記者会見

上川外務大臣会見記録

(令和6年8月2日(金曜日)16時50分 於:本省会見室)

上川外務大臣会見の様子

冒頭発言

(1)「中央アジア+日本」対話・首脳会合の開催

【上川外務大臣】私(上川大臣)から2件です。

 まず、1件目であります。
 諸般の事情が許せば、今月、岸田総理は、カザフスタンを訪問し、「中央アジア+日本」対話・首脳会合を開催する予定であります。ロシアによるウクライナ侵略により、中央アジア諸国が様々な影響を受ける中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化していくためにも、中央アジア諸国との協力、そして、連携は、これまで以上に重要になっています。
 こうした首脳外交を支えるべく、私(上川大臣)自身、「アウトリーチ型外交」を推進し、先日も、中央アジア5か国の駐日大使と意見交換を行ったところです。そして、この度、中央アジア市場を念頭に置いた日本企業支援の一環として、在英国日本国大使館、在トルコ日本国大使館、在イスタンブール日本国総領事館、在ドバイ日本国総領事館の3か国4公館において、新たに経済広域担当官を指名することといたしました。
 中央アジアは、中国・ロシア及びイラン・アフガニスタンに囲まれ、地政学的に重要な地域であるとともに、豊富なエネルギー・鉱物資源を有し、高い成長と人口増を続ける魅力的な市場でもあります。中央アジアの自立的かつ持続可能な発展の実現を後押しするためにも、日本企業が同地域で果たす役割は大きいものと考えております。
 中央アジア地域の成長と活力を日本経済に取り組んでいくため、日本企業のニーズも踏まえ、これらの経済広域担当官は、第三国市場連携の促進による日本企業支援を積極的に進めていきます。
 経済広域担当官については、今後も対象地域を順次拡大をし、年内にはグローバル・サウスをカバーする体制を構築する予定であります。より多くの企業の皆様に、経済広域担当官による支援を御活用いただければと思っております。
 また、今般、「中央アジア+日本」対話・首脳会合の開催に合わせ、日本と中央アジアのこれまでの歩みに焦点を当てた政策広報動画を作成いたしました。
 本日の会見終了後、外務省ホームページやYouTubeなどの各種媒体で公表予定であるところ、是非多くの国民の皆様にご覧いただければと思います。

(2)東部アフリカ10か国の駐日外交団による大臣表敬(アウトリーチ型外交)

 【上川外務大臣】続いて2件目です。
 国内で取り組むアウトリーチ型の外交活動の一環として、昨日、私(上川大臣)は、東部アフリカ10か国の外交団による表敬を受けました。
 高い経済的ポテンシャルを有し、日本企業からも注目されている東部アフリカ地域諸国の大使等と、二国間・国際場裡のそれぞれにおいて、緊密に連携していくことを確認することができました。
 今月24日及び25日には、TICAD閣僚会合を東京で開催いたします。昨日の有意義な意見交換も踏まえて、TICAD閣僚会合に向けた準備を、しっかりと進めてまいりたいと考えております。
 私(上川大臣)からは、以上です。

日・中央アジア関係

【読売新聞 上村記者】中央アジアについてお伺いします。中央アジアをめぐっては、一昨年のG7広島サミットの際に、中国が、この広島サミットと重なる日程で、中央アジア諸国との首脳会議を西安で開催するなど、自らの陣営に引き込もうとする動きも見られます。こうした動きに、外務省としては、どのように対応して、中央アジア諸国との関係をどのように築きたいか、お考えをお聞かせください。

