記者会見
岩屋外務大臣臨時会見記録
(令和7年7月1日(火曜日)13時37分 於:ワシントン(米国))
冒頭発言
本日、日米豪印外相会合に出席するとともに、ルビオ国務長官、ウォン外相、ジャイシャンカル外相と、それぞれ個別の会談を行いました。
日米豪印外相会合については、本年1月の日米豪印外相会合から約半年のタイミングで、再び対面での会合を開催し、クアッドの結束の強さと重要性を国際社会に示すことができたと考えております。会合では、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力を引き続き推進することで一致し、東シナ海・南シナ海情勢、北朝鮮の核・ミサイル問題について深刻な懸念を共有いたしました。また、私(岩屋大臣)から拉致問題の即時解決に向けた理解と協力を求めて各国から支持を得たところでございます。地域に裨益する実践的な協力を引き続き行うため、クアッドの新たな取組として、重要鉱物資源に関する協力を進めていくことで一致をいたしました。また、海上保安当局による共同航行・訓練の実施や自然災害対応のための空輸能力の共有などでも一致をいたしました。本年の日米豪印首脳会合の成功に向けて協力をしていくこととし、まもなく共同声明を発出いたします。
二国間会談につきましては、まず、インドのジャイシャンカル外相とは、本年予定されているモディ首相の来日も見据えて、安全保障、経済、人的交流など様々な分野において両国間で引き続き連携していくことを確認いたしました。
豪州のウォン外相とは、来年の日豪友好協力基本条約署名50周年を見据えまして、両国間の戦略的連携を深化させつつ、「特別な戦略的パートナーシップ」を更に強化していくことを確認いたしました。
米国のルビオ国務長官とは、インド太平洋地域が直面する諸課題やこの地域において日米両国が果たすべき役割について率直に議論を行い、その議論も踏まえて、日米同盟の抑止力・対処力の強化に向けた方策や日米経済関係の強化について意見交換を行いました。また、中国や北朝鮮を含む地域情勢についても突っ込んだ意見交換を行いまして、北朝鮮の完全な非核化に向けての確固たるコミットメントを改めて確認したところでございます。
質疑応答
日米外相会談
(記者)日米外相会談について伺います。ルビオ国務長官との議論の中で、在日米軍駐留費や防衛費の増額について言及はあったでしょうか。その際に防衛費をGDP比で何%にするといった数値目標への言及もありましたでしょうか。また防衛費についてルビオ長官側に日本の立場を伝える場面がありましたら、どのように伝達したかを伺います。
(大臣)防衛力につきましては、米側から防衛力強化の重要性について提起がありました。これに対して、我が方からは日本自身の判断として、防衛力の抜本的強化を進めていくという考え方を伝えて、日米同盟の抑止力・対処力強化の一層の強化を図っていくということで一致をいたしました。
なお、米側との間で、防衛費の具体的金額などについてのやりとりはありませんでした。これ以上のやりとりについての詳細は控えさせていただきたいと思います。また、在日米軍駐留経費について特段のやりとりはありませんでした。
(記者)関連してですが、具体的な金額の言及はなかったということですが、NATOはGDP比5%と決めて、韓国は米国とGDP比5%で既に協議を始めているとの報道もあります。豪州も3. 5%を求められており、皆、具体的な数字が出ているわけですけれども、日米の間ではそうなっていないのはなぜかということと、今後具体的に金額の数値目標が示された場合にはどのように対応するか、その方針もあわせてお聞かせください。
(大臣)まず米国側の政策の背景について、私どもから確定的にお答えする立場にはございません。
その上で政府としてはこれまでも繰り返し、大事なのは金額ではなくて中身であるということを、繰り返しお伝えしてきました。まずは我々が国家安全保障戦略などに基づいて、防衛力を主体的に強化していく、これを着実に進めていくことが何より大事だと思っております。戦後最も厳しい複雑な安全保障環境の中でありますので、我が国としても、主体的に抑止力・対処力を強化するための取り組みは、不断に検討し進めていくべきことは当然だと思っております。
いずれにしても、政府としては、引き続き日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化を図るために、日米間で緊密に連携し、協議をしていきたいというふうに考えております。
日米豪印外相会合
