記者会見

岩屋外務大臣臨時会見記録

(令和7年4月3日(木曜日)18時51分 於:ブリュッセル(ベルギー))

冒頭発言

 NATO外相会合に出席するため、本日ここベルギーのブリュッセルに参りました。午前中には日米韓外相会合に出席いたしました。そして、その機会にルビオ米国国務長官との間で米国の一連の関税措置についてやり取りを行い、私から米国政府が相互関税措置を発表し、また、自動車関税措置を発動したことは極めて遺憾である旨を伝達をし、措置の見直しを強く求めました。日米韓外相会合では、日米韓が法の支配を含む共通の原則を堅持しながら、結束を強化して具体的な協力を進めていくことこそが、抑止力・対処力を強化し、地域、そして世界の平和と繁栄につながるとの認識で一致をいたしました。また、北朝鮮による核・ミサイル活動、露朝軍事協力の進展について、最近の動向を踏まえて、深刻な懸念を表明し、緊密に連携して対応していくこととしました。さらに、国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化に向けてのコミットメントも再確認をいたしました。拉致問題についても米韓両政府の一貫した支持を改めていただいたところでございます。

 午後は、NATO外相会合に出席をいたしました。欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が密接・不可分との認識の下に、私から強固なNATOの存在は、日本そしてインド太平洋地域にとっても有益であるということを強調しました。ロシアによるウクライナ侵略を含め、世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試みは許されません。私からは、インド太平洋地域においてもそのような試みが継続、強化されているという現状も説明いたしました。また、北朝鮮による悪意あるサイバー活動を資金源とした核・ミサイル活動や拉致問題についても説明をいたしました。そして、NATOのインド太平洋への更なる関与の強化を求め、多くの国々から賛同を得たところでございます。ウクライナ情勢については、早期の全面停戦、公正かつ永続的な平和の実現に向けて、米国や欧州諸国による精力的な努力を後押ししていくことが重要であるということを申し上げました。

 NATOの外相会合に先立ちまして、ルッテNATO事務総長と会談しました。来週には、ルッテ事務総長の訪日が予定されています。私から歓迎の意をお伝えし、防衛産業分野を含む日・NATO協力を一層推進していくことで一致をしたところでございます。

 また、この機会にフィンランドのヴァルトネン外相、ウクライナのシビハ外相とも外相会談を行いました。

 今回の訪問を通じて、NATO及びその加盟国との間でインド太平洋への更なる関与を促し、連携を前に進めることができたと感じています。引き続き、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化のために、NATO及び同志国と協力していく考えです。冒頭、私からは以上です。

質疑応答

(記者)冒頭、ご紹介ありましたアメリカのルビオ国務長官との関税を巡るやり取りについて詳細をお聞きします。アメリカ政府は今、様々な関税措置を発表あるいは発動している状況だと思いますが、どの措置の見直しをどういった理由で求めたのか、詳しくお聞かせください。また、今後政府間での交渉をどのように進めていくお考えか、報復関税をかけたり、WTOに訴えたり、いわゆる対抗措置をとる可能性があるのかも含めてお聞かせください。

(大臣)我が国からこれまで様々なレベルでこの関税措置に対する懸念を説明するとともに、一方的な関税措置をとるべきでないということを累次にわたって申し入れてきたにもかかわらず、今般、米国政府が相互関税措置を発表し、また、自動車関税措置を発動したことは極めて遺憾でございます。WTO協定及び日米貿易協定との整合性に深刻な懸念を有しております。
 私からは、米国政府が相互関税措置を発表し、また、自動車関税措置を発動したことは極めて遺憾であるということを伝えるとともに、措置の見直しを強く申し入れたところです。今般の米側からの発表を受けまして、総理のご指示を踏まえて、関係省庁とも協力・連携の上で、米国による関税措置の内容や我が国、経済への影響を十分に精査して、引き続き、米国に対して、措置の見直しを粘り強く求めていきたいと思います。何が日本の国益に資するのか、あらゆる選択肢の中で、なにが最も効果的なのかということを考えながら取り組んで参りたいと思います。

(記者)日米韓外相会合について伺います。韓国の尹大統領の弾劾審判の宣告結果が出る前日の会談となりましたが、このタイミングで日米韓で会合を開くことができたことの意義を伺います。また、日米韓首脳会談の方の日程について、現在展望はどのように考えておりますでしょうか。

(大臣)韓国の国内情勢には、日々、様々な動きがあるわけですけれども、現下の戦略環境の下で、日韓関係、そしてこの日米韓連携の重要性は変わらないと思っております。そのような中で、日米韓外相会合を開催をいたしました。先般、ミュンヘン安保会議の時に続いてですから、比較的短期間でですね、また会合を持ったということになります。日米韓が結束を強化し具体的な協力を進めていくことこそが、この地域、そして世界の平和と繁栄につながるとの認識を今日の会合を通じて再確認することができたと思っております。
 今、お尋ねの次回の日米韓首脳会合についてはですね、この段階ではまだ決まっておりません。いずれにしても、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、この日米韓がしっかり連携しているということは極めて重要だと考えておりまして、今後とも緊密に連携していきたいと思っております。

