記者会見

岩屋外務大臣会見記録

(令和6年11月8日(金曜日)15時06分 於:本省会見室)

岩屋大臣会見写真

冒頭発言

米国大統領選挙

【岩屋外務大臣】まず、私(岩屋大臣)から、冒頭、御報告がございます。
 米国大統領選挙におきまして、トランプ氏の当選が確実となりました。
 トランプ次期大統領は、かつて大統領任期中にも、日米関係の発展に多大な御貢献をいただいたところでございます。
 日米同盟の強化は、石破政権の外交・安全保障政策の最優先事項でもございます。我が国及び国際社会を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、日米同盟や、グローバル・パートナーとしての日米協力の重要性が一層高まっているところでございます。
 政府といたしましては、トランプ次期大統領を始め、次期米政権との間でも、強固な信頼関係・協力関係を構築していきたいと考えております。その上で、日米同盟を新たな高みに引き上げてまいりたいと考えております。
 昨日朝には、石破総理がトランプ次期大統領と電話会談を実施いたしました。この点から申し上げても、大変意義ある第一歩になったというふうに考えているところでございます。
 冒頭、私(岩屋大臣)からは、以上です。

米国大統領選挙(多国間枠組への影響)

【読売新聞 上村記者】今の冒頭発言がありました、トランプ新大統領に関してお伺いします。これまで、日本を含めて、バイデン政権時代も含めて進めてきた、日米韓であったり、クワッド、日米豪比という多国間の枠組みがあります。トランプ大統領は、これによって、多国間の枠組みは後退するんではないかという指摘もありますが、大臣としての御所感と、日本として、多国間の枠組みの中で、どのような役割を果たしていきたいか、お聞かせください。

【岩屋外務大臣】まだ、次期大統領は決まりましたけれども、次期米政権は発足しておりませんので、新政権発足後の外交政策がどのようになるかということについて、予断を持って、申し上げることは控えたいと思っております。
 いずれにしても、我が国としては、G7、あるいは、日米豪印、日米韓、日米比、比はフィリピンですね、こういった同志国との連携を重層的・多層的に、組み上げていく、編み上げていくという考え方に変更はございませんので、その考え方にのっとって、米次期政権とも緊密に意思疎通してまいりたいと考えております。

米国大統領選挙(対面会談・関係構築)

【NHK 米津記者】また、米国大統領選挙の関係でお伺いします。米国の次期大統領になられるトランプ氏と石破総理、電話で会談した際に、フレンドリーな感じがしたというようなお話もされていました。今後、どのような関係が構築されることが望ましいと、岩屋大臣としてはお感じになられているでしょうか。
 また、南米の訪問なども含めて、どのようなタイミングで、この対面の会談というのがなされることが望ましいとお考えでしょうか。よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】石破総理とトランプ次期大統領は、昨日、電話会談をされたということでございますが、石破総理からは、大変フレンドリーな感じがしたという感想を述べられたと承知しております。先方がどう思われたかは、よく分かりませんけれども。お互いにフレンドリーな関係を、是非これから築いていっていただきたいと願っております。
 できるだけ早くお会いしましょうということで、一致を見たということでございますので、目下、できるだけ早期に、その会談が実現できるように、調整をさせていただいているところでございます。
 したがって、この段階で、いつになりますということを申し上げることはできませんが、できるだけ早く、直接の会談を実現していただいて、まずは、お互いの信頼関係を構築していただいて、それを日米同盟の一層の深化・発展につなげていきたいというふうに考えております。

核兵器禁止条約の批准を呼びかける決議

【中国新聞 宮野記者】核軍縮を扱う国連総会第1委員会で、政府は、1日の採決で、核兵器禁止条約の批准を呼びかける決議に反対票を投じています。核禁止条約のオブザーバー参加については、大臣が真っ向から「否定はしない」と発言されるなど、石破政権ではこれまでより、これまでの政権とは違う姿勢を示していますが、このような中で、今回の決議に、賛成や棄権をせずに、これまでと同様に、反対票を投じた理由をお伺いします。

【岩屋外務大臣】核兵器禁止条約は、「核兵器のない世界」への出口とも言われている条約でございますけれども、御承知のとおり、同条約には、核保有国は1か国も参加しておりません。したがって、いまだその「出口」に至る道筋は立っていないのが現状でございます。
 そうした中で、我が国は、唯一の被爆国として、核兵器国を核の廃絶・禁止に向かって関与させるように努力していくという役割があるというふうに思っております。
 御指摘の決議案については、すぐさま、この条約に賛成をしてくれという決議案でございましたので、私どもの、今申し上げたような考え方を踏まえて、反対票を投じたものでございます。
 いずれにしても、我が国としては、これだけ周りに核保有国があり、むしろ核戦力的には増しているという状況の中、あるいは、核による威嚇を口にするような国が出てきている中にあって、やはり、その核抑止力というものを維持しつつ、「核兵器のない世界」に向けた、現実的で実践的な取組として、何が一番適当かということを、引き続き、検証し、考え続けながら、取り組んでまいりたいと思っております。

