記者会見
岩屋外務大臣会見記録
(令和6年11月12日(火曜日)14時21分 於:本省会見室)
冒頭発言
APEC閣僚会議への出席、経済広域担当官の指名
【岩屋外務大臣】昨日、第二次石破内閣において、外務大臣を再び拝命をさせていただきました。引き続き、よろしくお願いを申し上げます。
11月12日から、今夕から14日まで、私(岩屋大臣)は、APEC閣僚会議に出席するため、ペルーを訪問いたします。
今回の会議では、自由で開かれた貿易・投資の推進や、WTOを中核といたします多角的貿易体制への支持といった伝統的なテーマに加えまして、新たな貿易・投資課題、地球規模課題、そして、女性の経済的地位向上等についても、議論される予定でございます。
同時に、この機会を通じまして、参加各国の外務大臣とも個別の会談をできるだけ行いたいと考えております。
また、今般、主に中南米市場を念頭に、4か国5公館におきまして、新たに経済広域担当官を指名することといたしました。
中南米は、食料の輸出国が多く、また鉱物資源の産出国を多く擁しております。魅力的な成長市場だと思います。我が国の投資に対する期待も大変高く、日本企業が果たす役割は大きいと考えております。
今回の担当官の指名によりまして、既に指名済みの地域と併せ、グローバル・サウスへの事業展開に関心を有する日本企業のニーズに、よりきめ細かく、的確に応えることのできる体制が整うと考えております。
引き続き、経済広域担当官を含む世界各地の在外公館のネットワークを活用していきながら、積極的な経済外交を展開してまいりたいと思っております。
冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。
APEC閣僚会議
【NHK 清水記者】先ほど言及のありましたペルー訪問について伺います。今回初めての、就任後、外国訪問になりますが、各国の閣僚などとも、対面で会う機会をどのように捉えていらっしゃるか、また、この二国間会談の調整状況と併せて教えてもらっていいでしょうか。また、現在の厳しい国際情勢・地域情勢について、御意見を交わす機会があるかと思いますが、日本として、どのような役割を果たしていきたいか、お考えをお願いします。
【岩屋外務大臣】御指摘のとおり、今回は、私(岩屋大臣)にとりまして、初めての外遊ということになります。激動する国際情勢の中で、しっかりと国益を守り抜き、また、日本外交がこれまで積み上げてきた成果を生かしながら、今後とも主体的・積極的に国際社会の平和並びに繁栄に貢献していきたいと考えています。
したがいまして、APECの今般の閣僚会議におきましては、先ほど申し上げたように、伝統的なテーマに加えて、新たな経済発展というテーマも加わっているわけでありますが、我が国の立場をしっかりと発信して、アジア太平洋地域の経済発展に、変わらぬ日本のコミットメントを示していきたいと考えております。
そして、バイ会談についてでございますが、具体的な相手は、今、調整中でございまして、この段階で確定的には申し上げられませんが、できるだけ多くのバイ会談を通じて、地域情勢についても、意見交換を深めていきたいと考えております。
その地域情勢の中には、当然のことながら、ロシアによるウクライナ侵略に関して、あるいは、これに関する北朝鮮の関与に関して、あるいは、中東情勢の緊迫化、その非常に危機的な人道状況、こういった世界で起こっております、その事態の沈静化に向けて、参加国の皆さんと意見交換していきたいと。そして、全ての当事者・関係者に対して、最大限の自制と国際人道法を含む国際法の遵守を、強く求めていくという国際世論を、更に大きく広げていきたいと。そのための発信を日本として、日本外交として、しっかりやっていきたいというふうに考えております。
第二次石破政権の外交課題
【読売新聞 植村記者】第二次石破内閣が、昨日発足しましたが、改めて、今後重点的に取り組む外交課題は、どの辺りに据えているのか、お考えをお伺いいたします。あと加えて、トランプ米国次期大統領や、処理水問題で糸口が見えてきた中国との関係改善、あと、良好な関係が続く韓国との関係強化に向けて、どのように今後取り組みたいか、お伺いいたします。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】どうぞお座りになって。
国際情勢が、日々激しく揺れ動いておりますし、中東情勢、あるいはウクライナの情勢を含めて、なかなか事態の沈静化の見通しが、まだ立っていないという中にあって、日本外交の第一の使命は、外交努力によって、我が国の平和を守り抜くだけではなくて、こういった国際社会の平和、和平といったものを実現するために、最大限の努力をしていくことにあると思っております。もって国際社会の平和と繁栄に貢献していくというのが、我が国外交の最大の使命であると考えております。
