は、国家の基本に関わる事項であって、女性に対する差別の撤廃を目的とする条約の趣旨に照らして、委員会が、我が国の皇室典範について取り上げることは適当ではない」と御説明しているところでございます。
審査終了後には、委員会に対しまして、「皇位につく資格は、基本的人権に含まれていないことから、皇室典範において、皇位継承資格が男系男子に限定されていることは、女子差別撤廃条約第1条の『女子に対する差別』には該当しない」という旨を表明するとともに、強い遺憾の意を伝達をしたところでございます。
にもかかわらず、最終見解に、御指摘のように、皇位継承に係る記述がなされたということは大変遺憾でありまして、10月29日の最終見解の発表を受けまして、委員会側に対して、強く抗議するとともに、削除の申入れを行いました。
いずれにしても、そもそも委員会が、この皇室典範について取り上げることは適当ではなく、当該記述は削除されるべきであって、我が国として受け入れられないことは繰り返し表明してきております。引き続いて、委員会側には削除を求めてまいります。
今も削除を求めておりますが、引き続き、委員会側に削除を求めていきたいと考えております。この段階では、委員会側からの返答があったということではありません。
パレスチナ国家承認
【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
イスラエルの指導者の中には二国家解決に反対し、ヨルダン川西岸地区の併合を求める声もあります。日本はパレスチナ国家の設立を支持していますが、平和プロセスが進展しない限りパレスチナ国家を承認しないとしています。日本がイスラエルに二国家解決に戻るよう促しつつ、パレスチナ国家を承認しないという立場を取るというのは、どういうことでしょうか。
【岩屋外務大臣】我が国としては、従来から、当事者間の交渉を通じた「二国家解決」を支持してまいりました。独立国家樹立に向けたパレスチナ人の希望を理解し、これに向けたパレスチナの努力を、支援をしてきているところでございます。
そこで、パレスチナの国家承認につきましては、引き続き、和平プロセスをいかに進展させるかといったことも踏まえて判断することとしているわけであります。つまり、その「二国家解決」についての話し合いが進んで、やはり輪郭が見えてこなければ、なかなか適切な判断はできないと思います。我々は、あくまでも、我が国は、「二国家解決」を支持し、これに向けた努力を、支援をしていきたいと思っておりますが、その肝心要の和平プロセスの進展に向けて、最大の、我々も、努力・支援をしていきたいと思っておりますし、その中で、引き続き承認の問題、時期については、総合的に検討していきたいと思っております。
「佐渡島の金山」(追悼行事)
【東亜日報 キム記者】佐渡の鉱山の追悼式について伺います。以前、日本政府関係者は秋に追悼式を開く予定だと話しました。そろそろ予定が今近づいて、地元の新聞でも報道されましたが、日本側の参加者とか、発表する内容が気になります。他は、これからも毎年開くことができるかっていうことも伺います。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】本年7月に、インド・ニューデリーにおいて開催された、第46回世界遺産委員会において、「佐渡島(さど)の金山」が、全世界遺産委員国によるコンセンサスで、世界遺産として登録をされたところでございます。
御指摘の式典は、同委員会における、我が国政府代表のステートメントに沿って、地元自治体や世界遺産登録に関係した民間団体で構成される実行委員会、この実行委員会が開催する関連行事であると承知をしております。
したがいまして、調整の状況については、主催者であります地元の実行委員会にお尋ねいただきたいと思っております。
その際の日本政府からの出席者については、現在検討をしているところでございます。
いよいよ国会も、始まるということもありますので、それとの調整もございますので、現段階で決まっているわけではありませんが、調整中でございます。
そして、この行事は、本年7月の第46回世界遺産委員会において、日本政府が、ステートメントを通じて述べたとおりに、毎年、現地において取り行われる予定と承知をしています。
APEC首脳会議(集合写真の欠席)
【朝日新聞 里見記者】出張おつかれさまでした。先般のAPEC種々の会合でですね、石破総理が、集合写真間に合わなかったことについて、お尋ねできたらと思うんですが、SNSでは、割と厳しい意見も結構目立っております。石破総理、フジモリ元大統領のお墓に献花をすると、お帰りになられるときに事故渋滞に巻き込まれたというのが原因だということだそうですけれども、そもそもタイトな外遊日程の中で、一方で、日系の大統領のお墓にもしっかり訪れておきたいと、日本のそういう事情もあるのかなというふうにお見受けしますが、この判断の経緯とですね、一方で、この集合写真に、日本の首脳が写っていないということに対する評価をお尋ねできますでしょうか。
