記者会見
上川外務大臣臨時会見記録
(令和6年9月23日(月曜日)23時35分 於:ニューヨーク)
冒頭発言
(大臣)今回の訪問の所感を申し上げたいと思います。今回の訪米ではG7外相会合、そして、日本・ドイツ・ブラジルによる安保理改革に関するG4外相会合、日米韓外相会合、日・エジプト・ヨルダン外相会合、そして、中国、ウクライナ、イランとの二国間外相会談を実施いたしました。約13時間という短い滞在時間でしたが、日本外交の優先改題を網羅した、集中かつ戦略的な各種会談及び会合を実施し、非常に充実した日程となりました。
思い返せば、ちょうど1年前、私(大臣)は外務大臣就任後わずか5日で、国連総会ハイレベル・ウィークにおいて初めて外交の舞台に立ちました。それからちょうど今回の訪問で一巡して国連総会に戻ってきたことに深い感慨を覚えています。この1年間は、日本にとっても、G7議長国と国連安保理理事国という大変重要な役割を担う重要な時期でありました。私(大臣)自身、外務大臣として、着任当初の思いを大切に、外交活動に一意専の思いで取り組んできたところです。
これまで44の国・地域を訪問し、世界のリーダーとおよそ150回もの会談を重ねてきました。特に、米国のブリンケン国務長官とは14回、カナダのジョリー外務大臣とは10回など、会談を重ねました。何度もお会いをしてきた相手とは、回を重ねるごとにやりとりが深まることを体験してきました。こうした人間関係をベースに、同盟国・同志国との安全保障の分野におきましての協力の強化、また「法の支配」や「核兵器のない世界」といった国際社会への揺るぎないコミットメントの実践、また、グローバル・サウスと「共に創る」、「共創」を通じた地球規模課題への貢献などを通じて、日本の国益を守り、国際社会における日本の存在感を高めることができたと感じます。グローバル・サウスの活力を日本経済の成長に繋げるための新たな取組や、女性・平和・安全保障、いわゆるWPSの積極的推進など、新たな挑戦も行ってまいりました。そのうえで、今回につきまして、3点申し上げたいと思います。
まず、第一に、中国の王毅外交部長との間で会談を行いました。会談の時間の多くは、先般、中国の深圳で日本人学校児童の命が奪われた事件についての議論に割きました。私(大臣)からは、まず、第一として、犯人の動機を含む、一日も早い事実解明と日本側への明確な説明、さらには犯人の厳正な処罰と再犯防止、第二に、中国に在留する日本人、とりわけ子どもたちの安全確保のための具体的措置。そして、第三として、日本人学校に関するものを含みます、根拠のない悪質で反日的なSNSの投稿等は子供たちへの安全に直結をし、絶対に容認出来ないとして、早急な取り締まりの徹底を強く求めました。
さらに、ALPS処理水の海洋放出と日本産水産物の輸入規制について、これまでの科学的根拠に基づく一貫した取組を改めて説明したうえで、先般発表された日中両国間で共有された認識、これを踏まえまして、追加的なモニタリングを早期に実施し、規制の撤廃に向けた目に見える進展を確実に示していきたい旨述べました。
またブイを含む東シナ海情勢や、最近の我が国周辺における中国の軍事活動、邦人拘束事案等につき、深刻な懸念を改めて伝える中で、私(大臣)から、8月の中国軍機による領空侵犯事案について、具体的かつ明確な説明を速やかに行うよう改めて求めました。
第二に同志国との連携の更なる強化です。今朝、ニューヨークに到着した直後には、日米韓のカウンターパートで集まり、北朝鮮への対応を始め、日米韓の緊密な連携を改めて確認することができました。G7外相会合では、ウクライナに対するG7の揺るぎない支持を改めて確認をし、一日も早くウクライナに包括的な公正かつ永続的な平和を実現すべく、引き続き強力に支援していくことを確認しました。また、中東情勢に関し、暴力の連鎖を絶ち、地域に紛争が拡大することのないように、また、即時停戦、全ての人質の解放、人道支援の拡充及び中東和平プロセスへの取組の再活性化に向けて、G7で連携して対応していくことで一致しました。
第三は、国際社会の課題への取組の強化です。G4外相会合では、今回の未来サミットでの成果を踏まえまして、安保理改革のための具体的な行動について率直に議論をし、連携を深めることができました。また、中東情勢につきましては、G7に加え、エジプト、ヨルダン、イランといった関係国と率直な意見交換をすることが出来ました。長年平和構築に取り組んできた日本としての役割をしっかりと果たす外交を展開したところであります。
外交は信頼と継続、これが重要であります。岸田総理はこの三年間、日本国民の生命と財産を守り抜くことを第一に据え、国際社会を分断と対立ではなく、協調に導くため、人間の尊厳が守られる法の支配に基づく、国際秩序の維持・強化に取り組まれてきました。私(大臣)自身、外交の責任者として、現下の厳しい国際情勢にあって、岸田総理のこの外交方針をしっかりと推し進めることが重要と考え、全力で取り組んできました。今後も、これまで構築してきた各国との信頼関係と我が国の取組を礎に、引き続き緊張感を持って、一意専心の思いで国益を見据えた外交を展開してまいりたいと考えております。私(大臣)からは以上です。
質疑応答
(記者)日中外相会談について伺います。深圳で日本人学校の男子児童がお亡くなりになった点について大臣から先ほど大きく三点お求めになったというご説明でした。これに対し、先方から犯行の動機を含め事件の背景ですとか、今後の対策についてどういった返答があったのでしょうか。また、先週発表のありました日本産水産物の輸入再開をめぐって今回の会談では改めてどういうやりとりが行われたのか、そして中国側による輸入再開の時期は示されたのでしょうか。夫々お聞かせください。
