記者会見

岩屋外務大臣会見記録

(令和6年12月6日(金曜日)17時56分 於:本省会見室)

(動画)岩屋外務大臣会見の様子

冒頭発言

ユネスコ無形文化遺産「伝統的酒造り」の登録

【岩屋外務大臣】今日は難しい御質問が多いと思いますので、冒頭、私(岩屋大臣)から一つ、明るい話題で御報告をいたします。
 12月5日(現地時間4日)、我が国が提案しておりました「伝統的酒(さけ)造り」が、ユネスコ無形文化遺産として登録されました。日本酒、焼酎、泡盛等の製造に用いられる伝統的な酒造り技術が対象になっています。
 登録を大変喜ばしく思うとともに、これまで「伝統的酒造り」の継承と振興に取り組んでこられた関係者の皆様に、心からの敬意を表し、また、お祝い申し上げたいと思います。
 この登録を機に、外務省としても、日本の酒造り技術や日本産酒類(しゅるい)の魅力を世界へ発信を一層してまいりたいと思っておりますし、様々な外交シーンにおいて、外交ツールとしても、一層積極的に活用してまいりたいと思います。
 冒頭、以上です。

韓国情勢(弾劾訴追案)

【共同通信 阪口記者】韓国情勢について伺います。韓国与党の「国民の力」は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案に賛成し、弾劾訴追案が可決される公算が大きくなりました。政府としての所感をお尋ねします。可決された場合の対応、日韓関係の影響について、どのように考えるかも併せてお尋ねします。

【岩屋外務大臣】事態は極めて流動的で、刻々と移り変わっていると思いますので、この段階で断定的なことを申し上げることは控えたいと思います。
 また、他国の内政のことでございますから、それについての評価も控えたいと思いますが、いずれにしても、日本政府としては、今般の韓国国内の一連の動きについて、特段かつ重大な関心をもって、引き続き、注視していきたいと思っております。
 今、可決された場合という、お尋ねでしたけれども、したがって仮定の質問へのお答えは控えたいと思いますけれども、日韓関係は、国際社会の様々な課題に、パートナーとして協力すべき重要な二国間関係、また、重要な隣国であるというふうに思っております。
 今後の日韓関係全体の取組につきましては、情勢を注視する中で、適切に判断していきたいと思っています。

韓国情勢(尹大統領の評価・日韓関係への影響)

【読売新聞 上村記者】関連してお伺いします。仮定の話ではなくてですね、今回の尹(ユン)大統領が、これまで進めてこられた日韓関係の改善だとか、日米韓3か国連携の推進だとか、この辺り、こうしたことに対する尹大統領のこれまでの貢献をどのように評価されているかということと、また、この事態が、こうした日韓関係であったり、東アジア情勢だったりに与える影響を、どのように捉えているかをお聞かせください。

【岩屋外務大臣】近年、日韓関係が非常に改善をした、岸田前総理・尹大統領の間で改善をした、ということは事実だと思っております。
 今般の一連の動きが、内外にどういう影響を与えていくかということについては、これは予断をもって、この段階で、申し上げることは控えたいと思っております。
 私(岩屋大臣)どもの思い、願いとしては、引き続き、日韓関係を未来志向で、しっかりと発展をさせて、インド太平洋全体の平和、安定、また繁栄ということに貢献できる二国間関係、日韓関係で、これからもありたいなというふうに願っているところでございます。

韓国情勢(日韓関係、地域情勢への影響)

【日経新聞 川上記者】質問若干重複するところありますが、お願いします。日韓関係について伺います。韓国の大統領への弾劾訴追案が提出されまして、任期がまだ残る中で、尹大統領自身の地位が危ぶまれています。日本との関係改善を重視する大統領が辞任してしまうと、関係の後退につながりかねません。日韓の距離は、歴史的にも韓国の内政に左右されてきたという経緯があると思います。安全保障上の要衝にある両国関係の浮き沈みが激しいことへの受け止め、また、そのことがインド太平洋地域の安全保障に、どのような影響を与えるか、というお考えをお伺いいたします。

【岩屋外務大臣】同じような答えになると思いますけれども。この段階で、今般の韓国国内の情勢が、今後に、どういう影響を与えるかということについて、予断をもって申し上げることは控えたいと思っております。
 私どもとしては、日韓関係は、極めて重要な二国間関係、隣国関係だと思っておりますし、現在の国際情勢全般を考えたときにも、日韓の連携、あるいは、日米韓の連携というのは、引き続き、極めて重要だと思っておりますので、そういう関係は、これからもしっかりと維持・継続・発展さていくことができるように、日本政府としては、努力していきたいというふうに考えております。