JICA情報漏洩事案

【日経新聞 馬場記者】JICAの情報漏洩についてお伺いします。JICAが、事案発生を受けた検証委員会の立ち上げを発表しました。改めて、日本の国際協力の要であるODAを担うJICAの信頼を損ねることになった今回の事案の受け止めと、委員会への活動への期待、外務省としての今後の対応についてお伺いします。

【岩屋外務大臣】今、御指摘がありましたように、外務省としては、今般のフィリピン向けの円借款「首都圏鉄道3号線改修計画」の調達の手続に関する秘密情報を、JICAの職員が漏洩したという事案を、重く受け止めております。
 JICAは、今般、この事案に関する検証委員会を立ち上げたところでございまして、外務省としては、JICAに対して、再発防止策を強く求めてきております。本検証委員会を通じて、JICAがODAに対する国民の信頼回復に努めるということを期待しています。
 外務省としては、こういうJICAの取組をしっかり監督していきたいと思っております。

ウクライナ支援と対露制裁

【北海道新聞 松下記者】ウクライナ支援について伺います。支援に消極的とされる米国のトランプ次期政権の誕生や、北朝鮮のロシア派兵など、ウクライナ情勢を巡る状況というのが大きく変化しています。特に、北朝鮮が、ウクライナ侵略に本格参戦すれば、朝鮮半島の情勢を通じて、東アジアの地域にも大きな影響を及ぼすという指摘もあります。その中で、韓国は、今後段階的にウクライナ支援を引き上げていくということを表明しているわけですけれども、日本として、今後ウクライナ支援の拡充、あるいは対露制裁の強化の必要性について、現時点でどのようにお考えかお聞かせください。

【岩屋外務大臣】まず、米国の新政権が、この問題についてどう対応されるかというのは、まだ予断を持って申し上げることは控えたいと思います。
 その上で、今般の北朝鮮のロシアへの兵士派遣、あるいは露朝軍事協力の動きは、ウクライナ情勢の更なる悪化を招く畏れがあるということのみならず、我が国を取り巻く地域の安全保障に与える影響の観点からも、深刻に憂慮すべき事態だと思っております。
 派遣された兵士、いろいろ情報はございます、ゼレンスキー大統領の発言も承知はしておりますが、まだ正式に我々確認したわけではありません。北朝鮮兵士が、ウクライナ侵略に加担する可能性を含めて、極めて深刻に懸念を持って注視しているところです。
 ロシアによるウクライナ侵略は、言うまでもないことですけれども、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であって、我が国は、欧州とインド太平洋の安全保障というのは不可分だという問題意識の下で、一日も早く、ウクライナに公正かつ永続的な平和が、実現するように努力していきたいと思っております。そのためのウクライナ支援、あるいはロシアに対する制裁は、引き続き、しっかり行っていきたいと思っております。

パレスチナ国家承認

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 中島洋一日本パレスチナ関係担当大使及び日本代表者が、日本はパレスチナを国家承認すべく計画している、あるいはその可能性を研究していると発言したとの報道があります。この判断は遅すぎるようにも思えますが、パレスチナ人の権利を支持し、経済的な支援を提供してきた日本の政策と一致します。
 国家承認はいつ予定されているのでしょうか。予定されていない場合は、その理由は何でしょうか。

【岩屋外務大臣】我が国としては、従来から当事者間の交渉を通じた「二国家解決」を支持しております。独立国家樹立に向けたパレスチナ人の希望を理解し、これに向けたパレスチナの努力を、これまでも支援してきたところです。
 国家承認については、やはり、和平プロセスというのが、どのように進展していくのかという、その状況をしっかり踏まえた上で、判断していかなければいけないと思っておりますので、まさしく、和平プロセスが、しっかりと進んでいくように、我が国としても最大の努力をしていく中で、その承認の時期等については、考えていきたいと思っております。

女子差別撤廃委員会対日審査

【フリー・ジャーナリスト 西中氏】先日の国連の女性差別撤廃委員会は、日本政府に対して、沖縄で相次ぐ米軍基地の軍人による性暴力犯罪の加害者処罰や、被害者への補償を求める勧告、それから、旧日本軍慰安婦の問題は未解決で、被害者の権利保障への努力を持続し、拡大する必要があるという勧告も出されました。沖縄に、米軍兵についての勧告は、今回初めてなんですが、これは日米地位協定の見直しとか、かなり大きな要素がありますし、それから慰安婦問題についても、被害者も韓国だけではない多国籍ですし、それから2015年(平成27年)の日韓合意は、これは未解決であるというのが、国連の勧告の立場であると思います。この二つの勧告に対して、どのように日本政府は受け止めて、どのような対策が必要だというふうにお考えか、現時点での御所見をお願いいたします。

