記者会見

上川外務大臣会見記録

(令和6年9月13日(金曜日)10時55分 於:本省会見室)

(動画)上川外務大臣会見の様子

冒頭発言

(1)外務大臣就任から1年

【上川外務大臣】私(上川大臣)から2件です。
 本日、外務大臣就任からちょうど1年を迎えました。この1年、私(上川大臣)は、戦時下のウクライナや、また、情勢が緊迫化した直後のイスラエルとパレスチナを含めまして、44の国・地域を訪問いたしました。また、国際社会が直面する喫緊の課題につきましても、世界のリーダーの皆様と、およそ150回もの会談を重ねてまいりました。
 既存の国際秩序が挑戦にさらされております。ウクライナ侵略や、また、中東情勢によりまして、国際社会が分断と対立を深める中、この1年は、日本にとっても、また、G7議長国と国連の安保理理事国と、大変重責を担う重要な時期でもございました。
 こうした中、昨年のG7広島サミットで、「法の支配」や「核兵器のない世界」といったメッセージを力強く発信したことを受けまして、私(上川大臣)も、ヒロシマ・アクション・プラン」を含め、その成果の着実な実践に取り組んでまいりました。
 我が国が、戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、経済やサイバー領域も含め、同盟国、そして同志国との安全保障の関係の協力の深化にも取り組んだところであります。
 7月に、米国及びフィリピン、そして8月にはインドと、さらに先週豪州と、この2か月間だけでも4か国と「2+2」を開催したことは、厚みを増す我が国の安全保障政策を体現するものとなりました。
 一国のみでは解決できない地球規模課題への対応も待ったなしとなる中におきまして、グローバル・サウスとの関係強化、また、対話と協働を通じ、「共に創る」、共創するパートナーとしての関係強化にも取り組んでまいりました。
 そして、グローバル・サウスの活力を日本経済の成長につなげるため、私(上川大臣)は、「経済外交強化のための『共創プラットフォーム』」、これを立ち上げました。その一環として、関係する在外公館に、「経済広域担当官」を指名し、既に活動が開始されているところであります。
 こうした外交を展開する中におきまして、日本は戦後約80年、平和の国家として、国際社会におきまして築いてきた信頼や期待を、世界各地で何度も肌で感じたところでございます。
 その信頼、また期待に応えるべく、女性・平和・安全保障、いわゆるWPSの考え方も取り入れながら、世界を平和と協調に導く外交を展開し、多くの国々から賛同と共感を得ることができました。具体的には、第一に、WPSタスクフォースの設置、そして、第二に、WPSの視点を盛り込んだ、具体的プロジェクトの実施、そして第三に、WPSを基軸とした連携ネットワークの構築であります。
 こうした成果を、この未来の若い世代にしっかりとつなげるために、「法の支配」と「人間の尊厳」を基本理念に、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」の維持・強化の実現に向けて、これからも尽力していく考えでございます。

(2)バングラデシュにおける洪水被害(緊急無償資金協力等)

【上川外務大臣】2件目であります。
 8月21日以降、バングラデシュ南東部を中心に発生した洪水被害により、多くの尊い命が失われたとの報に接し、犠牲になられた方々に心から哀悼の誠を捧げるとともに、御遺族に対し、謹んでお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
 このような被害を受け、本日の閣議におきまして、国連児童基金、UNICEF、及び国連難民高等弁務官事務所、UNHCRを通じまして、合計100万ドルの緊急無償資金協力を行うことを、私(上川大臣)から発言をいたしました。
 今回の協力は、人道的観点、及びバングラデシュとの伝統的友好関係に鑑み、水・衛生及び一時的避難施設などの分野で支援を行うものであります。
 また、ジャパン・プラットフォーム、JPFを通じまして、日本のNGOによる約216万ドルの支援も、2日に決定されたところであります。
 日本政府としては、モハマド・ユヌス暫定政権首席顧問のリーダーシップの下で、平和裏に民主的な政権移行が実現し、バングラデシュが、再び安定的な発展の道に戻ることを強く期待しております。「戦略的パートナーシップ」の下、今後も、被災地の復旧・復興、また、バングラデシュの発展と繁栄に向けた協力を継続し、二国間関係を更に発展させていく考えであります。
 私(上川大臣)からは、以上です。