韓国情勢(日韓関係への影響)

【朝日新聞 里見記者】重ねて韓国の関連で、これまた少し重複があるとは思うんですけれども。日韓の間で歴史問題というのは、ずっと、くすぶってきておりまして、一応、尹大統領の下で、一定の安定の日韓関係なってはきてはいるものの、一部で例えば、来年はまた、佐渡金山の追悼行事、今回韓国側が参加されなかったものを、また来年、1年後にも予定はされておりますし、この5月に合意をしたレーダーの照射の問題も、これまたぶり返すんじゃないかと、政権がもし変わればですね。というような、そういう懸念も聞こえてくる中で、この日韓関係、過去の問題、これを踏まえて、どのようにマネジメントしていくのか、先ほど、維持・発展・継続をさせていくと、努力をされるとおっしゃったわけです。どのように、これマネジメントをされていくのか、その姿勢をお尋ねできればと思います。

【岩屋外務大臣】御指摘のように、これまでも、日韓の間には、様々な難しい課題がありました。
 しかし、その都度、双方の対話、そして努力によって、一つずつ乗り越えてくることができたと思います。まだ残された課題もありますけれども、粘り強く、誠実な対話を行うことによって、乗り越えていくことができると、私(岩屋大臣)は確信しておりますので、我が方としては、引き続き、そのような思いをもって、韓国と向き合っていきたいと思っているところでございます。
 今後のことは、もちろん韓国、国民の皆様がお決めになることでございますが、いずれにしても、引き続き、日韓関係を更に安定させ、発展させていくために、最大限の努力をしていきたいと考えております。

韓国情勢(在留邦人の安全確保)

【テレビ朝日 飯田記者】関連して、先ほど大臣も事態が動いているという中で、連日、大規模なデモや集会が起きている状況があります。週末にも、ソウルの中心部、日本人観光客も多くいるような近くで、大規模集会を予定されているとされている中で、在留邦人であったり、日本人の観光客に、危害が及ぶ心配はないのでしょうか。

【岩屋外務大臣】今般の事態の発生を受けて、すぐさま在韓国の日本大使館及び総領事館から、領事メールを発出させていただきましたが、今後も、情勢に応じて、適宜、領事メールを随時発出して、注意喚起を行って、在留邦人の安全の確保に万全を期していきたいと思っております。

日本外交の役割

【毎日新聞 金記者】 関連して、日本の北東アジア地域における外交・安全保障政策の方向性について伺います。既存の国際秩序の変更を迫るロシア、中国、北朝鮮の存在感が、より増大する一方で、国際協調よりも自国第一主義を重視するトランプ政権の発足や、今回の非常戒厳令の宣言によって、内政の混乱などが生じるなど、現状維持を求める日米韓の結束や指導力に対して、不確実性が高まっていると思います。日本もまた、少数与党による厳しい政権運営を 余儀なくされているところではありますが、このような地域安全保障の不透明感が増している中で、平和と安定を維持する上で、日本が果たすべき役割について、大臣は、現在どのようにお考えか、その所感をお聞かせください。

【岩屋外務大臣】ここが大事なところだと思います。踏ん張りどころだと感じております。世界情勢を見ても、ウクライナ侵略は、まだ止まっていないと。また、我が国周辺の安全保障環境も非常に厳しくなっている。中東の情勢も、イスラエル、レバノン間の停戦はなったものの、まだ、ガザの問題も解決をされていない。また、露朝の軍事協力という問題もありまして、非常に国際情勢全般、厳しい状況にあると思います。また、そして、韓国国内では、今般のような事案が発生をしているということでございます。欧州各国の内政も、それぞれ揺れていると報じられていますし、米国は、今から、新政権、現在、新政権に向けての移行期にあるということでございますので、御指摘のとおり、非常に、今のところ不安定な状況の中で、どのように外交を進めていくか、日本の平和を確保していくかという課題が、我々の目の前にあると認識をしております。
 このような各国の情勢が、国際情勢全般に、どういう影響を与えていくかということは細心の注意を持って、しっかりと見つめていく、また、分析をしていく必要があると考えております。しかし、このような中にあっても、我が国外交の基本方針というか、基本的な考え方が変わるということではない、また、変えてはならないと思っておりまして、それは、やはり、日米同盟というものを基軸にして、同盟国・同志国と、しっかり連携をしていくと。また、隣国とも建設的で安定的な関係を築いていくと。そして、また、グローバル・サウスと言われる国々とも緊密な連携を行っていくと。そして、自由で開かれたインド太平洋、そういう平和と安定と繁栄というものに貢献する日本であり続けるというのが、日本外交の基本方針ですから、そのために、対話の努力をより一層懸命にやっていきたいと考えているところでございます。

