記者会見
岩屋外務大臣会見記録
(令和7年1月24日(金曜日)17時50分 於:本省会見室)
冒頭発言
岩屋大臣の訪米、第217回通常国会開会、リビア国首脳評議会副議長との会談
【岩屋外務大臣】冒頭、私(岩屋大臣)から御報告がございます。 昨日、米国から帰国いたしました。今回の訪問では、トランプ政権発足直後に、新政権の関係者との間で信頼関係を構築することができたと思っております。引き続き、様々なレベルで緊密に意思疎通を図っていきたいと思います。
そして、本日、第217回通常国会が開会をいたしまして、私(岩屋大臣)も先刻、衆参の本会議で、外交政策の所信を申し述べたところです。
我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、与野党の垣根を越えて、外交・安全保障政策に関する幅広い共通の認識を作っていくべく、引き続き、全力で対応してまいりたいと思います。
同時に、外交活動にもしっかりと取り組んでまいります。本日は、外務省の賓客として、訪日中のラーフィー・リビア国首脳評議会副議長と、会談及びワーキング・ディナーを、このあと実施する予定でございます。
ラーフィー副議長とは、日本とリビアの関係の更なる強化に向けて連携を深めるとともに、リビアの政治プロセス、そして治安情勢に加え、地域情勢についても、率直に意見交換をしたいと思っているところです。
冒頭、私(岩屋大臣)からは、以上です。
北朝鮮関連(トランプ大統領の発言)
【NHK 米津記者】冒頭の米国の関係で関連でお伺いします。米国のトランプ大統領が、FOXニュースのインタビューで、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記に接触を図る意向を示しました。トランプ氏は、1期目の政権で、朝鮮半島の非核化などに向けて、史上初の米朝首脳会談を行うなどした経緯もありますが、今回のトランプ氏の発言について、大臣の御見解をお伺いします。また、日本としても、北朝鮮との間では、核・ミサイル問題、開発への対応ですとか、拉致問題の解決など懸案があるわけですけれども、どのように金正恩氏と向き合うお考えでしょうか、お願いします。
【岩屋外務大臣】御指摘のトランプ大統領の発言については、承知しております。この北朝鮮の問題についても、米国新政権、トランプ大統領が、リーダーシップを発揮してくださることを期待しております。
拉致問題及び核・ミサイル開発を含む北朝鮮への対応については、こうした米国を始めとする国際社会との連携が不可欠でございまして、先般の訪米の際にも、私(岩屋大臣)から、ルビオ国務長官を始めとするトランプ政権の幹部と、突っ込んだ意見交換を行ってまいりました。引き続き、トランプ政権との間で、強固な信頼関係・協力関係を築いて、北朝鮮への対応に当たっても、緊密に意思疎通を図っていきたいと思いますし、当然、日米韓という枠組みでも、よく相談をしなければいけないと考えております。
また、我が国の北朝鮮に対する基本方針は、言うまでもなく、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった、諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を図るというものでございまして、これにいささかも変わりはありません。
石破総理も、この日朝平壌宣言の原点に立ち返って、この機会を逃すことのないように、金正恩委員長に呼び掛けていく、向き合っていくという旨を述べておられます。
全ての拉致被害者の一日も早い帰国、御帰国を実現するとともに、今申し上げた諸問題を解決するためにも、石破総理の強い御決意の下に、我々としても、総力を挙げて、最も有効な手立てを講じていきたいと思っております。
日米首脳会談
【共同通信 鮎川記者】同じく米国の関係で伺います。今日の午前中に、岩屋大臣、石破総理と会談されたというふうに伺っています。総理の方からも最終調整していると、日米首脳会談についての御発言がありました。3日前には、総理の方から、そうかからずに決まると思う、という御発言もありました。最新の調整状況を、大臣からも、お聞かせいただけますか。
【岩屋外務大臣】今日の午前中に、石破総理に対しては、会談といいますか、今般の私(岩屋大臣)の米国訪問について、御報告を申し上げたということでございます。その際に、当然のことながら、日米首脳会談に向けた御相談も行いました。
この日程については、米国トランプ政権との間で、できるだけ早い時期に行うということでは、もう一致を見ておりまして、あとは、双方の日程を踏まえて、調整しているところでございます。