(大臣)まず、第一点のご質問ですが、中国の深圳で日本人学校の児童が襲われて逝去された件につき、私(大臣)から王毅外交部長に対しまして、三点について中国側による取り組みを強く求めました。第一点として犯人の動機を含む、一刻も早い事実関係解明と日本側への明確な説明、さらには犯人の厳正な処罰と再発の防止これが一点目であります。二点目は中国に在留する日本人、とりわけ子供たちの安全確保のための具体的な措置、そして三点目として日本人学校に関するものを含む、悪質で反日的なSNSの投稿の取り締まりの徹底、これにつきまして強く申し入れたとことであります。
これに対しまして王毅部長からは、中国側の立場はこれまで外交部報道官が述べているとおりであり、今回おきた事は、我々も目にしたくない偶発的な個別事案であり、法律に則って処理していく旨の反応がございました。今般の王毅部長との会談、そして、私(大臣)の指示で北京を訪問した柘植外務副大臣と中国側との議論を踏まえ、在留邦人、とりわけ子供たちの安全を確保するために日中両国が協力して行くべく、様々なチャンネルを活用し、具体策の実現を図っていく。こうした考えでございます。
第二のご質問、ALPS処理水と中国による水産物の輸入規制との関係でありますが、まず、私(大臣)から、これまでの科学的取り組みに基づく一貫した取り組みについては改めて説明をいたしました。その上で、こうした取り組みは今後も変わらない旨申し上げたところです。その上で私(大臣)から、9月の20日の日中両国による発表を踏まえ、追加的なモニタリングを早期に実施し、規制の撤廃に向けた目に見える進展を確実に示していきたい旨を述べました。
我が国の立場は輸入規制の即時撤廃であることであり、これを申し入れました。先般の発表を踏まえ、今後の規制措置の撤廃につなげて参ります。
時期については、特段の状況ではございませんが、なるべく早くこうした発表が実現できるように、精力的に取り組んで参りたいと考えています。
(記者)国連安保理改革のG4外相会合についてお伺いします。昨日の未来サミットで、岸田総理は国連への信頼回復には安保理改革が必要である旨訴えました。本日のG4外相会合の成果を教えてください。また、現在国連への信頼が低下していて機能不全も指摘されていますけれど、その改革機運を実際に実行に移すには大臣はどういった点が必要とお考えでしょうか。
(大臣)今回G4外相会合に出席いたしました。これは安保理改革に特化した外相会合でございます。ブラジル、ドイツ、インド、日本の4カ国ということであります。これがウクライナ侵略及びガザ情勢を経て安保理改革を含みます国連の機能強化がこれまでにないほど重要になっていると認識しておりまして、昨年に引き続きG4か国で集まって。今後の安保理改革の生末につきまして議論を重ねたところであります。
私(大臣)からは、昨日発出されました未来サミットの成果文書「未来のための約束」の中で首脳レベルでの初めての具体的な成果物となったところでありまして、今後に向けた大きなステップとなったことを評価いたしました。また、G4は安保理改革に向けた進展を生み出すという責任を共有していることについても強調したところであります。G4は、未来サミットで日本の首脳が安保理を緊急に改革するよう求めたことを歓迎し、来年の国連創設80周年という極めて重要な節目の年でありますので、早期に具体的成果を得るべく取り組みを強化していく、このことについても一致したところであります。本来、各国の利害が複雑に絡み合っているのが安保理事会ということでありまして、簡単にその改革がなしうるかというと、そう簡単ではないというのが、これまでの議論のなかでも私(大臣)自身感じてきたところであります。しかし、その必要性というところでは共通しているところでありますので、G4、アメリカ、またアフリカ、こういった国々も含む形で粘り強く取り組んでいきたいと考えております。
(記者)自民党総裁選挙まで残りあと3日ほどとなりましたが、大臣は数日間、国連総会出席のために一時選挙活動を離れているわけですけれども、これまでの手ごたえと、それから最終版、どのような形で戦っていくお考えなのか、意気込みをお聞かせください。
(大臣)総裁選を一時離れて、こうして国連の総会に係る会合に出席をするという決断をしたのは、やはり日本の外交、このあらゆる閣僚級、また外相、カウンターパートの方々が集まるという大変重要な外交の場であるということでありまして、この場を日本外交にとって空白にするということはできないということを考え、決断したところであります。難しい判断ではございましたけれども、やはりこの間非常に短い期間ながら、今、国際社会、また日本が直面している、そして重要視してきたそれぞれの課題や案件、さらには、それに係る各国と、また、それぞれのG7を含めまして、地域に、あるいは地域の問題や、また世界の問題につきましても、しっかりと共有することができたこと、これは直接お会いをして、しかも個人的な関係を作ってきたということによりましての成果ということについては、私(大臣)は非常に、予想以上の成果があったと確信しております。
その分、ということでご質問にもありましたけれども、三日間、総裁選を空けているということでありますが、このことについては、「チーム陽子」ということで、推薦人の皆様をはじめとして、先生方がこの総裁選の陣をしっかりと守るということについて、本当に暖かい、また、ある意味では、むしろ行けという後押しをしていただいたということを心強く思っておりまして、その分、成果をあげるということに、ある意味では一意専心の思いでこの間も力を尽くしてまいったところであります。戻りましたら三日間ありますので、その三日間を有効に、さらには粘り強く戦ってまいりたいと思います。