自民党総裁選

【読売新聞 上村記者】外務大臣の職務と総裁選の関係でお伺いします。冒頭ご発言ありましたように、今日就任1年ですけれども、この間、ご自身が思い描く外交を進める上で、外務大臣の職務に、職務権限に対して、限界を感じたことはありますでしょうか。あと、今、総裁選も行われていますが、ご自身が総理・総裁になられた場合に、どのような首脳外交を展開したいかもお聞かせください。

【上川外務大臣】私(上川大臣)は、就任直後の9月に、岸田総理に同行して、国連総会に出席をいたしました。安保理首脳級会合におきまして、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の真横に座る岸田総理の後ろ姿を、二人の後ろ姿を、本当に身近で見ながら、外交の究極的な責任は、やはり何といっても首脳でありまして、国のトップでありますそれぞれ国の責任を担う首脳が、国の、あるいは命運をかけて、一人で担うものだということを、この場面の中で、私(上川大臣)自身強く実感したところであります。
 このことは、今年の4月に、私(上川大臣)、岸田総理の国賓級で米国を訪問されるときに、私(上川大臣)も外務大臣として同行をさせていただきました。この日米首脳会談そのものにも同席をさせていただきましたが、全く同様の思いで、この二国間会談におきましても、日本の命運をかけて、首脳トップが、これに向けて責任を果たしていくと、この姿を極めて間近で拝見をする機会となりました。
 もちろん外務大臣は、その外交の一翼を担う、極めて重要な役割を担っております。中国や、またロシアが一方的な現状変更の試みしている、この国際情勢の中の大変緊迫した、今のこの事態におきまして、ますます厳しくなっていく国際情勢の中にありまして、実務的な責任を負うのは外務大臣であります。しかし、最後のところで、国の責任を担う、これは、まさにトップ、首脳であります。この総理であるということ、総理が最終的な責任を担うということを強く認識をする1年でもございました。
 私(上川大臣)自身、こうした経験を踏まえまして、今度は総理として、日本の外交を担う、そうした覚悟をしたところでございます。私(上川大臣)が総理として、まず、取り組まなければならないと思っていることは、新たな米国の大統領と、強い個人的な絆を深めていく。この築くこと、このことを第一の課題と考えているところであります。
 国際社会が、ますます流動化する中でありますので、日米関係の、この同盟関係、これを強化していくということは、これからの同盟国あるいは同志国の連帯の中で、このネットワークを広げる中の基軸となるものであります。そして、その日米同盟の関係を築く上で、まさに、首脳外交が、極めて重要な役割を担うと考えております。
 また一部の権威主義的な国家、これはトップに、ある意味では権限が集中している国、と向き合うわけでありまして、そうした国との外交におきましても、総理が極めて重い責任とリスクを担うということも、これも私(上川大臣)自身感じてきたところであります。
 まさに、首脳同士で、最終的に対話をしていく。そして、解決に結びつけていく。このことの重要性は、これは首脳の責任、まさに、総理の責任として、しっかりと、この覚悟で臨んでいかなければいけないと思っております。
 更に、経済外交でありますが、その推進に当たりましては、総理自身がトップ外交として、この経済外交を進めていく。この場面は、多くの場面で、私(上川大臣)も触れてきたところであります。相手国の首脳に、こうした外交、経済外交をしっかりと、トップで働きかけることの重要性、これは、日本の国力を高める上でも、また日本への期待に応える上でも、極めて重要であると認識しております。
 具体的に、私(上川大臣)自身、その外交の現場で、来年開かれる関西・大阪万博でありますが、これは未来の様々な可能性、温暖化の問題も始めとして、これをどういうデジタルやあるいはDXを使って解決するのかと、こういうところのプラットフォームの役割を果たす。これに、それぞれの国々が参加していただいて、そして、まさに、企業とのマッチングを図っていただくと、こういう中での取組についても、積極的に広報してきたところであります。
 外務大臣を経験してきた1年、この中で、首脳外交の大切さ、また総理となって、そして、私(上川大臣)自身が責任を持って、この役割を担っていくという、この覚悟を持って取り組んでいく。これが、私(上川大臣)の総理大臣としての、大事な責務であると思っております。