我が方も国会がスタートしておりますし、米国の方は新政権が立ち上がったばかりということもございますので、双方の日程をよく突き合わせて、できるだけ早く日程を確定していきたいと思っておりますし、実現すれば、初の日米首脳会談が有意義なものとなるように、ルビオ国務長官を始めとする米国の新政権側と、しっかり意思疎通を行っていきたいというふうに思っております。
戦後80年総理談話
【時事通信 川上記者】話題変わりまして、戦後80年の総理談話について伺います。公明党の斉藤代表は、先日のぶら下がりで、日本被団協が、ノーベル平和賞を受賞したことに触れた上で、「大変厳しい状況の中で、この節目の年に、しっかりとした談話を出すことは、平和を目指す日本として、出す意義がある」と述べられましたが、大臣の受け止めを教えてください。また、公明党などを含めた関係者との協議を、今後、どのように進めていくべきかについての考えも、併せて伺います。
【岩屋外務大臣】毎回申し上げておりますように、石破内閣は、これまでの内閣総理大臣談話を含めて、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおりますし、今後とも引き継いでまいります。
その上で、現時点で新たな談話を発出するかは決定しておりません。今後の対応については、これまでの経緯も踏まえながら、様々な観点から考えていくことになると思います。
いずれにしても、国際社会が激動しておりますし、その意味では大きな転換期を迎えていると思います。自由で開かれた国際秩序、法の支配といったものが揺らいでいる中で、2025年の様々な機会を捉えて、世界の平和と繁栄に向けた未来志向の発信をしていくことは必要ではないかと考えております。
したがって、談話という形にするのかしないのか、もし出すとすれば、どのような形で出すか、いつが適当かということも踏まえて、よく考える必要があると思っておりまして、現時点で判断する時期を決めてはおりません。
中国での邦人保護
【日経新聞 馬場記者】中国での日本人に関連する事件についてお伺いします。昨日、23日に、中国江蘇省蘇州市の裁判所で、同市で日本人の母子が切りつけられ、中国人の方1名が亡くなった事件について、被告人に死刑が言い渡されました。蘇州の事案についてのまず、受け止めをお伺いします。また、本日は深圳での日本人児童の殺害事件での初公判もありましたけれども、こうした事案がある中で、日中間で人的交流を促進していく中での、どのように日本として邦人の安全を確保し、また、中国側に、どのような対応を求めるのか改めてお伺いします。
【岩屋外務大臣】昨日、中国の蘇州における、日本人母子死傷事件についての判決公判が行われまして、被告人に死刑判決が下されたと承知しております。まず、本事件で、胡友平(こ・ゆうへい)さんが逝去されたことについて、改めて心からお悔やみを申し上げたいと思います。また、負傷された日本人母子に対して、改めてお見舞いを申し上げます。
政府としては、全く何の罪もない子供を含む3人を殺傷した犯行は、到底許されるものではないと考えておりまして、今回の死刑判決を厳粛に受け止めているところでございます。
海外に渡航・滞在する邦人の安全・安心の確保は、政府の最も重要な責務の一つでございまして、政府としては、今回の判決も踏まえつつ、中国における邦人の安全確保を中国側に対して、引き続き、強く求めてまいりますし、私(岩屋大臣)どもとしても、邦人の安全・安心の確保に、全力を挙げていきたいと思っております。
訪日中国人査証緩和措置
【読売新聞 上村記者】私から、中国人向けのビザの緩和措置についてお伺いします。昨年末に、日本政府が決定したこの緩和措置について、萩生田光一元政調会長が、「やり方が乱暴」と述べるなど、自民党内から異論が出ています。この受け止めと、今回、緩和措置を決めた理由を改めてお伺いします。
【岩屋外務大臣】本件については、多分に誤解があると、私(岩屋大臣)は思っております。
様々な御意見があることは承知しておりますが、その上で申し上げれば、我が国の査証は、今回の措置を含めて、基本的に、治安上の影響等の観点から、国内の関係省庁との協議を踏まえて、それぞれの査証の種類に応じて、一定の経済要件を設ける等、査証申請時や入国時には、厳格な審査を行っております。今回の緩和措置が、直ちに中国人観光客の無秩序な急増につながるものではない、こういうふうに考えております。
また、10年間有効の短期滞在数次査証については、10年間にわたって無制限の日本滞在が可能となるものではありません。1回の滞在期間は、現行の5年間有効の観光数次査証と同様に、最長90日間に限定されておりますし、国民健康保険に加入することもできません。
