記者会見
上川外務大臣会見記録
(令和6年7月12日(金曜日)16時48分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)G7貿易大臣会合出席、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ訪問
【上川外務大臣】私(上川大臣)から2件ございます。
まず、1件目であります。
7月の15日から21日まで、私(上川大臣)は、イタリア共和国、セルビア共和国、ボスニア・ヘルツェゴビナ及びコソボ共和国を訪問をします。
イタリア共和国では、7月16日及び17日に開催されるG7貿易大臣会合に出席します。
昨年10月、私(上川大臣)は議長として、大阪・堺でG7貿易大臣会合を主催しました。今回の会合はイタリアの下で、その議論を引き継ぐものであります。また、6月のG7プーリア・サミットにおける首脳間の議論も踏まえ、更に議論を深めるものであります。
具体的には、今次会合におきましては、自由で公正な国際秩序の維持・強化、公平な競争条件の確保、サプライチェーンの強靱化、経済的威圧への対応などにつきまして、議論を行う予定であります。
現在、国際社会は、ウクライナや、また、中東情勢、気候変動等、山積する課題に直面しており、G7が、他のパートナーとも連携して、世界経済の持続的な成長のため、主導的な役割と責任を果たす重要性は一層増しております。
私(上川大臣)自身、昨年の議長として、積極的に参加してまいります。
西バルカン3か国への訪問では、1991年の旧ユーゴスラビア解体後、激しい民族間対立を経て、平和と安定に向けた取組を進める各国の政府要人等と会談を行います。
日本は、2018年(平成30年)、この地域の平和と安定のために、「西バルカン協力イニシアティブ」を打ち上げました。以来、この地域に、外務大臣が2回訪問するなど、ハイレベルの往来が着実に積み重なっております。また、近年、日本企業は製造業を中心に、現地での存在感を高めつつありますが、経済の安定こそ、地域の平和と安定の礎であります。
このように、6年前の「西バルカン協力イニシアティブ」発表から、着実に強まってきている我が国のこの地域への関与を背景に、今般、これら3か国を訪問いたします。各国との二国間関係を前に進め、日本の地域への変わらぬ関与について意見交換をし、また、女性・平和・安全保障、いわゆるWPSを含みますグローバルな課題における連携強化も、図りたいと考えております。
具体的には、まず、一点目として、近年、日本企業の投資が着実に増加するセルビアにおきましては、経済関係の強化とともに、地域の平和と安定のために、EUが仲介をするセルビア・コソボ間対話を後押しいたします。
第二に、ボスニア・ヘルツェゴビナにおきましては、政府要人との会談に加えまして、紛争の悲惨さと平和の重要性を伝えるスレブニツァ記念ギャラリーを訪問いたします。
三点目でありますが、日本の外務大臣として初の訪問となるコソボにおきましては、本年の外交関係樹立15周年の節目に、二国間関係強化を確認するとともに、セルビアとの対話促進に向けて働きかけを行ってまいります。
ウクライナ、中東を始め、紛争が各地で続く中、悲惨な紛争を経て、平和と安定を目指す西バルカン地域に直接足を運ぶことは、日本政府が国際社会の平和と安定のために、一貫して行ってきております外交努力の延長線上の取組として、非常に重要な機会であります。ぜひ有意義な訪問としたいと考えております。
(2)経済担当外務審議官の交代
【上川外務大臣】2件目であります。
今朝の閣議で、外務省の幹部人事が承認されました。7月19日付で発令する予定であります。
G7やG20サミットのシェルパ等、重責を担う経済担当外務審議官には赤堀毅地球規模課題審議官、その後任には中村和彦国際法局審議官を昇任させます。
歴史的なG7広島サミットをシェルパとして支え、その他、G7やG20を始めとした多岐にわたる分野で活躍した小野啓一経済担当外務審議官は大臣官房付となります。
引き続き、新たな体制の下、外務省一丸となって、多岐にわたる外交課題に全力を尽くしていく所存でございます。
私(上川大臣)からは、以上です。
第10回太平洋・島サミット
