記者会見
上川外務大臣会見記録
(令和6年6月7日(金曜日)11時43分 於:本省会見室)
冒頭発言
ウォックナー政府間開発機構(IGAD)事務局長の訪日
【上川外務大臣】私(上川大臣)から1件であります。
来週12日、訪日するアフリカの角地域の8か国で構成され、約40年の歴史を持つ「政府間開発機構(IGAD:イガッド)」のウォックナー事務局長と意見交換を実施します。
アフリカの角地域は、アジアとアフリカ、中東、欧州をつなぐ結節点に位置し、我が国としては、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の実現の観点から、同地域の安定は、重要と考えています。他方、スーダン情勢の悪化や、引き続き不安定なソマリアの情勢など、同地域の安定のためには、まだ多くの課題が存在しています。
日本は従来から、この地域の各国に対して、二国間の協力を重ねてまいりましたが、近年、地域的な広がりにも光を当て、IGADとの連携を強化しております。
先月、スーダンにおける、文民・民主勢力を結集する会合実施を支援いたしました。同会合には、180名を超える女性が参画するなど、「女性・平和・安全保障(WPS)」の観点や、現地で活躍する人材育成の要素を含む取組で、今後のTICADプロセスに向けたモデルケースだと考えています。
今後とも、「アフリカの問題を、アフリカ自身で解決する」というアフリカの姿勢に寄り添いながら、本年8月のTICAD閣僚会合、更には、来年のTICAD9の開催を見据えて取り組んでまいります。
私(上川大臣)からは、以上です。
「佐渡島の金山」の世界遺産登録
【毎日新聞 森口記者】世界遺産の関係についてお伺いします。イコモスは、昨日、日本が、世界遺産登録を目指す、新潟県の「佐渡島(さど)の金山」について、情報照会という勧告を通達しました。追加の情報提供を求めた上で、原則、翌年の委員会以降の審議に回すという内容で、今年の登録が見送られる可能性もある状況です。加えて、金山の説明や展示などに対しては、明治以降を含めた全体の歴史を扱うことも求められています。この勧告に対する大臣の受け止めをお願いします。
また、強制労働があったと反発の声がある韓国との対話を、どのように進めていくかを含めて、外務省として、今年の登録に向けて、具体的に、どのように取り組んでいくか、対応をお願いします。
【上川外務大臣】6日でありますが、「佐渡島の金山」に関しますイコモスによる審査結果について、通報がございました。その内容は、ご指摘のとおり「情報照会」、これを勧告するものでありました。
イコモスからは、「佐渡島の金山」につきましては、世界遺産登録を考慮するに値する価値があると認められたものと受け止めておりますが、「記載」に向けたいくつかの指摘がございました。
政府としては、今般のイコモスによる勧告を真摯に受け止め、地元の自治体とも緊密に連携しつつ、本年7月の世界遺産委員会における「佐渡島の金山」の登録実現に向けまして、何が最も効果的かという観点から、総合的に検討を行い、政府一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。
我が国は、この「佐渡島の金山」の世界遺産登録実現に向けまして、韓国との間におきましては、誠実に議論を行ってきているところでございます。
韓国との対話の状況につきましては、外交上のやり取りということで、つまびらかにすることについては差し控えさせていただきますが、「佐渡島の金山」の文化遺産としての素晴らしい価値が評価されるよう、引き続き、誠実かつ不断に、丁寧な議論を行ってまいりたいと考えております。
【読売新聞 上村記者】今の質問と重なるんですが、今回の「情報照会」の勧告について、韓国外交部は、今のところ、特段の反応を示していないようですが、韓国メディアでは、今回の「情報照会」について、「強制労働の歴史全体を反映させるよう事実上勧告したものだ」との伝え方をしたり、「今後、日韓間で熾烈な外交戦が予想される」というような報じ方をしています。韓国メディアが言うような、今回の韓国と歴史問題との関係を、大臣、ご自身どのように捉えて、今後、どのような対応していくお考えか、お聞かせください。
【上川外務大臣】我が国は、この「佐渡島の金山」の世界遺産登録の実現に向けまして、韓国との間におきましても、誠実に議論を行ってきているところであります。
韓国との対話の状況につきましては、先ほど申し上げたとおり、外交上のやり取りでございまして、つまびらかにすることについては、差し控えさせていただきたいというふうに思いますが、「佐渡島の金山」の文化遺産としての素晴らしい価値が評価されるよう、引き続き、誠実かつ不断に丁寧な議論を行ってまいりたいと考えております。
日・ウクライナ関係(二国間文書の交渉)
【北海道新聞 今井記者】ウクライナの関係でお伺いします。G7サミットに合わせての岸田首相が、ゼレンスキー大統領と会談し、二国間で協力文書を結ぶと報道が出ております。首脳会談に、協力文書締結に向けた、ウクライナ側との現在の交渉状況を教えていただきたいのと、ウクライナは、英国などとは安全保障分野での協力文書を結んでおりますけれども、日本としては、協力文書の中で、どういった支援を盛り込みたい考えか、お聞かせください。
