記者会見

岩屋外務大臣臨時会見記録

(令和7年3月14日(金曜日)10時44分 於:シャルルボワ(カナダ))

冒頭発言

 まず、私(大臣)からご報告を申し上げます。カナダ議長の下で2度目となる今回のG7外相会合ではウクライナ情勢など今後の国際秩序のあり方に影響を及ぼす重要な課題について、3日間にわたって、じっくりと議論してまいりました。

 まず、ウクライナ情勢については、和平の実現に向けた様々な外交努力が行われております。G7としてこの問題にどのように対応すべきか、突っ込んだ議論を行いました。私(大臣)からは、ウクライナの和平のあり方はインド太平洋を含む国際秩序に影響を与え得ることを指摘をしながら、力による一方的な現状変更が不問に付されるようなことがあってはならない旨を強調しました。その上で、米国の関与を得ながら、G7として結束することが重要であるということを発言をしたところです。我が国としても、和平に向けた動きに積極的に貢献して行きたいと思います。

 また、中東情勢につきましては、ガザにおける停戦合意の着実な履行の重要性を改めて確認いたしました。私(大臣)からは、二国家解決の視点も踏まえまして、中長期的な復旧・復興支援においても、我が国が積極的な役割を果たしていくということを、その決意を申し述べたところでございます。

 さらに、インド太平洋情勢につきましては、東シナ海・南シナ海情勢、北朝鮮の核・ミサイル問題、そして露朝軍事協力を中心に議論を行いました。加えて、私(大臣)から北朝鮮による暗号資産窃取を含む悪意あるサイバー活動に対する深刻な懸念を共有し、これらに共に対処する必要性を強調したところです。また、私(大臣)から拉致問題の即時解決に向けた理解と協力を改めて求め、各国から支持を得ました。

 さらに今回、海洋安全保障についても議論を行いました。法の支配を始め、我が国が推進をしている自由で開かれたインド太平洋、これを重視する基本的な原則を改めてG7各国と共有をしたところでございます。

 また、今回この機会にG7のカウンターパートと会談や立ち話を行いました。米国のルビオ国務長官とは、日米同盟の一層の強化といった先般の日米首脳会談のフォローアップを行うとともに、ウクライナを含む地域情勢に関する連携を確認いたしました。その上で、鉄鋼・アルミ関税措置につきましては、これまでの一連の働きかけにもかかわらず、今般、我が国が除外されない形で追加関税が課されたということについて、遺憾の意を伝えました。それに加えまして相互関税や自動車関税についても我が国は対象となるべきではないと伝えたところでございます。

 国際社会が直面する課題に対処するに当たりまして、自由、民主主義、法の支配といった価値や原則を共有するG7の役割が極めて重要です。このことは会合でもカウンターパートとしっかり共有をしたところです。今回3日間にわたって議論を行う中で、国際社会の平和と安定、そして繁栄のために取り組むG7各国の決意を改めて確認いたしました。引き続き、難しい舵取りが求められる国際情勢におきまして、G7がしっかり結束することの重要性や必要性を各国と確認し共有をしたところです。引き続き、国際社会の平和と安定に向けてG7と連携して、しっかり取り組んでいきたいと思います。

 冒頭、私(大臣)からは以上です。

質疑応答

(記者)三日間の外交日程お疲れ様でした。まず、G7の結束についてお伺いしたいと思います。冒頭発言でもございましたけれども、G7の結束、強化に向けて大臣はどのようなことに力点をおいて呼びかけられましたでしょうか。また、実際に今回結束を確認できたというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。また、今回最初のセッションのテーマがG7の強化というテーマでもありました。また、アウトリーチ国を呼ばなかったということでもありますけれども、このアウトリーチ国を呼ばなかったのは、まさにG7の正式メンバーでじっくり結束を確認し合うという狙いもあったのでしょうか。以上、宜しくお願いします。

(大臣)今回の会合においてはですね、G7は発足から50年になるわけですが、その歩みをまず振り返りました。その上で、ウクライナ情勢を始め、国際社会が極めて揺れ動いている最中ですので、こういった諸課題に対処するに当たって、やはり価値や原則を共有するG7の役割がますます重要になってきているということを各国と共有したところでございます。この点においては、G7のすべての参加者の間に意見の一致があったと私は感じております。

 それから、50年の節目に改めてG7の価値を再評価して、引き続きG7というグループとして共に歩んで行きたいと申し述べました。特に我が国はアジアから唯一のG7参加国ですので、インド太平洋という視点をしっかりG7に打ち込んでいくということが求められているというふうに思います。今後とも緊密な意思疎通を通じて、G7の結束をますます強固なものにしていきたいというふうに考えています。

 アウトリーチについてのお尋ねですけれども、基本的にはアウトリーチの招待については議長国の采配に委ねられておりますので、今回アウトリーチが参加しなかった理由について、我が国から断定的にコメントすることは控えたいと思いますが、おそらくこれだけ重要な課題が山積している中であればこそ、まずG7が集まって意思の疎通を図り、結束を再確認するということが重要であると議長国がお考えになったと思いますし、その意味で、私(大臣)は非常に有意義なG7外相会合になったのではないかというふうに思っているところでございます。


(記者)インド太平洋地域についてお伺いします。大臣の冒頭のご発言と重なるところもあるのですが、G7を始め、国際社会の関心がウクライナ情勢に集まっていて、インド太平洋の安全保障への関心が薄まっているのではないかとの懸念もあります。こうした中で2つの地域の安全保障は不可分だということを今回の会合でどのように訴えられて、その日本の訴えに対して理解は得られたのでしょうか。また、中国や北朝鮮、露朝の軍事協力の問題について、各国からどのような理解を得られたのかも教えてください。