【上川外務大臣】我が国は、2004年(平成16年)に、他国に先駆けて「中央アジア+日本」対話、これを立ち上げまして、友好、相互信頼に基づくパートナーシップ、及び互恵的協力を深化させてまいりました。
 この間、中央アジアは着実な経済発展を遂げております。そして、今や、高い成長と人口増を続ける魅力的な市場として、その重要性もますます高まっているものと認識しております。同時に、中央アジアを取り巻く国際的な環境が、急激に変化していく中にありまして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化のためにも、中央アジア諸国との協力と連携は、これまで以上に重要となっているものと考えております。
 こうした中、諸般の事情が許せば、今月、岸田総理がカザフスタンを訪問し、初となる「中央アジア+日本」対話の首脳会合、これを開催する予定であります。こうした首脳会議を支えるべく、私(上川大臣)自身、先ほど申し上げた「アウトリーチ型の外交」を推進し、先日も、中央アジア5か国の駐日大使と、意見交換を行ったところでございます。
 我が国といたしましては、今回の首脳会合の機会、これを捉えまして、中央アジアの自律的かつ持続可能な発展に向けまして、一層の関係強化を図ってまいりたいと考えております。

日中外相会談における上川大臣の発言

【時事通信 村上記者】日中関係についてお伺いします。先月26日に、ラオスで行われた日中首脳会談で、中国外務省は、上川大臣が台湾について、「日本側が『一つの中国』を堅持する立場は何も変わっていない」、また、半導体関連の対中輸出規制について、「中国側と建設的なコミュニケーションを維持し、適切に処理する」と述べられたと発表しています。上川大臣は、会談の場で、こうした発言をされたのか、事実関係についてお伺いします。また、日本外務省が、中国側の発表に対し、申入れをしたとの一部報道がありますが、日本政府としての対応についてもお伺いします。よろしくお願いします。

【上川外務大臣】台湾につきましては、台湾海峡の平和と安定は、我が国を含めた国際社会にとって重要であるというのが、我が国の基本的な考えでありまして、7月26日にラオスで行われました日中外相会談におきましては、私(上川大臣)は、この考えに基づいてやり取りをいたしました。
 このやり取りの中で、私(上川大臣)から、台湾については、「我が国の台湾に関する立場は、1972年(昭和47年)の日中共同声明にあるとおりであり、この立場に変更はない」という、我が国の従来からの一貫した立場を述べたところでございます。
 また、半導体輸出管理につきましては、我が国としては、国際的な平和及び安全の維持の観点から、輸出管理を実施してきており、こうした考えに基づいてやり取りを行ったところであります。
 そのやり取りの中で、先方からの提起に対して、私(上川大臣)からは、我が国の措置は、特定の国を念頭に置くものではなく、今後も当局間で緊密に意思疎通が行われることを期待する旨述べたところでございます。
 事後の対外発表でありますが、日中それぞれが行ったものであります。中国側の発表は、日本側の発言を必ずしも正確に示すものではなく、中国側に対しては、日本側の立場を、申入れをいたしました。

北方領土の元島民による墓参

【NHK 五十嵐記者】北方領土の元島民による墓参の関連で伺います。ロシアを訪問した鈴木宗男議員に対して、ロシア側が、墓参の根拠となる1986年(昭和61年)の合意が無効になっているとの見解を示したと、一部で報じられています。外務省として、墓参の枠組みについて、維持されていると確認は取れているのかどうか、今後の方針と併せて伺います。また、確認が取れている場合、鈴木議員の訪問の後に取ったのかどうか、確認の時期も伺います。

【上川外務大臣】政府として、この北方墓参の再開を、日露関係の最優先事項の一つと位置づけておりまして、ハイレベルも含め、様々なレベルで、ロシア側への働きかけを続けてきております。
 こうしたやり取りにおきまして、北方墓参の枠組みは維持されており、破棄されていないことは、ロシア側から確認が取れており、鈴木議員のロシア訪問の後も、北方墓参に関する、こうしたロシア側の立場に変更がないことを確認しております。しかしながら、現時点では、ロシア側から北方墓参の再開に向けた肯定的な反応は得られておりません。
 政府としては、御高齢となられました元島民の皆様方の、切実なるお気持ちに何とかお応えしたいと、こういう思いを強く持っておりまして、ロシア側に対しまして、今は特に、北方墓参に重点を置いて、事業の再開を、引き続き、強く求めてまいりたいと思っております。

