記者会見

岩屋外務大臣臨時会見記録

(令和7年4月28日(月曜日)16時07分 於:ニューヨーク(米国))

冒頭発言

 今回、ニューヨークを訪問いたしまして、2026年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第3回準備委員会に出席し、一般討論演説を行ったところです。

 現在、NPTを始めとする多国間主義に基づく国際協調の枠組みが困難に直面しております。その機能を回復させ、強化する努力が必要とされていると思います。演説では、対話と協調の精神を最大限に発揮して、来年のNPT運用検討会議に向けて、一致団結して取り組むということを呼びかけたところでございます。

 また、「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議のイベントに出席いたしました。イベントでは、アジマン第3回準備委員会議長に対しまして、賢人会議の提言が手交されたところでございます。アジマン議長とは個別の意見交換も行いました。第3回の準備委員会の成功に向けて、我が国として、しっかりと議長を支えていくということをお伝えし、また連携して取り組んでいくことを確認したところでございます。

 その後、グテーレス事務総長とも会談を行いました。グテーレス事務総長とは、先般のフランシスコ台下(だいか)の葬儀の際に、バチカンでもお目にかかりましたけれども、今日はこの国連において、事務総長としっかり意見交換を行いました。国連は創設80周年の節目に当たりますが、国際社会は分断を深めています。このような中にありまして、私から、国連と多国間主義に対する我が国の強いコミットメントを強調したところです。また、安保理改革、そして国連改革の重要性を訴えて、地球規模課題の解決に向けた連携について確認をいたしました。我が国は、引き続き、国連を中心とする、この多国間の枠組みに積極的に取り組んでまいります。

 率直な対話と国際協調を通じまして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持し強化することが、今回の出張に共通する目的でございます。多国間主義の拠点である国連におきまして、そのスタートを良い意味で切ることができたというふうに考えております。

質疑応答

(記者)今回の演説や会談を通して、NPTを軸に核軍縮を進めていくという手応えは得られましたでしょうか。また、演説の中で説明責任や透明性について触れてきましたが、来年の再検討会議に向けて、国際賢人会議が提案した核戦力の国別報告や、核軍縮の方策を示した国別行動計画といった提案について、政府としてどのように位置づけ、取り組んでいくお考えでしょうか。

(大臣)先般、核兵器禁止条約のオブザーバー参加については、様々な分析を行った結果、オブザーバー参加は行わないという判断をさせていただいたところでございます。それが故に、核軍縮・不拡散、最終的には核のない世界を目指していくために、この核保有国と非保有国、両方が参加しているNPTの枠組みの中での取り組みが最も重要だという考え方で、今回準備委員会会合にも参加をさせていただいたところでございます。先ほど申し上げたように、賢人会議から提言が手交されましたけれども、これをたたき台にして、今おっしゃったような、今後個別具体の課題についてさらに議論が深まっていくと思います。来年の運用検討会議では、過去2回できなかった成果文書の取りまとめができるように、我が国としてしっかり議長を支えて、取組を強化していきたいというふうに思っております。

(記者)核軍縮の枠組みについてお伺いします。先ほどのお答えの中でも触れていただいたのですが、日本政府として、核兵器禁止条約ではなくてNPTを重視する、その理由を改めてお伺いいたします。併せて、日本は「核の傘」を享受する米国の同盟国でもあります。この「核の傘」を含む米国の拡大抑止と、このNPTの関係というものをどのように整理しているか、日本政府の見解を改めてお伺いします。