中国人向け査証の緩和

【NHK 米津記者】話題変わりまして、中国人向けのビザについてお伺いをします。中国人が訪日する際のビザ発給の要件を緩和するとの一部報道がありますけれども、現時点での検討状況と、人的交流の拡大などを見据えて、要件緩和の必要性をどのようにお考えか、お聞かせください。また、大臣は、早期に中国を訪問したいとの考えを示されてきましたが、例えば、年内にも外相会談を行う場合に、こうした方針、このビザの要件緩和についての方針を、大臣の方からお伝えするっていうようなこともお考えでしょうか。よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】日中関係の基礎は、土台は、というか、国民どうしの交流にあると思います。その意味で、先般の、中国側からの短期ビザの再開というのは、非常に歓迎すべきことであって、これを機に、日中間の人的交流、あるいは経済交流というものが、より盛んになっていくことに期待をしております。
 中国人の訪日査証については、これまでも関連の措置を進めてきております、 現時点で、新たな緩和措置を行うということを決めたわけではありませんけれども、今後とも状況の変化に応じて、引き続き、適切に対応してまいりたいと考えております。
 また、私の訪中については、早期実現に向けて、引き続き、調整を行っていきたいと思っておりますが、これも、まだ確定をしているわけではありません。実際に行くとなれば、実りある会談を行って、ぜひ成果を生み出したいと思っておりますが、その内容も含めて、しっかりこれから検討、調整をしていきたいと思っています。

在日中国人・カンボジア人の人権問題

【東京新聞 北川記者】私からは、12月10日が、国連の定める世界人権デーということを踏まえてお伺いします。中国とカンボジアについてです。日本にいる在日の中国人、カンボジア人に対して、本国から政治的な圧力、監視が強まっているという指摘が、人権団体、あるいは研究者からあります。私どもの取材でも、それは感じているところです。言うまでもなく、日本は人権、自由、民主主義、法の支配、重視しています。政治活動の自由もあると。そうしたところで、国境を越えて圧力みたいなのが、政治的圧力が加わってくるというのは、看過できる話ではないと。FOIPの思い描く世界からも離れていると思います。そこで、大臣にお伺いしたいのですが、こうした国境を越えた政治的圧力が指摘されている状況、それが強まっていると指摘されている状況について、大臣の御所感・御見解をお伺いしたいというのと、中国、カンボジアに対してですね、端的に言うと、政府なり、大使館なり、あるいは、会議・会合など外交の場で、何かお考え、立場、御見解を伝えるお考えはないかをお聞かせください。

【岩屋外務大臣】 今おっしゃったことを、確たるファクトとして把握しているわけではありませんが、在留の外国人を対象とするものも含めて、日本国内で法令違反が疑われる事案を把握した時は、言うまでもないことですが、関係機関で連携して調査・捜査を行いまして、法令に違反する行為が認められれば、厳正に対処してまいります。
 また、我が国としては、 おっしゃったように、国際社会における普遍的価値である自由、基本的人権の尊重、法の支配が保障されることが重要だと考えておりまして、こうした我が国の立場については、これまでも、中国政府及びカンボジア政府に対して伝達をしてきているところでございます。政府としても、引き続き、国際社会と緊密に連携しつつ、そのような事案を把握すれば、必要な働きかけを実施していきたいと考えております。

国会での議論

【共同通信 阪口記者】今週から予算委員会が始まったと思います。予算委員会の席で、石破さんの答弁をずっと岩屋さんとして聞いてらっしゃると思いますけれども、論戦が得意だとされる石破さんですけれども、大臣として率直に、どのようにお感じになっているのか。 石破さん、ずっと総裁選からですね、休みなく働いてらっしゃると思いますけれども、なかなか元気な様子にも、こちらからは見えるんですが、どのように、率直に、岩屋さんがお感じになっているのか、意見を伺えればと思います。お願いします。

【岩屋外務大臣】そうですね、最初の予算委員会ですから、衆参ともに、もうほとんどの時間、総理がお答えになっているということですけれども、そばでやり取りを聞いておりまして、非常に的確、適切に答弁をされ、また 石破総理ならではの見識の下に、議論が充実してきているのではないかと感じております。
 総裁選からノンストップで、今日まで来ておりますので、その間、外遊もありましたし、相当お疲れになっているだろうと思いますけれども、逆に、この予算委員会の論戦が始まって、非常に、また活力を得てきておられるのではないかなと感じております。
 引き続いて、石破総理が言われる、謙虚で丁寧な論戦を行って、国会の中は元よりですけれども、国民の皆さんの間にも、その共感というものが広がっていってくださればいいなと思っているところです。

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