【上川外務大臣】まず、諸般の事情が許せばということでありますが、岸田総理は、6月13日から15日まで、イタリアにて開催されますG7プーリア・サミットに出席をする予定でございますが、御指摘のウクライナとの首脳会談につきましては、現時点では決まっていないということをまず、申し上げたいと思います。
その上で、昨年7月のNATO首脳会合の際に発出されました「ウクライナ支援に関する共同宣言」、これに基づきます、日・ウクライナ間の二国間の文書についてでありますが、現在ウクライナ政府との間におきまして交渉中でございます。厳しい状況にありますウクライナを支えていくと、このことについては大きな方針として掲げているところでありまして、我が国として、速やかな交渉妥結に向けまして、引き続き、取り組んでまいりたいと考えております。
なお、「ウクライナ支援に関する共同宣言」におきまして、各国は、それぞれの憲法上及び法律上の要件に従って、本件文章を作成することになっているところであります。御質問の安全保障の分野での支援協力につきましても、当然のことながら、我が国の憲法上及び法律上の要件に従ったものになるということでございます。
インド下院総選挙
【NHK 五十嵐記者】インドの関連で伺います。4日に開票されたインドの議会下院の選挙では、モディ首相率いる与党連合は、議席を減らしましたが、政権は維持しました。選挙結果の受け止めと、今後の日印関係をどう築いていくのか、とりわけ経済面では、どのような連携を図っていくお考えか伺います。
【上川外務大臣】インド下院総選挙につきましては、4日に開票が行われ、モディ首相率いる与党連合が勝利宣言を行ったものと承知しております。
5日には、岸田総理からも、モディ首相宛の祝辞を発出いたしました。改めて、モディ首相率いる与党連合の勝利をお祝い申し上げたいと存じます。
インドは、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の実現に向けた重要なパートナーであります。高い経済成長を維持し、また、グローバル・サウスの雄ともいえるインドとの経済関係の促進は、日本経済にとりましても重要であると認識しております。
これまでも、官民投融資5兆円目標の達成に向けました協力を含めまして、様々な協力を進めております。3月の日印外相間におきましての戦略対話でも、インドにおきますビジネス環境改善に向けた協力を含めまして、日印関係の推進につき、幅広く議論をしたところであります。今後とも、日印関係の強化に向けては、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
広島県による核廃絶に関するSDGs目標への提案の提出
【中国新聞 宮野記者】2030年に期限を迎える国連の持続可能な開発目標や目標、SDGsの次の開発目標に、核兵器の廃絶を位置づけるとする提案を、広島県が外務省に提出しています。この提案への見解をお伺いします。
【上川外務大臣】まず、SDGsに関係してのご質問ということでございますが、国際社会全体が複合的危機に直面し、また、大きな困難に直面しているところであります。
現行のSDGsの達成に向けまして取組、これを加速化していくことが重要と考えております。同時に、現行SDGsが2030年、これを目標年としていることを踏まえまして、今の段階から、その先を見据えた国際的な議論の主導ということにつきましては、重要と考えております。外務省としても、検討を進めているところであります。
こうした議論の中におきまして、核軍縮をどのように扱うかということにつきましては、核軍縮に対します各国の様々な立場等を踏まえながら、検討していく必要があると考えております。
政府としては、「核兵器のない世界」、この実現に向けまして、「ヒロシマ・アクション・プラン」の下での具体的な取組を一つ一つ実行をし、現実的かつ実践的な取組を継続・強化してまいりたいと考えしております。
プーチン大統領の核兵器の使用を示唆する発言
【読売新聞 上村記者】今のちょっと核の話に関連するんですが、ロシアのプーチン大統領が、5日に、日本を含む一部メディアと会見しまして、ウクライナ情勢に関して「西側諸国は、ロシアが核兵器を使用することはないと信じている」と述べて、核兵器の使用に含みを持たせました。プーチン氏は、ウクライナ侵略の開始から、こうした核の脅しを強めているわけですが、日本としては、日米同盟の下、こうした核の脅しに、どう対抗していくお考えかお聞かせください。
【上川外務大臣】6月5日、各通信社との会見におきまして、プーチン・ロシア大統領は、「西側では、なぜかロシアが核兵器を使用することはないと考えられている」旨述べたと承知しております。
ロシアは、ウクライナ侵略の文脈におきまして、これまでも、核兵器の使用を示唆するような言動を繰り返してきているところでありまして、このような事態は極めて憂慮すべきものと考えております。
我が国は、唯一の戦争被爆国として、ロシアによる核の威嚇、ましてや使用はあってはならないと考えています。こうした日本の立場につきましては、ロシア側に機会あるごとに伝えるとともに、国際社会にも訴えてきているところでございます。こうした取組につきましては、今後も引き続き、こうした姿勢でしっかりとの臨んでまいりたいと考えております。