国連総会への大臣の出席

【産経新聞 原川記者】先ほど御言及がありました国連総会、昨年は、総理に同行して出席なさいましたけど、今年は、そのハイレベル・ウィークが24日から予定されておりまして、それに合わせて、各種の閣僚級の会合も予定されていると聞いております。一方で、昨日立候補されました自民党総裁選の日程は、まさにこの時期が最終盤ということになります。以前も伺いましたけれども、この今年の国連総会は、その先ほどの大臣のご発言をお借りしますと、実務的な責任を負う外務大臣として、今年は出席されるのかどうか、前回の時と同様、まだ決まっていないということでしたら、大臣ご自身としては、出席される意向があるのかどうか、これについてお聞かせください。

【上川外務大臣】国際社会が、複合的な危機に直面する中にありまして、国連が、その中核とした多国間の主義、この枠組みに対しまして日本はコミットメントをしっかり示すということが極めて重要だと考えております。
 岸田総理は、諸般の事情が許せば、国連総会出席のためニューヨークを御訪問されるということでありまして、また、未来サミット、これにも出席する予定でございます。
 私(上川大臣)が、国連総会に参加するか否かにつきましては、現時点では決定しておりませんが、先ほど申しましたとおり、日本外交の責任者として、岸田総理をしっかりとお支えをし、そして、国連を始めとする日本の外交に遺漏無きよう、引き続き、しっかりと支援してまいりたいと思っておりますし、また、そのように対応してまいりたいと考えております。

関東大震災

【フリー・ジャーナリスト 西中氏】9月1日は、関東大震災から101年目でした。それで、今年も、朝鮮人や中国人虐殺に関する追悼行事が、関東各地で行われています。中国からも御遺族が来日されて、9月2日に、外務省アジア太平洋州局の中国モンゴル課の職員の方と面談し、事件の真相究明と、日本政府の謝罪などを求める要請を行ったというふうに聞いております。このときに、当時の閣議決定の文書なんかも示されて、その公文書の存在を、外務省の方でも確認されたようなんですけれども、その後、その日中の政府間交渉というのが止まったままの状態になっています。それで、この件につきましては、昨年の臨時国会での衆参の各委員会でも、公文書に基づく国会議員の質問が相次ぎました。それで、大臣ご自身は、平成21年に、内閣府の中央防災会議が、関東大震災の教訓に関する専門調査会の報告書を作成して、それで、中国人虐殺、朝鮮人虐殺についても言及されているんですが、その時の、福田内閣の初代公文書の担当大臣をされていました。ということで、この公文書によるその歴史検証の重要性ってのは、重々ご承知だと思うんですけれども、こういった、大臣は、関東大震災で多くの朝鮮人・中国人が、官民によって殺されたという、その歴史事実を認め、なおかつ、その現在も、その世界中で起きている人種民族差別や排外主義に基づく迫害など、その防止するためにも、日本政府として、このような検証を行い、それから、御遺族からの要請を受け止めるというお考えはおありでしょうか。

【上川外務大臣】政府としては、「これまで政府として調査した限り、政府内に事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」との認識を述べてきているところであります。このような政府の認識に変わりはございません。
 いずれにいたしましても、災害発生時におきまして、全ての被災者の安全安心の確保に努めることは、これは政府として極めて重要であると考えております。
 また、政府におきまして、特定の民族、また国籍の人々を排斥する趣旨の不当な差別的な言動、ましてや、そのような動機で行われる暴力や犯罪は、いかなる社会におきましても、許されることではないと考えております。

記者会見へ戻る