記者会見
岩屋外務大臣臨時会見記録
(令和7年5月2日(金曜日)18時40分 於:パリ(フランス))
冒頭発言
今回の外国訪問では、バチカン市国でローマ教皇フランシスコ台下(だいか)の葬儀に参列した後、米国ニューヨーク、西アフリカのセネガル、サウジアラビアを経て、ここフランスを訪れております。
セネガルではファル外相との外相会談に加えまして、ファイ大統領及びソンコ首相への表敬を行いました。セネガルは、民主主義、法の支配といった価値を共有する戦略的に重要なパートナーです。人材育成を中心とした協力の推進、投資拡大などの経済関係強化を確認するとともに、本年8月の、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の成功に向け、セネガルの協力を確認したところでございます。
続くサウジアラビアでは、ガザ、イランといった喫緊の課題について、ファイサル外相と率直な意見交換を行いました。サウジアラビアは、今や中東情勢のみならず、ロシア・ウクライナ情勢を含め、国際社会の主要な課題への対応において中心的な役割を果たしています。本年の両国の外交関係樹立70周年を機に、地域及び国際社会の平和と安定に向けて一層連携を強化していくことを確認できたことは、非常に有意義であったと考えております。
また、湾岸協力理事会(GCC)のブダイウィ事務総長とも会談をいたしました。日・GCC・EPAの早期妥結に向けた協力を含め、GCCとの協力を強化していくことで一致いたしました。
そして、ここフランスでは、バロ外相と日仏外相会談を実施したほか、バイルー首相への表敬を行いました。フランスは価値や原則を共有する「特別なパートナー」であります。今回の訪問を通じ、安全保障や経済分野を含む協力を一層強化するとともに、ウクライナ情勢、ガザ情勢、あるいは東アジア情勢についても議論を行い、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて、一層緊密な連携を確認することができました。
加えて、アズレー・ユネスコ事務局長と初めて会談を行いました。私からは教育、科学、文化など、あらゆる分野におけるこれまでの日本の貢献を強調しました。アズレー事務局長からは、長年の日本の貢献に対する感謝が示されました。今後とも、日本とユネスコとの関係を更に発展させていきたいと考えております。
今回の外国訪問では、多国間主義の拠点であります国連本部、そして中東、アフリカ、欧州の主要国を訪問させていただきました。グローバル・サウスとG7を始めとする同志国・友好国との架け橋になる外交を心がけたところでございます。国際社会が分断を深める中、率直な対話と国際協調を通じて、多国間主義を実現し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持し、強化することが、かつてなく重要となっております。こうした観点から、今回の出張では、各機関、各国との連携を深めることができたと思っております。
質疑応答
(記者)まず、日仏外相会談でも議題になったウクライナ情勢についてお聞きいたします。大臣の出張中、アメリカとウクライナの鉱物資源を巡る合意も署名になりましたけれども、こうした動きは、停戦合意に向けた前向きな動きと捉えられるのか、認識をお聞かせいただければと思います。それから、ウクライナをめぐっては、継続的に米欧足並みの乱れというのも指摘されておりますけれども、今回はフランスとも会談したと思いますが、そういった点についての政府の対応方針をお聞かせいただけますでしょうか。
(大臣)まず、米国とウクライナの復興投資基金についてですけれども、先月30日に米国とウクライナ両政府は、米国・ウクライナ復興投資基金の設立に関する協定に署名したと承知しております。第三国間の協定ですから、詳細にコメントすることは控えたいと思いますけれども、本協定は、両国間の精力的な交渉を経て署名されたと認識をしております。また、内容的にも、概観をするところ、どちらかに一方的な中身にはなっていないというふうに感じておりますので、私は、米国の一定のコミットメントがウクライナにおいて維持される契機になるのではないかというふうに受け止めております。本協定が米国とウクライナ関係の進展に資するものになるということを期待しています。
