記者会見

上川外務大臣会見記録

(令和6年8月8日(木曜日)17時13分 於:本省会見室)

上川外務大臣会見の様子

冒頭発言

(1)上川大臣のインド訪問

【上川外務大臣】私(上川大臣)から5件ございます。まず、1件目。
 諸般の事情が許せば、8月19日から21日まで、私(上川大臣)は、日印外務・防衛閣僚会合、「2+2」に出席するため、インドを訪問します。
 また、私(上川大臣)が外務大臣に就任して以来、初めてのインド訪問となります。先月末の日米豪印外相会合や、日印外相会談でのやり取りを踏まえ、今回の訪問では、ジャイシャンカル外相との間で、戦略対話も行い、議論を更に深掘りしていきたいと考えます。
 今回の日印「2+2」では、特に次の2点について焦点を当てて臨みます。
 第一に、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた協力の深化です。日印両国による法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化へのコミットメントをしっかりと示す考えです。
 第二に、防衛装備・技術協力の進捗や共同訓練の実施など、二国間の安全保障・防衛協力の具体的な方向性の確認です。
 ジャイシャンカル外相との会談では、「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の更なる深化に向けて意見交換します。
 また、インド国内だけではなく、アフリカなどの第三国市場をも念頭に置いた拠点と位置付ける日本企業も少なくありません。こうした動きを後押しすべく、在インド日本大使館に経済広域担当官を指名しています。
 今回の訪問の機会に、日本企業の方々から、現地の課題等について直接お話を伺い、日本企業支援強化に生かしていきたいと思います。

(2)TICAD閣僚会合の開催

【上川外務大臣】続いて2件目です。
 来年8月に、横浜で開催予定の第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の準備会合として、8月24日及び25日に、東京でTICAD閣僚会合を開催します。
 今回の閣僚会合は、来年のTICAD9に向け、アフリカ諸国の閣僚が一堂に会し、アフリカの経済成長及び平和と安定を実現する方策を含む、各国・地域の課題や取組につき、意見交換を行う重要なプロセスになります。
 連結性や、女性・平和・安全保障(WPS)等を分野横断的なアプローチとして重視しながら、社会、平和と安定、経済の各分野で、アフリカが直面する課題への革新的解決策を共に創り上げ、国際社会を協調に導くべく、アフリカ諸国との更なる連携強化を目指します。
 本年4月の私(上川大臣)自身のアフリカ訪問、そして、アウトリーチ型の外交として取り組んできたアフリカ各地域の在京外交団との意見交換の際に頂いた意見や示唆を踏まえながら、TICAD閣僚会合に向けた準備を加速させてまいります。

(3)「中央アジア+日本」対話・20周年記念イラストの発表

【上川外務大臣】3点目であります。
 2004年(に、日本が他国に先駆けて立ち上げた「中央アジア+日本」対話は、本年の20周年の節目を迎えます。そして、明日9日、岸田総理は、カザフスタンにおいて、初となる首脳会合に出席し、これまで築いてきた中央アジア5か国とのパートナーシップ及び互恵的協力を更に進化させる考えです。
 「中央アジア+日本」対話については、これまで、中央アジアを舞台にした漫画『乙嫁語り(おとよめがたり)』の作者・森薫(もりかおる)さんにイラストを提供いただき、外務省の対外広報に積極的に活用してまいりました。そして、今回、対話20周年を記念して、森薫さんに新たなイラストを作成いただきました。
 こちらです。
 このキャラクターは、それぞれ日本と中央アジア5か国の国旗をイメージしてデザインされています。中央アジア5か国の連携・発展に向けて、日本が触媒となり、共に歩んでいくという「中央アジア+日本」対話の理念を表しています。
 外務省として、これまで使用してきたイラストをベースに、今回の20周年を記念して作成いただいた新たなイラストも活用し、「中央アジア+日本」対話をより一層盛り上げていく考えです。
 本日の会見終了後、外務省ホームページやSNSでも発表しますので、ぜひ細部にわたる描き込みをじっくりご覧いただければと思います。

(4)「パスポくん」と上川大臣の共演動画

【上川外務大臣】4件目です。
 夏休みに海外旅行へ行かれる方も多くいらっしゃると思います。また、出張などで海外に行かれる方も増えています。このため外務省では、海外で、事件・事故等に巻き込まれないための安全対策の呼びかけを強化しています。
 今週月曜日から、私(上川大臣)自身が、パスポート・キャラクターの「パスポくん」と共演して、「たびレジ」の登録とパスポートの紛失防止を呼びかける動画を、外務省公式SNSで公開していますので、ぜひご覧ください。

