記者会見

上川外務大臣臨時会見記録

(令和6年8月20日(火曜日)21時52分 於:ニューデリー(インド))

冒頭発言

 (大臣)昨日からインドを訪問し、先ほど第3回日印2プラス2、および第17回日印外相間戦略対話を終えました。本年はインドとの間で「特別戦略的グローバルパートナーシップ」を立ち上げて10年目となります。この間、国際情勢が厳しさを増す中、価値を共有する民主主義国家である日印両国が新たな解決策を共に創る、「共創」していくパートナーとして、インド太平洋、ひいては、世界の平和と安定・繁栄に大きく貢献していくことが、これまで以上に求められています。この観点から、私は今回の2プラス2では、第一に「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力の深化、そして第二に、2国間の安全保障・防衛協力の具体的な方向性の確認、この2点に焦点を当てて臨みました。

 まず、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力深化については、東シナ海・南シナ海、北朝鮮、南アジアの情勢に加え、ウクライナ情勢や中東情勢について、率直な議論を行いました。これらの地域について、戦略環境に関する認識の共有を図り、連携の強化を確認することができました。その上で、力による一方的な現状変更の試みへの反対、そして法の支配に基づく国際秩序の維持・強化への両国のコミットメントを確認しました。

 また、安全保障・防衛協力についてでありますが、グローバルサウスの代表格であり、日本と価値や原則を共有するインドと安全保障関係を強化することは、インド太平洋地域の平和と安定、そして繁栄に資するものです。こうした認識の下、昨今の国際情勢の変化を踏まえて、安全保障・防衛協力の一層の協力進化を図り、2008年の「安全保障協力に関する共同宣言」を改定することで一致しました。また、艦艇搭載用複合通信空中線「ユニコーン」の早期移転を含む防衛装備・技術協力のさらなる推進についても、確認しました。さらに、私の就任以来、重視して、推し進めている「WPS」 についても、インドとの間において、重要性を確認することができました。

 外相間戦略対話においては、ジャイシャンカル外相との間において、国際情勢について大局的な観点から、率直かつ有意義な議論を行うことができました。また、経済開発協力、人的交流分野における協力を確認するとともに、国連安保理改革を含む国際社会の課題についても議論しました。経済関係については、昨日、日本企業の関係者の方々から、インドで直面しているさまざまな課題、あるいは困難について直接お話を伺うことができました。ジャイシャンカル外相との間では、こうした話も受けて、日印経済関係の協力強化のための人材育成や人材交流強化の重要性についても一致したところです。インドを拠点にした第三国市場への展開を後押しするため、経済広域担当官を在インド日本大使館などに設置をしているが、日本企業関係者の方々からの話を伺い、アフリカなどにビジネス面で展開をしていく、大きな潜在力があるということを実感をしたところです。

 また、本日はインドを拠点に、ビジネスや教育で活躍する日本人女性の方々からも話を伺い、インドの活力をどう日本に取り入れていくか、また日本とインドが互いに学んで、どのように財産への道を切り開いていくかについて、多くの具体的なアイデアやまた提案をいただきました。彼女たちのエネルギー満ちあふれる姿に強く感銘を受けた。私自身、インドのエネルギーとポテンシャル、これを肌で感じ、インドの活力を何としても日本に取り込んでまいりたい、そう改めて感じた次第であります。今回の訪印の成果を生かしながら、インドとの関係については、さらに強化し、インド太平洋の平和と安定、そして反映に向けた外交を進めて参ります。私からは以上です。

質疑

 (記者)今回のインド訪問について2点伺う。2プラス2で確認した「安全保障協力に関する共同宣言」の改定の意義と、また、共同宣言の署名に向けたモディ首相の年内訪日の見通し、訪日に進展があったのか伺う。

 (大臣)グローバルサウスの代表格、これがインドです。日本と価値や原則を共有する、インドですが、安全保障協力をこの国と強化をするということについては、インド太平洋地域の平和と安定、さらには繁栄に資するものと考えています。日印の安全保障協力に関する共同宣言、これが発出されたのが2008年であり、それ以降、国際情勢は一層厳しさを増している状況にあります。そうした変化を踏まえて、目下の安全保障上のさまざまな重要課題、これを反映し、両国が直面する課題に対処できるようにするために、今般、両国の安全保障協力に関する共同宣言については改定をすることで一致したところです。この共同宣言においては、これまでの日印間の安全保障、また防衛協力の歩みをしっかりと反映させるとともに、今後の協力の方向性について、しっかりと示していくということが重要であると考えており今後、インドとよく協力をし、そして、話し合いを深めてまいりたいと考えています。