そのような観点から言いますと、常に申し上げておりますように、三つのことが大事だと思っておりまして、一つは、我が国外交・安全保障の基軸であります、日米同盟の対処力・抑止力といったものを、更に強固なものにしていくということ。それから、「自由で開かれたインド太平洋」FOIPという構想を、更に充実・発展させていくこと。また、グローバル・サウスとの、きめ細かな連携を図っていくということを、三つの柱に取り組んでいきたいと考えております。
日米同盟は言うまでもなく、石破政権においても、外交・安全保障政策の最優先事項でございますので、トランプ次期大統領を始め、次期米政権との間でも、強固な信頼関係・協力関係を構築していきたいと思っております。私(岩屋大臣)も、カウンターパートが決まれば、できるだけ早くお目にかかって、信頼関係・協力関係を構築していきたいと考えております。
日中については、これも基本的な考え方は、戦略的互恵関係を包括的に前進させていく。いろいろな、日中間には、課題が、先ほどおっしゃったようなことも含めてありますけれども、大局的には、建設的かつ安定的な関係を構築していくということで、先般、王毅(おう・き)外交部長との電話会談でも、一致を見たところでございますので、そういう大きな考え方・方針にのっとって、日中関係を前に進めてまいりたいと思っております。
韓国についても、これも重要な二国間関係だと思っておりまして、前岸田政権と尹(ユン)大統領の政権の間で改善された日韓関係を、更に前進・発展させていきたいと考えております。特に、韓国は、来年、国交正常化60周年という記念すべき日韓関係、来年そういう記念すべき年を迎えますので、これを記念する様々な事業を通じて、更に二国間関係を幅広い、また強固なものにしていきたいと考えているところでございます。
石破政権の外務大臣としての役割
【共同通信 阪口記者】今の質問と若干重複するとこあるんですけれども、岩屋さん、これまで防衛相を務めるなど、外務・防衛に長く携わってきた経験がおありだと思います。世界情勢が不透明な中で、就任後初の外遊となりますけれども、石破外交を進める上で、どのような役割を果たしていきたいのか一つ目お尋ねします。他方で、昨日発足した第二次石破内閣なんですけれども、少数与党に陥っておりまして、足元が不安定な状況だと思います。そういった足元の状況の中で、外交を進めていく上で、何か難しい点などあれば伺えればと思います。
【岩屋外務大臣】御指摘のように、私(岩屋大臣)は、これまで政府に入った経験は、外交と防衛分野しかないのでございまして、外交と防衛というのは、まさに、その国政の中の、一番大事な課題であると考えて、政治生活を送ってまいりました。
就任のときに、郷土の先輩であります、重光葵元外務大臣の話をさせていただきましたが、重光先生は、ミズーリ号艦上で、日本の降伏文書にサインをしたという外務大臣であられましたけれども、やはり外交の失敗というのは、本当に国家百年の大計を誤る、あるいは、それに影響するというぐらい、外交に与えられた使命と責任は重たいと思っております。
これまでの私(岩屋大臣)の拙い経験を生かしながら、この時代、難しい時代の外交を、外務省職員の皆さんの力も借りて、しっかり進めてまいりたいと考えております。
そこで、今日から初の海外出張に行くわけでありますけれども、今申し上げたような考え方に基づいて、各国のカウンターパートの皆さんと積極的にお目にかかって、信頼関係を構築していきたい。やはり、対話を重ねて、協調・協力関係を築いていく、できるだけ緊張を和らげていくという、外交の果たすべき役割を、しっかり果たしてまいりたいと考えております。
また、外交と安全保障には、これも何度も申し上げておりますが、継続性と安定性が必要だと思いますので、それは、ほとんどの野党の皆さんも共通の認識を持っていただいているのではないかと思います。
目下のところ、少数与党ということを余儀なくされている、政権運営上は、厳しい政治状況にあるわけですけれども、特に、こと外交。安全保障に関しては、党派を超えた、できるだけ大きなコンセンサスの上にのっとって、進めていかなければいけないと思っておりますので、そのような幅広いコンセンサスを作ることができるように、最大限の努力してまいりたいと思っております。
日露関係(プーチン露大統領の発言)