(大臣)私(大臣)からは、国際社会の平和と安定及び繁栄はインド太平洋の情勢に強く依拠していると指摘させていただきました。それが故に、欧米諸国のインド太平洋への関与というものを促しましたわけですけれども、私が申し上げるまでもなく、今や欧州大西洋の安全保障とインド太平洋アジアの安全保障は密接不可分であるという認識はすでに共有されているということを強く感じました。したがって、ウクライナ情勢が注目を集めているということは事実ですけれども、G7各国のインド太平洋情勢に対する関心が薄れているということはないというふうに確信をしたところでございます。

 中国や北朝鮮あるいは露朝軍事協力についてですけれども、G7カウンターパートとの間で、インド太平洋地域における力や威圧による一方的な現状変更の試みに反対するとともに、北朝鮮による核・ミサイル活動の進展への懸念を共有をいたしました。また、露朝軍事協力の進展や北朝鮮や中国がロシアの継戦能力を支えているということについても深刻な懸念を共有したところでございます。これに加え、私(大臣)からは拉致問題の即時解決に向けたG7各国の理解と協力を求めましたけれども、各国から支持をいただきました。今回の議論を通じて、インド太平洋への対処においても、G7が結束して対応していくことの重要性を改めて確認することができたと考えております。


(記者)ウクライナ情勢についてお尋ねいたします。ロシアのプーチン大統領が、トランプ米政権が提示したロシアとウクライナの一時停戦案について即時に受け入れることはできないという立場を示しました。米国をはじめG7各国が停戦に向けた外交努力を続けている中で、プーチン大統領のこうした発言に対しての所感、停戦案に関してロシアがどのような対応を取るべきだとお考えになりますでしょうか。一方で、冒頭発言にも言及ありましたけれども、現状のまま停戦をすれば力による一方的な現状変更が可能との誤った教訓を世界各国に示すことになりかねませんけれども、日本政府として外相会合でどのように訴えて、各国と認識を共有できたかどうかお尋ねします。

(大臣)今、ご指摘のあったプーチン大統領の発言というのは確認できておりません。いろんな報道がなされているんだろうと思いますけれども、ロシア政府関係者の言動の逐一について評価を述べることは差し控えたいと思います。今月11日に米国とウクライナ両政府間で行われた協議における合意。これは長く継続する戦闘の終結に向けた、プロセスにおける重要な一歩だと考えております。ロシア側には、ぜひ前向きな対応を期待したいと思います。昨日のウクライナに関するセッションにおきましても、この点につきまして、G7として連携して対応していく重要性を確認をしたところでございます。ウクライナの和平のあり方は欧州のみならず、インド太平洋を含む国際秩序全体に影響を与え得るものでございます。したがって、ここから誤った教訓が導き出され得るということは許してはならないというふうに思っております。これから和平に向けての議論が進んでいくというふうに思いますので、現時点において、確定的、断定的な評価を下すことは時期尚早と考えております。今般の動きが、一日も早く公正かつ永続的なウクライナの平和の実現につながるよう、引き続きG7を始めとする国際社会と緊密に連携をしていきたいと考えております。


(記者)G7の関連で行われた日米外相会談につきまして、昨日もお伺いしたのですけれども、安全保障の分野についてお伺いします。トランプ大統領は第一次政権に引き続き日米安全保障条約の対日防衛義務について、再度不満を示しておりますけれども、今回もその点についてルビオ長官との会談で話題に上りましたでしょうか。もし、話題に上られていた場合、どのようなやりとりがあったかを教えてください。また、駐日大使に指名されているジョージ・グラス氏が承認に向けた上院外交委員会の公聴会で在日米軍の駐留経費の負担増額を求める姿勢を示しました。この点についても今回の会談で話題に上ったか教えてください。グラス氏は石破茂首相が2月に訪米した際に首脳会談で総理自身が防衛費の増額を検討する可能性にも触れたというふうに指摘しているのですが、この事実関係と今回の外相会談でも防衛費についてどのような議論を行われてトランプ政権が防衛費の増額を求める報告に傾きつつある中で日本としてどのように対応していくか教えてください。

(大臣)今般の日米外相会談におきましては、この2月の日米首脳会談の成果を踏まえまして、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化に向けた協力を進めていこうということを確認いたしました。首脳会談で一致した在日米軍再編の着実な実施へのコミットメントも再確認をしたところでございまして、冒頭に指摘されたようなやりとりはございませんでした。

 その上で、同盟強靱化予算、Host Nation Support、HNSですけれども、これについては、政府としては日米両政府の合意に基づいて適切に分担されていると考えております。現行の特別協定の期間終了以降の経費負担のあり方について、予断することは差し控えますが、今後とも日本側の適切な負担のあり方について不断に検討していきたいと思っています。

 また、先般の日米首脳会談に私はずっと同席しておりましたけれども、やりとりの詳細は控えたいと思いますが、石破総理が防衛費について、ご指摘のような発言をしたということはございません。その上で、国家安全保障戦略では我が国の主体的な判断として、2027年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取り組みをあわせ、予算水準がGDPの2%に達するよう、所要の措置を講ずることとしていまして、そこに向かって着実に進んでいるというふうに思います。

 これまで累次申し上げてきておりますとおり、金額やGDP比の割合ありきではなくて、大事なことは防衛費の中身であると考えておりますし、我が国の防衛費ですから、我が国が主体的に決めるということかと思います。政府としては戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、我が国として主体的に抑止力・対処力を強化するための取り組みを不断に検討して、引き続き防衛力の抜本的強化を着実に進めていきたいと考えております。

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