記者会見

上川外務大臣臨時会見記録

(令和6年7月27日(土曜日)19時02分 於:ビエンチャン(ラオス))

冒頭発言

 (大臣)昨日から本日にかけて、ラオスを訪問しました。昨年10月、就任後初の二国間を手始めに、6か国を訪問し、また12月の特別首脳会議の機会も捉え、ASEAN各国のカウンターパートとの間で個人的信頼関係を育んできました。今回、ASEAN関連4会合と日メコン外相会議に出席しましたが、各国の閣僚と再会し、真の友人関係を改めて実感しました。また、ラオス、中国、韓国、インドネシア、ノルウェー、英国、シンガポール、東ティモールとの二国間会談を実施しました。

 ASEAN関連外相会議を通じて、「繁栄のための取組」、「平和と安定のための取組」の2点を強調しました。第一に、「繁栄」についてです。私(大臣)から、日本は包括的連結性イニシアティブの下、ハード、ソフトの両面で、ASEANの連結性強化に貢献していく考えを明確に示しました。ASEANからは、更なる協力について、DXやGXなどに関し、大きな期待の声が寄せられました。

 5年ぶりの対面開催となった日メコン外相会議では、今後5年間の協力の指針である「日メコン協力戦略2024」を採択し、地政学的に重要なメコン地域の持続可能な発展のため、日・メコン協力を一層推進していくとのコミットメントを示すことができました。

 第二に、「平和と安定」についてです。東シナ海・南シナ海、北朝鮮、ロシアによるウクライナ侵略などについて、今日のEASやARFでは厳しい議論の応酬もありました。しかし、力による一方的な現状変更の試みは、世界のどこであれ認められない。この一貫した考えに特に重点を置き、しっかり日本の立場を発信しました。

 ミャンマーや中東といった共通の課題についても議論しました。また、ALPS処理水の海洋放出について、我が国として、IAEAの関与も得た重層的なモニタリングを行い、安全性の確認を積み重ねていることを報告しました。その上で、今後ともIAEAと緊密に連携しつつ、高い透明性をもって、科学的根拠に基づく説明を続けていくと申し上げました。

 「平和と安定」のための協力として、例えば、災害対応におけるWPSについて知見を共有していく考えを表明し、ASEAN側からも賛同を得ました。50年の先人の積み重ねを経て、平和・安定、そして繁栄のために解決策を「共創」していくことのできる時代に入ったとの手応えを感じました。

 そして、日・ASEAN間の人的交流こそ、心と心のつながる友人関係の礎です。「文化のWA2.0」の枠組みの下、「日本語パートナーズ」200名を派遣することを発表し、またASEANと共同で、5年間で10万人の高度デジタル人材育成を目指すことをお伝えしました。

 今回の一連の会議において、日・ASEANの首脳が掲げたビジョンの着実な具体化を通じ、相互の信頼、そして相互の尊重を一層高めることができたと考えます。私(大臣)からは以上です。

質疑

 (記者)今会議の内容について御説明いただいて若干重複感もありますが、今日のEASや一連の会議で、日本として特に強調したかった部分はどこか、そして今回どのような点が成果だったとお考えか、伺います。

 (大臣)今回のASEAN関連外相会議ですが、心と心のつながるパートナーである日・ASEANが地域、さらには世界の平和、安定及び繁栄を共創することの重要性を強調いたしました。

 その上で、ASEAN+3では、日中韓3か国が、AOIPの掲げる原則と、その優先4分野であります海洋協力、連結性、SDGs、経済その他の協力、こうした分野に沿った協力を実施していくことの重要性を述べました。それに加え、私(大臣)からは、冒頭で述べたWPS協力の他、金融や食料安保、保健分野での協力の推進と、日本のコミットメントを説明いたしました。

 また、EAS及びARFでは、転換期にある世界を分断ではなく協調に導くため、全ての国が国連憲章の基本原則を守ること、そして法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化することの重要性を強調いたしました。

 具体的な成果として、まず今次会合においては、全てのASEAN諸国から、日本は信頼するパートナーであり、日本の支援や取組を歓迎するとの発言がありました。そして、ASEAN+3の枠組みを通じた地域金融協力の更なる推進や食料安全保障の強化などに、期待の声が寄せられました。