【タス通信 アガフォノ記者】日露関係についてお伺いします。ロシアのプーチン大統領は、7日、「ヴァルダイ会議」で、対日関係構築の用意があるという発言がありました。「日本が経済を悪化しているにもかかわらず、私達は何もしない」、「日本との関係を築いていく用意がある」、「準備はできている。戻ってきてくれ」という発言がありました。政府の受け止め、また今後の対露外交についてお聞かせください。
【岩屋外務大臣】今、御指摘がありましたプーチン大統領の「ヴァルダイ会議」での発言は、報道を通じて承知しております。
報道を見る限りにおいては、少し前向きの御発言をなさったのかなというふうにも感じますけれども、現在のウクライナの事態というのは、ウクライナ侵略、ロシアによる明白な国際法違反、国連憲章違反の侵略に起因して、発生しているものだと考えておりますので、何か、我が国の方に原因があって、日露関係がうまくいってないという御趣旨の御発言であれば、それは当たらないと思っているところです。
我が国は、一日も早く、ウクライナの公正かつ永続的な平和を実現をすべく、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携して、ウクライナに強力な支援を行っていきたいと思っておりますし、この現状が、変わっていかない限りにおいては、厳しい対露制裁も科していかざるを得ないと考えているところです。
一方で、日露間には、他にも懸案事項がありますし、隣国であるロシアとの意思疎通は必要だと思っておりますので、引き続いて、我が国外交全体において、何が我が国の国益に資するかという観点から、適切に対応していきたいと思っているところです。
露朝関係(包括的戦略的パートナーシップ条約、北朝鮮兵士のロシア派遣)
【NHK 清水記者】露朝関係について伺います。北朝鮮の労働新聞は、金総書記がロシアとの有事の際の軍事支援を明記した条約に批准する政令に署名したと伝えました。この受け止めと、北朝鮮兵がロシアに派遣された問題で、ウクライナとの戦闘に参加しているかについて、現状どのような認識をされているか、また、追加の制裁について、制裁など対抗措置についての大臣の考えもお伺いします。
【岩屋外務大臣】その前に、先ほどのタス通信さんへのお答えの中で、要すれば、日本の方針・考え方というのは変わっていないわけでありまして、北方領土問題に関しては、四島の帰属の問題を解決して、平和条約を締結していく、という方針を、これからも堅持していきたいと思っております。
それから、ただ今の御質問ですけれども、御指摘の北朝鮮側の報道については、承知しております。
露朝間の、ロシアと北朝鮮の間の条約につきまして、政府として、その内容を説明する立場にはないわけでありますけれども、北朝鮮によるロシアへの兵士の派遣、ロシアによる北朝鮮からの弾道ミサイルを含む武器・弾薬の調達といった、最近の露朝の軍事協力の進展の動きは、ウクライナ情勢の更なる悪化を招くのみならず、我が国を取り巻く地域の安全保障に与える影響の観点からも、深刻に憂慮すべきことだと考えております。
現時点では、北朝鮮が数千名の兵士をロシアに派遣していると信ずるに足る情報は確認しておりますけれども、日本政府として、派遣された兵士が、ロシアによるウクライナ侵略に加担する可能性を含めて、深刻な懸念をもって、目下、注視をしているところです。様々な報道がありますけれども、現段階では、これ以上のことについては控えたいと思いますけれども、深刻な懸念をもって、事態を注視しているところでございます。
引き続き、情報の収集・分析を行うとともに、関連する安保理決議の完全な履行、それから、ウクライナにおける一日も早い、公正かつ永続的な平和の実現に向けて、国際社会と緊密に連携して、取り組んでまいりたいと思います。
米国の次期国務長官
【NHK 清水記者】米国の新政権について伺います。大臣のカウンターパートになる国務長官について、トランプ次期大統領が、共和党のルビオ上院議員を起用する方向で検討していると、米国の複数のメディアが報じています。これについて受け止めがあればお願いします。
【岩屋外務大臣】国務長官となれば、カウンターパートになりますので、高い関心をもって、その人事に注目しているところです。
御指摘の報道については承知しておりますが、まだ、正式に発表されたわけではないと承知しています。
他国の政府人事について、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますが、引き続き、トランプ政権の陣容については、高い関心をもって、注目していきたい、注視していきたいと思います。
いずれにしても、正式に発表があれば、カウンターパートの方とは、できるだけ早期にお目にかかって、信頼関係を構築していきたいと。そして、日米同盟を更に充実、発展させていくことができるように努力していきたいと考えております。