それから、ウクライナ情勢についてですけれども、先月ここパリで開催された会合を含め、様々な動きが続いております。したがって、断定的なことはまだ申し上げられませんけれども、我が国としては、これらの外交努力が、国際社会の結束の下に、全面停戦、ひいては一日も早い公正かつ永続的なウクライナの平和の回復、実現に繋がることが重要だと考えており、その中で我が国としても、できる限りの役割を果たしていきたいというふうに考えております。こういう考え方の下、今日のバロ外相との会談でも率直な意見交換を行い、今後の連携を確認したところでございます。やはり米欧が何と言いますか、離間するようなことは、やはり避けていかなければいけないと思っており、米国・欧州を始めとする国際社会と緊密に対話を行い、意思疎通しながら取り組んでいきたいと考えております。
(記者)日米関係についてです。まず関税について、日本時間の2日の早朝には第二回の交渉も行われました。赤澤大臣は6月中の首脳間の合意も、そういった段階で入れればという期待をする考えを示していますけれども、今回2回目の交渉を踏まえて、何らかの妥結の時期というのが見通せてきているのか、及び交渉に関する政府の今後の方針というのを聞かせてください。一方で安保に関し、安全保障担当のマイク・ウォルツ大統領補佐官が国連大使に就任すると、トランプ大統領が発表しました。ウォルツ氏は2月の首脳会談でも重要な役割を果たしたとされ、日米安保にとって非常にキーマンとされていたわけですけれども、ウォルツ氏が国連大使になるということでホワイトハウスから去ってしまうということについて、日本外交、日米関係への影響をどのようにお考えでしょうか。
(大臣)まず関税に関する協議ですけれども、私も出張先で子細に報告を受けております。米国時間1日、ワシントンD.C.で赤澤大臣は、ベッセント財務長官、ラトニック商務長官及びグリア通商代表との間で、約130分間にわたって時間をかけて非常に突っ込んだ話をされたと承知しています。
協議において、赤澤大臣からは、改めて米国の関税措置は極めて遺憾だということを述べた上で、米国による一連の関税措置の見直しを強く申し入れたと報告を受けております。そして可能な限り早期に、日米双方にとって利益となるような合意を実現しようと、第1回目のときも、可能な限り早期に首脳間で合意できるように、努力しよういうことでございましたので、その考え方の下に率直かつ建設的な議論が行われ、一定の前進を見たと報告を受けております。詳細は控えますけれども、例えば、両国間の貿易の拡大、非関税措置、そして経済安全保障面での協力などについて、具体的に議論が深まったというふうに聞いております。米側との間で、今後事務レベルでも集中的に協議を行うということにした上で、次回の閣僚間の協議を5月中旬以降に集中的に実施しようということで、日程調整が行われていると承知しております。今回の協議結果を踏まえつつ、引き続き政府一丸となって、最優先かつ全力で取り組んでいきたいと思いますし、赤澤大臣による交渉を、外務省としても全力で支えていきたいと考えております。
それから、ウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官の退任でございます。正直私もちょっと驚きましたけれども、1月に訪米した際にも、ウォルツ氏との会談を行ったところでございまして、また、2月の日米首脳会談においても、しっかりと支えていただきました。日米関係の発展に貢献をいただいたと思っております。他国の政府の人事でございますから、コメントは控えたいと思いますが、今後ともウォルツ氏が、日米関係、そして国際社会の平和と繁栄のために更なる役割を果たされることを期待したいと思っております。
(記者)3日で、韓国の大統領選挙まで残り1ヶ月になります。与野党で候補者の絞り込みが進んでいますし、大統領代行を務める韓悳洙(ハン・ドクス)首相が辞任して立候補する意向を表明しております。日本政府内には大統領が代わることによる日韓関係の揺り戻しへの懸念が非常に根強くあるわけですけれども、政府として、韓国の大統領選挙に向けて、安定的な日韓関係の発展という観点から、どのように外交活動を展開していくのか方針をお聞かせください。
(大臣)韓国の大統領選挙についてコメントすることは控えたいというふうに思います。日本と韓国の関係は、この数年間の様々な努力を通じて相当に改善をしてまいりました。このモメンタムを、今後誕生する政権ともしっかりとキープをしていかなければいけない、またキープをしていくための努力を行っていきたいというふうに考えております。日本と韓国は互いに国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき、協力できる重要な隣国同士であり、特に現下の戦略環境の下では、日韓関係、あるいは日米韓協力の重要性は変わらないと思っておりますので、こういう基本認識の下に、引き続き、韓国側との間でしっかりと意思疎通をしていきたいと思っています。