中東情勢(情勢の一層の緊迫化への対応)

【共同通信 日出間記者】中東情勢についてお伺いします。先月末に、イランの首都テヘランで、イスラム組織ハマスの最高幹部が暗殺されました。イラン政府は、この攻撃をイスラエルのものと断定し、報復を示唆しております。また、その直前には、レバノンの首都ベイルートで、イスラム教のシーア派組織のヒズボラの司令官が、イスラエルの空爆によって死亡しました。これは、これまで大臣を始め、日本政府は、防ごうと訴えてきた中東での戦闘の拡大と、また地域への飛び火、これが現実のものとなっている現状を、どのように受け止めておられるか、また、今後の対応方針、併せてお伺いいたします。

【上川外務大臣】我が国として、現地の情勢につきましては重大な関心と懸念を持って注視しております。
  重要なことは、攻撃の応酬を回避し、事態を沈静化させることでありまして、我が国としても、事態の更なる悪化・エスカレーション、これを防ぐため、関係者に働きかけを行ってきております。引き続き、各国とも緊密に連携しながら、外交努力を尽くしてまいりたいと考えております。
  また、現時点までに、邦人の生命、身体に影響被害が及んでいる、そうした情報には接してはおりませんが、一連の情勢を受けまして、邦人保護について高い緊張感を持って対応しております。政府として、7月30日にレバノン及びイスラエルにおいて、スポット情報を発出し、渡航の中止や早期の出国を呼びかけたことに加え、同31日には、中東地域に広域情報を発出するなど、累次にわたりまして注意喚起を行っております、引き続き、在留邦人の安全に万全を期してまいりたいと考えております。

日中関係(尖閣諸島)

【フリー・ジャーナリスト 西中氏】7月28日の日米安全保障協議委員会「2+2」と、それと拡大抑止に関する日米閣僚会議の共同発表に関連して、何点か質問させていただきます。まず、一つなんですが「2+2」の共同発表では、中国の外交政策が、他者を犠牲にし、自らの利益のために国際秩序を作り変えようとしている、その事例として、尖閣諸島など東シナ海での中国の動きについて取り上げています。しかし、今、様々な経緯で、2012年に、日本政府が尖閣諸島を国有化した際には、台湾の代表部も中華民国の立場として、台日間の長きにわたる協力関係を損なうもので、東アジア地域の緊張関係を激化させ、我が国国民の日本に対する友好の感情を傷つけるとして、日本政府に国有化の撤回を求めました。それで、その後、中台関係の米中関係が厳しくなって、中国の海洋進出も拡大して、日米両政府が、台湾有事を想定した上で、沖縄南西諸島を中心に、防衛軍事力の増強も進めてきたのですが、国有化から、その10年が経過して、外務省として、東シナ海域での、中国、台湾、米国の緊張緩和のために、沖縄県や鹿児島県などとも協議して、どのような外交努力をされてきたのでしょうか。特に、今回の日米「2+2」会合に先立って、米国政府に対して、日本政府の12年間の外交努力について、どのような説明をされたのか、そのポイントについて、お願いいたします。それが1点目です。