(5)外務省幹部人事

【上川外務大臣】私(上川大臣)から5件目であります。
 今朝の閣議で、外務省の幹部人事が承認されました。8月20日付けで発令する予定です。
 欧州局長に北川克郎(きたがわ・かつろう)軍縮不拡散・科学部長。その後任には、中村仁威(なかむら・きみたけ)軍縮不拡散・科学部審議官兼欧州局審議官を昇任させます。
 また、国際法局長に、金井正彰(かない・まさあき)国際文化交流審議官、その後任には、岡野結城子(おかの・ゆきこ)国際協力局審議官を昇任させます。
 中込正志(なかごめ・まさし)欧州局長及び御巫智洋(みかなぎ・ともひろ)国際法局長は大臣官房付となります。
 引き続き、新たな体制のもと、外務省一丸となって、多岐にわたる外交課題に全力を尽くしていく所存でございます。
 私(上川大臣)からは、以上です。

長崎平和祈念式典(G7各国大使の欠席)

【日本テレビ 鈴木記者】9日に開かれる長崎の平和式典について、3点お伺いします。まず、イスラエルの駐日大使が招待されていないことを理由に、G7各国の駐日大使らが欠席の意向を明らかにしていますが、この点について、外務省の受け止めを伺います。
 また、G7各国大使らは欠席の理由について、「自衛権を行使するイスラエルが、主権国家を侵略するロシアと同列の扱いをされていることは誤解を招く」などとしていますが、外務省として、この見解をどう捉えているのか、賛同できるのかどうかお尋ねします。
 最後に、被爆者らからは、特に米国大使が欠席を表明していることについて「残念だ」などの声が上がっていますが、上川大臣は、9日の被爆者団体との面会には、どのような姿勢で臨まれますでしょうか。よろしくお願いします。

【上川外務大臣】エマニュエル駐日米国大使やロングボトム駐日英国大使等が、長崎平和祈念式典へのイスラエルの招待が見合わされたことを理由に、同式典を欠席する意向を表明したことは承知しております。
 本件式典は、長崎市主催の行事であり、各国外交団からの出席者については、政府としてコメントする立場にはございません。
 その上で、常に申し上げているところでございますが、被爆の実相の正確な理解を世代と国境を越えて促進していくことは、平和の実現を目指す我々が優先的に取り組むべき課題であると認識しており、明日予定されている被爆者団体との面会におきましても、その決意を、被爆者の皆様に改めてお伝えしたい考えでございます。

長崎平和祈念式典(招待国)

【共同通信 西山記者】関連してお伺いします。被爆者の一部、広島、長崎ともに、「ロシアやベラルーシも招待した方がいいんじゃないか」というような意見があるようですが、その是非について、外務省の見解を伺います。よろしくお願いします。

【上川外務大臣】長崎平和祈念式典に、どなたを御招待するかにつきましては、主催者であります長崎市におきまして、判断されることでございます。政府としてコメントする立場にはないということでございます。

長崎平和祈念式典(招待国)

【NHK 五十嵐記者】同じく長崎市の平和祈念式典の関連で伺います。今回の式典の招待者についてなんですが、外務省として、長崎市とは事前に調整していたのでしょうか。また、広島市は、イスラエルを招待し、長崎市は、招待しませんでした。こうした自治体によって対応が分かれたことについて、大臣は、どのようにお考えか伺います。最後に、今後、中東情勢の対応などで、G7での結束が揺らぐのではないかとの指摘もありますが、影響について、どうお考えか、併せて伺います。

【上川外務大臣】平素より、長崎市との間におきまして、事務的なやり取りを行っております。本件についても、外務省から、国際情勢などを含めまして、説明を行ってきたところでございます。いずれにせよ、長崎平和祈念式典に誰を招待するかは、まさに、主催者であります長崎市において判断されたものでございます。
 我が国政府としては、他のG7メンバーと、国際社会が直面するあらゆる諸課題について、常に緊密に連携をし、共同して対応を主導してきており、長崎市主催の行事である本件をめぐって、G7に亀裂が生じるとのご懸念には及ばないものと考えております。

長崎平和祈念式典(外務省の対応)

【朝日新聞 高橋記者】長崎の式典の関連でお伺いします。長崎市側に対して、日本を除くG7の各国が、事前に書簡を送っていたと。書簡の内容としては、イスラエルが不招待のままであるならば、自国の高官を送るのは難しいといった内容だったということですが、これについては、外務省として、把握していらっしゃったのか、また、書簡の中で、各国は、そのイスラエルを招待するようにということを市側に求めたということですけれども、各国が、こうした方針の転換を市に求めたことについての評価もお聞かせください。お願いいたします。