(大臣)率直に申し上げて核兵器国を交えずに、核軍縮を進めることは極めて難しく、非現実的だと思います。したがって、国際的な核軍縮の取組は、やはり核兵器国と非保有国が共に参加をしている唯一の枠組みであるNPT、ここでしっかりと、まずは核軍縮を進めていく、不拡散ということも、しっかり取り組んでいく、これが大切だと考えています。もちろん、核兵器禁止条約は出口となるべき条約であって、尊い取組だとは思いますけれども、日本は唯一の被爆国として、核を抑止する、二度と核兵器を我が国のみならず、社会のどこにおいても使わせないようにするために、やはり核抑止ということは不可欠であると判断しているところでございます。したがって、NPTにおける取組は、我が国にしてみれば、あくまでも防衛目的で、国民の生命財産や地域の平和安定を守るために、核抑止というものは、どうしてもやむを得ない取組だというふうに思っておりまして、それと、最終的に核軍縮、核のない世界を目指していくという取組は決して矛盾するものではないというふうに考えているところです。

(記者)アメリカのトランプ政権の関税についてお聞きします。昨日、大臣は日系企業の関係者とお会いになりました。その際に、関税措置をめぐってはどういうふうな意見や要望が出されて、大臣としてどういった対応が必要だとお感じになったのか。今週は2回目の閣僚交渉も予定されていますが、その際にどういった成果を日本政府として目指すのかお聞きしたいと思います。明日29日トランプ政権発足100日を迎えますけれども、関税に限らず、日米同盟全体としてどういった方向性を目指していくのか、政府としての方針をお聞かせいただければと思います。

(大臣)昨日、約40分間にわたって、日系企業を代表される方々とお目にかかって、それぞれが置かれた現状、あるいは課題について、お伺いをして意見交換を行いました。
 率直な意見交換でありましたので、どの企業が参加したとか、その詳細な内容は、控えさせていただきたいと思いますけれども、総じて日系企業の皆さんからは、やはりなかなか見通しがきかない、米国の新政権の政策もどんどん変わっていっているわけで、企業にとって一番大事なのは、見通しが立つということだと思いますが、そういう意味で、かなり不安を持たれているという、そういうお話を聞かしていただくことができたと思っております。こうした現場の企業の皆さんの声も踏まえながら、日米の経済関係を早く安定させていく、見通しのきくものにしていくということが大切だと思っているところでございます。
 赤澤大臣は米国の関税措置に関する日米協議を実施するために4月30日から5月2日にかけて2回目のワシントン訪問を行う予定だと承知しております。詳細については、今政府内でしっかり詰めているところだと思います。次回の協議について、この段階で予断することは差し控えますが、外務省も含め、関係府省庁でよく連携しながら、しっかりとした準備をして成果を上げていくことが、大事だと思っております。
 大事なことは日米双方にとって利益になる。これはもちろんですけれども、やはりこの非常に揺らぎ始めている世界の自由貿易体制というものが安定していくように、日米の協議の結果というものが、そのために資するものになるようにしていくということが、大事だと思います。国益も大事ですが、国際公益というものがなければ、国益というのは成り立たないので、日米の協議が、それに資するものになっていくように、政府として全力で取り組んでいきたいというふうに思います。
 それから、トランプ政権発足から100日ということでございますが、この間総じて日米関係は、良好に進んできたと思います。首脳会談も早期に実施することができましたし、そこで発出した声明でも、これから更に日米関係を高みに引き上げていこうということで一致することができております。
 また、私で言えば、カウンターパートはルビオ国務長官ですけれども、すぐさま日米豪印の会合も、その後日米韓の協議も行うことができておりまして、自由で開かれたインド太平洋、これを日米でしっかり進めていこうということについては、全く揺らぎがないというふうに感じております。
 しかしながら、この米国の関税措置をめぐって、やはり日米の経済間の関係というものに少し影が差していることは事実ですから、これを早く日米協議によって乗り越えていかなければいけないというふうに感じているところでございます。米側もトランプ大統領も含めて、日本が最優先であるということで、交渉の枠組みもできて、それが今進んでいるところでございますから、しっかりと協議を重ねて、先ほど申し上げたように、日米双方がウィンウィンになる、そして国際公益というものもしっかり確保されていく、そういう取組を我が国としてしっかり進めていきたいと考えているところでございます。

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