記者会見

上川外務大臣会見記録

(令和6年8月30日(金曜日)12時07分 於:本省会見室)

(動画)上川外務大臣会見の様子

冒頭発言

(1)台風10号

【上川外務大臣】私(上川大臣)から、2件ございます。
 まずは、1件目です。
 非常に大型の台風が、日本列島を縦断しています。線状降水帯による浸水被害など、各地で発生しております。道路、鉄道、航空の各交通機関や、電気・水道といったライフ・ラインにも、多大な影響が出ております。国民の皆様の不安は、いかばかりかと思っておりますが、命を守る行動をお願いいたします。既に死傷者や安否不明者も生じていると承知しております。お亡くなりになられた方々に、心からお悔やみを申し上げるとともに、被害に遭われた方々に、心よりお見舞いを申し上げます。

(2)上川大臣の日豪「2+2」出席

【上川外務大臣】2件目でございます。
 諸般の事情が許せば、9月4日から6日まで、私(上川大臣)は、11回目となる日豪外務・防衛閣僚協議「2+2」に出席するため、豪州を訪問します。私(上川大臣)が外務大臣に就任して以来、初めての豪州訪問となります。
 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、価値を共有する同盟国・同志国との安全保障協力の強化は不可欠であります。こうした観点から、私(上川大臣)は、先月に、米国及びフィリピンと、そして先日にはインドと、それぞれ「2+2」を実施いたしました。来週の豪州と合わせ、この2か月で、4か国との「2+2」の開催は、厚みを増す我が国の安全保障政策を体現しています。
 豪州は、戦略的利益の一致を土台に、「自由で開かれたインド太平洋」、FOIPの実現のために、緊密に連携を深める特別な戦略的パートナーであります。 今回の「2+2」では、木原防衛大臣と共に、ウォン外相、そして、マールズ副首相兼国防相と、安全保障環境における戦略課題について、率直な意見交換を行う予定でございます。特に、次の2点について、焦点を当てて臨みたいと思っております。
 第一に、かつてなく広範かつ強固となっている日豪の安全保障協力の深化・拡大であります。新たな分野での協力や、日豪米での連携など、両国間の協力関係を、たゆみなく強化していく考えであります。
 第二に、FOIPの実現に向けた日豪協力の推進です。日豪が、同志国連携の中核として、地域のパートナー国へ、共に関与しつつ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて取り組む具体的方向性を議論してまいる所存であります。
 さらに、今般の訪問の機会に、日豪外相会談も実施し、二国間関係や地域情勢についても議論してまいります。
 私(上川大臣)からは、以上です。

中国軍機による領空侵犯

【読売新聞 上村記者】先日の、中国軍機による領空侵犯事案についてお伺いします。この辺について、中国外交部の林剣(りん・けん)副報道局長は、27日の記者会見で、「いかなる国の領空も侵犯する意図はない」と述べて、その上で、日中は、「既存のチャンネルを通じて意思疎通を続けている」と述べました。この領空侵犯の意図や原因について、日本政府は、その後中国側に説明を求めているかと、それに対する中国側の説明なり、反応はいかがか、お伺いします。

【上川外務大臣】この中国軍所属航空機によります領空侵犯でありますが、これは、我が国の主権の重大な侵害であるだけでなく、安全を脅かすものであり、全く受け入れることはできません。外務次官から、極めて厳重に抗議をするとともに、再発防止を強く求めたところであります。
 日本政府としては、外交ルートで中国側に対し、本事案が発生した原因を含め、しかるべき説明を、引き続き、求めているところであります。
 いずれにいたしましても、我が国としては、日本の領土・領海・領空を断固として守る、こうした決意の下、主張すべきは主張しつつ、今後も冷静かつ毅然と対応してまいります。

ウクライナ情勢(ゼレンスキー大統領による戦争終結案の提示)

【NHK 五十嵐記者】ウクライナ情勢の関連で伺います。ウクライナのゼレンスキー大統領は、27日、ロシアの軍事侵攻を終わらせるための計画を、来月、米国のバイデン大統領らに提示すると明らかにしました。ロシア西部への越境攻撃も計画の一部だとしていて、「ウクライナにとって公平な条件で戦争を終わらせたい」と強調しています。これについて、日本政府としての受け止めや、対応方針を伺います。

【上川外務大臣】27日、ゼレンスキー大統領は、記者会見におきまして、ウクライナの勝利に向けた計画を、9月に、バイデン米大統領に提示するとともに、ハリス副大統領、トランプ米国前大統領の両米大統領候補に、この計画を説明するつもりである旨、述べたと承知しております。
 国際社会におきましては、現在、ウクライナをめぐりまして様々な動きがございます。本件につきましても、多大な関心を持って注視しているところでございますが、現時点でコメントすることにつきましては、時期尚早と考えております。
 いずれにいたしましても、政府としては、ウクライナに寄り添った対応を継続していくとの一貫した立場は変わりございません。引き続き、ウクライナ情勢をめぐります国際社会の動きを、しっかりと注視し、適切に対応してまいりたいと考えております。