【毎日新聞 森口記者】来週開催される太平洋・島サミットについてお伺いします。来週、東京で、太平洋・島サミットが開催されますが、岸田首相が、各国の首脳と会談する予定です。太平洋・島サミットは、約30年続く枠組みであり、歴史的にも長い関係がありますが、一方で、中国や米国など、各国が同地域への関与を強めています。10回目の節目となる今回のサミットで、太平洋島嶼国とどのような関係を築いて、日本との枠組みをどう強化していきたいか、お考えをお聞かせください。
また、ALPS処理水の海洋放出についても議題になる見込みですが、この機会に、どのように理解を得ていきたいか、お考えをお願いします。
【上川外務大臣】日本と、この太平洋島嶼国でありますが、30年近いPALMプロセスを通じまして、共通の課題に取り組んでまいりました。そして、私(上川大臣)が共同議長を務めました2月のPALM中間閣僚会合におきましては、この長年にわたりまして築き上げられてきた「キズナ」に加えまして、共有する価値・原則に基づく信頼関係の強さを確認したところであります。
10回目の節目となる今回のサミットでありますが、こうした中間閣僚会合の成果、これも土台にしつつ、国際社会や地域情勢の変化を踏まえた議論を行い、従来の「キズナ」に加えまして、協力関係を一層強化してまいりたいと考えております。
また、PALM中間閣僚会合におきまして、太平洋島嶼国等の間におきましては、IAEAを原子力安全の権威として位置付けた上で、科学的根拠に基づく対応の重要性で一致をしたところであります。
PALM10の機会におきましても、太平洋島嶼国に対しましては、このIAEAの継続的なこの関与の下で実施されますモニタリング、この結果の提供など、科学に基づく丁寧な説明を積み重ね、安心感を高めてまいりたいと考えております。
開発のための新しい資金動員に関する有識者会議からの提案
【時事通信 村上記者】ODAについてお伺いします。本日、大臣は、ODAの民間資金の動員を議論する有識者会議から、提言書を受け取りました。大臣は、その場で、JICA法改正に踏み込む可能性にも言及されましたが、今回の提言、特に、「サステナブル・ファイナンス」との連携も含めて、どのようにODAの在り方を見直されるのか、方針をお伺いします。よろしくお願いします。
【上川外務大臣】今次の提言におきましては、このODAを触媒として、民間企業等によります投資活動が、途上国の開発へとつながっていくような「エコシステム」、この形成が重要であると、そうした考え方が示されたところであります。
例えば、具体的な方策として、JICAのリスクテイク機能の拡充のために、途上国のプロジェクトに対して保証を提供することや、また、途上国の事業者が発行するグリーン債や、またソーシャル債、これを購入することが、提案をされているところであります。
今次の提言を受けまして、外務省といたしましては、このJICA法改正の可能性を含めまして、ODAの抜本的な見直しに向け、関係省庁とよく連携して検討を重ねてまいりたいと考えております。
自衛隊護衛艦の中国領海での航行
【読売新聞 上村記者】海上自衛隊護衛艦が、中国領海に入った事案についてお伺いします。今月4日に、浙江省沖の中国領海に、海自護衛艦が一時入ったということは承知しております。国連海洋法条約では、軍艦であっても、無害通行を認めているわけですけれども、条約に照らした今回の事案の評価と、あと、中国が一部明らかにしていますが、外交ルートでの、この間のやり取り、意思疎通の状況についてお聞かせください。
【上川外務大臣】防衛省・自衛隊は、平素から、我が国周辺海空域におきまして、警戒監視活動を始めとした様々な活動を行っていると承知しておりますが、お尋ねの内容につきましては、自衛隊の運用に関する事柄であることから、お答えにつきましては、差し控えさせていただきたいと思います。
在沖縄米兵による事件
【共同通信 西山記者】沖縄の米兵の性犯罪について伺います。沖縄での事件を受けて、エマニュエル駐日大使は、日米「2+2」までに改善の取組を公表する、と明らかにしています。他方、沖縄では、7月4日に、22歳の米海兵隊員が、面識のない20代女性の胸を服の上から触った疑いで、現行犯逮捕されるなど、規律の乱れが目立ちます。現状の米軍の再発防止策を伺います。また、エマニュエル大使が言及した犯罪防止策は、これまでの対策とどのように違ったものになるか、外務省が把握しているものについて伺います。よろしくお願いします。