(記者)ウクライナ情勢について伺います。シビハ外相とのバイ会談をなされました。また、NATO外相会合でもウクライナ情勢が議題に上ったと思います。アメリカやロシアの主導で和平交渉が動き出して以降、岩屋大臣は国際会議の場などで誤った教訓になってはいけないとか、ロシアが勝者となる終わり方ではいけない。また、ウクライナの声にこそ、最も耳を傾けるべきであるということを発信をされてきたと思うのですが、今回、NATO外相会合やあるいはシビハさんとの会談でこうした考えを伝えたかどうかご紹介いただければと思います。併せて、ウクライナの安全の保証について例えばシビハさんと意見を交わしたかどうかも伺いたいです。また、和平交渉が今動き出していますけれども、日本としてロシアへの制裁というのをいつまで続ける考えなのか、また、ウクライナへの支援のあり方、これも続けていくのか、このあたりをお聞かせください。

(大臣)ウクライナの和平のあり方は、欧州だけではなくてですね、インド太平洋を含む国際秩序全体に大きな影響を与え得るものであると思っております。私からは、そうした問題意識の下に、シビハ外相に対しまして、我が国としてウクライナ、G7と連携しつつ、ロシア側による前向きな対応を強く求めて行くということを申し上げました。国際社会が結束して公正かつ永続的な平和の実現に向けて、引き続き取り組んでいくということを直接お伝えをしたところでございます。外交上のやり取りでございますので、詳細については差し控えたいと思いますけれども、今後のありうべき和平についてもシビハ外相との間で意見交換を行いました。また、ウクライナ支援についても、日本としてはウクライナと今後とも共にあると、引き続いて支援を行っていくという方針を直接お伝えをしたところでございます。それから、対露制裁についてですが、ウクライナの公正かつ永続的な平和を実現するためにはですね、今までもG7をはじめ国際社会と連携して対応してきております。制裁を行ってきておりますが、引き続き、こうした基本方針に基づき適切に対応していきたいと思います。
 いずれにしても、ウクライナ情勢については、引き続き、現在の動きが全面的な停戦ですね。部分的な停戦ではなくて全面的な停戦につながるように。そして、ひいては公正かつ永続的な平和の実現へつながっていくように、引き続き、ウクライナ、米国をはじめ国際社会と緊密に連携して取り組んでいきたいと思います。

(記者)今日出席されたNATO+IP4会合について伺います。NATOは中国について、2022年に発表した戦略概念で欧州・大西洋の安全保障への体制上の挑戦と位置づけるなど、中国への警戒感を背景にインド太平洋への関与を強めています。中国は先日、台湾周辺で軍事演習を行うなど、力による威圧を強めていますが、日本とNATOが連携することの意義や、インド太平洋情勢をNATOの国々に大臣自ら説明することの重要性について、今回の会合に出席されてどのように感じられましたでしょうか。また、北朝鮮を巡っては、ロシアと軍事協力を深めていてNATO諸国の関心も高いかと思いますが、今回どのような議論をしましたでしょうか。加えて、NATOは冷戦中だったり冷戦後などで時代によって同盟のあり方を変化させていて、欧州・大西洋の軍事同盟であるNATOが地球の裏側のインド太平洋にどのように関与できるかというのは模索が続くと思いますが、大臣としてあるべき協力関係について考えがあれば伺います。

(大臣)NATO外相会合にですね、日本の外務大臣が呼ばれるのは4年連続ということになりますが、私にとっては初めての機会でありました。今回出席をしてみて非常に有意義だったなと感じております。欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分であるということを常に申し上げて参りましたが、その認識がNATO加盟国とも完全に共有されているということを再確認、再認識させていただいたところでございます。そして、この会合においてですね、私からはインド太平洋の今の厳しい安全保障環境を説明をさせていただきました。この地域においてもですね、引き続き、力による一方的な現状変更の試みが継続していると、むしろ強化されていることを説明をさせていただきました。NATOのインド太平洋への関心と関与を私からも今日促したわけですけれども、私から言うまでもなくですね、加盟国の間でその問題意識が共有されているということを実感したところでございます。その意味で、改めて申し上げますが、非常に参加したことは有意義であったというふうに感じております。
 それから、露朝軍事協力の進展については、ウクライナ情勢の更なる悪化を招くのみならず、インド太平洋の安全保障にも大きく影響するということを指摘をさせていただいたのですが、この懸念についても各国と共有することができたと思います。NATOを含む同志国で連携してこの問題についても、対応していくことの重要性を確認をいたしました。
 ここ数日の中国による台湾周辺での軍事演習について、政府として重大な関心を持って、今注視しておりますが、この懸念はすでに中国に直接に伝達をしておりますけれども、今回の会合でも、台湾海峡の平和と安定は国際社会全体の安定にとって重要であるということを指摘をさせていただき、これも認識を共有することができたのではないかと思います。
 近年、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障協力の必要性の高まりとともに、日NATO関係は飛躍的な発展を遂げてきていると思います。来週のルッテ事務総長の訪日が予定されてておりますので、この機会も活用して、引き続きNATOとの連携を強化していきたいと思っております。

記者会見へ戻る