プーチン大統領のモンゴル訪問

【北海道新聞 今井記者】私も、ロシアの関係でお伺いします。ロシアの大統領府は、29日、「プーチン大統領が、9月3日にモンゴルを訪問する」と発表しました。モンゴルは、プーチン氏に逮捕状を出したICCの加盟国で、容疑者を拘束する義務を負っています。モンゴルは、ロシア側とプーチン氏を逮捕しないように合意したとみられていますけども、ICCが逮捕状を出して以後、ICC加盟国を訪問するのは初めてで、今回の訪問の受け止めであったり、モンゴルに対して、日本政府として、拘束義務を果たすよう働きかけるのか教えてください。また、プーチン氏は、モンゴルで、ノモンハン事件の戦勝85周年を祝う式典に出席する予定です。近年ロシア側は、対日戦勝を誇示するような動きを強めていますけど、こちらについての御所感も教えてください。

【上川外務大臣】第三国間の外国活動の一つ一つにつきましてコメントすることは差し控えさせていただきますが、モンゴル側とは、日頃から緊密に意思疎通を行っているところでございます。現在の日本とモンゴルは双方の努力によって、過去の歴史を乗り越え、基本的価値を共有する平和と繁栄のための特別な戦略的パートナーであります。揺るぎない信頼関係を構築しているところでございます。

TICAD閣僚会合(西サハラ参加問題)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 TICAD(閣僚)会合に関して質問です。先週終了したTICAD会合において、日本が承認していない、いわゆる「サハラ・アラブ民主共和国」の代表ですが、外務省が彼らを招待したのはAUであって、同省は招待していないとしているにも拘わらず、外務省はビザを与えており、結果的に彼らに会議に出席してネームプレートを置くことを許してしまいました。会議の席に置かれたネームプレートは、既に世界中のあらゆるソーシャルメディア上でみられるとおり、様々な問題を引き起こしています。また、このことは、西サハラ問題に関する日本の立場いついても混乱をもたらしています。
 今回の会議の場で起きた事件への大臣の見解と、来年横浜で開催予定の、次のTICAD会合において、同問題を、日本政府は、どのように対処するつもりか、伺います。

【上川外務大臣】23日に行われた事務方によります準備会合である高級実務者会合におきまして、代表団間で物理的な混乱が発生したと承知しております。
 いかなる暴力も許されず、今回、こうした混乱が生じたことは大変遺憾でありまして、直ちに議長であります清水TICAD担当大使から、参加者への平静と秩序の維持を呼びかけ、秩序を乱す者の退出を命じました。
 その上で、日本政府としては、直ちに関係代表団に対しては、遺憾の意と再発防止を申し入れたところであります。

自民党総裁選(外交方針)

【ブルームバーグ 長谷部記者】日中関係や、日米関係など、総裁選出馬の際には、どのような外交方針を打ち出していくかについてお聞かせください。

【上川外務大臣】私(上川大臣)は、外務大臣就任以来、まず、日本の国益をしっかりと守る。第二に、日本の存在感を高めていく。そして、第三に、国民の皆様からの声に耳を傾け、そして、国民の皆様に理解をされ、支持される外交を展開するという、三つの基本方針の下、外交を展開してまいりました。
 その中で、国際社会で日本が戦後約80年間にわたって、平和国家として築いてきた信頼、また、期待が非常に大きいということを常に感じてまいりました。世界が、今、分断と対立を深める中にありまして、こうした時代だからこそ、法の支配、そして、人間の尊厳、これらを中心に据え、多様性と、そして、包摂性を重視する、きめ細やかな日本外交の役割が求められていると思っております。
 日米同盟は、日本の外交・安全保障政策の基軸でありまして、インド太平洋地域、そして、国際社会の平和と繁栄の基盤でございます。日米両国は、国際世界の問題に共に取り組むグローバルなパートナーであります。
 先ほど、ハガティ上院議員を始め、民主・共和両党の議員の表敬を受けたところでありますが、こうした日米同盟が、超党派の支持を受けていることを強く実感したところであります。また、関係者は、大統領選挙で、今、頭が一杯のようでございますが、本日も話題に上りました。個人的には、大統領選を通じまして、多様な声をしっかりと踏まえ、いかに希望と、そして、自信を感じられるような国を作ることができるか。将来の国の在り方をめぐり、活発な議論がなされていると、大変興味深く受け止め、フォローしているところでございます。引き続き、安全保障・経済を始め、あらゆる面で、緊密に米国と連携してまいりたいと考えております。
 日中両国間におきましては、様々な可能性とともに、数多くの課題や懸案がございますが、両国は地域と国際社会の平和と繁栄にとりまして、共に重要な責任を大国であります。
 中国との間におきましては、「戦略的互恵関係」を包括的に推進するとともに、「建設的かつ安定的な関係」の構築を双方の努力で進めていくというのが、我が国の一貫した方針であります。引き続き、中国との間で、幅広い分野において、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を図り、日中関係を深化・発展させていく、このことが重要であると考えております。
 これ以上の、個別の政策に関します詳細な考えにつきましては、別途の機会に申し上げたいと思っております。

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