【岩屋外務大臣】まず、10月29日に公表されました、女子差別撤廃委員会(CEDAW)からの勧告を含む最終見解につきましては、我が国としては、勧告の内容を十分に検討いたしまして、必要に応じて適切に対応してまいりたいと考えております。
 その上で、沖縄における米軍関係者による性犯罪に係る勧告につきましては、米軍関係者による性犯罪は、言うまでもないことながら、あってはならないものでございます。これが相次いで発生したことを、政府としては、極めて深刻に受け止めております。
 米側は、一連の再発防止策を発表し、実施しておりますけれども、これが本当に再発防止につながっていくということが重要だと考えております。我々としては、在日米軍の綱紀粛正と、再発防止の徹底を、引き続き、働きかけてまいりたいと考えております。
 それから、慰安婦問題に係る勧告についてでありますけれども、政府の基本的な考え方は、我が国がこの女子差別撤廃条約を締結する以前に、生じた問題に対して、遡って適用されないということでございますので、慰安婦問題を本条約の実施状況の報告において取り上げることは、適切ではないというのが基本的な考え方です。
 その上で、10月17日に実施された第9回の政府報告に対する審査におきまして、委員会側から提起された慰安婦問題に関する質問に対して、政府代表団が回答いたしまして、慰安婦問題に関する我が国の考え方や取組を、丁寧かつ真摯に説明をしたところです。
 その中には、岸田外相時代の、和解に基づく「和解・癒やし財団」による取組でありますとか、いろいろなものが含まれていたということです。
 政府といたしましては、同委員会を初め国際社会に対して、慰安婦問題に関するこの我が国の考え方、それから、これまでの取組をしっかり説明して、正しく御理解いただけるように、引き続き、努力してまいりたいと考えております。

北朝鮮情勢(北朝鮮による日米韓等の共同訓練非難)

【フリー・ジャーナリスト 西中氏】度々失礼いたします。別の質問なんですが、10月23日から11月1日まで、日米の共同統合軍事演習「キーン・ソード25」が、沖縄南西諸島をはじめ、日本各地で実施されました。今回、オーストラリア、カナダに加え、NATO13か国もオブザーバー参加するという形で、史上、過去最大規模の演習となりました。これに対して、この最中に、10月26日に、北朝鮮の外務省が、「米国とその同盟国による敵対行為で、地域の安全保障への脅威で、重大な挑発だ」という、そういった趣旨の声明を出したと、これロイター通信も報道していました。
 このことについて、特に、日本や韓国で、米軍との大きな統合演習が、この間ずっと続いているわけですが、これが北朝鮮のミサイル開発や核実験の大きな理由にもされているという傾向があります。ということで、この訓練中に、北朝鮮が、この非難声明を出したのですが、あと、こういった、その「キーン・ソード」の大規模な地域での軍事演習の在り方について、今後見直しのようなことは、考えてらっしゃるのかどうか。軍事対立、これ以上激しくなるようなことにつながるんではないかという懸念も、沖縄県民なんか、されている方も多いんですが、そこについて、どのようにお考えか、お答えください。お願いいたします。

【岩屋外務大臣】北朝鮮の御指摘の声明については承知しておりますが、それ以前に、この間の北朝鮮の度重なるミサイルの発射、国連安保理決議に違反するミサイルの発射や、核開発というものがある。これが、我が国のみならず、地域の平和と安全に、重大な脅威になっていることは、これは指摘をしておかなければならないということだと思います。
 その上で、北朝鮮の核・ミサイル等の開発というのは、今申し上げたように、国連決議の明白な違反であり、国際社会の平和と安全を脅かすものですので、こういった活動と、国際法的に何ら問題がない、日米韓等の訓練の実施というのを、同列に扱うことは適当ではないと考えております。
 私(岩屋大臣)も、先般10月31日に実施した日米韓の外相電話会談におきましては、先般の北朝鮮によるICBM級弾道ミサイルの発射を強く非難し、日米間で、引き続き、緊密に連携することを再確認したところでございます。
 こういった、地域を取り巻く安全保障環境が、厳しさを増す中ですので、日米韓を始めとする、同志国の連携というのは、今まで以上に重要になっていると考えておりますので、今後とも緊密に連携していきたいと思っております。

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