【上川外務大臣】平素より、長崎市との間におきましては、事務的なやり取りを行っておりまして、本件につきましても、外務省から、国際情勢などを含めまして、説明を行ってきたところでございます。
 御指摘の書簡が送付されたことは認識しておりますが、この書簡は、日本を除くG7諸国の駐日大使から、長崎市長宛に送付されたものでございまして、政府として、これ以上コメントする立場にはございません。もう1点。

【朝日新聞 高橋記者】G7の各国が市に対して、イスラエルを招待するようにという方針転換と言いますか、招待して欲しいという考えを伝えたことについては、どうお考えなのでしょうか。

【上川外務大臣】本件式典は、あくまで長崎市主催の行事でございまして、各国の外交団の出席者に係る調整につきましては、長崎市と各外交団との間で行われているものと認識しております。
 その上で、平素より各国外交団や長崎市側とは、本件も含めまして、事務的なやり取りを行ってきているところでございますが、それ以上の詳細につきましては、差し控えさせていただきたいと思います。

長崎平和祈念式典(核廃絶に向けた努力への影響)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 広島及び長崎の事項に関し、大臣は、その招待は、日本政府ではなく、それぞれの市において判断されたものとおっしゃいましたね。しかし、今、日本政府は、国際刑事裁判所(ICC)から大量虐殺の嫌疑をかけられているイスラエルを支援しているG6諸国を懸念しているのでしょうか。広島や長崎で起こったような大量虐殺です。広島と長崎の平和式典を政治化することで、この二つの都市の遺産が損なわれることを懸念しているのですか。数十年にわたる核兵器廃絶に向けた努力と推進にもダメージを与えることになるのではありませんか。

【上川外務大臣】広島、また、長崎におきます、平和記念式典でありますが、それぞれ、広島市、そして、長崎市によって主催されている行事でございまして、政府としてコメントする立場にはございません。
 その上で、一般論として申し上げれば、来年で被爆から80年を迎えます。被爆者の方々の平均年齢は、85歳を超える中で、被爆の実相を、次の世代にいかにして伝えていくかにつきましては、平和の実現を目指す我々が、優先的に取り組むべき課題であると認識しております。
 引き続き、唯一の戦争被爆国として、被爆地への訪問を始めとし、被爆の実相の正確な理解を世代と国境を越えて促進していく考えです。

中東情勢(イランのイスラエルへの報復に関する考え)

【時事通信 村上記者】中東情勢についてお伺いします。イランの国営メディアによりますと、イランのバゲリ・イラン外相代行は、イスラム協力機構の緊急会合、昨日行われたものですね。ハマス最高指導者のハニーヤ氏が、テヘランで殺害されたことを受けて、「侵略に対する正当な権利行使以外に選択肢はない」と主張し、「適切な時期に釣り合いのとれた方法で行動する」と、改めてイスラエルに報復する考えを示しました。政府として、イランの自衛権についてどのようにお考えか、ご認識をお伺いします。また、報復による情勢の緊迫化について、大臣のご認識についても、併せてお伺いします。

【上川外務大臣】御指摘のバーゲリキャニ・イラン外相代行の発言につきましては承知しております。
 我が国として、現在の中東情勢について重大な関心と懸念を持って注視しておりますが、事実関係の詳細を十分に把握することが困難である中で、確定的な評価を行うことにつきましては、控えさせていただきたいと思います。
 いずれにいたしましても、攻撃の応酬、これを回避し、事態を沈静化させることが重要でございます。我が国として、引き続き、事態の更なる悪化・エスカレーション、これを防ぐため、各国とも緊密に連携しながら、外交努力を尽くしてまいりたいと考えております。また、在留邦人の安全確保、これに万全を期していきたいと考えております。

ロシアにおける遺骨収集

【北海道新聞 今井記者】シベリア抑留の関係でお伺いします。このロシアによるウクライナ侵攻以降、ロシアでの抑留者の遺骨収集が中断し、抑留者名簿などの資料収集の活動も、現在、先細っています。かつては、日露間で、抑留の問題解決に向けた政府間協議というのも行われておりました。抑留の実態解明、遺骨収集の再開に向けて、日本は現在、ロシアに対して、どのような外交上の働きかけを行っているのかどうか、やっているかどうかも教えてください。

【上川外務大臣】ロシアにおける遺骨収集につきましては、その実施が可能になった際に、迅速かつ円滑に再開できるよう、厚生労働省と連携しつつ、外務省としても、しっかりと取り組んでおります。
 具体的には、厚労省と連携しつつ、遺骨収集事業の再開、及び抑留中死亡者に係る資料提供を、引き続き、ロシア側に求めております。
 外務省として、引き続き、遺骨収集事業につきまして、適切に対応してまいりたいと考えております。

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