また、中国人の訪日査証につきましては、地域活性化や雇用機会の増大など、経済波及効果が大きい観光の推進といった観点に加えまして、人的交流の促進を通じた相互理解の増進、治安に与える影響などを総合的に勘案して、関連の緩和措置を外務省において決定し、実施してきているところでございます。今回の緩和措置も、そうした一環として、実施をしたものでございますし、事前に与党の審査を経て、了承を得たことは、過去一度も無いと思います。
その上で、本措置については、様々な御意見や御指摘があるということも事実でございますから、我々として政府として、その具体的な内容を正確に御理解いただけるように、引き続き、丁寧に説明していきたいと考えております。
【共同通信 鮎川記者】今いただいたお答えで、少し確認だけさせていただきたいんですが、冒頭、「多分に誤解があると思っている」とおっしゃられたのは、このあとに提示していただいた、例えば、治安上の影響が大きいのではないかとか、直ちに無秩序に急増するのではないかと中国の観光客が、また10年間無制限に滞在できるのではないかとか、こういった挙げていただいた点が誤解があるという、そういう理解でよろしいでしょうか。
【岩屋外務大臣】その中身についても、そういう誤解が一部にあるということだと思いますし、手続としても、党において了承いただくという手続は、今まで取ってきておりませんので、そこも一部誤解があるんだろうと思います。
ただ、ある意味、日中関係というのは、センシティブな事柄でもありますので、十分な説明が必要だということについては、そのとおりだと思いますので、今後しっかり丁寧に説明していきたいと考えております。
中国による日本産水産物輸入再開、牛肉輸入再開、精米輸入拡大
【共同通信 鮎川記者】中国との関係なんですが、一部の報道で、日中韓の外相会談と合わせて、中国、韓国外相が来日することになるでしょうから、そこで日中外相会談や合意がされてきた経済ハイレベル対話などが近くある、というような報道もある中で、最近、福島第一原発の処理水海洋放出に関するモニタリングで、中国側が日中の合意に基づいて、拡大したモニタリングで、採取に参加して、初めて分析結果が出たと、問題のある数値はありませんでした、という情報を出してきたり、あとは、岩屋さんが年末に行かれて、牛肉の輸出、中国からすると輸入ですが、再開とコメの輸入の拡大、これについても少し協議が進んできていると思うんですが、この水産物の輸入再開、及び牛肉、コメの協議、あるいは、最新の状況というものを御紹介いただけますか。
【岩屋外務大臣】まず、日中韓の外相というのは、今度、私(岩屋大臣)どもが、主催するというか、議長をやらなければいけないということだと思いますが、これから日程調整をしていくということで、まだ、しっかりと日程が固まっているわけではございませんが、ぜひ実現したいと考えております。
そういうことになって、中国の王毅(おう・き)外交部長が来日をされれば、日中の経済対話も、ぜひ実現したいと思っております。
その上で、お尋ねにあった水産物の輸入再開に向けた動きですけれども、昨年10月に、IAEAの枠組みの下での追加的モニタリングの一環として、中国を含む3か国の分析機関による採水、水海水を実際に採る、そして調べる、ということが実施されました。今般、中国の分析機関による分析が完了して、「その結果が正常であった」と、公表されたと承知しております。
中国による日本産水産物の輸入再開の時期については、まだ決まったものはありませんけれども、日中の首脳間、それから外相間で確認したとおりに、昨年9月の日中両政府による発表をしっかり実施していくということが重要であり、今般の中国政府による発表は、こうしたプロセスの着実な進展として受け止めているところでございます。
昨年末、訪中した際に、私(岩屋大臣)からも王毅外交部長に直接働き掛けました。我が国として、引き続いて、中国側に対して、あらゆるレベルで日本産水産物の輸入再開を早期に実現するよう求めていきたいと思います。
江藤農水大臣も、森山幹事長も訪中をされて、その話をされていると承知しております。
また、昨年末の日中外相会談のときに、王毅外交部長との間で、日本産牛肉の輸入再開、そして、精米の輸入拡大に係る当局間協議の早期再開も確認しております。これについても、与党幹事長の意向や、江藤農水大臣が訪中した際に、働きかけていただいたと承知しております。こうしたやり取りも踏まえながら、引き続き、関係省庁とも緊密に連携して、政府を挙げて、中国による日本産牛肉、牛肉は輸入再開、精米は輸入拡大への早期実現を目指していきたいと思っております。