記者会見

上川外務大臣会見記録

(令和6年5月24日(金曜日)16時08分 於:本省会見室)

上川外務大臣会見の様子

冒頭発言

経済同友会との意見交換

【上川外務大臣】私(上川大臣)は、外交を通じまして、日本の国力、特に、経済力の向上に寄与していきたいと考えており、そのために、グローバル・サウスとの連携を通じた活力の取り込みや、また、新たな時代に対応した官民連携の取組を通じて、「新しい経済外交のフロンティア」を切り開いていくと述べてまいりました。
 日本が、強くしなやかな経済力で、更に世界に存在が存在感を示すことができるよう、経済界とも緊密に連携しながら、オールジャパンで取り組んでまいりたいと考えており、その具体的な取組として、本年3月に、経団連との意見交換を実施し、経済界の声を直接お聞きしました。
 来週5月29日には、こうした取組の一環として、経済同友会との意見交換を実施いたします。経済同友会からは、日頃から様々なご提案を頂いておりますが、この機会に、率直で活発な意見交換を行いたいと考えています。
 今後も、このような取組を推進して、経済界の現場の声を、外務省や在外公館による日本企業支援の取組に反映し、厳しいグローバルな競争の中で、精力的に事業を展開する日本企業を、効果的に支援していけるよう取り組んでまいります。
 私(上川大臣)からは以上です。

日中韓サミット

【朝日新聞 松山記者】今週末から開催されます日中韓首脳サミットについてお伺いいたします。日中韓首脳サミットは、原則として、年1回の持ち回り開催をするものだと言われていますけれども、今回4年半ぶりの開催となります。このことについて、大臣のご評価をお願いいたします。また、韓国は、「協力体制の正常化」を今回掲げられていますけれども、日中関係においては、処理水の問題など、まだ課題が山積しております。この点、大臣は今後、日中関係をどのように改善し、外交を進めていくお考えか、お願いいたします。

【上川外務大臣】2008年第1回の会合以来、日中韓サミットは、その時々の様々な課題について、三か国間で率直に意見交換を行う場として機能してまいりました。
 この4年半、様々な事情によりサミットは開催されない状態でございましたけれども、その間にも、地域・国際情勢が大きく変化してきたところであります。そうした中におきまして、今般、地域の平和と繁栄に大きな責任を共有する三か国の首脳が一堂に会し、日中韓の協力の方向性やまた具体策、そして地域の諸課題について議論をするということは、日中韓三か国のみならず、地域全体にとっても重要な機会となるものと考えております。
 日中両国間には、様々な可能性とともに、ALPS処理水を含め、数多くの課題、また懸案がありますが、両国は、地域と国際社会の平和と繁栄にとりまして、共に重要な責任を有する大国でございます。
 中国との間におきましては、「戦略的互恵関係」を包括的に推進するとともに、「建設的かつ安定的な関係」の構築を、双方の努力で進めていくということが、我が国の一貫した方針でございます。
 この方針の下、引き続き、中国との間におきましては、あらゆるレベルで、緊密に意思疎通を図っていく考えでございます。

【毎日新聞 小田中記者】関連して、日中韓首脳会議についてお伺いします。日中韓首脳会談が、今週末セットされたということで、ちょっと気が早いですけれども、今回のソウルでの会談が終わりましたら、次、議長国が日本に移ってまいります。この間の日中間の、いろいろ、様々動きとか変化、あると思いますけれども、今後、この日中韓三か国の協力であるとか、どのように維持・強化していくのか、現在の大臣の御認識と、今後、外相会合あるいは首脳会合という形で進んでいきますが、議長国として、大臣として、どのように、このサミットを進めていきたいのか、お考えありましたらお伺いできますでしょうか。

【上川外務大臣】地域の情勢、また、国際情勢が大きく変化する中にありまして、この地域の平和と繁栄に、三か国の首脳は、大きな責任を共有しているところであります。その首脳が、一堂に会して、日中韓の協力の方向性や具体策、そして、地域の諸課題につきまして議論をするということは、日中韓三か国のみならず、地域全体にとりましても、重要な機会となるものと考えております。
 日本が、議長国となります次回の日中韓サミットに向けまして、こうした三か国の協力を、今日的課題に対応する形で発展させていくべく、私(上川大臣)としても、力を尽くしてまいりたいと考えております。

中国による台湾周辺での軍事演習

【共同通信 西山記者】中国軍は、昨日から、台湾周辺の海空域で、軍事演習を始めました。日中韓首脳サミットを控える中で、外務省としての受け止めをよろしくお願いします。