 また、地域情勢について、東シナ海・南シナ海、北朝鮮、ミャンマー、ロシアによるウクライナ侵略、中東といった喫緊の課題について、しっかり日本の立場を発信いたしました。また、この機会に、ALPS処理水の海洋放出についても、日本の取組を丁寧に説明いたしました。

 こうしたやり取りを通じまして、各国外相との間で、さらに個人的信頼を深め、これからの協力のしっかりした土台をつくることができたと考えています。

 (記者)ただいま二国間会談について御紹介いただきましたが、上川大臣は今回、中国の王毅外相と2回目となる会談を実施されました。会談では、外相の相互訪問を含め、引き続き重層的に、リズム良く、かつ粘り強く意思疎通を積み重ねていくと確認しました。今後の往来、首脳を含む政治レベルでの意思疎通の強化について特に「リズムよく」との点を踏まえて目指していらっしゃるスケジュール感を御紹介ください。また、外相同士の往来について、御自身の訪中に関する思いや、可能な限り早く実現したいなど、現時点での時期的なめどを教えてください。

 (大臣)現在の日中関係は、引き続き多くの可能性とともに、難しい懸案が少なくありません。このような時こそ、首脳レベルから国民レベルに至るまで幅広く重層的な対話をリズム良く重ねることで、「戦略的互恵関係」の包括的な推進と「建設的かつ安定的な関係」の構築を日中双方で加速していくべきと考えています。

 その中で、懸案については引き続き中国側に対して主張すべきはしっかりと主張しつつ、同時に、隣国として、そして国際社会の一員として、協力すべき分野で協力を進めていくことが重要であると考えています。

 昨日の日中外相会談では、このような問題意識の下、王毅部長と、重層的に、リズム良く、かつ粘り強く意思疎通を積み重ねていくことを確認しました。その一環として、首脳レベルの意思疎通に加え、私(大臣)の訪中と王毅外交部長の訪日、それぞれに際して行う日中ハイレベルの人的・文化交流対話及び経済対話を活用したいと考えています。

 いずれについても、具体的な日程については現時点では決まっていませんが、これらの機会も活用して、5月の日中首脳会談で確認した二国間の懸案や協力、そして人的交流の拡大等について、具体的成果を得ていきたいと考えています。

 (記者)パリの高速鉄道TGVの路線での破壊行為についてお伺いします。オリンピックでの開会式前のタイミングでの大規模な攻撃で大きな混乱が起きましたが、日本政府としての受け止め、邦人の安全についての最新情報をお伺いします。

 (大臣)昨日発生したフランスの高速鉄道TGVに対する破壊行為については、公共の安全に影響を及ぼす行為であり、非難いたします。邦人を含め、人的被害は生じていないと承知していますが、在フランスの大使館及び総領事館から領事メールを発出し、情報提供や注意喚起に努めてきています。

 また、私自身、ラオス滞在中も、こうした状況について随時報告をうけながら、各国外相との間で本件に言及し、オリンピックが安全に実施されるように連携していくことを確認しました。

 引き続き、現地の情勢等に係る情報収集を続けるとともに、在留邦人に対し情報提供や注意喚起に努める等、在留邦人の安全確保に万全を期していきたいと考えています。

 (記者)「佐渡島(さど)の金山」について伺います。ユネスコは本日世界文化遺産に登録することを決定しましたが、大臣の受け止めを伺います。その上で、韓国側は当初、「強制労働の現場だった」として反発していましたが、今回の登録は、日韓の歩み寄りの結果とも受け取れます。こうした流れをどのように感じているのか、また、昨日の日韓外相会談でも本件に関する言及があったかどうかも併せ、伺いします。

 (大臣)本日、第46回世界遺産委員会において、我が国が世界遺産に推薦した「佐渡島の金山」が、ユネスコの世界遺産一覧表に登録されたとの報告を受けました。誠に喜ばしいことと考えています。これを可能にした長年にわたる地元の皆様の御努力に深甚なる敬意を表したいと思います。

 今回の登録を契機として多くの方が佐渡を訪れ、「佐渡島の金山」の世界遺産としての価値が一層広く世界に知られ、評価されることを期待しています。

 我が国は、「佐渡島の金山」の世界遺産登録実現に向けて韓国との間で誠実に議論を行ってきました。昨日の日韓外相会談におきましても、お互い簡潔に言及をしたところです。こうした努力を経て、今般、韓国を含む全ての委員国のコンセンサスという形で登録が決定したことは、大変意義深いと考えています。すべての関係者に敬意を表したいと考えています。

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