【上川外務大臣】まず、米兵によります性犯罪が相次いでいることにつきましては、極めて深刻に受け止めておりまして、被害に遭われた方を思うと心が痛みます。現在、外務大臣として、女性・平和・安全保障、いわゆるWPSを推進している中におきまして、このような事案が続くことは、個人的にも耐えがたく思っているところであります。
これまでも、外務省として、米側に対しましては、累次働きかけをしてきたところでございます。御指摘の7月4日の事案発生の翌日に、岡野外務次官から、エマニュエル駐日大使に対しまして、改めて、沖縄における米軍関係者の、最近の性犯罪事案での起訴及び逮捕について、強い遺憾の意を表明をし、米側に対し、在日米軍の綱紀粛正と、再発防止のための具体的かつ実効的な措置を講じるよう求めたところであります。
エマニュエル大使は、米軍関係者に対する昨今の容疑につきまして、深刻に懸念していると述べ、地域社会に不安を招いたことについて、深い遺憾の意を表明し、大使の考えとして、米軍の定期的な研修や教育についての改善策を検討しており、日米「2+2」の時までに発表したい考えである旨述べておられます。
また、昨11日、同大使は、ターナー第3海兵遠征軍司令官との連名で寄稿を行い、深い遺憾の意を表明した上で、沖縄に駐留する米兵の訓練と教育を改善するため、教育、監視、ルールの一元化の3分野で、具体的な対策を講じているとしているところであります。
現在、再発防止策につきまして、米側と様々なやり取りを行っております。現時点で、具体的にお答えできる段階にはございませんが、有効な再発防止策を早急にお示しすることができるよう、米側との調整を続けているところであります。
【朝日新聞 松山記者】重ねて米兵事件についてお伺いします。10日の参院外務防衛委員会の理事懇談会では、1997年の日米合意で、沖縄米兵に係る事故の通報手続で定められている米側の通報が、外務省と防衛省、どちらにもなかったことが明らかになりました。通報経路が形骸化しているとも捉えられると思うんですけれども、この通報経路は、本来、どの程度拘束力があるものなのか。あと、米側から通報がなかったことについて、政府は今回抗議をされてないということですが、米側に改善を求められたのか教えてください。あと、これまでの会見では、大臣も含めて、「日米間のやり取りの詳細というのは差し控える」というふうにおっしゃられてきたのですけれども、今回の、この理事懇談会で明らかにされた理由についてもお願いいたします。
【上川外務大臣】まず、この通報経路の拘束力の程度ということでの御質問でございますが、日米の合同委員会の合意は、協議を通じまして、両政府間で一致を見た共通の見解である以上、両政府は、これに沿った実施・運用・解釈を行うことが当然に想定されているものでございます。
その上で、在日米軍によります事件・事故の通報に係る日米合同委員会合意につきましては、事件・事故が発生した際に、日米間で適切に情報共有を行い、結果として、日本側関係当局で迅速な対応を確保し、当該事件・事故が地域社会に及ぼす影響を、最小限のものにすることを目的としたものでございます。
日米間の情報共有がなされた後の日本側内部での通報にあたりましては、このような日米合同委員会合意の目的を踏まえた上で、個別具体的な事案の内容に応じて判断して対応しているところでございます。
その上で、特に今般の事案のように、被害者のプライバシーに関わるような事案につきましては、慎重な対応が求められるものと考えているところであります。
今般の事案について、御質問を重ねてございましたが、外務省が、日本側捜査当局からの情報を踏まえて、日米間で適切にやり取りを行い、日本側関係当局による迅速な対応が確保されていたとの実態を踏まえれば、日米合同委員会合意との関係で、問題があったとは考えておりません。
その上で、外務省が、日本側当局からの情報提供を踏まえて行った日米間でのやり取りの詳細につきましては、外交上のやり取りということで、お答えにつきましては差し控えてきているところでございます。
【テレビ朝日 平井記者】関連して、在沖縄米兵に関連して伺います。米兵による女性への暴行事件などが過去に発生した際は、米国側は、直後に夜間外出禁止令を出すなど強い措置が取られたという事例もあると思います。一方で、今回の事件をめぐる米国側の対応は、現時点公表されているもので、「リバティ制度」を強化するための兵士への連絡や、車で施設を出る運転手の飲酒検査などに、とどまっています。地元自治体の不安を払拭するため、外務省として、より強い姿勢で、米国側に再発防止策を求める必要性については、どのようにお考えでしょうか。