【岩屋外務大臣】結論から申し上げれば、非常に残念だったとは思います。集合写真に間に合わなかったっていうのは。しかし、今、お話があったように、事故による渋滞に巻き込まれたということで、不可抗力でございますので、これは、やむを得なかったと思いますし、日程の最終、最後の写真に間に合わなかったということによって、何か影響を受けるということは考えておりません。
石破総理は、今般のAPEC首脳会議に当たって、2日間にわたって各セッションに出席をし、それぞれのテーマに沿って、我が国の主張をしっかり発信をされました。存在感は十分に発揮していただいたと思っております。
また、御承知のように、米国や中国を始めとする各国首脳とも二国間会談を行い、首脳間の信頼関係を築いてもおられます。
やはり、日系の大統領であった、フジモリ元大統領のお墓参りをされたということも、非常に意義のあったことだと思いますので、急に発生した交通事故渋滞によって、結果的に、最後の写真に間に合わなかったわけでありますけれども、それが何か会議自体の成果や、各国首脳との関係構築に影響を与えたとは考えておりません。
日中関係(日中外相相互訪問)
【NHK 米津記者】今、お話があったことに関連するんですけれども、ペルーで行われた日中首脳会談において、日中両国外相による早期の相互訪問と閣僚級ハイレベル対話の実施を調整する方針が確認されました。岩屋大臣として、いつ頃中国を訪問したいか、年内も含めて、臨時国会の会期は12月21日までで調整というような話もありますけれども、年内も含めてお考えか、今後の対応方針をお聞かせください。お願いします。
【岩屋外務大臣】まず、いつ行くか、あるいは来ていただくかということについて、何かこの段階で決まっていることはありませんが、今、御指摘があったように、先般の日中首脳会談で、ハイレベルの日中対話を続けていこうと。その中には、外相の御訪問、及び、それに伴う日中のハイレベルの人的・文化交流対話、また、経済対話を適切な時期に実施すべく調整を進めていくということを、両首脳間で確認をしていただいておりますので、私としては、できるだけ早く、それを実現したいと考えておりまして、精力的に調整を行おうと思っております。
いずれにしても、日中間におきましては、「戦略的互恵関係」を包括的に推進をしていくと。そして、「建設的かつ安定的な関係」を構築をしていくと、その努力をしっかり行っていきたいと。そのために、あらゆるレベルで、緊密に意思疎通を図っていきたいと考えております。
日中関係(中国短期滞在査証の査免措置)
【共同通信 阪口記者】今のに関連してなんですけれども、人的交流に際してですね、短期の滞在のビザについての免除について、今まで、これまで、日中両国で、いろいろ話し合ってきた経緯があると思います。一部報道では、近々再開するのではないかという報道もありますけれども、日本政府として、今のところですね、そういった免除に対する連絡があったのかどうか、経済界からは、そういった声も、まさに高まっていると思いますけれども、日本政府として、これまでも、これまでの交渉経緯を含めてですね、改めて免除の必要性について、どのようにお考えか、お尋ねします。
【岩屋外務大臣】御指摘の報道については承知をしております。
中国政府は、2020年の3月、新型コロナウイルス感染拡大を理由に、日本人に対する15日以内の中国短期滞在の査証免除措置を暫定的に停止をしておりまして、それが現時点まで再開されていないということだと思います。
中国側に対しましては、これまでも様々なレベルで、査証免除措置の早期再開を累次にわたり、要請をしてきておりまして、今後も引き続き、早期再開を求めてまいります。
先ほど、日中間でハイレベルの対話を様々行っていくと申し上げましたが、そういう累次の機会に、さらにしっかりと、要請をして、実現をしていきたいと考えております。
中国情勢(湖南における事件、邦人の安全確保の取組)
【NHK 米津記者】度々失礼します。中国関係で、もう1件お伺いしたいと思います。今朝、中国湖南省の小学校付近で、車が人混みに突っ込む事案がありました。この件で日本人の被害はなかったと把握していますが、中国国内では、このところ、人の集まる場所で、車の突っ込みや殺傷などの事件が相次いでいます。現地の日本人の安全確保について、現状の取組状況や課題などあれば、お伺いします。お願いします。
【岩屋外務大臣】御指摘のとおり、本日午前、湖南省常徳市の小学校付近において、車両が人混みに突っ込む事件が発生したと承知をしております。中国当局に確認をいたしましたところ、現時点で、被害者の中に日本人はいないとの報告を受けております。
今回の事件を受けまして、在留邦人に対して、領事メールを通じまして、注意喚起を行ったところです。
これまでも同様の事件が発生するたびに、中国の在留邦人に対して、領事メールで随時注意喚起を行ってきておりますが、引き続き、邦人の安全確保に、外務省としては全力を尽くしていきたいと思っております。