(記者)続いて、クアッド外相会合について伺います。第二次トランプ政権発足後、2度目の開催となりますが、このタイミングで開催できたことの意義と、クアッドの枠組みに対する米国の姿勢をどのようにご覧になられたでしょうか。また、協力を強化していく上での日本の役割についてどのように考えでしょうか。年内に予定されているクアッド首脳会合に向けた今回の外相会合の位置づけについてもお聞かせください。
(大臣)冒頭申し上げましたように、第二次トランプ政権発足直後の今年1月に日米豪印の外相会合がここワシントンで行われました。今回、再び対面での会合を開催し、これも冒頭申し上げたとおり、クアッドの結束の強さと重要性を国際社会に示すことができたと思っております。元々「自由で開かれたインド太平洋」との概念を提唱したのは日本であり、クアッドの枠組みでも、海洋安全保障や重要鉱物資源に関する協力を含む経済安全保障などにおける様々な協力の実現において引き続き積極的な役割を果たすことができると考えております。今回の外相会合では、本年のクアッド首脳会合の成功に向け、良い準備ができたのではないかと考えています。
(記者)クアッドの関連でお伺いします。トランプ政権は、欧州へのコミットメントに関しては消極的な姿勢が目立ちます。大臣からご覧になって、インド太平洋地域に対する米国のコミットメントはどのように評価できるかという事をお伺いします。また、今日の会合では、この点についてどのような議論があったかも合わせてお聞かせください。また、冒頭おっしゃられていた、重要鉱物について、今日はどのような議論があったかこの点も合わせてお聞かせください。
(大臣)1月のクワッドの最初の会合は以前にも申し上げましたが、マルコ・ルビオ国務長官が就任し、国務省に初登庁してその1時間後に開催されました。やはり第二次トランプ政権においても、日米豪印の取り組み、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」への取り組みというのは重要視されているのだなと、この第1回目の会合のときに感じておりましたが、今回第2回目の会合を行ってみて、まさにインド太平洋の平和と安定、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に関する米国のコミットメントは、揺るぎないものがあるなというふうに感じたところでございます。
それから、重要鉱物支援に関する協力のイニシアティブ、これを立ち上げようということになりました。具体的に何をどうするかということは、これから事務方でしっかり詰めていきたいと思いますし、来る首脳会合でしっかりと枠組みを示すことができるように、努力をしていきたいというふうに考えております。
日米外相会談
(記者)本日の日米外相会談で、関税の話題が出たのかをお伺いしたいのと、日米「2+2」につきましては今後開催の見通しはいかがでしょうか。
(大臣)「2+2」については、もちろん開催をしていくという方向で、具体的な日程についてはこれから調整をしていくことになると思います。
また、関税についても議論をいたしました。もちろんルビオ長官は直接の交渉担当ではありませんけれども、これは日米同盟全体にとって極めて重要な協議であると、したがって、今進んでいる閣僚間の関税協議というものを、お互いの立場でしっかりと後押しをしていきましょうということでは一致をいたしました。
(記者)特に、ルビオ長官のほうから具体的な要求は示されなかったのでしょうか。
(大臣)お互い直接の関税協議の交渉担当ではないので、詳しい中身に踏み込んだわけではありません。ただ、日米の閣僚間の協議が、5回、6回と続いておりますので、しっかりお互いの立場でフォローし、後押しをしていこうということで一致を見たということでございます。
日米豪印外相会合
(記者)クアッドについてお伺いします。冒頭で、今回重要鉱物資源についての協力や海洋安全保障等について、より実践的な協力について議論されたとおっしゃいましたけども、そういう意味で、クアッドの枠組み、トランプ政権になって、より実質的に変化している、そういったような部分があれば教えていただけますでしょうか。
(大臣)先ほど申し上げたように、例えば海洋安全保障などについては、それぞれの国の機関からお互いに船に同乗してパトロールする、訓練をやるということも実施に移されておりますし、今日、特に議題に挙がったのは重要鉱物支援については、開発・生産から新たなサプライチェーンの構築に至るまで、具体的な協力関係を作っていこうではないかということで意見の一致をみましたので、それをどうしていくかということをこれからしっかり積み上げていきたいというふうに考えております。