記者会見

岩屋外務大臣臨時会見記録

(令和6年11月16日(土曜日)15時15分 於:キーウ(ウクライナ))

冒頭発言

 11月19日にロシアのウクライナ侵略から1,000日を迎えるにあたり、現場を自分の目で見るとともに、ウクライナ要人から直接お話を聞くべきだという考え方で今回の訪問を決断しました。
 先ほど午後1時45分頃から約50分間、ゼレンスキー大統領への表敬を行いました。私からは、ロシアによる侵略に立ち向かうゼレンスキー大統領のリーダーシップとウクライナの人々の勇気と忍耐強さに改めて敬意を表したところでございます。「日本はウクライナと共にある」この我が国の変わらぬ姿勢・立場についてお伝えをさせていただきました。

 あわせてゼレンスキー大統領が推進をする「平和フォーミュラ」について意見交換を行いました。また、大統領からは「勝利計画」についてもご説明があったところでございます。その詳細については控えたいと思いますけれども、私からご説明への謝意を伝達するとともに、同計画が掲げる、公正かつ永続的な平和の一日も早い実現を我が国として支持している、今後もしっかり協力していくということを述べたところであります。その上で、引き続いて幅広い分野においてウクライナ側と連携していきたいと思っており、ゼレンスキー大統領との間でもそのこと確認をさせていただきました。

 また、北朝鮮によるロシアへの兵士派遣を含む露朝間の軍事協力の進展につきましても、ゼレンスキー大統領との間で意見交換を行いました。私からは、北朝鮮による派兵を深刻に憂慮しているということを申し述べた上で、本件について両国間で情報共有及び連携を強化するということを確認をさせていただきました。

 これに関連しまして、本日、日・ウクライナ間の情報共有の制度的基盤となる情報保護協定の署名式を行う予定でございます。本協定が二国間関係及び安全保障上の協力の更なる強化につながることを期待をしております。

 この後も、シュミハリ首相への表敬、スヴィリデンコ・ウクライナ第一副首相兼経済相をはじめとしたウクライナにおける地雷対策関係者との意見交換を予定しています。

 私からは冒頭以上です。

質疑応答

(記者)北朝鮮のロシアへの派兵や交戦について、会談ではどのような事実関係の説明があり、ウクライナ側からはどのような懸念が伝えられましたか。また、二国間で情報共有及び連携を強化すると言われましたが、具体的にどういった協力を想定しているのでしょうか。

(大臣)ゼレンスキー大統領への表敬、また、シビハ外相との会談におきまして、私から、北朝鮮によるロシアへの兵士派遣、侵略への直接の参画の動きについて極めて深刻に捉えておりこれを憂慮している旨申し上げたところであります。
 ゼレンスキー大統領、シビハ外相からは、現在の戦況との関係を含め、説明がありましたが、詳細は事柄の性質上控えさせていただきたいと思います。双方とも、本件について、極めて深刻であるとの認識を共有したところであります。その上で、今後とも緊密な情報共有を含め、連携を強化していくことで一致をいたしました。
 最近の露朝軍事協力の進展の動きは、ウクライナ情勢の更なる悪化を招くのみならず、我が国を取り巻く地域の安全保障に与える影響も極めて大きい、これを深刻に憂慮いたしております。この問題が、インド太平洋と欧州大西洋の安全保障は不可分だというふうにいつも申し上げてきましたが、まさにこれを示すような事態になっていると認識をしております。会談では、このような認識についても強調した上で、ウクライナ側とも認識を共有させました。その上で、両国の安全保障環境については、先ほど冒頭に申し上げましたとおり、外交防衛両当局者による二国間ハイレベル安全保障政策対話を実施することに合意をみたところでございます。インド太平洋の安全保障環境についても色々やりとりをいたしましたけれども、外交上のやりとりであり、その詳細は差し控えたいと思います。
 いずれにいたしましても、露朝協力が進展しているこのタイミングで、ゼレンスキー大統領や外務大臣と直接頭を合わせて、突っ込んだ議論ができたことは非常に有意義であったと思います。

(記者)トランプ米次期大統領が交渉によって、停戦を進めると、更にウクライナへの軍事支援の継続に消極的だというような指摘もございます。その中で先ほど大臣にご紹介いただいたように「勝利計画」が掲げることへの我が国としての支持を表明したというお話でしたが、米国の政権が変わるような中でウクライナにとって米国の同盟国である日本に果たして欲しい役割はどういう期待があるか、また、大臣ご自身が日本政府としてこの先どういった役割・義務を果たすべきだと考えますか。

(大臣)会談の中では、当然、米国をはじめとする第三国との連携についても率直な意見交換を行いました。ウクライナ側の考えについては、これを対外的に明らかにすることは適切ではないと思いますので控えさせていただきたいと思いますが、我が国としては、米国のトランプ次期政権との間で様々な政策課題について緊密に意思疎通を行っていくことは重要であると考えております。本日の一連の会談につきましても、そうした我が国の基本的考え方をウクライナ側に伝達しつつ、率直な意見交換を行ったところです。その上で、日・ウクライナ間では、ゼレンスキー大統領から、「平和フォーミュラ」及び「勝利計画」について説明があり、我が国の協力への期待が示されました。私からは、同計画が掲げる、ウクライナの公正かつ永続的な平和の一日も早い実現を日本としても支持しており、今後もしっかり協力していきたい旨を申し上げたところであります。
 このほか、復旧・復興分野では、これから厳しい冬を迎えるウクライナのエネルギー事情を支えるべく電力関連機材を供与する予定であり、また、地雷対策の支援についても継続していく旨説明をいたしました。ウクライナ側から、深い謝意が述べられたところです。
 今後とも「日本はウクライナと共にある」という姿勢をしっかりと堅持して参りたいと思います。

(記者)このタイミングでウクライナを訪問した意義と、今、米国と緊密に意思疎通を行うことが重要とのお話がありましたが、一方でウクライナ情勢についてはG7をはじめ欧州とも意思疎通をしつつ進めてきた経緯があります。月末G7外相会合が予定されています。また、トランプ次期大統領という不確定要素が出てきた中で、ウクライナ情勢をめぐる議論の中で、日本としてどのように存在感を示していきたいからお考えをお聞かせください。

(大臣)冒頭に申し上げましたとおり、現下の国際情勢を考えたときにウクライナ情勢は最も重要な課題の一つだと考えて参りました。従って、できるだけ早く自分の目で現場を見たいと、そして現地の方々から直接お話を聞きたいという思いいで、今回、外務大臣としての初めての外国訪問となりましたけれども、その一環として、ウクライナを訪問するにさせていただいたところです。ブチャに行って本当に凄惨な当時の状況についてご説明をお伺いしましたし、また、侵略の生々しい傷跡を直接目にいたしました。衝撃を受けたところでございます。このような力による一方的な現状変更というのはどこであっても許されてはならないという思いが改めて強くなった次第でございます。
 また、北朝鮮による侵略への参画の問題、ゼレンスキー大統領が掲げる「勝利計画」についてのやりとり、このような重要な事柄についてウクライナ側とやりとりできたことは大変意義のあることだと思っております。
 今般の訪問を通じて、平和の早期実現、その後の復旧・復興に向けて日本が果たすべき役割は極めて大きいと、また、ウクライナ側からの期待も大きいということを実感したところでございます。
 今回の訪問を踏まえ、来るG7外相会合を始めとする今後の重要な国際場裏、国際会議の場においての議論に今回の自分の経験を踏まえて望んで参りたいと思います。
 いずれにしても、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和を一日も早く実現すべく、我が国としてなし得ることをしっかりとやっていきたいと思います。

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