 また、2点目のモディ首相の訪日の件ですが、今回の議論においては、この年次首脳相互訪問の枠組みの下でのモディ首相のご来日、これに向けて、両国でしっかりと準備をしていくことに一致したところです。具体的な時期については、引き続き、調整をしていくということで、来たるモディ首相の訪日を、日本とインドとの関係を一層高めに引き上げる、さらなる高みに引き上げる、そうした機会にしてまいりたいという風に考えています。

 (記者)首相・総裁として取り組みたいことは何か。自身が首相・総裁にふさわしいと考えた理由は。外交や女性活躍、憲法などの分野が強みかと思うが、日本経済を上向かせるために、どのような方向性が必要か。

 (大臣)こうした機会ということで、私自身の考え方について、申し上げたいという風に思っています。私は法相になる前から、団塊ジュニアの世代が65歳になるときに、その65歳以上の人口が、総人口に占める割合というのは約35%ということになっていて、これはいわゆる「2040年問題」、2040年の危機の問題という風に捉えており、私自身、大変高い関心を持って、この問題に取り組んできました。人口が減少していく社会、また少子高齢化が進んでいる社会、こういう中において、さまざまな社会的な課題、例えば、労働力が不足するとか、あるいは、医療・介護の分野における人材が不足する、あるいは経済そのものがシュリンクしていく、これが一つのエスカレートしていく状態ということが、社会問題として総合的に起き得ると、こういう時期を総称し「2040年問題」ということであって、それが2040年には危機的な状況になる、取り返しのつかない、後戻りすることができないような状況に至るのではないかと、こうした危機感が、警鐘を持って鳴らされてきたという風に思っています。

 私の世代、日本が高度経済成長を遂げて、光り輝くというような時代を知っている世代ということになるが、バブル崩壊をした後に、こうした光り輝いてきた世界から、日本が世界の中でさまざまな輝きを失っていくという、そうした姿に触れてきた世代でもあります。そうした中で、この時期、2040年の、先ほど申し上げたような、大変厳しい危機的な状況に至る前に、その警鐘をしっかり鳴らして、さまざまな数字なども出されてきたわけですが、これに政治がしっかり向き合ってきたかということについて、問わざるを得ないというような状況も私自身、感じてきたし、その間、なかなか全てを解きほぐすような政策のパッケージが打ち出されてきたかというと、難しい状況の中で今に至っているのではないかと思います。2040年をこうして、座して待つのではなくて、そして、深刻な危機をそのままにしていくことなく、何とか新しいアプローチで、この社会の改革、また構造的な改革をしていかなければならないのではないかという思いをずっとしてきたところです。

 今、国際社会、世界の中の日本ということでだが、私が外相に就任するに当たっては、基本的な外交の方針として、もちろん国益を守ることが第一であります。そして、第二として、この日本の存在感。国際社会での存在を高める、そして第3には、国民の皆さんから理解され、そして支持をされる外交を目指すということ、この3方針を打ち出して、この約1年、外交に専心をしてきました。このような状況の中で、私が強く感じることは、日本に対する尊敬と、そして期待というのが非常に大きく、また、このようなことを今、成し遂げられているということを考えると、この間の80年の経緯中で、日本は平和外交を一貫して押し進めるという状況の中にあって、開発援助だとか、あるいは、人道支援、あるいは、この急速に深まりつつある気候変動、この問題についての対処、こういったことに日本が尽くしてきた、貢献してきたということがあるのではないかということを、外交のさまざまな場面で強く感じてきた。

 その上で、今、国際社会全体が対立と分断という構図の中において、ますます日本への期待は高まっているという風に考えています。しかし、同時に日本の経済力が弱くなっているという状況で、しかも中国がそれを上書きするというような状況の中にあって、日本の存在感はこれまでのような輝いてきたものから後退してきているのではないかというそうした思いもしてきました。今、世界の中で、そうした、私も今、四十何回、延べ43カ国そして機関を訪問していますが、そこで首脳の皆さん、そして外相の皆さんにお会いをするわけですが、世界が分断している状況の中で、変化をする中で、どう対応していったら良いのかということについては、悩み、考えているという姿も海外で見てきたところです。