【上川外務大臣】尖閣諸島でありますが、これは歴史的にも国際法上も、疑いのない我が国固有の領土であり、現に我が国は、これを有効に支配しております。したがいまして、尖閣諸島をめぐります解決すべき領有権の問題は、そもそも存在をしないというものであります。
 2008年12月に、尖閣諸島周辺海域におきまして、中国政府所属船舶によります、尖閣諸島周辺海域における領海侵入事案が初めて発生をいたしまして、2012年9月以降、同海域におきまして、中国海警局に所属する船舶による、領海侵入が相次いでいる状況であります。
  中国海警局に所属する船舶が、累次にわたりまして、尖閣諸島周辺の我が国の領海に侵入し、日本漁船に近づこうとする動きを見せていることは、断じて容認できません。中国に対しましては、現場海域における対応に加えまして、外交ルートを通じて厳重に抗議してきているところであります。
  我が国は、これまでも、首脳、外相レベルといった各種会談におきまして、尖閣諸島をめぐる情勢を含みます東シナ海情勢について、深刻な懸念を改めて表明をし、中国側の対応を強く求めてきているところであります。7月26日のラオスにおきます日中外相会談の際にも、私(上川大臣)から王毅(おう・き)外交部長に対しまして、直接中国側の対応を強く求めたところであります。
  さらに、同盟国であります米国を中心とした国際社会での取組も進めてきております。例えば、7月28日の日米「2+2」におきまして、日米双方は、尖閣諸島に対する日本の長きにわたり、かつ、平穏な施政を損なおうとする行為を通じたものを含みます、中国による東シナ海における、力、又は、威圧による一方的な現状変更の試みが強まっていることや、また、南西諸島周辺でのエスカレートする行動に対しまして、強い反対の意を改めて表明するとともに、米国は、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることは、改めて確認をしたところであります。
  政府としては、引き続き、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くとの決意の下、主張すべきは主張しつつ、今後とも、冷静かつ毅然と対応してまいります。

日米「2+2」(抑止力・対処力)

【フリー・ジャーナリスト 西中氏】それから、もう一問お願いいたします。核抑止力拡大に関する日米の閣僚会議も同時に行われましたが、現在、ジュネーブで、核不拡散条約の再検討会議の準備委員会が開催されています。それに向けて、7月9日だったと思うんですが、核兵器廃絶日本NGO連絡会が、外務省と意見交換を行って、上川大臣と岸田首相に要請書を提出されました。それで、今回の拡大抑止に関する日米閣僚会議では、核抑止の強化というのが強調されて、核不拡散や核廃絶に関するメッセージが弱かったと思うんですが、それはなぜなのか。この共同声明、拡大抑止もそうですし、それから「2+2」の共同声明においても、一昨年12月に、閣議決定された安保関連三文書の改定と、それと今年4月の岸田首相の訪米を前提にした内容で、米国側が、日本政府のこの間の対応を評価するといったような色彩が強かったと思うんです。それで、日本政府のイニシアティブというのが、あまり感じられなかったのですけれども、その「2+2」において、外務省の果たす役割は、どうだったのか。特に、核抑止力の問題というのは、日本政府にとって極めて大事な問題だと思いますので、この対応について、この2点についてお願いいたします。

【上川外務大臣】日米「2+2」は、安全保障分野におきます日米協力に関わる様々な問題を検討するための重要な協議体であります。その上で、我が国の外交・安全保障上の政策につきましては、当然ながら、我が国の憲法・国内法令等にのっとって、かつ、我が国の国益に基づき判断していくものでございます。
  また、日米「2+2」での議論は、対外的にも公表できるものについては公表した上で、これまでも国会等におきまして、議論をいただいているところでもございます。
  その上で、この今回の日米「2+2」でありますが、ここにおきましては、米国は、平時及び緊急事態における相互運用性、及び日米間の共同活動に係る協力の深化、これを促進するため、現在の在日米軍をインド太平洋軍司令官隷下の統合軍司令部へと段階的に再構成する意図を表明をいたしました。その際、再構成された在日米軍は、その能力及び日本側の統合司令部との運用面での協力を強化することとしているものでございます。
  在日米軍の再構成の日米協力に係る細部につきましては、今後、日米の作業部会におきまして議論がなされていくことになります。
  いずれにいたしましても、今後とも、外務大臣として、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化に向けて取り組んでまいりたいと考えております。同時に、そうした取組につきましては、国民の皆様に、引き続き、丁寧な説明を行っていく考えであることに変わりはございません。

【フリー・ジャーナリスト 西中氏】核抑止力についてはいかがでしょうか。

【上川外務大臣】今申し上げたとおりでございます。

記者会見へ戻る