【上川外務大臣】これまでも、外務省として、米側に累次の働きかけを行ってきているところでありますが、7月5日、岡野外務次官からエマニュエル駐日大使に対しまして、改めて、沖縄における米軍関係者の、最近の性犯罪事案での起訴及び逮捕について、強い遺憾の意を表明し、米側に対しまして、在日米軍の綱紀粛正と、再発防止のための、具体的かつ実効的な措置を講じるよう求めたところであります。
エマニュエル大使は、この米軍関係者に対します、昨今の容疑者について、深刻に懸念していると述べ、地域社会に不安を招いたことについて、深い遺憾の意を表明し、大使の考えとして、米軍の定期的な研修や教育についての改善策を検討しており、日米「2+2」の時までに、発表したい考えである旨述べておられます。
また、昨11日、同大使は、ターナー第3海兵遠征軍司令官との連名で寄稿を行いまして、深い遺憾の意を表明した上で、沖縄に駐留する米兵の訓練と教育を改善するため、教育、監視、ルールの一元化の3分野で、具体的な対策を講じているとしているところであります。
現在、再発防止策につきまして、米側と様々なやり取りを行っておりまして、現時点で具体的にお答えできる段階にはございませんが、有効な再発防止策を早急にお示しすることができるよう、米側との調整を続けてまいります。
ミャンマー当局による邦人の起訴
【NHK 五十嵐記者】ミャンマーの邦人拘束の関連で伺います。軍が実権を握るミャンマーで、統制価格よりも高く米を販売したとして、先月拘束された流通大手イオンの子会社の日本人駐在員が起訴されました。現地の日本大使館は、早期の解放を求めていますが、拘束の長期化が懸念されています。受け止めや、政府対応について伺います。
【上川外務大臣】6月30日からミャンマー当局により勾留されている50代の邦人男性が、7月11日に起訴されたと承知しております。
政府としては、現地当局に対しまして、同人の早期釈放を強く申し入れるとともに、邦人保護の観点から、同人の所属企業と緊密に連携し、できる限りの支援を行ってきており、引き続き、適切に対応してまいります。
中東情勢(イスラエルとレバノン)
【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
イスラエルの国防相は、イスラエルはレバノンを石器時代に逆戻りさせるまで破壊すると述べています。
そうすると、人類の文明に多大な貢献をしたレバノンはイスラエルによってがれきの山にされてしまいます。このことについて何かコメントいただけますでしょうか。
【上川外務大臣】我が国として、このイスラエルとヒズボッラーの間の緊張の高まりにつきましては、懸念を持って注視しているところでございます。これまでも、イスラエルやヒズボッラー等に対しまして、紛争の地域への更なる拡大、これを回避する必要性につきましては、働きかけを行ってきているところでございます。
引き続き、事態の早期沈静化、地域への波及防止に向けました外交努力を、粘り強く積極的に行ってまいりたいと考えております。
中東情勢(パレスチナ国家承認)
【アナドル通信社 メルジャン・フルカン記者】西側諸国では、パレスチナ国家構想が強まっており、欧州の多くの国が、パレスチナ国家を承認しているようです。日本の外務大臣は、パレスチナの国家樹立願望を理解していると宣言します。しかし、国際社会は、日本政府が、パレスチナ国家として承認するつもりかどうか、疑問視しています。日本政府から中東地域で採用されている政策が「二国家解決」を支持するものであれば、どうやら公式な方針は、この方向にあるようです。なぜ日本政府は、パレスチナを国家として承認する方向に一歩踏み出さないのでしょうかお願いします。
【上川外務大臣】第三国の決定につきまして、我が国としてコメントする立場にはございませんが、我が国としては、これまで当事者間の交渉を通じました「二国家解決」を支持し、独立国家樹立に向けたパレスチナ人の希望を理解をし、これに向けたパレスチナの努力を支援してきたところであります。
その上で、パレスチナの国家承認につきましては、和平プロセスをいかに進展させるかといったことも踏まえまして、引き続き、総合的に検討してまいりたいと考えております。