 私もそういう中で、日本の存在感を高めていくという大きな方針を掲げ、また日本が誇りを持って、そして国民の皆さんから支持される外交をと、そういう方針でいたわけですが、ずっと期待される日本の役割を果たし続けていくことができるのかということについては、やはり、大きな発想でこれを改革していく必要があるのではないかと、こんな風に思ってきたところです。一方、今日もインドの若い女性の皆さんとお会いしたと、今、報告をしましたが、内向きになっている若い世代の皆さんと言われるが、海外に出ている皆さんは大変元気で生き生きした活躍をしていらっしゃる、でも、その方たちが、いずれ日本に帰りたいというような思いを持っているのかどうか、今日ちょっと伺ったところでもあります。アジアあるいはアフリカでも、こういう場面がありましたが、これから日本に積極的に戻るということよりも、むしろ世界の中で働き続けたいと、そうした気持ちの方が強くなっているように感じました。

 それは日本に魅力があるかどうかということが問われているのではないか、という風にも思うわけであります。やっぱり、帰りたいと思う、魅力のある日本でありたいと。そして、そういう日本の国でなければいけないんじゃないかという風に考えると、政治は、まさに誰一人取り残さない、多様性と包摂に富んだ、こうした魅力ある国づくりということについて、こういう若い方たちが帰ってきたい、そして、そこでもさまざまな活動をしたいと、もうワクワクするような思いで、希望を持って活躍しているような国でなければいけないし、また、そういう国づくりをしていくというのが政治の重要な役割ではないかという風に思っています。

 そういう中で、3つほど新しい外交の新機軸ということで、今、打ち出させていただいていますが、1つは女性・ユースの活躍を応援するということ、そして2番目は経済のフロンティア外交ということ、そして3点目は、やはり日本の全体と外交だけではなくて、地方の魅力ある姿を、この外交の中の新しい基軸の一つとして位置づけるということ、こういったこともすることによって、日本がよりダイナミックに変化をしていく、そうした刺激を作ることができるのではないかと考えています。こうした点もいろいろ意見を聞きながら、そのアイデアの実現に向けて取り組んでいこうという風に思っているきたところです。

 もとより外交と内政は表裏一体の関係があり、内政の自信と、そして国民の皆さんからの支持と信頼と、そして同時に、この実績、こういったものが相まって、この外交の進化が発揮できるということであります。今、先ほど、申し上げた通り、43カ国、延べ回ってきましたが、リーダーの姿を見ていると、世界が非常に変化する中で、難しい局面の中で非常に悩む姿というのは私自身も感じてきましたが、おしなべて、そういう状況の国際社会であります。そういう中で、日本が本当に自信を持って、そして皆さんから支持されて存在感のある役割を果たしていく続けるためには、そのことについて、私自身、よく考えていく必要があるのではないかと思ってきたところであります。

 今、総裁選というご質問がございましたけれども、総裁選の場というのは国民の皆さんとさまざまな問題、課題について意見を交わすことができる極めて絶好のチャンスという風に感じています。もちろん、地元の中で話をするわけですが、こういう機会でもない限り、全国的にも、さまざまな地域の問題や課題が抱えている中において、そういった方たちと会話を交わすというのは、物理的にも、また役割的にも難しいということでありますが、総裁選というのは、特に全体のこと、地方のこと、そして、これから未来のことを話し合うチャンスをいただくということで、私自身、こういう場に身を置くということ決断し、そして、その中で誰一人取り残さない魅力のある日本を目指して、それを作り上げていく努力を精いっぱいやっていきたいという風に思っているところであります。

 最後に恐縮ですが、私は当選1回のときに、宏池会の政策パンフレットというのを作る編集の責任者になるという、大変貴重な機会がございまして、そのタイトルをつけたんわけでございますが「ありのままに真実を語る」。そして、その中で「参加型の民主主義」というのを打ち出して、そして冊子にパンフレットにしたところであります。総裁選の中で、まさに、ありのままに真実を語る、そして、できるだけ、できる限り、会話を重ねて、対話を重ねて参加型の民主主義を実践していくと、この場面に、今回、その大きなきっかけ・機会があるということは、政治家として、新しい発想で国づくりをしていく、この必要性がある今であるということを考えたときに、そこへ飛び込むということで決断をいたしたところであります。今、ご質問ではさまざまな課題の話がございましたが、そうした基本的な気持ちをお伝えさせていただきたいということで、そのご質問へのお返事に返させていただきたいと思います。

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