【上川外務大臣】このご指摘いただきました中国側の関連の動静については、政府として、強い関心を持って注視しているところであります。また、中国側に対しましては、我が国の懸念を伝達したところであります。
 また、日中韓のサミットの詳細につきましては、議題も含めまして現在調整中ということでありまして、御指摘の点も含めまして、予断をもってお答えすることについては差し控えさせていただきます。
 いずれにいたしましても、台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要であると認識しております。台湾をめぐる問題が、対話により平和的に解決されることを期待するというのが、我が国の従来から一貫した立場でございます。
 台湾海峡の平和と安定の重要性につきましては、引き続き、中国側に直接しっかりと伝えるとともに、米国を始めとする同盟国・同志国と緊密に連携しながら、各国共通の立場として、明確に発信していくということが重要であると考えております。
 引き続き、我が国といたしましては、両岸関係の推移をしっかりと注視していくとともに、今後とも、こうした外交努力を続けてまいりたいと考えております。

仏領ニューカレドニアにおける邦人支援

【NHK 五十嵐記者】ニューカレドニアの関係で伺います。南太平洋のフランス領ニューカレドニアでは、暴動による混乱が続く中、死者も出ており、フランス政府は、現地に非常事態宣言を出しています。現地に滞在している一部の日本人は、航空機でオーストラリアに出国しましたが、日本政府として把握している最新の邦人保護の状況について伺います。

【上川外務大臣】仏領ニューカレドニアにおきましての騒乱を受けまして、外務省としては、5月13日の騒乱発生直後から、在留邦人に対しまして、領事メールを発出するなどの注意喚起を行ってまいりました。
 また、欧州局長をヘッドとする連絡室を設置して体制を整えるとともに、17日にスポット情報を、20日には、ニューカレドニア全土に対し危険レベル2「不要不急の渡航中止」を発出をし、注意喚起を続けているところであります。
 ニューカレドニアからの早期の出国を希望をされておられた邦人の方々につきましては、フランス及び豪州の協力を得まして、本日までに、計42名の方々が、ニューカレドニアから豪州ブリスベンに空路で出国すること、これを支援したところであります。
 今後も、ニューカレドニアから出国を希望されている邦人の方々と緊密に連携をとり、関係国と連携して、出国支援を含め、邦人の安全確保のために、最大限取り組んでまいります。

中東情勢(国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状発付の判断)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 国際刑事裁判所は、ハマス指導者ら及びネタニヤフ・イスラエル首相に対して、戦争犯罪の容疑で逮捕状を発付しました。日本は、ICCが、特にイスラエル首相に対して逮捕状を発布する決定をしたことを支持するのかどうか、ご教示ください。
 また、原則として、日本の政府関係者は、ICCが戦争犯罪人と位置づけたこれらの人物に、公的な資格や職務に基づいて会うことはあるのでしょうか。

【上川外務大臣】ICC第1予審裁判部は、今後、本件請求及びカーン検察官が提出した証拠、その他の情報を検討した上で、逮捕状を発付するか否か判断するものと承知しておりますが、刑事裁判の手続に関わる問題でありまして、ICCの判断について、政府として予断することにつきましては、差し控えさせていただきたいと思います。
 いずれにいたしましても、我が国は、ICCの締約国として、また、本件が、イスラエル・パレスチナ情勢に与える影響の観点からも、今後の動向を重大な関心を持って、引き続き注視してまいります。

中東情勢(パレスチナ国家承認)

【アナドル通信社 メルジャン記者】イスラエルは、パレスチナ国家の承認に反対しています。この状況により、中東危機の解決は、ますます困難になっています。最近、アイルランド、ノルウェー、スペインは、パレスチナを独立国家として正式に承認すると発表した。日本の中東地域外交では、しばしば「二国家解決」を強調されています。日本は、いつパレスチナを独立国家として承認するという発表する予定ですか。日本は、日本政府は、パレスチナ国家承認に向けた十分な外交を行っているのでしょうか。「二国家解決」ポリシーに変更はありますか。このポリシーに変更がないのであれば、パレスチナを独立国家として承認しない理由ありますか。この問題について、日本政府は、どのような立場をとっているのでしょうか、お願いします。

【上川外務大臣】我が国としては、これまで当事者間の交渉を通じた「二国家解決」を支持し、独立国家樹立に向けたパレスチナ人の希望を理解し、これに向けたパレスチナの努力を支援してきたところであります。
 引き続き、イスラエル・パレスチナ双方への直接の働きかけなどにより、今次事態の早期沈静化や、人道状況の改善に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けていくとともに、「平和と繁栄の回廊」構想などの、日本独自の取組などを通じまして、当事者間の信頼醸成に取り組んでまいります。
 また、パレスチナの国家承認につきましては、和平プロセスをいかに進展させるかといったことも踏まえ、引き続き、総合的に検討していく所存でございます。

記者会見へ戻る